表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第6章:童貞卒業の時
131/527

模擬戦

⋇残酷描写あり

⋇グロ描写あり




 模擬戦を行うために、僕らはトルトゥーラに案内されて一階にある修練場みたいな場所に案内された。ただこの修練場は個人用と言うか、結構小さめの場所だった。テニスコートより一回りか二回りくらい小さい感じかな? 余計なモノは一切置いてない、正しく鍛錬の場って感じがする無機質な部屋だったよ。

 そんな狭い修練場に男である僕と、処女が四人。何も起きないわけがなく……。


「――よし、契約完了~! これで模擬戦の間、私たちは魔法を使うことができないよ~?」


 僕とリア、そしてミニスと契約を終えたトルトゥーラは、相変わらず昂ったテンションで言い放つ。

 契約の内容は『これから行う模擬戦の最中、お互いに魔法を使用することはできない』、『模擬戦の終了条件はどちらかが降参を宣言すること』っていう極めてシンプルなもの。僕から魔法を取ったら無限供給される魔力と人当たりの良い顔立ちしか残らないから、本当に契約を受け入れるべきかちょっと迷ったけど、最終的には受け入れることにしたよ。

 魔法が使えないのは模擬戦の最中だけだし、別にランクとかどうでも良いから、何かあったらすぐに降参すれば良いしね。僕は強さに対するプライドとかいうくだらないものは持ってないし。そもそもそんなものがあったら、いつか必ず討伐されなきゃいけない世界を破滅に導く強大な敵なんてやれないよ。

 ちなみに契約魔術は僕が使ったよ。さすがに向こうに任せるほど油断はしてないんでね。何か変なもん仕込まれないとも限らないし。


「……何かあったらよろしくね?」

「あいよ。まあ骨は拾ってやるから、適当に暴れてこいや」


 だからこうして仲間の力を当てにするのも恥ずかしくない。すでに登録済みで契約の必要が無かったキラは、模擬戦の最中だろうと魔法を使うことができるからね。何か予想外の事が起こった時は何とかしてくれるでしょ。たぶん。


「さて! じゃあまずは、そこの可愛い子供たちからだ~。とはいえこのままでは相手にならないだろうから、二人纏めてかかってきて構わないよ~? 君たちの力を私に見せてくれたまえー!」


 かなり挑発的な台詞を口にするトルトゥーラは、事前に調べた通り素手での接近戦をするみたい。位置について幼女コンビを明るく煽りながらも、武器らしい武器は一切身に着けてなかった。確か得意武器は手甲だったはずなのになぁ。こんな奴ら相手には必要ないってことなんですかね。

 あと修練場に移動するまででトルトゥーラの服装を舐めるように見たわけだけど、僕の語彙ではよく分からない服装をしてるんだよなぁ。何だろう、ハニエルが着てる法衣とかに近い感じかな? でもあれよりゆったりしてる感じで豪華な刺繍も無いし、色は黒。どっちかっていうと道着に近い感じもするね。まあ似合ってるから細かいことはどうでもいいか。


「むっ、何か馬鹿にされてる気がする……!」

「何かムカつくわね。あんなヘラヘラしてる奴に軽く見られてるとか……」


 リアもミニスもあんまり煽り耐性が無いのか、挑発にそこそこカチンと来てる模様。妙に抑揚のある口調かつ邪気が感じられない明るい笑顔で、一対一じゃ相手にならないって言われればムカつくのも分かるよ。僕もメスガキに煽られたら我慢できる気がしないし。


「おにーちゃん! 本気でやってきてもいい!?」

「いいよ。向こうも腕に自信はあるみたいだし、問題ないでしょ。二人とも死なない程度に頑張れ」

「分かった! 頑張る!」

「何かムカつくから顔面に一発ぶち込んでやる……」


 僕の応援を受けてやる気を出すリアと、何故かイラっとした顔をするミニス。顔面に一発ぶち込むってトルトゥーラの話だよね? 僕の顔面にぶち込むのでなく。


「準備はできたかな~? それじゃあ模擬戦、開始だ~! いつでもかかっておいで~?」


 そうしてトルトゥーラの宣言と共に、模擬戦が開始された。

 それと同時に契約魔法が効果を発動して、感覚的に魔法が使えなくなったことが理解できた。でも僕が事前にこっそり頭の上に創り出して、今まで維持してた空気の塊は消滅せずに残ってる。これならいけそうと思ってやってみたけど、どうも魔力を注ぎ込んで維持してるだけなら『魔法の使用』には接触しないっぽいね。『使用』と『維持』は違うのか。『対象に取る』とか『選ぶ』の違いかな? 契約魔術って難しいね。

 ただ風の塊をほんの少しだけ動かそうとしたら、途端に霧散して消滅した。どうやら『維持』以外に何か働きかけようとしたら『魔法の使用』に接触したみたい。まあこれは当然と言えば当然か。

 何にせよ『維持』ならできるみたいで良かったよ。それすらできないなら僕が着てる服が消滅してすっぽんぽんになってたはずだからね。いや、マジで本当に心の底から安心したわ。とりあえず横着して何もかも魔法で創ってないで、今度服を買いに行こう。


「上等っ! 行くわよ、リアっ!」

「うん!」


 やっぱり煽り耐性が無いのか、ミニスは構えも取らずにへらへら笑ってるトルトゥーラにお怒りのご様子。キレ気味に構えを取って、リアも両袖から短剣を取り出して構えてた。

 さあ、幼女コンビはトルトゥーラとどこまで戦えるかな? 


「はっ!!」


 一番最初に動いたのは脚力に定評のあるミニス。一瞬腰を沈めたかと思えば、爆発的な瞬発力で一気に飛び出す。ウサミミとモフモフコートの裾が後方に流れる光景が愛らしいね。

 その後にかなり遅れて、デカい翼による加速も加えてリアが駆ける。魔法は使えないから物理でやるしかないんだよね。ていうかリア、真剣使ってるけど良いのかな? トルトゥーラが何も言わないってことは、大丈夫だとは思うんだけど……。


「くらえっ!!」


 そしてほとんど一瞬でトルトゥーラの下に到達したミニスは、速度が乗った凄まじい回し蹴りを繰り出した。

 兎獣人の瞬発力と脚力が乗った破壊的な回し蹴りだよ? 僕もできれば受けるのは遠慮したいね。まあそれはトルトゥーラも同じだろうから、避けるか受けるか流すかすると思ったんだけど――


「――ぐはあっ!!」

「……あれ?」


 蹴りを放ったミニス当人が首とウサミミを傾げるくらい、完璧にクリーンヒットした。『ドゴォ!』と胴にクソ強回し蹴りを食らったトルトゥーラは冗談みたいにぶっ飛んで、床に二、三回バウンドしてから修練場の壁にぶち当たって倒れた。

 結構な距離ぶっ飛んだはずなのに壁にヒビ入ってるんですが。死んだかな、これ?


「……人殺し」

「ち、ちがっ……! わ、私、そんなつもりじゃ……!」


 ボソッと呟くと、ミニスは気の毒になるくらい青い顔をして弁明してくる。

 でも別に死んでも問題ないんじゃないかな。ギルマスが模擬戦で子供に殺されたとか完璧に向こうが油断してたとしか思えないし、そこまで騒ぎにはならないでしょ。まあ本当に死んでればの話だけどね。さすがに自称闘技大会ベストエイトの奴が蹴り一発で死ぬとは思えないし。


「う、ぐぐっ……す、素晴らしい蹴りだ~……いや、想像以上に速くて重かったな~……ぐふっ……」


 予想通りトルトゥーラは生きてた。でも立ち上がる姿は生まれたての小鹿より頼りないし、何度か血を吐いてる。思いのほか軽傷に見えるけど、アバラは何本かイってそうだね。むしろ胴にアレを食らって立ち上がれるのがびっくりだよ。


「あ、うん……だ、大丈夫……?」

「も、問題ないとも~。さあ、遠慮せずに、ごふっ――か、かかってきたまえ~!」


 血を吐きながらも明るく笑って、今度は構えを取る。何かぷるぷるしてるように見えるのは気のせいですかね? これはミニスが心配するのも分かる気はする。


「えっと……リア、後任せて良い? さすがにアレに追撃するのは辛いわ……」

「任せて! ミニスちゃんの分まで頑張るね!」


 一気にやる気がなくなったみたいで、構えを解いたミニスが後ろに下がる。

 ただ入れ替わりに前に出たリアは、元気いっぱいでやる気も十分。今現在のトルトゥーラの負傷なんて目に入らないみたい。やりすぎると死ぬかもだから気を付けてよ?


「やーっ! たーっ!」

「むむっ!? な、何という、鋭い太刀筋! 油断できない子供たちだ~!」


 ふざけた掛け声とは裏腹に鋭い連撃を繰り出すリアと、さすがにヤバいと思ったのか必死な表情でそれを捌くトルトゥーラ。

 やっぱりさっきは子供だからってことで油断してたんだろうなぁ。何気に今は短剣の腹に手刀打ち込んで逸らしたりして、リアの短剣を素手で捌いてるし。そこまでやれるなら最初からやれよぉ!


「ならば、こちらもほんっ、き、ごふっ――本気を、出させてもらうよ~! くらえーっ!」


 一回吐血したかと思えば、ここにきて初めてトルトゥーラが攻勢に出る。リアの連撃を捌き切った後、その隙を突いて懐に踏み込み、握りこんだ拳をリアの鳩尾目掛けて叩き込む―― 


「――そんなの当たらないもん!」

「は~っ!?」


 その寸前で、リアが翼を使ったバグみたいな挙動のスライド移動で回避した。予想外の回避にトルトゥーラは目を丸くしちゃってるよ。気持ちは分からないでもない。


「とりゃーっ!!」

「ぐはあっ!?」


 そして再度のスライド移動で懐に入られて、鳩尾に二本の短剣を突き込まれ――ん? 何かちょっとおかしくない? 何でリアはわざわざ二本とも突き入れてるんですかね? しかも腕を交差させる形で。


「うりゃーっ!!」

「ごあっ……!?」

「うわ、キッツ……」


 なんて首を傾げてたら、リアは交差させてた両腕を外側に振り切った。もちろん短剣がトルトゥーラの腹に刺さった状態でね。当然腹がぱっくりと引き裂かれて、とんでもない量の鮮血が迸ったよ。容赦なく腹を裂きやがったな、コイツ……そういうとこ本当好き。プラス十点。


「よーし、まだまだ行くよー!」


 一旦距離を取って、返り血に塗れたまま元気いっぱいに言い放って構えを取るリア。

 お前はまだ戦えるって本気で思ってんの? 早いとこ治療しないとヤバいよ、これ。腹裂かれた程度じゃ人間はなかなか死なないらしいけど、肋骨が折れて肺に刺さってたらその限りじゃないだろうし。


「い、いや、参った! 降参だ! これ以上やられたら、私の臓物が床に散らばってしまうよ~……清掃の方に申し訳ないじゃないか~……」


 中身が零れないように必死に腹を押さえつつ、青い顔で降参を宣言するトルトゥーラ。臓物こそ散らばってないけど、すでにシャレにならないくらい血が飛び散ってるんだよなぁ……。


「あ、終わりなの? やったー! リアたちの勝ちー!」

「うーん……何か不完全燃焼ね……」


 血塗れの短剣を握ったまま諸手を上げて喜ぶリア、そしていまいち納得行かない顔をしてるミニス。まあ何度か打ち合ったリアと違って、蹴り一発で出番が終わったからね。そんなに不満ならリアに任せず追撃すれば良かったのに……。


「やれやれ、末恐ろしい子供たちだね~……」


 一旦模擬戦が終わった事で魔法が解禁されたみたいで、トルトゥーラは自分で傷の治療をしてる。僕もリアに浄化の魔法をかけてみたら、問題なく発動して返り血が綺麗さっぱり消えた。ついでに床を汚してる血も消しておこう。清掃さんが大変だからね。

 しかしこの幼女コンビにやられるなんて、多少手を抜いてたとしても随分弱いな。確かに魔法による身体能力強化無しにしては動きはかなり良かったけど、あくまで良かった止まりだし。本当に闘技大会ベストエイト出場者? もしかしてシード権とかで入っただけじゃない? 考えてみればベストエイトに入ったとは言ってたけど、正確な順位は言ってなかった気がするし。


「……さて! 気を取り直して、次は君の番だ! 私に君の強さを見せてくれ~!」

「分かりました。お手柔らかにお願いしますね?」


 何にせよ、幼女コンビが勝ったんだから僕も勝たなきゃ示しがつかないね。でもトルトゥーラは真の仲間候補だし、適度にボコって終わりにしよう。間違っても喉を潰して降参を封じて、飽きるまでボコらないように気を付けないとね……。


「……なあ、クルス」

「ん? どうしたの、キラ」


 そうして僕が前に出ようとすると、今まで置物みたいになってたキラが声をかけてきた。しかも何かピリピリした感じの表情してる。どうしたんだろうね?


「……いや、やっぱ何でもね。精々頑張れよ」

「うん? うん……」


 でも何も言わないことに決めたみたいで、僕を軽く応援しただけで終わった。そして僕が予め預けておいた長剣を手渡してくる。魔法使えなくなりそうだったから一応先に出しておいたんだ、これ。

 しかし何だよ、気になるじゃないか。意味深な反応しやがって……よし、後で問い詰めよう。


「さあ、準備は良いかな~? 私はいつでも良いよ~? かかってきたまえー!」


 そしてまたしても笑顔で煽ってくるトルトゥーラ。お前さっき幼女にやられた癖にさぁ……。

 でももしかすると煽ってるわけじゃなくて、これが素の喋り方なのかもしれない。会った時からこんな感じだしね。まあ会った時からこっちを煽ってるってことも考えられなくも無いか。


「ははっ。それじゃあ――行きますよ?」

「来いっ!」


 例えどっちだろうと僕のやることは変わらない。だから剣を片手に深く腰を沈めて、一気に飛び出した。

 魔法が使えなくなっても、すでに僕の脳に刻まれた武器の扱いや身体の動かし方に関する記憶が無くなるわけじゃない。そもそもこれに関しては脳に焼き付けるところまでで完結してるし。相手もそこまで強く無いから、僕も魔法の強化無しでもそこそこやれるはず。そう思って一気に突貫したんだけど――


「え、消え――ぐぶっ……!?」


 いきなりトルトゥーラの姿がかき消えて、次の瞬間爆発したかと思うくらいの痛みが喉に走った。

 待って、何が起こったの? 滅茶苦茶喉痛いんだけど? これ喉に穴でも開いたんじゃない?


「アハハハハ~っ。油断大敵、だよ~?」

「おにーちゃんっ!?」

「あはははっ! ざまーみろおぉっ!」


 とにかく全力で後ろに飛んだ僕に対して、左の拳を突き出した体勢で不敵に笑うトルトゥーラ。位置とその体勢から察するに、どうも僕は拳で喉を潰されたっぽい。おいおい、まさか僕が考えてたのと同じことをやってくるとは……ポイントプラスニ十点。

 あと僕を心配するリアの声と一緒に、何かもの凄く嬉しそうな声が聞こえたんだけど……まあ、気のせいだよね?


「やっぱ実力隠してやがったか。嫌味な野郎だ」

「っ……!」


 気付いてたんなら言えよ! ってキラに言いたかったけど、声が出ない。穴こそ開いてなかったけど完璧に声帯を潰されたっぽい。それでいて頸椎とかにはダメージが無い辺り、狙った部位をピンポイントで破壊できる実力があるみたいだ。さっきまでの情けない姿は演技だったかぁ。演技力が高い、ポイントプラス十点。


「ん~? どうかしたのかい? まさか私があの子供二人にやられるほど弱く見えたのかな~? だとしたら仕込みは大成功だ~! 君は見事騙され、私の一撃を避けられなかった! あ~あ~、可哀そうに~。喉が潰れてしまって、これでは『降参』できないじゃないか~?」


 笑い方こそさっきまでと同じ純真で元気いっぱいな感じだけど、発言の内容があまりにも性格

悪いね。僕にこの一撃を叩き込むためだけに、わざわざ弱く振舞って自ら重傷すら負うなんて。

 でも実力を見抜けなかった僕サイドにも問題はあるんだよなぁ。そもそも強さとかいう曖昧な物は解析(アナライズ)でも調べられないし。


「ふふっ、驚いているね~? なーに、心配はいらないさ。代わりに私が降参してあげようじゃないか~。尤も、その前に私の遊びに付き合ってもらうがね~?」

「お、おにーちゃんに何するつもりなのー!? 酷い事したらリア怒るよー!」

「別に難しい事じゃないさ~。私の気が済むまで、私にいたぶられてくれればいいんだよ~。私は人を痛めつけるのが死ぬほど大好きでね~? 三カ月ぶりに何も知らないまっさらな新人が来てくれて助かったよ~。そろそろ我慢の限界だったんだ~」


 うわー、そりゃあ冒険者たちが恐れるわけだよ。絶対コイツ規則を破った冒険者に対して、罰則と称してフルボッコにしてたんだろうなぁ。そんなことしてたら強面の冒険者たちに恐れられるのも当然だし、新人だって来なくなるわ。

 でも人を痛めつけるのが好きとか言う趣味は僕と同じで素晴らしいね。ポイントプラス三十点。


「ひ、酷いっ! 離してキラちゃん! おにーちゃんを助けなきゃ!」

「いや、お前が行っても一瞬でぶっ飛ばされるのがオチだぞ。コイツお前らとやり合った時は滅茶苦茶手抜いてたからな」


 健気にも僕を助けようとしてくれるリアだけど、キラに首根っこ掴まれて止められてる。

 まあキラの対応が正しいかな。模擬戦の最中に邪魔したら、それこそトルトゥーラが罰則を与える理由にもなるし。


「……ちょっと、あんた」

「ん~? 何か文句でもあるのかな~?」


 なんて思ってると、ミニスが真剣な表情で一歩前に出た。もしかして助けてくれるつもりなのかな?

 迎えるトルトゥーラは朗らかな笑顔をしてるけど、すでに隠さなくなった闘気が全開だ。邪魔をするなら先に叩き潰すって言外に語ってるよ。暴力的だなぁ?


「ううん、全然。むしろ好きなだけ痛めつけてやって。できれば全身の骨を砕き割って、股間を蹴り潰した後去勢するくらいしてやってくれない?」

「君は、彼に何か恨みでもあるのかな~……?」


 うん、助けてくれるかもなんて期待した僕が馬鹿だったね。トルトゥーラが引くくらいには恨みや憎しみがこもってたみたいだ。一応僕はミニスとその妹の命の恩人なのに、その対応は無いんじゃない……?


「まあ良い。これで全ての準備は整った~。さあ、クルスくん。私とめくるめく苦痛に塗れた刺激的な時間を楽しもうじゃないか~?」


 これから暗い欲望を満たすことができるからか、トルトゥーラは上機嫌で言い放ってきた。尻尾も最初に見た時と同じく、ご機嫌にブンブン振られてる。やっぱり最初からこの展開になるよう色々考えてたわけね。なかなか悪辣な思考形態には好感が持てるよ。ポイントプラス十点。

 でも……その悪辣な行動を僕に対して実行した。ポイントマイナス無量大数。


「――そうだね。嫌ってほど楽しませてあげるよ」

「なっ――ぐぶっ!?」


 だから僕は笑ってそう口にした(・・・・)後、頸椎を砕き割る勢いで拳をトルトゥーラの喉元に叩き込んだ。



⋇可愛くて人懐こそうなワンコ少女と言ったな。アレは嘘だ。

⋇魔法が使えないのに負傷が治っている点については次回。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ