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悪逆非道で世界を平和に  作者: ストラテジスト
第1章:異世界召喚
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選抜式

 異世界召喚二日目、僕は窓から差し込む朝の日差しで目が覚めた。

 寝込みを何者かに襲われたりしないよう、寝る前に考えられ得る限りの魔法で対策はしておいたけど、特に何事も無く朝を迎えられたっぽい。女暗殺者とか来たら正当防衛だしくっころ展開に引きずり込んでやろうと思ったのになぁ。まあ現状で僕が勇者なんかじゃないってことが分かってるのは、レーンとハニエルの二人だけだから要らぬ心配だったかもしれないね。残念。

 今日の僕の予定はハニエル曰く、旅の仲間を選ぶ選抜式。欲を言えば、というか色々と始末が面倒だからレーンとハニエルだけでもいいんだけど、立派な勇者様らしく振舞うことを考えると女の子二人だけはさすがにマズイと思う。それに三人パーティっていうのも、勇者パーティにしてはちょっと物足りない感じがするし。

 だから人数はあの二人を含めて三人から五人くらい。その内一人か二人くらいが男なのが理想かな。ぶっちゃけむさ苦しい野郎はいらないんだけど、世間体とかその辺を考えると僕以外に一人くらいは男がいないとね?


「旅立ちの日に相応しい素晴らしい朝だな、勇者よ。だが幾らそなたが勇者であろうと、たった一人では邪悪の化身たる魔王を討伐することなどできぬ。故に必要なものが何か、分かるな?」

「もちろんです。背中を預けられる信頼のおける仲間、ですね」


 また玉座の間に案内された僕は、玉座に偉そうにふんぞり返った王様のどうでもいい話に適当な綺麗事をほざいておく。

 勇者に被害者面して、魔獣族を討伐させようとしてるこっちの方が邪悪じゃないかな? この世界の魔王がどんなもんかは知らないけどさ。


「うむ、その通りだ。勇者よ、ここに我が国自慢の強者たちと魔王討伐の志願者を集めた。そなたが信頼できると思った物を数人ほど選ぶが良い。皆の者、面を上げよ」


 満足気に頷いた王様が大仰に命じると、僕の背後から衣擦れや……鎧擦れ? の音が幾つも聞こえる。振り返ればそこには何十人もの人間と天使が並んで立っていた。

 というか玉座の間に案内された時からいたんだよね。むしろこの状態で王様の問いに仲間以外の答えを返すのが難しいよ。でも最初に囮とか捨て駒とか肉盾とか、色々考えたのは否定しない。


「ふむ……」


 これからの行動に影響する大事なことなので、しっかりと彼らを観察していく。

 縦に五列、横に六列くらいに並んだ、どこか強そうな感じのする人たちだ。ローブを着込んだ魔術師風の人だったり、鎧を着た剣士っぽい人だったり、逆に見た目からは職業的なものの判別が難しい人も何人かいる。もちろん待望の女の子もいたよ。よくよく見れば後ろの方にハニエルとレーンもいるね。

 とりあえずあの二人は確定として、あと二人か三人くらい欲しいなぁ。できればその内の一人が男で。さてさて、それじゃあ確認させてもらいますよ。


「ふむふむ、なるほど……」


 そうして僕は最前列の人から順に解析(アナライズ)で色々と調べていく。

 数人調べた辺りでいちいち情報を指定し直すのが面倒になったから、予め決まった情報を調べる解析・壱アナライズ・ファーストという新しい魔法を創って、以後はそれで調べていった。

 この世界の魔法は凄く便利だけど、一度イメージが染み付いたりすると払拭するのが難しそうだなぁ。解析(アナライズ)にしたって新しい魔法を作らずに何度も同じことを調べてたら、イメージが染み付いて他の事が調べられなくなる可能性もあるし。

 イメージは魔法の中核みたいなものだから、やっぱり色々と気を付けた方がいいかもしれないね。僕の目的を果たすためにも魔法は絶対に欠かせないものだし、なおさら気を付けないと。


「決まりました、王様。あちらの銀髪の女性と、緑の髪の天使様。それからそちらの赤髪の女性と、茶髪の男性を選びます。ただできることならば人柄なども知りたいので、別室で面接などさせて頂いてもよろしいですか?」


 そんなこんなでレーンとハニエル以外の人たちの情報を確認していった結果、ちょっと興味深い奴が二人ほどいたから、その二人を加えて四人を選んだ。

 でも情報を確認しただけで人柄とか性格とかは一切分かってないから、まずはタイマンで話して確かめてみたい。性格の合わない奴と旅なんかしたらイライラして速攻で殺しちゃいそうだからね。いや、もちろんできる限り自制はするつもりだよ?


「うむ、許可する。長くかかりそうであるから、余は席を外させてもらうぞ。旅の仲間が決定したならば、城の者に伝えるがよい。それでは勇者よ、健闘を祈る」


 あ、これもう王様は顔を見せないパターン? 勝手に異世界から呼び出して、勇者だとか何とか言って魔王を倒すための旅に出す癖に、ちょっと誠意が足りなくない? 

 でも実際この世界の勇者なんて使い捨て兵器みたいなものだから仕方ないか。そもそも僕は勇者じゃないし。でも軍資金くらいは寄越せやオラァ!


「はい、必ずやこの世界に真の平和をもたらして見せましょう」


 色々とムカっと来たから、ちょっと意味ありげな答えを返しておく。

 尤もこの場で本当の意味を理解できたのはレーンだけなんだろうけどね。ハニエルにはまだ真の目的を伝えてないし。


「うむ。期待しているぞ、勇者よ」


 偉そうに頷いて、供を引きつれてそのまま歩き去っていく王様。

 後に残されたのは勇者であるこの僕と、有象無象の旅仲間候補たち。この人たちこの後どうするんだろ。ずっとこの場で突っ立って待ってるのかな? 

 まあいいや。もしかしたらまた選び直すかもしれないし、しばらく放っておこうっと。


「はじめまして。僕はクルスと言います。とりあえず皆さんのお名前を聞かせて頂いてもよろしいですか?」


 そんなわけで、選んだ四人を集めてひとまず自己紹介をしておく。

 顔見知りが二人混ざってるけどあえて初対面のように振舞っておいたよ。といっても合わせてくれるのはレーンだけだと思う。


「私はレーンカルナ。魔術師だ。よろしく」

「勇者様はもうご存じですけれど、初めての方もいますので改めて。私はハニエル・ネツァクと申します。一応私も魔術師ということになりますね」


 予想通りレーンは合わせてくれたのに対して、しっかり顔見知りであることを明言してくれちゃうハニエル。

 ちょっとイラっと来たけど、表情がかなりマシになってたから許してやろう。昨日の別れ際は自分のアイデンティティにひびを入れられたせいで死んだような目をしてたからね。今はちゃんと瞳に光が戻ってるし、何よりある種の決意を感じる良い目をしてるよ。もう一度壊したくなっちゃうじゃないか、全く。


「あたしはキラ! 爪術師だよ、よろしくね?」

「俺はクラウン、斧術師だ。よろしくな!」


 そして今回選んだ二人も名乗りを上げる。

 最初に笑顔で元気良く名乗ったのは、キラって名前の結構小柄な女の子。髪の色は返り血被ったみたいな暗い赤色で、かなり滑らかで質感も良さそうな感じだ。惜しむらくは肩口程度までの長さしかないことと、フードを被ってるから前髪とか横髪しか見えないことかな。でも普通に美人さんだと思う。切れ長の青い瞳も綺麗で吸い込まれそうだ。性奴隷にしたいなぁ?

 で、野郎の方は筋肉と鎧、大柄、髪は茶色で目も茶色、むさ苦しい笑顔。はい、説明終わり。だってどうでもいいし。


「はい、よろしくお願いします。では一人ずつ面接をしたいと思いますので、自己紹介順に別室でお話しましょうか。まずはレーンさんからですね」

「……ああ、了解した」


 こくりと頷くレーンと一緒に、メイドさんに先導されて別室へと移動する。

 案内されたのは僕が使ってた部屋と似たような一室だった。とりあえずソファーに向かい合って座って早速お話を始めようと思ったけど、メイドさんがお茶とか色々用意し始めたからそれが終わるまで待つことにした。

 レーンも同じこと考えてたみたいで、結局準備を終えたメイドさんを一旦退室させるまで終始無言だったよ、僕ら。


「……それで、一体何を話せば良いのかな? 私が勇者の旅の仲間に志願した表向きの理由でも話すかい?」

「裏の目的知ってるし必要ないでしょ。そもそも僕が話をしたいのはあの二人とだからね」

「ああ、そういえば大天使様は君と知り合いのようなことを言っていたね。召喚初日から彼女を手籠めにするとは、君は随分と手が早いようだ」

「手籠めにはしてないぞ。まだ」


 お互いに紅茶を啜り茶菓子を摘まみながら、まるで本心を隠さない本音の応酬を繰り広げる。

 丁寧な言葉遣いのお優しくて立派な勇者様を演じるのは疲れるから、僕にとって今この時間はリフレッシュタイムみたいなものだ。やっぱり本心を共有できる真の仲間は最高だね!


「まあ、彼女もどちらかと言えばこちら側の存在だからね。君が手籠めにしようとする理由も分かるというものだよ。ただ、彼女はなかなか扱いづらいよ?」

「そうなんだよねぇ。まさか三千年生きてて誰も殺してないとは思わなかったよ……」


 おまけに三千年物の処女だったしね。

 あっ、そういえばレーンには解析(アナライズ)使ってなかったっけ。初めて顔を合わせた時はまだ魔法の知識が無かったし、さっきの玉座の間では初めて見る奴らがいっぱいいたからそっちを優先してたしね。

 よーし、というわけで解析(アナライズ)



名前:レーンカルナ

種族:人族

職業:魔術師

年齢:18歳(427歳)

魔獣族への敵意:無し

聖人族への敵意:無し



 あっ、ふーん。一瞬年齢に度肝を抜かれたけど、そういえばコイツは転生を繰り返してるんだったね。四百歳越えてるのは現在までの全ての生を合わせた年齢かな? とんでもないな。

 そしてこれでレーンには全ての種族への敵意が無いことが証明されました。正に真の仲間だね。これで初対面で脅しをかけてこなかったなら最高だったんだけどなぁ。

 さて、ここで更に追加のアナライズだ! 相手が女の子なら知りたいことはいっぱいあるからな!



身長:160cm

スリーサイズ:75/50/76

交際人数:0人(0人)

経験人数:0人(237人)



 待て待て待て待て。よし、一旦落ち着こう。何だかとんでもない情報が頭の中に流れ込んできた気がするけど、冷静に考えてみるんだ。

 レーンは転生を繰り返して今は四百と二十七歳。だから今までの生の中でそういった経験があっても不思議ではないし、毎回経験を重ねていてもおかしくはない。仮に毎回二十五歳まで生きて毎回経験を重ねていた場合、一度の人生の中でそういった行為をした相手の人数は……約十七人!?

 とんだ痴女じゃねぇか、お前!? 大人しい顔して何て奴だ! 見損なったぞ!


「……ん? 私の顔に何かついているかい?」


 僕がそんな歴史に残る痴女を冷めた目で見つめていると、レーンは素知らぬ顔で首を傾げてた。

 まあ過去がどうあれ今世ではまだ処女みたいだし、個人的には……セーフだな! 


 

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