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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第6章:童貞卒業の時
126/527

魔将リリス


名前:レタリー

種族:魔獣族(悪魔族)

年齢:527歳

職業:秘書

得意武器:槍

物理・魔法:6対4

聖人族への敵意:大

魔獣族への敵意:無し



 ふむふむ、これが秘書のババアことレタリーの情報か。やっぱりババアだし、やっぱり秘書じゃないか。まあ自分で魔将の右腕って言ってたしね。あるいは僕が秘書認定したから、解析(アナライズ)に影響が出たのかも。

 あ、そうそう。いつもと解析(アナライズ)の項目が若干違うのは、ド田舎でやった魔法の改良の結果だよ。職業を戦闘に関する職業じゃなくて一般的な職業に変更して、あとは武器の項目を追加して最も得意な武器が分かるようにしたんだ。ぶっちゃけ使う武器さえ分かれば、剣士だの格闘家だのの職業は調べる必要も無いしね。

 そして物理・魔法って項目は、戦う時にどれくらいの比率で魔法を使うのかっていう割合。この世界の魔法って滅茶苦茶自由度高いから、これが分かると有難いよね。ただこればっかりはあくまでも目安で、物理には武装術も含まれてるから、プラスマイナス二くらいは上下しそう。参考にする程度が一番良さそうだね。

 さて、解析(アナライズ)によるとレタリーは槍を用いる魔法剣士系ってところかな? じゃあ僕はどんな武器使おうかな。愛着の湧いた短剣でも良いんだけど、さすがにちょっと飽きてきたんだよなぁ……。

 というかさ、レタリーのタイトなスカートから覗いてる長い尻尾。微妙に太めで肉厚で、何かちょっと美味しそうなんだよね。あれ焼いて食べてみたいなぁ。人間相手なら倫理的に駄目だろうけど、相手は悪魔だからカニバリズムにはならないだろうし……となるとあの尻尾を切り落とす必要があるわけだから、ここはオーソドックスに長剣で行くか。


「仕方ないなぁ。まあ僕は優しいから、腕の一本くらいで勘弁してあげるよ。悲しい擦れ違いだって分かってるからね」

「戯言を……」


 空間収納から長剣を取り出して構えつつ、あたかも腕を狙いますよ的な発言をしてミスリードしておく。まあ正当防衛みたいなものだし、殺さなきゃきっと許されるでしょ。少なくとも魔将がそこまで心が狭くないことを願おう。

 あ、ちなみに今僕が握ってる長剣はゼロから創ったやつじゃなくて、今までに殺した誰かが持ってたやつだよ。最近ちょっと魔法無効化を使う魔将に痛い目見せられたから、その反省として魔法で創った武器を使うのは止めたんだ。一応破壊不能にしたり切れ味増したりとかの魔法はかけてあるから、そこまで使いづらくは無いんだけど……やっぱり元は他人の物だからか、いまいちしっくりこない感じがするね。僕も鍛冶屋とかで自分にピッタリのものを作ってもらおうかな?

 とにもかくにも、血沸き肉踊るバトルの時間だ。尻尾を切り落として蒲焼きにしてやるぜ!


「――止まって、レタリー。これは貴女の誤解」

「はっ……?」

「うわっ」


 とか考えつつ突撃のために腰を沈めた瞬間、空から僕とレタリーの間に小さな人影が割って入った。間に合わなかったことにして諸共切り捨てようかと一瞬思ったけど、その姿があんまりにも予想外で僕は思わず転びそうになっちゃったよ。向こうでレタリーも目を丸くしてるし。


「り、リリス様が……二人?」


 困惑した感じの呟きから察するに、仲裁に入ってきたのは魔将リリスなんだろうね。で、何でまだ勘違いを継続してるのかっていうと、それも仕方ないくらいリアに似てるんだよ。ピンクの長い髪に黒のゴスロリ服。デカい角にデカい翼、長くて先の尖った尻尾、そしてロリにしてはそこそこ良い身体。これは間違えても仕方ないってくらいにね。

 ただ比べて見ると角とかはリリスとやらの方が大きいし、何か形状もちょっと刺々しい感じ。あと瞳の色も同じピンクなんだけど、リアが丸っこい瞳なのに対してこっちは細めのエッチな目付きしてるね。そのせいか見た目はどう見てもロリなのに、途轍もない色気を感じてしまう……。


「ボクが本物のリリス。その子はよく似てるけど、別人。全部、貴方の勘違い」

「そ、そうだったのですか……しかし、これほど似ていて赤の他人とは……」


 リリスに諭されて、レタリーはすぐさま槍をしまう――って、待て待て待て。まさかのボクっ子ロリ? それに声色もどっかの誰かを思い出すような平坦な感じだし、クール系ゴスロリボクっ子ロリ? それに滅茶苦茶リアに似てるし、レタリーの発言から察するに種族はサキュバスだろうから、クール系ボクっ子ゴスロリロリサキュバス? ちょっと属性盛りすぎじゃね? とにもかくにも、まずは解析(アナライズ)


「まずは自己紹介。ボクはリリス。リリス・アィーアツブス。このルスリアの街を統べる魔将にして、サキュバスたちの女王」



名前:リリス・アィーアツブス

種族:魔獣族(魔将:サキュバス・クィーン)

年齢:2183歳

職業:領主

得意武器:鞭

物理・魔法:3対7

聖人族への敵意:極大

魔獣族への敵意:無し



 うーん、ツッコミどころが多い情報だ。苗字がクソ言いにくいし、見た目ただのエッチな合法ロリサキュバスなのに、種族はまさかのサキュバス・クィーン。それって普通はもっと、こう、バイーンでボイーンな身体してるもんじゃないの?

 ていうか前の竜人魔将の時にも思ったけど、どうも魔将の種族は悪魔に限らないみたいだね。女神様は聖人族の方は人間と天使しか創らなかったし、魔獣族は多様性が売りなのかも。でも竜人は国境の砦にいたあの魔将しか見てないんだよなぁ。もしかしてアイツ、処女だったのでは……?

 

「――お初にお目にかかります、リリス様。私はクルスと申します」


 色々考えてたけど、まずするべきことは目上の人に対する態度を取る事。だから僕は長剣を空間収納に放って、その場に跪いて頭を下げた。一応キラとミニスも僕の後ろに来て、同じように跪く。こういう態度取らないといけないから、関わりたくなかったのになぁ……。


「畏まった態度は必要ない。クルス、ボクの部下が迷惑をかけて、本当に申し訳ない。必要とあらば、身体を使って謝罪する」

「少々心惹かれるものがありますが、必要ありません。さすがにこれは勘違いしても仕方ないので……」


 何か身体で支払う的なことを言ってきたリリスだけど、さすがにどう考えても処女じゃないだろうから丁重にお断りしておいた。とりあえず跪くのだけはやめておいたよ。石畳の上で跪くとか膝痛くなるしね。

 それに実際勘違いするのも仕方ないし。だってコイツ、マジでリアに似てるんだもん……。


「はわー……」


 とてとてとレタリーの後ろから歩いてきたリアが、目を丸くしてリリスを見てる。それに気づいたリリスはリアと向かい合って、お互いに鏡合わせみたいな状態だ。双子丼……いや、何でもない……。


「やはりこう見ると、本当にリリス様とそっくりですね……」

「種族の大本なんだからリアにも同じ血が入ってるんだろうけど、ここまで似るものなの……?」

「実は孤児で、こっちが本当の母親とかなんじゃね?」


 僕以外もみんな同意見みたいで、驚いたり隠し子説を推したりしてる。ちなみに僕は偶然説、あるいは隔世遺伝説を推そう。

 というか、リアの奴、特に敵意も殺意も振りまいてないな。目の前にいるのはにっくきサキュバスの始祖だっていうのに。あまりにも自分と似てて、なおかつ背格好もほぼ同じせいで、親近感の方が強いのかな? まあここで魔将に襲い掛かったら後ろの秘書に即処刑されそうだし、有難い誤算だね。


「……君、名前は?」

「え……フェリア……」

「フェリア……君はもしかして、身体が成長しない?」

「え!? な、何で分かるの!?」

「ボクはサキュバスの女王。年齢と経験の有無くらい、少し見れば分かる」

「え、何それ怖い……」


 とんでもないことを口にしたリリスに、僕はさりげなく股間を押さえる。何が怖いって、特に魔法を使った様子もないってことだよ。僕だって魔法使わないと分かんないのに、とんでもない観察眼だな……。


「サキュバスは少し、排他的な所があるからね。血が濃くなりすぎて、昔はよく君みたいな子が生まれたんだ。そういう子はボクの従者となるべくして、大切に育てられていたんだ。君みたいな子、久しぶりに見たよ」

「……リアは、大切になんてされなかったよ? いっつも虐められて、ママにも無視されて、誰も守ってなんてくれなかったよ?」

「あ……ごめん。まさか、そんな風に扱われてる子がいるなんて……」


 懐かしそうに語ってたリリスは、突然闇を垂れ流し始めたリアに戸惑い交じりの悲痛な面持ちを浮かべた。そりゃ昔を懐かしんでたら突然シャレにならない重い過去でぶった切られたようなもんだからね。戸惑うのもやむなし。

 しかしこの反応、もしかして同じサキュバスであろうと大本のリリスは案外まともなのかな? となるとリアへの仕打ちは辺境特有の謎の価値観や風習のせいなのかもしれないね。


「リアの育った場所は相当な辺境にあるようですから、独自の価値観が生まれていても不思議ではないでしょうね。私がこの子を見つけた時も、そこらの野良犬の方がまだ見た目も健康状態もマシなほどでしたから。聞くところによると性知識も一切教えられていないようですし」

「そう……」

「酷い話ですね。自分の子だというのに、成長しないというだけでそんな真似を……」


 リアの悲惨な過去を伝えると、リリスとレタリーの顔には哀れみが浮かぶ。

 ちなみにリアをどこで見つけたのかは口にしてないから、嘘は言ってない。騙すコツは適度に真実を織り交ぜるか、そもそも嘘を吐く必要が無い事柄に誘導することだね。

 

「……リア。君さえ良ければ、ボクがサキュバスとしての知識を教えてあげる」

「えっ!? ほ、本当!?」


 そしてここでまさかの提案。これにはリアも期待に目を輝かせてるよ。何も教えてもらえなかったリアがじっくりと教えてもらえるんだから無理もないね。ましてや教えてくれるのは全てのサキュバスの母みたいな存在だし。


「もちろん。ボクは君のような子たちに、とてもお世話になった。いっぱい優しくしてもらった。だから、その恩返しのようなもの」

「やったー! おにーちゃん、ついにリアも大人の階段を登れるんだって!」

「ハハハ、良かったね」

「うん! やったー!」


 わくわくした表情でそう言ってきたから頭を撫でてやると、喜びが爆発したかのように諸手を上げてはしゃぎまわるリア。実年齢はニ十歳だけど、やっぱ子供っぽいんだよなぁ……これは肉体に引っ張られてるのか、それとも育った環境のせいで精神が成熟してないのか……。

 なんてことを考えてると、はしゃぐリアを尻目にリリスが僕の服の袖をクイクイ引っ張ってきた。何だよ、その慎ましく可愛らしい所作は……。


「……もちろん、教えるのは知識だけ。実践の役目を君から奪ったりはしない」

「どうして私がリアで童貞捨てる前提のお話をしていらっしゃるんです……?」


 何となく内緒話がしたいんだと分かってしゃがむと、耳元で非常に偏見のある言葉を囁かれた。どうせチェリーだってことは見抜かれてるとはいえ、自分で童貞言うのは何か辛いものがあるね……。


「……捨てないの? サキュバスの女王が直々に性知識を教えたサキュバスを相手にできるなんて、そうそうない事なのに」

「……その、だいぶ失礼なことを言ってもよろしいですか?」

「許す」

「本当にサキュバスの女王なんですか? 何というかサキュバスの女王って言ったら、もっとこう、砂時計みたいな体型を思い浮かべるんですけど……」


 解析(アナライズ)でちゃんとサキュバス・クィーンって分かってるから、別に疑ってはいない。でも普通そういう風に調べられない一般人からすれば、ナイスバディのサキュバスたちの母と言えば、もちろんナイスバディってイメージがある。実際僕もそうだしね。だから凄い失礼だけどとりあえず聞いてみたってわけ。


「ふぅん?」


 僕の疑問にリリスはニヤリと笑う。そうして妙にエッチな笑顔を浮かべたまま、僕から僅かに距離を取る。そのまま自分の大きな翼で身体を隠したかと思えば、覗き込むようにまたエッチな目を向けてきて……何だろうね、この誘われてるような感覚。襲っても良いってこと?


「……それは、こんな感じ?」

「なん……だと……?」


 僕がちょっとムラムラしてると、リリスはカーテンを開くように自分の翼を払って姿を現した。別人と入れ替わったとしか思えないほど、スタイル抜群な大人の女の姿でね。ゴスロリ衣装もそれに合わせて露出が多くて生地が薄めのドレスみたいになってるし、さすがにこれには僕も驚きを隠せなかったよ。


「子供は無限の可能性を秘めたダイヤの原石。スレンダーな美女にも、ナイスバディな美女にも成長できる未来がある。無限の可能性を秘めたボクは、どんな姿にだってなれる」


 そう言いながら、リリスは自分の翼を試着室のカーテンみたいに使って、次々と色んな姿を披露してく。細身でショートカットなボーイッシュな女性にも、無駄に筋肉質なワイルドな女性にも、そしてロリ巨乳にも。

 これは凄い。髪の色とか目の色までは変えられないっぽいけど、あらゆる男のニーズに応えられる万能性があるぞ。さすがはサキュバス・クィーン。しかも一切魔法を使ってないんだからもう脱帽だ。たぶんこれは種族特有の変身能力なんだろうね。


「す、すごーい! リアもそれできるの!?」

「……いや。残念だけど、これはボクだけの能力」

「あ……そっか……そうなんだ……」


 やっぱりそうだったみたいで、自分にはできないことが分かったリアは途端にがっくりと肩を落とした。めっちゃ期待に目を輝かせてたのに無理とあっては、落差がかなりキツイね。

 しゅんとしてるリアの姿に胸が痛んだのか、リリスは元の姿に戻るとリアの頭を優しく撫でた。いや、変身能力があるなら本当にこれが元の姿かは分かんないけどさ。


「……君はこの能力を使えないけど、代わりにボクが知り得るありとあらゆる性知識を教えてあげる。その全てを覚える事ができれば、君はとても凄いサキュバスになれる。辺境のサキュバスなんて目じゃない」


 そして代わりに提案してきたのはさっきと同じ、サキュバスの女王による性知識のお勉強。

 これは僕としても滅茶苦茶助かるね。何だかんだでリアは決定的に性知識が無いし、かといって一から教えてあげるのも凄く面倒くさいし。リリスが教えてくれるって言うなら僕に反対する理由は無いかな。リアもまた期待に瞳を輝かせてるし。


「本当!? リア、アイツらなんかよりも凄いサキュバスになれるの!?」

「もちろん。ボクが保証する」

「やったー! よーし! リア、お勉強頑張るよ!」

「その意気。それじゃあ早速、お勉強の時間――」

「――は後にしてください。仕事が溜まっているんですよ、リリス様?」

「あぅ……」


 意気込むリアと慈母の如き笑みを浮かべるリリスに対して、妙に迫力のある笑顔を浮かべて指摘するレタリー。途端にリリスはさっきのリアみたいにしゅんとしちゃったよ。どうやらリリス様はお仕事がお嫌いなご様子だねぇ?




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