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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第6章:童貞卒業の時
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初めての冒険者ギルド

⋇みんな大好き冒険者ギルド(128話目にして初めて)






「お、見えてきたぞ。アレが冒険者ギルドかな?」


 第二回緊急会議をつつがなく終えた僕らは、その足で冒険者ギルドと思われる建物に向かった。何で場所知ってんのかと言えば、それはもちろんさっきの魔将とのお話を遠巻きに見てた野次馬に聞いたから。

 ちなみにこの街の建物はどこぞのウサミミ幼女のド田舎村と違って、素材全部が木製の建物じゃないみたいだね。どっちかっていうと石とかレンガ系の建物かな? でも個人的にはログハウスも赴きがあってなかなか好きだよ。

 あ、そうそう。旅の設定に関してだけど、最終的には『都会で一旗揚げるために田舎から出てきた悪魔と猫人、それについてきた兎人、道中で拾ったロリサキュバス』っていう感じになったよ。田舎から来たのは事実だし、何より田舎出身ならあんまり魔獣族の国のことに詳しくなくてもおかしくないからね。さすがにそんな辺境のド田舎のことまでは魔将も把握してないだろうし、良い感じの設定でしょ? ド田舎ド田舎連呼したせいで、ミニスがやたら不機嫌になったけど。


「よーし、これでようやくお約束を消化できるぞ。勇者っていう立場が堅苦しくて一刻も早く捨てたかったとはいえ、こんな大事なことをすっ飛ばしてたなんて情けないよ」

「お約束ってなーに、おにーちゃん?」

「いいかな、リア。こういう場所には荒くれ者がいるのが決まりなんだ。そしてそいつらは僕みたいな優男が冒険者になろうとすると、『ここはお前みてぇな奴が来る場所じゃねぇぞ。家に帰ってママのおっぱいでも飲んでな』的なことを言いながら絡んでくるんだよ」

「へー、ママのおっぱい……おっぱい!?」


 リアは僕の説明に対して、顔を赤くしながら自分の胸を隠すように両手で覆う。反応するのはそこかよ。そもそも出ないだろってツッコミはしないけど、飲めるほどの大きさは無いってツッコミたいね。まあしっかり出るようにするために突っ込むことはできるんだが?


「優男……? そんなのどこにもいないけど?」

「ここにいるだろぉ? この優しさ溢れる顔の作りをとくと見やがれ――おうっ!?」


 凄い怪訝な顔をしてくるミニスに間近で整った顔を見せつけてやると、無言のヘッドバットをかまされた。防御魔法を展開してるから平気とはいえ、飼い猫に手を噛まれたような気分だ。せっかく真の仲間になったのに、コイツ好感度低すぎない?


「……まあそれはさておき、絡んできた奴らを返り討ちにするまでがお約束ね。ぶっちゃけ冒険者になりたいわけじゃないけど、異世界に来たからにはお約束は果たさないと駄目でしょ? そういうわけでここに来たってわけ」

「ふーん……何か目的と手段が逆になってない?」

「んー、何の事かな?」


 すっとぼけてみたけど、確かに絡まれるために冒険者になるってのは何か違う気がするね。でも旅の新たな設定で都会で一旗揚げるって目的が加わったし、そのために冒険者になるっていうのは目的と言って差し支えない……いや、これも手段か? うん、良く分かんないから深く考えるのはやめておこう。


「でも、本当におにーちゃんに絡んでくるのー? リアなら絶対そんな命知らずな事しないよー?」

「僕の内面を知ってるお前はそうだろうけど、知らない人はこの面に騙されるんだよ。それに可愛い女の子三人も連れてるわけだし、嫉妬から絡む奴もいそうだね」

「えへへ、可愛い女の子ー」


 可愛い言われて気分が良いのか、嬉しそうに笑うリア。

 実際女の子三人も侍らせてるんだし、嫉妬から絡んでくる輩は絶対にいるはず。万が一いなかったら三人の唇を目の前で奪えばさすがに絡んでくるでしょ。


「可愛い……女の子……?」

「一応コイツも可愛い……と思う。中身はちょっとアレだけど……」


 ただミニスは喜ぶ以前に、キラが可愛い女の子に該当するのか凄い疑わしい目で見てたね。ぶっちゃけキラは普通に可愛いんだけど、頭の中に詰まってることがちょっとマイナス要素かな……。


「自分じゃよく分かんねぇけど、あたしも登録の時に絡まれたから可愛いんじゃねぇの?」

「あれ、もしかしてすでに冒険者やってるの? 聞いてないけど?」

「そりゃ聞かれなかったしな。つーか今まで聖人族の国にいたんだし、こっちの冒険者だろうと何だろうと関係なくね?」

「そういやそうか。でも冒険者ってことは、何か身分証明みたいなの持ってるってこと?」

「ああ、これだな。ほらよ」


 そう言って、キラは空間収納から取り出した小さなプレートみたいなのを投げてよこして――おい、何故手裏剣みたいに投げる。危ないな。


「ふーん。プレート、っていうよりドッグタグみたいだね」

「リアにも見せて見せて!」


 受け取った冒険者身分証明書――面倒だからドッグタグでいいや。ドッグタグは見た感じ鉄製だね。たぶん登録日を示したであろう数字と、Cランクっていう階級と思しきものが彫り込まれてる。あとは偽造防止なのかバーコードみたいなのも彫られてるね。

 もしや僕に分からないだけで、貨幣にも偽造防止の何かがあるのでは……?


「ていうかさっき絡まれたって言ったけど、絡んできた奴どうなったの……?」

「首へし折って殺した」

「うわぁ……」


 興味本位で聞いて後悔したのか、ドン引きしてるミニス。

 殺人鬼って正体がバレないよう、田舎とかの小さなコミュニティは避けてたとか言ってたけど、絡んできた男を即座に殺しておいてよくそんなこと口にできるな……というかそれ問題にならなかったのかな? 


「Cランクってあるけど、ランクって全部で幾つあるの? 五つか六つくらい?」

「知らね。ていうかもう覚えてねぇよ。それ使ってたの何年前だと思ってんだ」

「だよねぇ。免許ならもう更新期限とか切れてそう……」


 キラが冒険者の先輩なら色々聞きたいことがあったんだけど、この様子じゃ何聞いても覚えてないだろうな。どこぞのショタ大天使との戦いの時といい、言っちゃ悪いが肝心な所で役に立たないな……。


「まあその辺のこともギルドで聞けば良いかぁ。よーし、それじゃあ行くぞ! ついてこい、野郎共!」

「おーっ!」

「野郎はあんたしかいないんだけど?」

「これまだ使えんのか……?」


 気合を入れるために声を上げてみたのに、続いてくれたのはご機嫌なリアだけだった。本当にコイツらノリ悪いな。この際男でも良いから、ノリが良くてツッコミもできる仲間が欲しいなぁ……。

 そんなことを考えながら、僕らは冒険者ギルドへと足を運んだ。さあさあ、異世界もののお約束を頼むぞ、荒くれ者ども! 僕を失望させるなよ!?






 冒険者ギルドの扉を開けると、扉に取りつけられてたベルがカランカランと鳴った。何となくベルに一瞬視線を向けつつ中に入ると、そこに待っていたのは正に異世界ファンタジーの光景だ。

 武器を携帯した筋肉ムキムキの大男や、ローブを着た魔術師っぽいのとかが、併設されたバーで真昼間からお酒を飲んでる光景。そしてそいつらがドアベルに反応して、こっちを見定めるような目で見つめてる。そんなに見るなよ、照れるじゃないか。

 冒険者ギルド部分には、何か依頼っぽい紙がいっぱい張られた掲示板があるね。そして受付には美人の受付嬢が――あっ、やべ。


「ようこそ! 冒険者ギルド、ルスリア第二支部へ!」

「あっ、サキュバスだ! ころ――うぎゅっ!?」


 美人の受付嬢――もといサキュバスがにっこり微笑みかけてくるのを尻目に、隣で今にも飛び掛かりそうな反応をしたリアの首筋に手刀を落とす。

 ちょっと骨が砕ける感じの手応えが伝わってきたけど、治せるから問題なし。さすがに魔法が万能でも犯した罪とかは消せないからね。リアには必要な犠牲と割り切って貰おう。


「すいません、ちょっとタイムでーす」

「えっと……お騒がせしました」


 そうしてぐったりと動かなくなったリアを脇に抱えて、ギルドを出る。無言で続くキラと違って、ミニスの奴はぺこりと頭を下げてたよ。律義な奴だなぁ?

 ていうか僕の異世界でのお約束が、初っ端からぶち壊された気がする……何で僕が保護者みたいなムーブしないといけないの……?


「――もーっ、おにーちゃんの馬鹿ぁー! 首がすっごくズキってしたよー!」


 ギルドを出てその辺の路地裏に移動して、どうにも首の骨が折れてたリアに蘇生と治療を施した後。何故か僕はリアにぷんぷん怒られてた。怒りたいのはこっちだぞ? というか勢い余って首の骨砕いたのに、ズキってしたで済むのか……。


「いや、ごめん。でもお前も悪いんだぞ。いきなり受付嬢を殺そうとするとかそれはお約束じゃないからね?」

「えーっ? だってサキュバスなんだよ?」

「後でたっぷり殺させてあげるから、今は我慢してよ。このままじゃ絡まれる以前の問題じゃないか」

「うー……分かった、我慢する……その代わり、後でいっぱい痛めつけて苦しめても良い?」


 なんてとても恐ろしいことを、上目遣いで可愛らしくお願いしてくるリア。見た目は滅茶苦茶愛くるしいのに、内容がとんでもなくぶっ飛んでるよ。でもこのぶっ飛び具合が良いんだよなぁ……。


「もちろん。我慢を強いるんだからご褒美が無くちゃね。精神が壊れようが死のうが僕が元通りにしてあげるから、満足するまで好きなだけ拷問しなよ」

「やったぁ! おにーちゃん大好き!」

「あっはっはっ。よーしよしよし、リアは良い子だなぁ?」


 感極まったように抱き着いてくるリア。そうして僕のお腹の辺りに頬ずりをして――痛い痛い、角が刺さる!


「あたしもお前のこと大好きだぜ、クルス?」

「うんうん。お前の好きは絶対一般的な意味じゃないし、背後を取られてて何か鳥肌立つけど、まあ良し!」


 そして何故かわざわざ僕の後ろに回って、死神の抱擁みたいに静かに抱き着いてくるキラ。背筋がぞっとしたけど、背中に触れる確かな膨らみの柔らかさがあるから差し引きプラマイゼロかな。でも死体の瞼を下ろすみたいに瞼を撫でてきたからすぐマイナスに傾いたよ。


「なに? この……なに?」


 まだ真の仲間になったばっかりのミニスは、とっても仲良しな僕らを前にして、理解できないものを見るような目をして引いてた。

 大丈夫! その内お前も理解できるようになるからな! 朱に交われば赤くなる、って言うしね! お前もいつかこっち側に来るんだよぉ!





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