等価交換
⋇性的描写あり
⋇悪ノリした
僕もミニスも真実は胸に秘めたまま語らなかったから、晩御飯の時間は何の問題も無く終わった。ちょっと、ていうかかなり冷めてたけど普通に美味しかったよ。やっぱり愛情のこもった手料理は良いよね。空腹と楽しい会話が最高のスパイスになって、久しぶりに大満足の晩ごはんだったよ。
でも食欲を満たしたら、今度は別の欲求を満たしたくなるもの。そんなわけで薄暗い欲望を満たすために、僕はベッドで今か今かと来客を待ってた。
「……お、来たかな?」
部屋に近付く小さな足音が聞こえてきて、僕は佇まいを正す。やっぱり雰囲気は重要だからね。ぐでーっとした状態でお話するような内容でもないし。
「――やあ、こんばんは。よく来てくれたね。待ってたよぉ?」
「………………」
ノックも無しに部屋に入ってきたのは、可愛らしいピンクのパジャマ姿のミニス。メチャメチャ硬い表情をしてるのに反して、妙に頬が赤いのは何でだろうね? やっぱり僕に惚れたか?
「それじゃあ――睡眠」
状況を整えるために、ちょっとした魔法を行使する。
対象を眠りに落とす何てことない魔法だけど、今回の対象は僕とミニスを除くこの村の生命体全て。そして眠りの深さは昏睡に近いレベル。これからやらせることを考えると、ちょっとやそっとの事で村人が起きちゃうと困るからね。これくらいはお膳立てしてあげなきゃ。
「これで良し。今の魔法で、この村にいる奴らは全員朝までグッスリだよ。さすがにナイフで刺されたりしたら起きるだろうけど、大声とか悲鳴を聞いたくらいじゃ起きないだろうね。ほらこの通り」
「っ……!?」
ベッドでグーグー寝てるリアの頬っぺたを抓んで引っ張って見せて、深い眠りに落ちてることを見せつける。何故かミニスはベッドにリアがいるのを見てギョッとしてたし、何なら余計に顔が赤くなったけど、一体どうしたんだろうね? 僕が寝る時に女の子を抱きしめてるなんて今更じゃん? そもそも一番抱き枕になったのは他ならぬミニスだし。
「約束通り、僕はお前の妹を生き返らせてやった。だから――代価を、払って貰おうか?」
それはさておき、取引の時間だ。取引内容を伝えず意図的に事後承諾にしたけど、ミニスには何でもするって気概があるから問題なし。
そもそも僕が決めてた代価はぶっちゃけ僕にはほとんどメリットが無いし、完全に等価の取引にするつもりだからね。さすがの僕でも一方的な取引はしないよ。取引、の時はね?
「……はい」
僕がニヤリと笑いかけながら言うと、ミニスは真っ赤な顔で小さく頷いた後――何故か、パジャマのボタンを外し始めた。え、いきなり何やってんの、この子?
「っ……!」
困惑する僕の前で、ミニスはそのままプチプチとボタンを外してく。顔を真っ赤にして、縮こまる様にウサミミを折りたたんだ状態で。開かれたパジャマから覗くブラジャーも、可愛らしいピンク色だね。白い肌と白い髪に良く映えるなぁ。ウヘヘ。
そうしてパジャマのボタンを全部外し終えると、そのままゴソゴソと上を脱いだ。パジャマが床にパサリと落とされる光景は、比喩的な何かを感じる良い光景だよね……。
「う、うぅ……!」
上半身だけ下着姿になったミニスは、恥じらいを堪えるように唸ったかと思えば、今度はパジャマのズボンに両手をかけた。そしてまるで焦らすように、少しずつズルズルとズボンを下ろしていく。
うーん、こっちもピンクのパンツが愛らしい。あと少しずつ露わになっていく太ももが堪らない。キラほどじゃないけど肉付きが良くて実に美味しそうだ。むしゃぶりつきたい……。
「っ~~!」
パジャマを脱ぎ捨てて下着姿になったミニスは、胸元や下腹部を隠すように両手で覆ってる。恥ずかしさがもう限界みたいで、声にならない悲鳴みたいな声を出して真っ赤な顔で佇んでる。
だけどそこは謎のクソ強メンタルを持つ一般村娘。恥じらいを根性で押し殺すと、そのまま自分の背中に震える手を回して、ついにブラを外し――
「――だ、駄目っ……これ以上は、自分じゃ……無理……!」
あともうちょっとってところだったのに、突然ミニスはその場に蹲って泣き言を零した。
何だお前根性無しだな。ていうか僕の前で裸になるのはこれが初めてじゃないのに、何を今更カマトトぶってるんですかね。泣き言言わずにさっさと全部脱げやオラァ!
「……こういうの、初めてだから……せめて、優しくして……?」
そして恥じらいに潤んだ瞳で僕を見上げて、そう可愛らしくお願いしてくる。
自ら下着姿になるまで服を脱ぎ去り、あまつさえ優しくして欲しいっておねだりしてくる少女が目の前にいる。そりゃあ男なら負けじと服を脱いで襲いかかる場面だろうね。僕も実際そう思うし、僕の愚息もそう思ってるよ。
「……なるほど。どうやら誤解があるようだね」
「……誤解?」
「うん。別に僕は身体を寄越せとは言ってないよ? これから内容を言う所だったんだよ?」
でも当初の予定を曲げるのは何か負けた気がするから、鋼の意思で以て欲望を自制した。まあ僕の欲棒は鋼みたいになっちゃってるけど、今はそれは置いておこう。これは男なら仕方ない。
とはいえミニスは女の子だから、男の本能ってものが分かってないみたい。僕の答えに恥じらいもぶっ飛んだみたいで、滅茶苦茶冷めた顔になってた。
「……は? じゃあ、何で脱いでる時に何も言わなかったわけ?」
「いや、目の前で女の子が服を脱いでたらとりあえずガン見するのが礼儀だしね。ごちそうさまでした。恥じらいながらのストリップは最高だったよ。あ、偽札だけどチップいる? あー、でも挟む場所が無いか。ハハハ」
要するにミニスは全くの勘違いでストリップをしてたってこと。嬉しい――じゃない、悲しい擦れ違いってやつだね。やっぱりコミュニケーションは大事なんだなって思いました。何か恥じらいが戻ってきたみたいで、ミニスの奴ぶるぶる震えながら急速に赤くなってきてるし。
「……死ねっ!!」
そしてあろうことか下着姿で飛び蹴りをかましてきやがった。ウサギ獣人の脚力をフルに利用した、殺意マシマシの一撃だよ。
というかレーン印の契約魔術では、主である僕に危害を加えることはできないって内容の契約が入ってるはずなのになぁ。これ、どう見ても殺す気の一撃なんですが……?
「――さて、お互いに落ち着いたところで本題に入ろうか」
何はともあれ、怒りの飛び蹴りを軽くいなした後。紳士な僕は寒そうなミニスにベッドのシーツを被せてあげて、また定位置のベッドに腰かけて会話を再開することにした。シーツを剥いだせいでリアが寒そうに縮こまってるけど、どのみちさっき僕が使った睡眠の魔法で朝までぐっすりだから問題なし。
「だったらブラ返せ! この変態!」
せっかくシーツをかけてあげたのに、ミニスは顔を真っ赤にして威嚇してくる。
ちなみにブラは飛び蹴りをいなすついでに剥いでやった。今は僕の手の中で堪らない温もりを放ってるよ。仮にも主人に殺す気満々の飛び蹴り放ったんだから、下着の一つくらい取っても許されるよね。後でオカズにしようっと。
「さっきも言ったけど、今からお前を抱くわけじゃないよ。さすがの僕もお養父さんとお養母さん、それから妹がいる家の中でおっぱじめるほどの勇気は無いしね。何せまだ未経験のチェリーボーイだし」
「嘘つけ! 絶対そこらで女の子を犯しまくってるでしょうが!」
「いや、僕本当に童貞だぞ。まあそれはともかく、対価のお話だ」
何でかそこらで性犯罪を重ねまくってるって思われてる不思議。あと自分で童貞だって言わないといけない微妙な悔しさ。
まあ卒業自体はぶっちゃけ簡単にできるんだけどね? でも卒業を目的にヤっちゃうのも何か違うよね。僕としては手段と目的が逆転してる感じがするし。
「お前はレキを生き返らせてくれるなら何でもするって言ったよね? その言葉に嘘偽りはない?」
「……無いわ。本当に、何でもする。もうさっきので分かると思うけど、初めてを寄越せって言うならあげるし、奉仕しろって言うなら……その、正直あんまり分からないけど、できる限りのことはするわよ……」
「良い答えだ。でも今からお前にしてほしいのはスケベな行為じゃないんだなぁ」
恥ずかしそうなうつむき気味の顔にちょっと意志が揺らいだのは秘密。だって女の子に強制的に奉仕させるとか、ある意味男の夢じゃん?
「じゃあ、私に何をさせようってのよ……?」
「……等価交換って言葉、知ってる?」
「……は?」
不安気だったミニスにそんな質問を投げかけると、ぽかんとした表情が返ってくる。もしかして知らないのかな? 何で知らないんだよ、錬金術の基本だろうが。
「そりゃ知ってるわよ。同じ価値のあるものを交換することとか、そういう意味の言葉でしょ」
「何だ、知ってたか。そうそう、大体そんな感じの意味だね。具体例を挙げるなら買い物の支払いが一番ふさわしい感じかな? 銅貨五枚を払って、銅貨五枚相当の物を手に入れる。まあ店側は利益出さないといけない以上、原価より値を上げてるから厳密には等価ではないんだけどさ」
「はぁ」
おっと、何やら冷めた表情をしている。もしかして話が長かったんだろうか。レーンの長話が移ったかな?
「つまり何が言いたいかって言うと、レキの命と釣りあうものを代価にしてもらう、ってわけさ」
「それって……私の、命?」
「いやいや、違うよ。だってお前、妹のためなら自分の命くらい平気で捨てるでしょ? 確かに命と命で価値自体は同じだけど、本人の価値観とかを含めるとそれじゃ等価交換は成り立たないよ」
よく『俺の命を賭ける!』とか言うセリフや展開は物語で見かけるけど、ぶっちゃけ僕はあんまり好きじゃないんだよね。だって何の躊躇も無く賭けられるものが、自分の大切なものと釣りあうわけないでしょ? その時点で自分の命の方が価値は下になってるんだし。
「じゃ、じゃあ……もしかして……!」
「いやいや、さすがの僕も両親の命を捧げろって言うほど外道じゃないよ。僕を何だと思ってるんだ」
「そ、そう……良かった……」
サーッと顔を青くしたミニスにそう断りを入れると、見るからにホッとした様子で胸を撫で下ろしてた。クソッ、紳士的にかけてあげたシーツのせいで胸が見えないぜ……。
それはともかく、僕はミニスの命も両親の命も対価に要求する気はない。ミニス当人の命はさておき、両親の命ならつり合いは取れそうなんだけど、さすがにそれは可哀そうだからね?
「――捧げるのは、この村の人たちの命だよ」
「え……」
だから対価にするのは、無関係な村人たちの命。
それを口にした途端、ミニスはまたしても顔を青くした。赤くなったり青くなったり忙しいね、君……。
自分の命じゃ釣り合わない、両親の命も対価にしたくない。それなら他に捧げるべき命は、それら以外の有象無象になるのは当然のこと。
そして僕とミニスが結んだ約束は、あくまでも『僕と僕の真の仲間たちが、村の人を殺さない』事。ミニスが殺る分には約束を破ってはいないからね。何の問題も無いよ。
「む、村の人たちの命って、どういうこと……?」
「そのままの意味だよ。命を奪えってこと。大丈夫、今は皆魔法でグッスリだから、寝首を掻くくらいわけないよ」
一息に殺せば眠りから覚めることも無く、永遠の眠りにつくだろうね。あー、でも多少手こずったら目が覚めちゃうか。よし、目が覚めても動けないようにしておくかな――麻痺。
「じょ、冗談、よね……?」
「いや、本気だけど? あともちろん一人だけじゃ釣り合わないから、何十人も殺してもらうよ。大切な人の命と有象無象の命でつり合いを取ろうとするなら、大量の数が必要だからね」
「ま、待って……それは、それだけは……!」
「嫌なの? これでも最大限譲歩してるんだけどなぁ。じゃあ両親のどっちかでも良いよ?」
「っ……!」
顔色が最早青を通り越して、白に近くなるミニス。例えどんな良い子ちゃんだろうと、身内とそれ以外なら優先順位がつくのは当たり前だからね。その反応もやむなしだ。
「僕の真の仲間でもないのに、死者蘇生をして欲しいっていうぶっ飛んだお願いを叶えてあげたんだ。これくらいの代償は覚悟の上でしょ?」
「で、でも、幾らなんでも、そんなこと……!」
「やりたくないって言うならそれでもいいよ。その代わり、契約不履行になるからレキの命は奪わせてもらうね? 蜘蛛に貪られた記憶を思い出させた上で、今度こそ完全な死を与えてあげるよ」
こんなことはできればやりたくないけど、契約不履行になるなら仕方ない。自分の身体が蜘蛛に食われていく痛みと記憶を思い出したレキが、どんな悲鳴を上げて表情を歪めてくれるのか楽しみだね。
いや、本当は僕だってこんなことやりたくないよ? 本当だよ? でもこう言えば、絶対にミニスは頷いてくれると分かってたから。
「ま、待って! 分かった……や、やる……やるから!」
予想通り、必死な面持ちで頷いてくれた。やっぱり可愛い妹が何よりも大切なんだねぇ?
「ん、何をやるの?」
「……村の人たちを、殺すから……レキだけは、どうか……!」
「例え葛藤があろうと、大切なモノのためにそれ以外を切り捨てる。素晴らしい決断力だね。ハニエルにも見習ってほしいよ」
僕が心からの拍手を送ってる間、ミニスは決意を固めて行ってるのか、あるいは心が壊れて行ってるのか。どんどんと表情が抜け落ちて行って、赤い瞳に見紛うことなき闇が見えるようになってきた。
これこれ、この絶望が強すぎて感情が抜け落ちたような顔と瞳。これだけでご飯三杯はいけるよ。
「……何人……殺せば、良いの……?」
「そうだねぇ。さっきは何十人もって言ったけど、数はお前が決めて良いよ。お前がレキの命に値段を付けて、それと等価になると思う人数、殺せばいい。お前がそれで良いと思うなら、殺す人数は一人でも構わないよ。大切な妹の命と他人の命ひとつで、つり合いが取れると思うならね」
「………………」
瞳から光を失ったミニスは、何も答えない。妹の命の値段を、殺す人数のさじ加減を、自分に委ねられたんだから当然だよね。
何にせよ、妹大好きなミニスなら結構な人数を殺してくれるって信じてるよ。村の住人の半数を越えたら及第点ってところかな。
「期限は日の出まで。殺し方は問わない。大いに悩んでから殺せばいいよ。それじゃ、頑張ってね?」
「………………」
心からのエールを送るけど、やっぱりミニスは何も答えない。さっき剥いだブラを目の前にちらつかせても、顔を埋めて思いっきり匂いを嗅いでも、光の無い瞳はピクリとも揺れない。
結局頬を染めることも無く、ブラを返せと言うことも無く、無言で部屋を出てったよ。これは相当キテますね。
「……よし。これで明日の朝の楽しみができたな」
ミニスならまず間違いなくやるだろうし、刺激の少ないド田舎に相応しい凄惨な事件が起きる事請け合いだね。さあ、ミニスは何人殺すのかなぁ?
「じゃあもう夜遅いし、さっさとスッキリして寝ようっと。ちょうど手元には良い感じのオカズがあるし、ぶっかけるのに丁度良さそうなロリっ子もそこに転がってるしね」
寝る前にスッキリしないとベッドの中で悶々としちゃうから、ちょっと自分を慰めることにした。幸いティッシュ代わりにちょうど良さそうな布が手の中にあるし、リアも魔法のおかげで変なもんをぶっかけても起きないしね。
「さてさて、それじゃあ早速――って……な、なんだ……きゅ、急に、ねむ、く……?」
そんなわけでグーグー寝てるリアの身体の上に跨ろうとしたんだけど、何故か突然猛烈な眠気に襲われた。ありえないくらいに突然で凄まじい眠気で、僕はそのままリアの隣に倒れて、意識も徐々に、遠のいて――
⋇章タイトル回収
⋇どうせなら生まれたままの姿まで脱がそうかと思いましたが、さすがにちょっとヤバそうなのでやめました。