楽しい拷問(上)
⋇残酷描写あり
⋇拷問描写あり
⋇グロ描写あり
⋇例の如くリアのお楽しみシーン
「う……ここ、は? 私、どうして……?」
しばらくして、赤い髪のサキュバスは目を覚ました。とはいえ僕の魔法の影響下にあるから、ベッドの上で大の字のまま全く身動きが取れてない。本人もすぐにそれに気が付くんだろうけど――
「えいっ!!」
「あ、がっ……!?」
その前に、サキュバスの身体に跨ったリアが両手で握った金槌を容赦なく振り下ろした。しかもサキュバスの顔面に、力いっぱい。鼻が折れたのか『ゴッ!』って鈍い音がして、僅かに血が周りに飛び散った。
ちなみに部屋の中は電気を付けてないから、ちょっと見えにくいかな。でも明るい部屋で拷問するより暗い部屋で拷問した方が雰囲気出るし、こっちの方が良いでしょ?
「えいっ!! えいっ!!」
「ごあっ!? があっ! い、痛いっ!! や、やめてぇっ!!」
そして可愛い掛け声を上げながら、リアは二回三回と金槌を振り下ろしていく。同族だってことを抜きにしても、何の罪もない相手にこんなことするなんて、まともな人間の出来る事じゃないよね。僕は平気でできるけど。
「アハッ! 見てご主人様! サキュバスが鼻血出してて凄い面白いよ!」
「そうだねー。面白いねー」
狂気と純真さが入り混じったかなり病的な笑顔を向けてくるリアに対して、僕はそう淡白に返す。だって拷問紛いのことなら午前中に散々やったから、今はあんまり興味が惹かれないんだよね。もちろん嫌いじゃないんだけどさ。俗に言う賢者タイムってやつ?
「な、なに、これ……!? 身体、動かない……!」
「ああ、悪いけど面倒だから説明はしないよ。とりあえず抵抗はできないし助けも来ないから、精々泣き叫んでコイツを満足させてやってくれない?」
「あ、あなた、何を言って……!?」
身体がピクリとも動かないことに狼狽するサキュバスに対して、最低限それだけ言っておく。ぶっちゃけ知る必要の無いことだしね。後で記憶消すし。
「まずはこのトンカチで顔の形が変わるまで叩こうかなー? その後はこのノコギリで手足を切り落としたりしてー……あ、その前に全身の皮をカンナで削るのも良いかも! アハッ、考えるだけでワクワクするー!」
「ひぃっ!?」
何より面白い玩具を前にしてワクワクしてるリアが、長ったらしい状況説明が終わるまで待ってくれるとは思えないしね。コイツ、お昼ご飯食べた後にも買い物行って色々拷問道具を買ってきたみたいだし。今夜が相当楽しみだったんだろうなぁ。
「大丈夫。後で今夜の記憶は綺麗に消してあげるから、今から始まる拷問は悪夢だと思って諦めなよ。なーに、死んでも僕が何度でも蘇生するから、命だけは保障してあげる」
「い、いやっ! だ、誰かあああぁぁぁぁぁっ! 誰か助けてえぇぇ――がふっ!?」
サキュバスが耳をつんざく叫びを上げた途端、その口元に金槌が振り下ろされて前歯が何本か弾け飛ぶ。うわぁ、アレは痛そう……。
「助けは来ないんだから、諦めてリアと遊ぼ? あなたとしたいこと、いっぱいいっぱいあるんだから」
「い、いや……いやぁ……!」
「アハッ! 何回目に死ぬかなぁ?」
「がっ!? ギッ!? ごっ!」
そうしてリアによる拷問が始まる。まるで餅つきかもぐら叩きみたいに何度も何度も執拗に振り下ろされる金槌。部屋に飛び散る鮮血と肉片。
このサキュバスに関しては完全にとばっちりかつ八つ当たりだけど、まあ運が悪かったと思って諦めてもらうしかないね。さーて、リアが発散してる間に僕は何をしようかなー。
それから約二時間。僕は後ろから聞こえてくる悲鳴や狂った笑い声をBGMに、机に向かって今後の予定をマル秘ノートにしたためてた。僕は夏休みの宿題は初日に終わらせるタイプだからね。それに地図を見た感じだと、魔獣族の国の首都まで大きな街はあと一つしかないし、予定を立てるのに早すぎるってことは無いと思う。
え? 後ろで人が拷問されてるのに、よくそんな真似ができるなって? そんなの今更じゃん? それに幾ら僕でも気にならなかったわけじゃないよ。たまーに背中とかノートに血が飛んでくるのがちょっと煩わしかったから、適当に衝立作っておいたし。あと気になったのは――
「ご主人様ー、また死んじゃったー。生き返らせてー?」
「あのさ、確かに何度でも蘇生してあげるって言ったよ? でもこれで十八回目だし、前の蘇生から二分も経ってないよ。せめてカップ麺作って食べ終わるまでの時間くらいは生かしてくれない?」
――リアが憎悪と殺意を情け容赦なくぶつけてるせいか、二時間でかれこれ十八回もサキュバスを殺してること。
いや、最初の頃はリアも多少は加減して痛めつけてたよ? でも一回殺した後に僕が実際に蘇生させて見せたら、本当に何度でも殺して良いんだって理解しちゃったみたいで、一切の加減なくやりはじめたんだ。死による喪失感を何度も味わわせるためなのか、リスキルも五回くらいしてたしね。
「リアのせいじゃないよー。すぐに死んじゃうサキュバスが悪いんだよー」
「そうっすか。でもいい加減面倒だしなぁ。じゃあこうするか――自動蘇生、再生」
死ぬ度に蘇生を求められるのも面倒になってきたから、どこぞの元実験動物にかけたのと同じ魔法をサキュバスに使う。蘇生にかかる時間は十秒で、肉体の再生に関してはほぼ瞬間的に再生するようにした。
これで僕が関与しなくても、蘇生と拷問と死のループが成り立つね。もっと早くにやればよかったかもしれない。
「よし、これで死んで十秒したら勝手に蘇生するようになったよ。だから後は飽きるまで楽しみな?」
「やった! ご主人様、大好き!」
「ハハハ、そんな返り血やら何やらに塗れた姿で抱き着こうとしないでくれる? 今のお前、もの凄い姿してるよ?」
満面の笑みで抱き着こうとしてくるリアの額を、指で押さえて遠ざける。当然だけど今のコイツはとんでもない量の返り血を浴びてて化け物みたいな状態になってるからね。まるで血のシャワーを浴びたみたいになってるし。
ていうか改めて見ると部屋の様子もスプラッタだなぁ。天井から壁、床に至るまでペンキをぶちまけたみたいに血塗れだよ。特にサキュバスが横たわってるベッドが一番酷いね。マジで血の池みたいになってるし。これ後始末せずに部屋を出たら、絶対清掃の人のトラウマになるな……。
「僕の事が大好きならここでしっかりと鬱憤を晴らして、明日からたっぷりと性知識を学んで、僕の初めてを素敵な物にしてくれると嬉しいな。サキュバスなんだし、リアには期待してるよ?」
「うん、任せて! 良く分かんないけどリア、頑張るよ!」
胸の前で両の拳を握って、素直に頷くリア。健気で可愛らしい所作なんだけど、右手に血塗れのナイフを握ってて、左手に真新しいノコギリを握ってるのがどうにも物騒ですねぇ……。
「――っ!? ああぁぁっ、もう嫌! お願い、許して! 殺してえぇぇっ!」
「アハッ、生き返った! じゃあまた一緒に遊ぼう! もっともっと、あなたにしたいことはたくさんあるんだから!」
「嫌ああぁぁああぁぁぁぁぁっ!!」
そうしてリアは生き返って泣き叫ぶサキュバスの身体に跨って、再び拷問を再開する。すでに二時間やってるのにどっちも元気だなぁ。サキュバスだけあってベッドでの体力はもの凄いんですかね?
「さて、それじゃあ僕は予定を組むのに戻ろうかな。いや、でもちょっと疲れてきたしな……そうだ、レーンにでも電話してみよう」
ちょくちょく立ったり座ったりしてたとはいえ、二時間机に向かってたから集中力が切れ気味だ。こういう時は無理に続けず、休憩してから再開した方が効率的にも良くなるからね。
そんなわけで、僕は携帯を取り出してレーンに電話をかけた。というか、これ結界の内部の時間の流れを弄ってたらたぶん繋がらなかったな……。
『……クルスかい? 珍しいね。こんな時間に電話をしてくるとは。君はいつも朝昼晩の三回しか電話をして――』
「ギャアアァアアァァアァアァァッ!!」
「ギコギコ……うーん、なかなか切れないね? 店員さんが一番切れ味の良いノコギリだって言ってたんだけどなー?」
『………………』
「今はちょっと暇でさ、状況も状況だし他にすることがないんだよね。あ、迷惑だったら切るよ?」
電話に出たレーンは不自然に言葉を切ったけど、言おうとしたことは大体分かったから答えておいた。
実際この状況だとあんまりやること無いんだよね。リアを一人にするわけにもいかないし、ここを離れられないし。できるのは机に向かって何かやったり、魔法を創ったりするくらいだし。魔法に関してはド田舎でそれなりに創ったりしたし、今は気分じゃないから良いかなって。
『……いや、逆に聞きたいんだがそちらこそ大丈夫なのかい? 何か途轍もなく苦痛に満ちた悲鳴が聞こえたんだが……』
「あ、大丈夫大丈夫。ちょっとリアがサキュバスを拷問してるだけだから。小川のせせらぎみたいな環境音と思っておいてよ」
『どう頑張ってもそんな美しい音色には聞こえないんだが……』
電話の向こうからはドン引きした感じの声が聞こえてくる。
うーん、まあ気持ちは分からないでもないね。何か後ろを見たら、リアがサキュバスの太ももをノコギリでゴリゴリやってたし。そりゃあ幾ら切れ味良くても、幼女の力で大腿骨をノコギリで斬るのは難しいだろうよ。
とはいえレーンは悲鳴が聞こえてきても電話を切る気はないみたい。本当におしゃべり好きだなぁ。とりあえず今日あった出来事を全部語っておくかぁ。
「――ってことがあったんだ。いやぁ、久しぶりにキレちゃったよ。ハハハ」
『はぁ……』
そしてしばらくして、今日の出来事を全て語り終える。サキュバスを捕まえてリアが拷問してる件については、最初に教えたから省いたけどね。
何だかんだでレーンは適度に相槌を打ちつつ、気になる所は質問をして聞いてくれたんだけど、僕がどこぞのクソ犬を調教し始めた辺りから反応が多少淡白になってたね。何故だ。
『君は頭がおかしいと言ってやりたいところだが、それは分かり切っていることで今更改めて言う必要もなさそうだ。それに話を聞く限りではその犬人のギルドマスター――トルトゥーラと言ったかな? 彼女がやろうとしたことをそのままお返ししてやったに過ぎないようだね。自業自得というものだろう。選んだ相手が悪かったとしか言えないね』
「そういやボロクソにして治療はせずに出てきたんだけど、大丈夫かな? 一般人の治癒魔法ってどの程度治療できるの?」
『それは個人差が大きく出るだろうね。それから状況にも左右されるだろう。それというのも、魔法とはまずイメージが重要で――』
「長い、三行」
何かもの凄い基本的な前置きから入ってクソ長くなりそうな予感がしたから、即座に容赦なくぶった切った。
え? 自分は長ったらしく話を聞いてもらった癖に、向こうの話を聞いてやらないのは不公平だって? 良いんだよ、世の中は不公平なものなんだから。それにピロートークでならレーンの長話を聞いてやらないこともない。
『……重傷でも治療は容易だ。ただ「間違いなく死ぬ」、「治せるわけがない」などという負のイメージを抱いてしまった場合、それを払拭しなければ掠り傷の治療すらできないだろう』
「なるほどねぇ。じゃあたぶん大丈夫かな。仮にも冒険者ギルドにいた奴らだし、重傷くらいは見慣れてるでしょうよ。きっと」
僕がぶった切って数秒くらい後、レーンはやたら平坦な声音で短くして教えてくれた。
やっぱ魔法は負のイメージも反映されちゃうってのが問題なんだよねぇ。一概に想像力が豊かなら魔法に適性がある、とは言えないわけで。本当に便利なのか不便なのか分からんなぁ。
『………………』
しかし毎度毎度長話をキャンセルしてるせいか、レーンは酷く不満げだ。電話越しにも無言の圧が届いてくるぞ。その内電話越しにパンチをしてくるんじゃなかろうか。
「もしかして怒ってる?」
『怒る? 何をだい? 転生を繰り返すことで精神が摩耗し、感情が薄くなってきた私が怒りの感情など抱くはずがないだろう?』
「発言が怒りを感じてる奴のそれなんですが……」
やっぱ滅茶苦茶不機嫌になってんな、コレ。たまには話を聞いてあげた方が良さそう……うん、ベッドの上では聞いてやるからな!
⋇特に残虐なシーンは大抵リア絡みという謎。もちろんタイトル通り次回にも続きます。