02.ちょっと!展開早すぎません!?
私は今猛烈に焦っている
確かこの前、自分の未来が不幸にならないため攻略対象についてちゃんと対応策をねったはずだ...
何も悪いことはしていない
なのに...
現在、目の前には国王とシエル君がそしてトドメに父様の一言
「どうかな?娘を王子の婚約者に」
...どうしてこうなった!!?
遡ること数時間前
記憶を取り戻してから既に二週間が経過していた
あれから再び体調を崩すようなことはなく、特に何も無い平和な日々が続いていた
しかし、課題は山積み...
王子達のことは一先ず、置いておくとして問題は大厄災
最終的に私が頑張れば何とか出来そうな気もしなくもないけど、あまり目立ちたくはない
一番いいのは親の協力を得られる事だけど、信じてもらえる気がせず、未だに話してはいない
打開策も考えられず、気分転換に街でも行きたいな〜なんて思っていた
そんな中、今朝父様が突然部屋に入ってきて
「ルナ、出かけるぞ!」
と言われた
どこに行くのか聞こうとしたのに、それより先に私はメイド達に連れられ着飾られていく
馬車に乗り込みようやく
「お父様、どこに行くのですか?」
「それは、着くまで秘密だ」
聞けたのに、父様はいたずらっぽい顔をして笑うだけで教えてはくれなかった
そして、着いたのがまさかの王城
そのまま従者に案内され、部屋に入ると国王とシエル王子がいた
「久しいな、ジェルド!元気そうでなによりだ 」
「一年ぶりくらいか?そっちも変わらなそうで安心したよ」
国王自らの出迎えの時点で驚きだったのに、父様が国王にタメ口を聞いた瞬間、驚きのあまり気絶しかけた
「お…お父様!?国王様にその口調は!!」
急いで、父様をたしなめる
すると、二人とも無言で顔を見合わせたと思ったら突然笑い出した
「あっははは!良いのだ、ジェルドの娘よ。こいつとわしは親友だからな」
「そういえば、ルナには何も言ってなかったな!すまんすまん!」
二人はそのまま笑い続ける
私は、そんな二人を見ながら間抜けな顔で停止してしまった
「それにしても、お前の子か疑わしいくらいに礼儀正しいな...お前の奥さんの育て方がいいのだろな」
「そうだろう...って!俺の子が疑わしいってどういう事だ!?お前だって普段猫かぶってるだけだろうが!」
「ははは!冗談、冗談だよ!はー本当にジェルドはからかうと面白いな〜」
あぁ...父様、完全に国王のおもちゃだよ...
しかも、父様もノリツッコミなんてしちゃって...もう、手に負えない...
「コホン...あの、そろそろ本題に入りませんか?」
父様と国王の会話の途中に突然、王子が割って入った
王子はとても優しい笑顔浮かべているが、私には分かる
あれは、心の中でキレてるタイプの笑顔だ
しかし、父様と国王は気づかない...いや、気づいていたのかもしれないけど、何も変化はなく話を続ける
「そうだったな!待たせてすまなかったシエル。ジェルド、私も詳しい話は知らないが...今日は私とシエルに用があると聞いているが?」
「あぁ、この前お前と話しただろ色々。その中でシエル王子の婚約者を誰にするか迷ってるって言ってからうちの娘を推薦しに来たんだ」
はい?...あの、父様何仰っちゃってるですか!?
やっと話が進んだと思ったら父様がとんでもない爆弾発言しだす
私は驚きのあまり目を見開き父様を見る
正直、なにやってんの!?って言わなかっただけ褒めて欲しい...
そんな私の心中を知らない父様は、任せとけって顔してこちらにウインクを飛ばしてきた
いやいやいやいや!何やってんですか!?
そんなキメ顔してますけど、そのルートいくと貴方の娘は処刑されますよ!!?
恐る恐る王子と国王の方を見る
王子は少し驚いたような顔をしていたが、国王は話の続きに興味津々という感じだ
嫌な予感がする
「この子は、とても可愛いし俺とは違って頭も良い。礼儀正しいし優しい...中々良い案件だと思っているのだが、どうかな?娘を王子の婚約者に」
「確かにな、親がお前だし信用に足る...どうだシエル。お前がよければ、この子をお前の婚約者にしようと思うが」
嫌な予感は見事に的中し父様の話に国王も乗り気になってしまった
頼りの綱だった王子も
「いえ、構いません。よろしくお願いしますね」
婚約を認めにこりと笑い手を差し伸べる
本当ならすぐにでも『私には荷が重すぎて無理です』なんて言ってこれを回避したいのだが、この雰囲気から無理なことはすぐ分かった
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
私も出来るだけ微笑みながら王子の手を握り握手をする
その後ろでにこにこしながら私達も見ている父様と国王
「はい、娘を頼みますよ王子」
「ルナさんも息子のことをよろしく頼むぞ...じゃあ、祝杯と行くかな!」
「おお!いいな!久々に飲み比べでもするか〜」
「受けて立とう!それじゃあ二人は話したいこともあるだろうし、帰る時刻にまたここで落ち合おう」
父様と国王はそう言うやいなやどこかへ行ってしまった
そして部屋に残されたのは私と王子だけ...
気まずい!気まず過ぎる!!
何を話せばいいの?
いや、まぁ?ゲーム一応全エンド見てるから?好みとかはバッチリですよ?
でもね!子供の頃からじゃなくて、学園のシエル君だからね!!
それに初対面で好み知られてたら怖いよね!?
内心焦りながらも王子の様子を見てみると王子はにこり笑っていた
その笑顔に恐怖を覚えつい言ってしまった
「あの、王子!父様の発言のせいでこのようなことになって申し訳ありません!王子が好意を寄せる方ができたらこの婚約などすぐに破棄して下さって結構ですので!!」
私の発言を聞いた王子は初めきょとんとしていたが、すぐに笑い出した
「あはは、面白いことをいいますね。僕はこの婚約に不満はないですよ?確かに僕はあなたの事はまだ何も知りません。だけど、それはこれから知ればいいことです。あと、僕らはもう婚約者同士なんですから『王子』ではなく『シエル』と呼んでください...ルナ」
「は...はい!シエル様」
「...様はいりませんよ?」
そう言う王子なら有無を言わさぬ圧力を感じ急いで言い直す
「シ...シエル...」
「はい、これからもそう呼んでくださいね?...父上達のお話はきっと長くなるでしょうからルナのこと僕に教えてくれませんか?」
「もちろんです!よければ、おう...シエルのことも教えて下さい」
「はい、構いませんよ」
こうして、父様と国王が戻るまで私たちはずっと話し続けた
好きなことや嫌いなこと、家族のことやこれからのこと...
話しているうちにあることを思いつく
それは、『大厄災対策のことを王子に相談してみる』ということ
会ったばかりだしまだ信用されているかは分からないけど、会った当初に比べ話しやすくなったし王子が動いてくれれば私が動く以上に人が救えるはずだ
意を決して話してみることにした
「シエルに相談したいことがあるんです」
「ん?どうしたの」
さっきまで笑っていた私が真剣な顔になったらこともあり王子も真剣な顔で聞いてくれた
「実は、私は先日大熱を出して倒れたのですが...あれからずっと同じ夢を見るのです」
「どんな夢ですか?」
大厄災は夢ではなく前世の記憶だし倒れた日以来一度も見ていないけど、大げさに言ったことで王子の興味をあげることが出来た
王子に信じてもらえるようゲームの大厄災のことを思い出しながら話を続ける
「一年後...今から一年後季節はわかりませんが、突然大量の魔物達が現れ、人々を襲い出すのです...多くの犠牲者が出て国もボロボロ...そして最後に『魔王』と名乗る人形の魔物が現れて終わるのです。心配し過ぎだとは思うのですが、何かの予知のようで気になってしまうのです」
沈黙が流れる
王子は何か考えているようだった
「...この話は僕以外の誰かに話しましたか?」
「いえ、こんな話をしたら家族や使用人たちは私が熱で頭がおかしくなったと思ってしまうでしょうから...」
そう...だから相談出来るのは王子ただ一人
もし、王子もこの話を馬鹿げた話と受け止められてしまったら私は自分のガチャアイテムとチートレベルで対応するしかない
王子は再び少し考える
そして...
「わかりました。僕はその話を信じます」
と言ってくれた
「えっ!信じてくれるんですか!!」
まさか信じてくれるなんて思っていなかったから思わず立ち上がる
「ええ、もちろんですよ。それにもし嘘...もしくはそんな悲劇が起こらなくても国の強化に繋がりますから悪い話ではないです。それでこの話なんですが、父上に話してもいいですか?」
「もちろんです!お願いします!!」
まさかの王子の申し出に嬉しくなり頭を何度も縦にふる
思わぬところで大厄災対策ができそうで嬉しかった
あとは、国王が信じてくれれば...
バタン!!
話が一段落付いたところで扉が思いっきり開く
「ははは!仲良くなったか〜二人とも〜」
「ルナ〜そろそろ帰るぞ〜」
入ってきたのは思いっきり酔っ払った父様と国王
シエルと顔を見合わせため息をつく
「はいはい、父様。城の方にご迷惑がかからぬように早く帰りましょう」
「大丈夫だ〜俺はまだ酔ってないからな〜」
「酔っ払いはそう言うものですよ!もう...恥ずかしいな...」
「シエル...ルナさんはどうだ〜?ジェルドの娘だからな!面白い子だっただろ〜」
「はい、そうですね。しかし、父上は国王として見苦しいので早く自室に戻ってください」
「相変わらず、あたりが強いな〜父上悲しいな〜」
お互いの親を介護しながら再び顔を見合わせる
「すみません...帰りを見送れそうにないので、使用人に任せてもいいですか?」
「はい、こちらこそ父様が迷惑をかけました。ぜひ今度は私の家にでも遊びに来てください」
「そうですね。また後日伺わせてください」
シエルはにこりと笑うと国王を引っ張って去っていった
私も使用人の人に外まで案内してもらい礼を言って馬車で家に帰る
最初は怖いばかりだったが、今は違う
話してみると優しかったし、大厄災の話も真剣に聞いてくれた
王城に行ってシエルと会えて良かったな
馬車の中で今日のことを思い出し笑う
馬車はガタガタ揺れながら家に向かって進んでいく
酔って帰ってきた父様が母様に3時間説教されるのはまた別の話
ゆっくりノロノロ投稿になりますが見捨てないでくださると嬉しいです!!!<(_ _)>