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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第6章:童貞卒業の時
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トルトゥーラ、強制加入

※暴力描写あり






「ようこそ! 我が冒険者ギルドへ~! 待っていたよ、我が愛しの主よ~!」


 リアをリリスに任せた後、凄い行きたくなかったけど僕は仕方なく冒険者ギルドへ向かった。一人で行くのは寂しいから、もちろん嫌そうにするミニスを連れてね。

 で、冒険者ギルドの前まで来たところで、何故か外に立ってたトルトゥーラがこれでもかってくらいに笑顔で歓迎してくれた。心底嬉しそうに尻尾を振りながらね。わー、ギルマス直々の歓迎とか、贅沢にもほどがあるなー。


「えっ。いつから待ってたの、この人……?」

「う~ん、大体二時間くらいかな~? まあそんなことはどうでもいいじゃないか~。さあさあ、上がってくれたまえ~?」

「いや、冒険者プレートだけ貰って帰るからいいよ。ていうかサブマス出して、サブマス」


 忠犬みたいに待ってたのは評価するよ? でもコイツがいると絶対に話が進まない。だから見た感じ普通だったサブマスと話がしたいね。周囲にいる冒険者も何かピリピリした雰囲気でこっちを見てるし。


「ハハハ、主は随分冷たいなぁ~? だがそんな扱いもなかなか股に来るものがあるね~……あふん!」

「いいからとっととプレート持ってこいや。このド変態のクソ犬が」

「ついにキレたわね、コイツ……」


 やっぱり話が進まないから、トルトゥーラの胸倉を掴み上げて額に頭突きをかます。

 ただ罵倒も頭突きも一切効いてない感じだ。嬉しそうに頬を緩めてるし、尻尾がさっきよりも激しく振られてる。ドMでドSとかある種の無敵状態だよね。どうすりゃいいんだ、コイツ……。


「ん~、主の命令を聞いてあげたいのはやまやまなんだが、実はまだ出来ていないんだ~。何分他の街の冒険者ギルドとの交渉が難航していてね~、さすがにSランクスタートは難しいようだ~……」

「だから誰がランクを上げろって言ったよ。いいからとっととCランクのプレート持ってくるんだよ、この駄犬。その犬耳引き千切るぞ」

「ヒェッ……!」


 たぶん効かないのは分かってるけど、トルトゥーラの身体をがくがく揺さぶりながら脅迫する。残念ながら尻尾の振りが更に加速して、ミニスが自分のウサミミを両手で押さえたくらいにしか効果が無かった。誰もお前のウサミミを引っこ抜くとは言ってねぇ!


「あ、主よ、こんな公衆の面前で、そんな情熱的なことをする気か~い? さすがの私も、それは少し恥ずかしいな~……だが、主がどうしてもと言うのなら、構わないよ~……?」


 挙句、トルトゥーラはぽっと頬を染めて乙女みたいな事を口走る。内容は完全に乙女のソレじゃないけどね。公衆の面前で耳を引き千切るってどんなプレイ? これには周りで警戒してた感じの冒険者たちもドン引きしてるよ。


「駄目だコイツ、脅しが効かない。どうすりゃいいんだ、これ……」

「と、とりあえず上がって、話を付けた方が良いんじゃない? ここで帰ったりしたら絶対また粘着されるわよ。朝から宿にまで突撃してきたんだし……」

「だよねぇ……仕方ない。面倒なことはとっとと済ませよう。オラッ、案内しろやクソ犬が」

「クゥーン!」


 結局こっちが折れるしかないから、胸倉掴み上げてたトルトゥーラの身体を八つ当たり気味に冒険者ギルドの外壁にぶん投げた。『ドゴッ!』って結構な音がしたのに、ぶつかった瞬間のトルトゥーラの幸せそうな顔と鳴き声といったら……もう駄目だ、コイツは。手遅れだ……。


「扱いが完璧に奴隷のそれね……」

「いや~、さすが主。とても情熱的だ~。さあさ、こっちだ~! ついてきたまえ~!」

「なのにすっごい満足気……もうやだ、コイツ……」


 さすがのミニスもこの変態性には心底ドン引きしてるみたいで、可哀そうに泣き言を零してたよ。でもコイツとタイマンで話すのは僕だって嫌だから、お前にも来てもらうぞ! 絶対逃がさないからな!






 冒険者ギルドに入ると、まず目に入ったのは壁に開けられた大穴が釘と木の板で簡易的に補修されてある光景だった。さすがに昨日の今日の出来事だし、すぐに元通りになるわけないよね。正直すまんかった。

 そしてギルド内にいた冒険者たちは、僕の姿を見るなり色んな反応を示したよ。悔しがったり、怯えたり、敵意をぶつけてきたり……うーん、このピリピリする感じの空気はなかなか良いね。正直最初のお行儀が良いギルドよりもよっぽど好きだよ。

 ちなみに受付嬢サキュバスは僕の姿を見るなり、『ヒッ』と小さく呻いて受付に隠れてた。君は本当に運が良かったねぇ。リアが苛めっ子に似てる風俗嬢サキュバスがいいって言わなかったら、当初の予定通り君が拷問されてたんだよ?


「――さ~て、それじゃあ大切な話をしようか~。私の主になってくれるか~い?」


 そうして三階のギルマスのお部屋に案内されて、お茶とお菓子を出されて一息ついた直後、安定の隷属宣言がトルトゥーラの口から飛び出してきた。いいからさっさとプレート寄越せ。


「嫌だ。お前みたいなド変態はお呼びじゃないんだよ。おとといきやがれ」

「フッフッフ~。そんなことを言っていいのかな~? こちらには絶対に君を頷かせるための策が用意されているんだよ――おうふっ!」

「うわ、容赦なく引っ叩いた……」


 殴りたくなるくらいのドヤ顔を披露されたから、椅子を立ってツカツカ歩いてって、隣まで行ってからビンタを一発お見舞いした。『パァン!』っていう良い感じの乾いた音に、ミニスがちょっと眉を寄せてたね。喜ばせるだけって分かってるのに、つい手が出ちゃうんだよなぁ。

 それはそれとして、僕を頷かせるための策には随分と自信があるみたいだ。もう仲間に加える気は欠片も無いとはいえ、一体どんな策を用意したのかは興味があるね。そんなわけで大人しく自分の椅子に戻りました。


「へぇ、面白い。その策とやらを言ってみなよ。言っておくけど暴力で解決しようって言うなら、こっちは今度こそお前を殺すからね」

「なーに、そこまで物騒な方法ではないさ~。そもそもまともにやりあって主に勝てるとも思えないしね~。あ~、でもそうすればまたボコボコにして貰えるのかな~……?」

「今度はボコらず速攻で殺すからね。で、どんな方法?」

「それはね~……これだ~!」


 ゴソゴソと執務机の引き出しを漁ったトルトゥーラは、突然何かを僕の足元に投げてきた。見た感じA3の用紙みたいな感じの大きさの紙だね。どういう投げ方したのか角が床に刺さって止まって、次の瞬間へにゃりと紙が曲がる。魔法使えば僕も同じことできるんだろうけど、今の全然魔法使われてないんだよなぁ……。


「何よ、これ……って、なるほどね。そういう……」

「何、どうしたの? その紙は一体何?」


 奴隷精神がまだ抜けてないのか何も言わずとも紙を拾ったミニスは、何やら書かれてるらしい表面を見て納得の表情をしてた。僕が尋ねると無言で差し出してきたから、受け取って確認してみたら――


「……おいおい。さすがにこれはびっくりだね」


 何とそこには、いつ撮ったのか僕の写真があった。まあそれだけならさほど驚きはしないよ? 問題なのは写真の他に記された内容。分かりやすく言うと『ウォンテッド!』からの『デッド・オア・アライブ』、そして『金貨千枚』っていう内容。

 まあ要するにアレだ。完全に指名手配書だよ、これ。おかしいな、指名手配されるようなことはしてないのに。いや、してはいるけどバレてないはずなんだよなぁ。


「見ての通りだ~。もし私の主となってくれないのなら、ギルドマスターとしての権力とコネをフルに使って、君とその仲間たちを指名手配させてもらうよ~?」

「ちょっ!? 何で私たちも!?」

「主の信頼のおける仲間となっているなんて、妬ましいじゃないか~。悪いがついでに手配させてもらうよ~?」


 と言いつつも、毛ほども罪悪感を滲ませないドヤ顔のトルトゥーラ。さすがにこれにはミニスも開いた口が塞がらないっぽい。

 確かにこれはかなり効果的な策だ。国中で指名手配されたら、僕らは一気に活動しにくくなる。というか街に入ることも難しいだろうし、僕の真なる目的を果たすための旅路の大きな障害になるのは確実だ。

 ただそれは、僕が本当に一般人だった場合のお話。無限の魔力のおかげで外見の偽装くらいはお手の物だから、ぶっちゃけ指名手配されたら仲間たちごと外見を変えればそれで済む。残念ながらこの程度の策じゃ僕の首を縦に振らせることはできないよ。


「もうなりふり構わない姿勢に逆に好感が持ててくるね。ここまでして僕の奴隷になりたいとか、やっぱイカれてるよ、お前」

「何とでも言いたまえ~。私は欲しい物を得るためなら手段など選ばないよ~? それで、どうするね~? 私の主となってくれるのなら、もちろん指名手配は取り消そうじゃないか~?」


 どうにも『勝った』って確信してるみたいで、ニヤニヤ笑いながら尋ねてくるトルトゥーラ。分かっちゃいたけど、見た目に反して大分性格悪いよね。これはマジでクソ犬。

 しかし残念。無限の魔力を持ち、自在に姿を変えることすらできる僕にはこの程度の脅しは通用しな――


「お、お願い……この人の要求、呑んで……」

「はあ?」


 とか思ってたら、何故かミニスが怯えた顔をして縋りついてきた。しかもただの怯えた顔じゃなくて、血の気が失せて顔面蒼白になってる。どうした? 僕のには入ってなかったけど、お茶に毒でも盛られてたか?


「いやいや、お前だってこんなの脅しにならないって分かってるでしょ? その気になれば別人になることくらい簡単なんだよ?」

「わ、分かってるわよ、そんなこと……でも、私の顔と姿が指名手配されることには変わりないんでしょ? そんなの嫌よ。万が一それがお母さんとお父さん、そしてレキに知られたら……私、もう生きていけない……!」


 あー、そういうことか。なるほどね。考えてみれば僕の真の仲間たちは『家族? 何それおいしいの?』みたいな感じの奴らばっかりだから失念してた。そうだよ、ミニスは普通に家族がいてしかも滅茶苦茶愛し合ってるんだ。それなのに指名手配されたりしたら、家族は死ぬほどショックを受けるに違いないね。ミニスは絶対にそれだけは避けたいんだと思う。


「……チッ。攻めやすそうな方を攻めてきたか。本当に性格悪い奴だな」

「ハッハッハ~。主を攻め落とすのは難しそうだからね~。ならば弱いところを狙うのは当たり前だろ~? 将を射んとする者はまず馬を射よ、と言うからね~?」

「お、お願い。何でもするから、この人の要求を受け入れてやって……指名手配なんてされたら、私、レキたちに合わせる顔が無いわ……!」


 得意げに笑うトルトゥーラと、必死に縋りついてお願いしてくるミニス。腐ってもギルドのトップだけあって、陰謀策謀もお手の物ってか? よくもまあ罪のない幼女をダシに使って、自分の欲望を押し通そうとできるもんだ。人の心が無いんですかね?

 ところで幼女をダシに使うって言葉、何だか無性にお腹が空いてくるね。幼女ダシスープの塩ラーメン食べたい。


「フフフ~。レキというのは君の妹さんかな~? 大好きな姉が国中で指名手配されていると知ったら、妹さんは君に対してどんな思いを抱くだろうね~?」

「っ! お、お願い、します……!」


 言葉による的確な追撃を受けて、ミニスはじんわりと涙を浮かべながら縋ってくる。そそる顔だぁ……これで机の向こうで勝ち誇った顔をしてるクソ犬がいなければなぁ?

 奴隷の頃だったならともかく、ミニスは今や真の仲間。真の仲間は優遇しないといけないし、ミニスの僕に対する好感度は地の底とまでは言わないけどかなり低い。だからここは要求を呑むべきだし、そうすればミニスからの好感度も多少上がる。何よりミニスに目をかけてる女神様からの好感度も爆上がり間違いなしだ!

 戦力的にもキラを正面から返り討ちにできるトルトゥーラは申し分ないし、論理的には受け入れるべきだって分かってる。そして殴りつけても喜ぶだけだってことも分かってる。うん、分かってるよ?


「――クソが! お前の勝ちだよ、クソ犬がっ!」

「がっ――ふ、ハハハ~! 私の勝利だ~!」


 でも、ここまで散々弄ばれた怒りが消えるわけもない。だから素直に負けを認めつつも、顔面に思いっきり拳を叩き込んで鼻をへし折ってやったよ。

 でも鼻血垂らしながら嬉しそうに笑ってるんだな、これが! チクショウ!





⋇トルトゥーラが無理やり仲間になった!


現在の仲間たち

・話の長い魔法狂い

・復讐鬼ロリサキュバス

・連続殺人猫

・元実験動物 

・SM二刀流変態ワンコ ←NEW!!

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