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第一話 均衡の問題(解決編)


「もし1枚だったら?」

「そんな当たり前のことから? 冗談でしょ? 10枚くらいから……」

 亜希子が笑うと、わたしは真面目に言った。

「どんなにバカバカしくても基本的なところから検証しなきゃ失敗するのよ」

 新入生の前で格好を付けたかったが、似合わない。途端に恥ずかしくなって、わたしは誤魔化した。

「ま、まぁこれは彼氏の受け売りなんだけどね」

「へぇ!」

 村田が冷やかすように声を上げる。わたしは咳払いをすると、言った。

「だからまず1枚から」

「新入生もいるし、そうしようか。1枚だとしたら0回で決まりよね。次は2枚だけどこれも1回」

 村田が答えるとわたしは頷いた。

「ええ、3枚の場合はabcとすると、aとbをまず天秤に乗せて、重たい方に傾くでしょ? でも傾かない場合もあるよね。この場合、cが偽金貨。ここまでは大丈夫?」

「大丈夫です。でもここまでは簡単ですよね?」

 大月が戸惑いながら頷く。その表情を見て、村田は笑った。

「まぁまぁ、急がないの。で? 萌。続きは?」

「うん。つまり、右に傾く、左に傾く、水平の3通りがあるんだよ。当たり前だけどね」

 わたしはここで説明を区切って、みんなの顔を見た。誰も困惑していないのを確かめると、わたしは続けた。

「じゃあ4枚の場合は?」

「ええと、abcとdに分けて……ってあれ?」

 大月が戸惑ったように呟くと、わたしは言う。

「abとcdで量れば、どちらかに傾くはずでしょ? だから2回目で残りのグループを量ればいい。つまり2回」

「あ、無理に三つの組に分けなくてもいいんですね」

 大月が納得したように呟くと、わたしは言った。

「うん。5個の場合、abcdeはabとcdにまず分けるの。水平になったら、eが偽金貨で確定

 abcdef、6枚の場合はab、cd、efの3つのグループに分けてから量ればいい。ね? 二回で大丈夫でしょ

 7枚の場合。abcdefgとすると、1回目はabc、defに分けて量ればいい。このときに水平ならgが偽金貨で確定するでしょ? 2回目。abcに傾けばaとbで量ればいい。水平ならcが偽金貨。

 8枚。abcdefghなら、abcdとefghに分けて、2回目でabとcd、3回目でabに分けて量ればいい

 9枚。abcdefghiなら、まずabc、defを量ればいい。水平だったらghiに分ければいいし……」

 大月は目を剥いて、わたしの説明を遮る。

「ちょっと待ってください。浅香先輩。まさか17万7147枚まで全部説明するつもりですか!?」

 それを聞いて、わたしは笑った。

「まさか。9枚が一番分かりやすいんだけど、基本的に3枚以下のグループに分けてたよね?」

「左、右、水平で場合分けできるからね。26枚だとえーと……abc、def、ghi、jkl、mno、pqr、stu、vwx、yzって三つに分ければいいのか。ここではまだ秤にかけないけどね。で、まず、1回目はabc、def、ghi、jklとmno、pqr、stu、vwxでそれぞれ量る。2回目にabcとdefで量って、3回目にabcで重さを量る。この段階で確定するから合計三回、でしょ?」

 村田が付け加えると、わたしは頷く。とうとう大月が痺れを切らしたように言った。

「3で割るんですか?」

「ううん、9枚の場合、3枚の金貨を2回に分けて量ってたよね? で、今、村田先輩が言ったように、26枚だと3回。つまり……」

 わたしは首を振ってそう言うと、鉛筆を掴む。そしてノートにこう書いたのだった。

「3のn乗」

 その時、廊下から足音が聞こえてきた。やがて教室の扉が開くと、熊のような体格のような男が入ってくる。部長である。

「遅くなってすまん。ちょっと先生から呼び出しくらってた」

 部長がそう言うと、村田は呆れ顔で言った。

「四年生を何回やれば気が済むのかって、言われてたんでしょ」

「んー、まぁ、そんなところだな。司法試験受ける前に単位を取れって。人類は過ちを繰り返すもんだ。でもまぁ歴史は繰り返すって言うだろ? だから俺も留年を繰り返すんだ」

 とんだ屁理屈である。わたしが乾いた笑いを浮かべていると、部長がポケットから紙を取り出した。

「それはそうと問題を作ってきたぞ」

 そして、紙を配り始める。目を落とした途端、わたしたちは顔を互いに見合わせて、苦笑する。

 こんな問題が書かれていたのだから。

「n枚の中に少しだけ軽い金貨が一つだけある……」


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