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探偵·君津恭介  作者: 哩月
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見えない女

ケイト·ジュラン·ミッシュイ

ガルブ国王の忘れ形見だが、王家を継ぐのを辞め死神の世界へと飛び込んだ男。

身長189cm

スラリとした容姿に、短めのウエーブがかった銀髪。耳には、シルバーのピアスがゴテゴテついている。およそ死神の雰囲気はないが、元の姿に戻った彼の能力は破壊力がある。

ハマってること、昼ドラ!

甘いものに目がなく、鼻がきくから、どこへでかけても姿をくらます。

 葉月ちゃんが、連れてきた女の子は、名前を、


「望月環奈です。お願いします! 早くママ助けて! でないと、ママ死んじゃう!」


 の声に俺はケイトを見るが、ケイトはケイトでなにやらモニター画面を覗き込んでいた。


『大丈夫だ。お前さんのお袋さんは死なない』


 の言葉に、涙顔の環奈ちゃんが、


「どうしてあなたに判るんですかぁっ!」


 怒り顕にし、ケイトはモニター越しに隠れた。


『え? あ、いや···』


 困り顔で助けを求めるケイトを無視し、


「きみのお母さん、なにかあったの?」


 宥めるように聞く。


「はい。うちにおかしな電話があったのは、先週の日曜日でした」



「変ねぇ」


「何が?」


 電話に出た筈のママが、電話を切りながら奇妙な顔つきになっていた。


「また、切れたわ。これで4度目」


 最初は、イタズラ電話だと思っていたが、こうも続くとなると···


「おおかた間違い電話じゃないのか? お前、出ると名前言ってるから」


「そうねぇ」


 パパは、パパで仕事がいつも忙しいらしく、この日も手帳を見ながらスマホでなに可をやり取りしていた。


「ちょっと出かけてくるよ。取引先の人が、この近くに居るらしいから」


 そう言ってパパは、ママを宥めるように出ていった。



『無言電話ねー』


「嫌がらせの手始めみたいなもんか」


「けど、それだけじゃないんです」


 葉月ちゃんは、段々と興奮してきた環奈ちゃんを落ち着かせるように背中を叩いていた。


「頼んでもいない出前や通信販売の商品が届くようになったんです」


『ほう』



「困ります。うちこんなの頼んでないです! 寿司源さん、いつも知ってるでしょ?」


「いや、でもね、奥さん」


 学校の課題をやってたら玄関でママが誰かと話してるのが聞こえて、下に降りてみた。


「なにこれ···」


 小さな寿司桶が、数えると20個。


「どうしたの?」


「どうしたのじゃないのよー。頼んでもいないのに、こんなに来て。だから、お引き取り下さい。うちは、本当に頼んでませんからっ」



「おかしな話だな、それ」


「でしょ? ケイトさん、なに見てるんですか?!」


 葉月ちゃんが、ソファからケイトに問いかけるも、ケイトはケイトで秘密と言ったっきり顔をあげない。


『なるほどね。ね、きみのお父さんって普段から仕事忙しくしてるの?』


 急にケイトから質問された環奈ちゃんは、


「確か、忙しくなったのは、去年からですね」


『そ。じゃ、続けて』


 手で追い払う仕草をしながらモニターガン見!



「毎日届いたり、1日置きに届いたりで···」


 寿司以外にも、宅配ピザ30枚、ラーメン餃子が20人分だの、恭介でもそんなのが毎日のように届いたら発狂···いや、発砲しそうな勢いだったろう。


「今も?」


 頷く環奈ちゃんは、不安げに葉月ちゃんを見た。


『お父さんは? お母さんは、どこ?』


「お父さんは、今日出張で熱海に行ってます。お母さんは、今日おうちでお婆ちゃんと···。あの! お金ならここにあります。足らなかったら、バイト代で払いますから!」


 小さな机に置かれた5枚の福沢諭吉。


「足りますか?」


「お釣りがくる」


『そういうことね。じゃ、行こっか!』


「「······。」」


「はい? 行くって何処へ?」


 ケイトは、プリントした物を自分の鞄(なのか?コンビニのビニール袋だが)に詰め込むと、


『お母さん、連れてくから。恭介! 車ー!』


「「「······。」」」


(俺が、ここの所長なのに···)


 そんな事を考えつつも、車で一旦環奈ちゃんの家に行き、環奈ちゃんのお母さんを拉致り、一同···


「あれ? ここって···」


「うちらの学校の裏?」


「あの、なんでここに?」


 訳のわからない俺等を前にケイトは、


『いいか? 何が起きようとお前は、お母さんを守れ。自分を強くしろ』


 環奈ちゃんの肩を強く叩いて言った。


 そして、ケイトとその一行は、学校の裏に建っているアパートの2階、角部屋へと向かった。


 ピンポーン!


『堀田さーん! お届けものでーす』


「堀田?」


 葉月ちゃんと環奈ちゃんが、顔を見合わす。


 中から、はぁーいという声と子供の声が聞こえてきた。


 ガチャリとドアが開き、中の女性も二人の女子高生も驚く。


「え?」


「あ」


「嘘。先生?」


 中から、どうした?と子供を抱きながら固まる男性とその声に気づいた環奈ちゃんのお母さん。


「あなた!」


『あ、これ渡すの忘れてました』


 ケイトが、プリントした紙を中の女性に渡した。


『あとは、4人で話し合って下さい。帰るぞ』


(所長は、俺なのに!)


 さも偉そうに前を歩くケイトとその後ろを歩く俺と葉月ちゃん。


「先生と環奈のお父さんが? 信じられない」


「お前、知ってたのか?」


『いや。ネットワーク広げてたら見えただけ』


(この死神、どこまで···)



 それから3日して···


「ありがとうございました」


 環奈ちゃんがお母さんと一緒にお礼にきた。


「不倫?!」


「うん。たまたま、パパが会社の飲み会で帰ってる時に、具合悪くした先生を見つけてね···」


「で、どうするの? 仲直りしたの?」


「ううん。離婚するって。子供が小さいと、ね···」


 一通りお礼を言った母親は、吹っ切れた感じで娘を置いて帰っていった。


「離婚か。お互い親には苦労するね」


 葉月ちゃんも環奈ちゃんも互いを見やって笑いあった。



 それから1週間ほどして、葉月ちゃん達の担任が、学校を去った。



『女ってこわっ!!』


 環奈ちゃんの母親が、学校の校長へ直訴したのだ···


「ほんとだ」


 だからか?紗友里や栞の姿が見えないのは、まだ俺を怒っているからなのか?


『ムトウヒロシ···か』

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