『赤い月がのぼったら』
「大変、大変、、、」
「いそがなくっ、ちゃ。」
秘密の森のお城から
明け方早くお呼びがかかり
妖精たちがあつめられました。
王様が申しますところには、
この国をいずれは治める王子さまの
お披露目をかねての誕生日パーティを
国中の人々をあつめて開こうという
お話しでした。
大臣たちは顔を見合わせて
どうしたものかと思いましたが
王様は言い出したら聞かぬ方
誰も反対はできません。
さっそく、招待状が作られて
国民に配られることになりました。
✲゜。.☆.。₀:*゜✲゜*:₀。
今晩、10時、
王子さまの誕生会を開きます。
みんなでお城にきてください。
ごちそう、ダンス、お喋りと
楽しい一夜にいたしましょう。
夏の女神の笛の音が
パーティの始まる合図です。
ただし仮面をつけてきて、
その日ばかりは
門番も 騎兵も 掃除婦も
酒屋のおやじも、
貴族も、
みーんな、みんな、無礼講~
王様より
✲゜。.☆.。₀:*゜✲゜*:₀。
お城のまえで衛兵が
高らかに招待状を読み上げました。
王様はとてもうれしそうです。
「楽しくなりそうだな、
どうだ、オレはいい王様だろう~」
「そうですね、さすが王様!」
「素晴らしい!」
「きっと、楽しい夜になりますね。」
「そうだろう、そうだろう、
ワッハッハ(笑)」
大臣も 誰も 王様には逆らいません
だって、王様は知らなかったから
貴族以外の人々が
一生懸命、はたらいて
この国をささえてていることを
妖精たちが招待状をくばっても
いそがしくて、
きっと誰も来ないだろう………
「それでは、困る!わしのクビがとぶ、」
と、大臣が言いました。
「…うーん、どうしたものか、、」
「どうしたものか、、、」
「こまったぞ、」
「こまったなあ」
「あっ!そうだ、」
「大臣!大臣 ありますよ。」
夏の風がいいました。
「ん?ん、なになに?も~にょもにょ」
「なるほど、なるほど」
「赤い月♪」
「それなら、ぜったいみんな来る。」
王様にナイショで
もう一通 招待状が配られました。
✲゜。.☆.。₀:*゜✲゜*:₀。
”赤い月”がのぼったら
お城に集合してください。
王子様の誕生日
どうぞ、みなさま遠慮なく
ごちそう、ダンス、おしゃべりに
楽しい一夜にいたしましょう。
夏の女神の笛の音が
パーティの始まる合図です。
ただし仮面をつけてきて、
その日ばかりは
門番も 騎兵も 掃除婦も
酒屋のおやじも 貴族も、
みーんな、みんな、無礼講~
王様より
✲゜。.☆.。₀:*゜✲゜*:₀。
この国には
むかしから”赤い月”を好きな人と
見られたら
両想いになれるという
言い伝えがありました♪
若い娘たちは思いました。
王子さまと赤い月がみられたなら
ひょっとしたら、
ひょっとして?
お姫さまになれるかも♡
「おぉー、、」
「それなら、それなら、お前たち」
「ぜひとも、ぜひとも行かなくちゃ、」
挿絵;グリム寓話シンデレラより
「行っちゃうの?」
少年はあわてて後を追いかけました。
「ええ………」
少女はだまって、やさしく微笑んで、
少年に腕いっぱいの花束をわたしました。
花びらは風にのり
少年の腕からハラハラと飛び立ちました。
夏がはじまる前の
さいごの雨がたちどまり
少年の影を濡らしました。