オッドアイの探偵
君津恭介
体格/身長·183cm体重·65kg細身、モシャモシャした黒髪(猫っ毛)
ファッション/ポロシャツ、ジーパンが当たり前
愛用グッズ/サングラス
タバコ/メビウス
酒/ウイスキー(響)
愛車/クラウン
住まい/アパート(3DK)
家族/···独身ひとり暮らし
夢/宝くじに当たること
(本当にこいつは、死神なんだろうか?)
と思う時がある。
恭介は、事務所のソファでダラダラと昼ドラを観ているケイトを盗み見た。
『本当に辞めるのか?』
「はい。こうなったのも自分の責任ですから」
山下課長も同僚や部下も、あの事件から俺を気遣ってくれる。その気持ちは、ありがたい···
けど、逆にそれが辛くも感じていた。事件を追っても、ふたりを殺した犯人が見つかる事もなく、次から次へと事件は発生していき、俺等は追う。
「申し訳ありません。こうなったのも自分の責任ですから···」
頭を深々と下げ、署を後にした。
のが、つい1ヶ月程前だった。
『刑事を辞めたんだから、犯人探しをしなくてもいいだろ?』
実家の父も義父母もそう言った。
だが、俺はどうしても紗友里を!栞を!殺した奴を見つけたい!
そう思って、ここ“君津探偵事務所”を開業した。
退職金全てをつぎ込んだ。
『『赤いパーカーで、ナイクのスニーカー。足首にキラキラしたのをつけていた』と言ってる』
「そこにいるのか? なんで俺には見えないんだ?」
あの日、ケイトは身体を屈めて俺に言った。
『いる。奥さんが胸に抱いてる女の子、名前は栞。平成28年2月1日産まれ。血液型は、A型。妊娠9ヶ月の早産で産まれ、暫く小さな透明の箱に入っていた。そうだろ?』
紛れもない事実だ。この事を知ってるのは、俺、紗友里と双方の親だけだ。あの事件のあと、お袋は持病が悪化して死んだ。
『信じたか?』
恭介は、冷や汗を流し頷くしか無かった。
『奥さんが覚えてるのはそこだけ』
「そうか」
検視の結果、先に亡くなったのは紗友里だ。紗友里は、栞を守ろうとして庇っていて息絶えた。栞は···見るにも酷い姿だった。
『死神にも、俺みたいに死んだ後でくる奴や死ぬ前にくる奴がいる。ま、俺はある意味落ちこぼれだけどな』
(あんな恐ろしい姿をして、落ちこぼれ?)
恭介には、そっちの世界はまるでわからない。
「お袋も見えたりするのか?」
『見た。今はもういないけどな』
そんな死神·ケイトは、いまだ昼ドラを観ていた。
「飽きないのか? そんなのばっか観て」
そう言う恭介をチラッと見たケイトは、起き上がり、
「恭介! 腹減った」
と抜かしてきた。
そうこの死神は、普通に腹が減り、眠くなったら眠り、姿も今はちゃんとある。
「もう午後の15時か。下のカフェでいいか?」
読んでいた新聞を折り畳み、薄いサングラスを掛けた。
『取ればいいのに、面倒くさくない?』
「取れるもんならな! 誰だよ、俺の目をこんなにした奴は!」
掴みかかろうとした手を払い除け、
『俺だ。それが、契約だからな』
死神との契約を結んだ俺の目は、左目の瞳孔が赤い。普通には見えるが···
事務所の鍵をチェックし、スマホから隠しカメラを操作し、1階にあるカフェ·ルグランへと向かった。
カランカランッ···
牛のカウベルみたいな音をだし、中へと入ると店主·草津譲の声よりも先に、
『マスター! カルボナーラとコーヒー』
大きな声で俺よりも早く注文し、席に着いた。
「いらっしゃい」
「ホットドックとアメリカン」
店主の子供に掛けるような笑顔に些か恥ずかしくもありながら、席に着いた。
「お前、早すぎるだろ!」
小声で注意するも、ケイトはあいも変わらず腹減ったを繰り返す。
(ほんと、ガキみたいだ)
『それにここ安い! 美味い! 早い! な、葉月ちゃん!』
カウンターを拭いてる女の子は、草津さんの娘の葉月ちゃん。目下、青春謳歌中の高校1年生!
「それだけじゃないですぅ! ぴっちぴちの店員とコーヒー淹れるのが美味いお祖父ちゃんがいるお店ですよ!!」
膨れた顔をしながらも、カルボナーラやコーヒー、ホットドック···と出来た順からテーブルに並べていく。
「ありがとう」
他のテーブルから呼ばれた葉月ちゃんは、行こうとして立ち止まった。
「あとで相談したいことあるんですけど、いいですか?」
小声でそれだけをいい、他の席へと向かっていった。
『いやぁ、このカルボナーラも美味いなー』
「······。」
(こいつ、なんか知ってるな?)
ケイトは、口いっぱいにカルボナーラを詰め込み、咽ていた。
「子供みたいな食い方するな。恥ずかしい」
自分もホットドックを食べようとすると、2つにカットされてたのが、残り1つになっていて、ケイトを睨みながら食べた。
暫くルグランでまったりとした時間を過ごし、事務所へと戻る。
『あ、俺タバコ買ってくる』
「······。」
目の前に差し出された片手。
「なに?」
『お金! え? なに? 俺に店の物を勝手に持ち出させるの? いいの? 元刑事がそんなことさせて』
「······。」
仕方なく財布を取り出し、1000円札を1枚渡した。
「俺のも買ってこいよな」
とだけいうと、ケイトは嬉しそうな顔でコンビニへと走っていった。
(そこまで、人間体験しなくていいだろうに···)
「相談、か」
探偵事務所を構えて、初めての客が高校生。あまり見込みは無いと思うが···
それから、葉月ちゃんが来たのは夕方になってからだった。葉月ちゃんは、隣に小さな女の子を立たせていた。
「お願いです! ママを助けて下さい!」