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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第6章:童貞卒業の時
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第二回緊急会議

⋇面子が若干変わった緊急会議






 結局リリスは今日の所はお仕事に集中するみたいで、保健体育のお勉強は明日からになった。去り際にリアがお友達にするみたいにぶんぶん手を振ってさよならしてたけど、一応向こうは偉い人なんだからね? 本当はそんな気安く親しみを込めた感じで接しちゃいけないんだよ?

 あとレタリーが何度も僕に頭を下げて、滅茶苦茶謝ってきたのは好印象だね。ちゃんと自分の非を認められるのは素晴らしい事だよ? だから許しはしたけど、相手の話はちゃんと聞くように、ってしっかり言い含めておいたよ。さすがにあんなに話を聞いてもらえなかったのは初めてのことだったからね。わりと毎回話をぶった切られてるレーンもこんな気持ちなのかなぁ……たまには少しだけ話を聞いてあげるかぁ。主に僕が寝付けない時とか。


「はーい、それじゃあ第二回緊急会議を始めまーす。とりあえず座って座って」


 何にせよ魔将との接触っていう一大イベントを乗り越えた僕は、あの二人が去った後即座に秘密のお話用の結界を展開した。もちろん椅子代わりに死体をバラ撒くのも恒例行事だし、何の躊躇いも無く腰を下ろすキラもお約束って感じだよね。リアもちょっとだけ躊躇いを見せるけど、本当にちょっとだけだし。


「ちょっ!? し、死体を椅子代わりにしろとか正気!? 頭おかしいんじゃないの!?」

「はい。そんなどこかのツッコミ役みたいなこと言う君には、この椅子をプレゼントだ」

「うわっ……!? 誰が座るかこんな変態的な嫌らしい椅子!」

「えっ、どの辺が変態的で嫌らしいのー?」


 せっかく椅子(イボイボつきのぶっといやつが二本そそり立ってるアレ)をプレゼントしてあげたのに、ミニスは顔を真っ赤にしてそれをひっくり返す。リアは相変わらず何も分かってない感じなのに、この反応……どうやらミニスはちゃんと分かってるみたいですねぇ?


「やっぱりレーンよりキレがあるね、君。そんな君には普通の椅子をプレゼント」

「……これ、本当に普通の椅子……?」


 座面を触ったり裏から覗き込んだりして確認する所もまたレーンっぽい。何だか微笑ましいね。まあ結局ミニスはその普通の椅子にも座らず、地べたに座り込んだんですがね。せっかく用意してやったんだから座れや!


「はい、じゃあお約束も終わったところで真面目な話ね。今回は関わるつもりがなかった魔将にまさかの理由で関わっちゃいました。いや、本当にびっくりだよ。まさか一般魔獣族に扮してるのに関わることになるなんてさ。しかも街に入って五分も経ってないのに」


 聖人族の国では勇者っていうクソ面倒な立場があったから、お偉い大天使との接触はほとんど避けられなかった。でも魔獣族の国では僕は一般市民みたいなもの。だから面倒な権力者と会う機会なんて早々ない……と思ってたのになぁ。まさかこんな街に入ってすぐ接触するとは思わなんだ。


「だな。あたしも魔将が向こうからやってくるなんて思わなかったぜ。しかもリアそっくりな奴。やっぱお前といると退屈しねぇな?」

「今回は僕関係無いと思うなぁ……にしても、本当にそっくりだったよね」

「確かにね。双子か何かかと思うくらい似てたわ」

「うん、リアもびっくり……」


 魔将と接触したのも驚きだけど、やっぱり一番の驚きはその外見がリアそっくりだったってことだよね。まああっちが大本なんだから、正確にはリアがリリスに似てるってだけなんだろうけど。

 正直リアがリリスに似てなかったら魔将との接触はなかっただろうから、完璧に偶然なんだよね。あるいは運命の女神の悪戯? いや、僕の女神様は悪戯でそんなことする人じゃないか。むしろ女神様に悪戯したいわ。


「まあ過去は変えられないし、接触しちゃったものはしょうがない。早々に諦めて、今後の旅の設定を練り直そうか」

「えっ、練り直す必要なんてあるのー?」

「あるよ。お前は何か年の近い友達みたいに接してたけど、相手は魔獣族の中でも滅茶苦茶偉い奴だぞ。調べようと思えば、僕とキラが工作員じゃないかどうかくらい簡単に分かっちゃうからね?」

「なるほどー。それは確かに大問題……」


 納得した様子を見せながら、何度もこくこくと頷くリア。

 相手がド田舎の一般愚民なら今までの設定で良かったよ? 国の工作員だ、って言ってもそれを調べる術がないだろうし。警察手帳見せられても一般市民じゃそれが本物かどうか分からないのと同じだね。

 ただ今回の相手はこの街の支配者でもある魔将。見た目ただの合法ロリサキュバスだけど、国境に一番近い街を任せられてるとんでもなく偉い奴。向こうが調べようと思ったら、僕とキラみたいな工作員なんていないってすぐにバレるよ。だから今までの設定は使えないってわけ。


「まあ口裏合わせがちゃんとできれば、これはそこまで問題ではないかな。厄介なのは他にデカい問題があるってことだよ」

「そんなに深刻な問題なんてあった?」

「あるよ。さっきは何故か仲良さそうに話してたけど、本当ならコイツはサキュバスを見かけたら肉片になるまでひたすらに短剣でグチャグチャにするような奴だぞ。そんなコイツを他にもサキュバスがいっぱいいそうな城に送り出すんだぞ。お前何も起こらないと思ってるの?」

「あぁ……」


 首を傾げたミニスにそう指摘すると、途端に遠い目でリアを見る。

 初めてサキュバスを殺した時のリアはその興奮がなかなか冷めなかったみたいで、僕だけじゃなくてミニスにもその時の様子を話してたからね。しかも嫌になるくらい何度も何度も繰り返し。ミニスの疲れたような顔はたぶんそれを思い出したんじゃない?

 あとリリスから明日お城に来て欲しいって言われたんだけどさ、仮にもサキュバスの女王が住む城だよ? そりゃあサキュバスがいっぱいいるのは当然でしょうよ。きっとメイドもサキュバスだぜ。僕は凄く行ってみたいけど、リアを向かわせるのは不安しかないよ。


「そういやお前、何でさっき襲い掛からなかったんだ? 目の前にいたのはサキュバスだぜ?」

「んー……何だろ。すっごくリアに似てたからかな? 他人って気が全然しなかったんだー。それに、とっても温かくて優しかったから、あんまり殺したいとは思わなかったの」

「あんまり、ってことはちょっとは殺したいって思ったって事……?」


 キラに尋ねられてそう答えたリアに対して、ミニスが若干引き気味になる。

 この様子だとリリスとのお勉強自体は大丈夫かな。問題はリリス以外のサキュバスと接触した場合なんだが……。


「さっきの魔将――リリスはともかく、他のサキュバスに会ったら襲い掛からない自信ある?」

「……ある、よ?」

「おい、せめてこっち見て答えろ」

「これはやるわね。絶対やる気よ」

「良いじゃねぇか、やらせてやれよ。我慢は身体に毒だぜ?」


 僕の問いに頷きつつも、リアはふいっと視線を明後日の方向に逸らす。ミニスが言う通り、これは絶対に殺りますね。あとキラさん、面白そうにヘラヘラ笑うのやめてください。


「うーん。どうするかなぁ、これ……もういっそのこと、記憶処理でもしとく? お前が村で受けた苛めとかその他の記憶を一旦消せば、サキュバスを襲う理由も殺意も無くなるよね?」

「……何か記憶処理とかヤバそうな感じするけど、特に負担とかは無いわけ?」

「負担は特に無いけど、記憶戻した時に嫌な記憶を全部追体験することになるんじゃないかな」

「負担とかそういうレベルじゃないわよ、それ! この外道! 人でなし!」

「やー! リアの頭の中弄らないでー!」

「えー? わがままだなぁ……」


 容赦なく罵倒してくるミニスと、頭を両手で押さえてぷるぷる震えるリア。

 実際一番簡単な対策はそれだから、できれば有無を言わさず強行したい。でも記憶を弄るのってだいぶ繊細な作業になるから、正直かなり面倒くさい。それに真の仲間であるリアがこれだけ嫌がってるのに強行するのもちょっとねぇ……。


「……なぁ。リアが城に行くのって明日だろ? だったらいっそ、今日の内に一回思いっきり殺させてやれば良いんじゃね? それでしばらくはサキュバスを前にしても平静を保てると思うぜ」

「なるほど、いっそのこと。そいつは名案だね。さすがは定期的に殺人をしないと具合が悪くなるヤベー奴だ」


 椅子にしてる女の子の死体の胸を手慰みに揉みながら頭を悩ませてると、殺しに関しては一家言あるキラが名案を出してくれた。確かにどうしても我慢できないなら一発ヤっておくのは賢い選択だ。賢者になれば明鏡止水の心を持てるのと同じだね。


「えっ!? サキュバスを殺させてくれるの!? 本当に!?」

「他の場面でサキュバスを前にしても、襲いかかったりしないって約束できるならね。どう、約束する?」

「うん! 約束する! 約束するから、リアが満足するまでご主人様の力を貸してね!」


 とっても嬉しそうに、純真無垢な笑みを浮かべてはしゃぐリア。まるで穢れを知らない幼女みたいな反応してるけど、これからサキュバスに好きなだけ憎悪をぶつけられるってことに喜んでるんだよなぁ……これ一種の詐欺では?


「いいよー。僕もオカズが欲しいし、幾らでも手を貸してあげるよ」

「おい、やる時はあたしも呼べよ? お前ら二人だけで楽しもうなんてずるいぜ」


 何かが琴線に触れたみたいで、死体の椅子から立ち上がったかと思えば上機嫌で僕にベタベタしてくるキラ。別にベタベタするのは良いんだけど、目の辺りを嫌らしく撫でてくるのやめてくれませんかねぇ。怖い。


「もうやだコイツら……全員頭おかしくて狂ってる……」


 そんな僕らの姿を眺めてたミニスは、頭を抱えて泣き言を零してた。まあただの村娘だし、特に変な性癖も無いみたいだし、僕らに馴染めないのはしょうがないよね。ここは一緒に人殺しをして仲を深めるのが得策なのでは?




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