6.5,王子の憂鬱
僕はとある国の第二王子として生まれてきた
そのせい...いや、おかげというべきだろうか?
僕は人の考えていることが何となく分かるようになった
理由は簡単
それは後継者問題のせいだ
通常であれば、第一王子である兄上が継ぐはずだった
もちろん、兄上も王となるべく色々と勉強していた
僕は一生懸命勉強や剣術を学び民たちのことを考える兄上を尊敬していたし兄上なら素晴らしい王になるだろうと信じていた
だからこそ、僕は兄上を支えたいと思い勉強に力を入れた
だが、ある日を境に
『第二王子が王位継承権を狙っている』
という噂が流れ始めた
もちろん、僕はそんなことなど考えたことなどなかったし兄上や父上も理解してくれている
だが、自体はどんどんと深刻な方向に進んでいき今では、二つの派閥が出来てしまった
それからの毎日は憂鬱で仕方がなかった
僕を王へと推薦する派閥の臣下たちは僕に媚を売り始め婚約者希望のものが沢山現れた
臣下たちはよりいい階級に自分がつきたいと思っていることがバレバレだったし婚約者希望の女達は僕の中身なんて一切見ず、顔か家柄...もしくは親からの命令でといったような人ばかりだった
そんな人たちを見続けてきたからこそ僕はこの能力を手に入れたし人を欺けるようになった
***********
時は過ぎ
何十度目かの婚約者希望との面会が終わった後、父上から
「明日、私の友人が来るのだが出迎えるのを手伝って欲しい」
と頼まれた
明日に予定はなかったので、父上の頼みを聞き出迎えた
聞いていたのは父上の友人だけだったが、娘も一緒に来ていた
美しい少女だったが、どうせほかの令嬢と同じように僕に媚をうってくるだろうと思っていた
だが、その少女は僕が第二王子だと知っても媚を売ることもなかった
なおかつ、婚約が決まっても僕の意思を尊重したいと辞退しようしてきたのだ
今まで僕自身をここまで見てくれた令嬢などいなかった
だが、それ以上に気になったのは...僕を見る少女の瞳がどこか怯えているように感じたからだ
まるで僕の本性に気づいているような...
だからこそ、彼女に興味を持った
僕は、令嬢たちが話しているような優しい王子様ではない
父上や兄上を助け国のためになることなら手段は選ばないし何でも利用するつもりだ
自分が腹黒く汚いことなどとうの昔に理解している
今回の婚約もしつこい婚約希望者達を追い払うにうってつけだと思ったからすぐに了承したし婚約破棄も既に視野に入れている
彼女の信じ難い話も少しでも国に悪影響を及ぼす情報には対策をするべきだと考えて父上に話した
こんな僕を僕に好意を抱いている令嬢たちはどう思うだろうか
両親へ告げ口だけでは飽き足らず友人にまで話噂はどんどんと広がる...
少し考えただけでも頭痛がするような悪い方向へと話が進むことは目に見えていた
それなら、本当の僕を少しでも理解している方が気が楽だ
その程度に思っていた
だが、数日後
ルナの家を訪問した時、見知らぬ少年と楽しそうに話をしているルナを見て何故か僕はイライラした
今日の訪問は『ルナ』という少女の情報を知るために来ていた
ルナと話しつつ使用人達に彼女の話を聞く予定だったのだが、僕は彼女がどこかへ走り去るのを見送り少年へと近づいた
「やあ、こんにちは」
「おう!こんにちは!」
出来るだけ警戒心を持たせないように微笑んで挨拶をすると少年もにこりと笑い挨拶を返す
しかし、その後は両者とも何も話さず無言が続いた
正直、僕は彼に言いたいことが少々あったが、ルナのいない間に彼に文句を言うのは...まるで令嬢たち特有のいじめのように感じてしまい何も言えなかった
たが、少年はこの微妙な空気に耐えられなくなったようで口を開こうとした
しかし、それより先にルナがサンドイッチを持って帰ってきた
笑顔だった顔は僕を見た瞬間一気にひきつり即座にメイドの方を見るルナを見て僕は無性に腹が立った
だから、あえて僕は彼...リュカを煽った
リュカもさっきの明るい雰囲気とはうって変わり敵対心を向けてくる
その後もリュカが帰るまで攻防は続いた
それで分かったのはリュカはルナに好意を寄せているということ
しかもかなり強い好意を
僕はそれがとても気に食わなかった
この時はわからなかったが、家に帰り冷静に考えてみればどうやら僕は嫉妬していたようだ
その証拠にルナが僕に向けて怯えも警戒もなく笑ってくれた時、今までのムカつきが一気に消えた
僕が彼女に抱いていたのは興味ではなく好意だったようだ
**********
僕はルナから渡された資料を持ち帰宅した
資料はすぐに父上に渡しすぐに臨時会議が開かれることになった
当初の目的である情報収集は果たせなかったが、このあまりにもリアルすぎる資料を持ち帰れたしルナへの気持ちに気づけたので良しと考える
思わぬ所でリュカというライバルに出会ってしまったが、彼のおかげでこの気持ちが知らたのだから少し感謝している
まぁ、その感謝は絶対に彼に伝えることは無いし彼からしてみれば敵に塩を送ったようなものだろうから感謝を伝えても嬉しくもないだろう
僕は今日のリュカを思い出し気がついた
リュカ以外にも彼女を気に入りそうな人物がいることに
この時、僕は絶対にルナとあいつを近づけさせないようにしようと心に決めるが...その決心はすぐに無駄となることを僕は知らない
昔とは違う僕の憂鬱はまだまだ続く
oh......もっとこう...上手く書こうとしたのですけど、グダグダ感が出てしまいました
申し訳ない...
今回は王子視点です
王子の過去やそれを踏まえた心の歪みが伝わればいいなと思います!