二日目 part6
真琴と七葉は、しばらくそのまま話を続けた。途中、釣った魚を置いて光輝が戻ってきたが、気を使って席を外してくれた。
結局、昼食の準備が出来て楓が呼びに来るまで話ていた。
昼食会場に行くと、すでにテーブルに食事が用意されていた。今回も皐月が腕を振るって作ってくれたらしい。
串に刺された山女魚が、こんがりと塩焼きにされて一人一尾出された。良い香りがする。
全員が席に着くと、皐月が料理の説明をしてくれた。それから、全員でいただきますをした。
「どんどん食べてよ。ご飯とみそ汁のお代わりならあるから」
そう言いながら、皐月は口いっぱいにご飯を書きこんでさそくお代わりしている。
「そんなに、食べてたら太るわよ」
楓がそんな皐月を見て、茶々を入れる。
「大丈夫、私こう見えても痩せの大食いだから。食べても太らない体質だからさ。ホントこの体質サイコー。私にぴったりだよね」
「いつか絶対に太り始めるから、今に見てなさいよ」
「えー、でもおいしいものはたくさん食べたいじゃん。板前長からも試作品とかの試食でこの太らない体質重宝されてるのにな」
そんなことを言いながら、次は味噌汁をお代わりしている。
真琴は、光輝の隣に座っている。七葉は悟と将棋の駒を片手に昼ご飯を食べている。
「七葉と何話してたんだ」
「色々話したよ。ほとんどが悟さんの事ばかりだったけど、笑い話もたくさんあって楽しかった」
「そっか、後でその話聞かせてくれよ」
「いいよ」
真琴は隣に座る光輝から目線を外すと、正面に座っている弥生と桜に目を向けた。
二人は俯いたまま黙々と食べている。よく見ると、山女魚の骨を一本一本きれいに除けている。
「弥生ちゃん、桜ちゃん骨を取るの大変でしょ」
呼びかけると二人は、顔を上げて真琴の方を見た。
「こういうのは、まず串から魚を取って、それから箸で上から押さえって身をほぐしたら食べやすいよ」
真琴がアドバイスすると、二人はそれにしたがって串から魚を取り、箸で身をほぐした。
「ホントだ、簡単」
弥生がボソッと呟いた。
「ありがとう」
二人そろって礼を言ってくれた。
七葉と違って、元気のよい声ではなかったが落ち着いた響きのある声だった。
「二人は、初めて釣りしたの?」
初めて二人と話をしたので、この勢いで色々話をしておきたかった。
内向的な二人は、あまり会話が好きではないのかもしれないと思ったが、今は忘れることにした。それに、二人の姉である皐月はあんなに社交的な人であるから、多少は話せるかもしれないと思った。
「今日が初めてだったよ。光輝兄ちゃんが教えてくれた」
「教え方下手だったけど」
真琴は、目を隣にいる光輝に向ける。弥生も桜もそれを見習い、光輝に目を向けた。
三人に見つめられた光輝は、目のやりどころに困った。
「教えてやったのに、そんな言い方しなくてもいいだろ」
「でも、もっとうまく教えて欲しかった」
「擬音語だけじゃ、何も伝わらないよ」
話を聞く限り、光輝の教え方はひどかったのだろう。擬音語ばかりの説明と聞けば、その場に居なくてもなんとく想像がついた。
「仕方ないだろ、僕も初めてだったんだから」
「初めてだったの!」
思はず声を荒げてしまった。みんなの視線が自分に集めるのを感じて、顔が熱くなった。
「どうしたの真琴姉ちゃん」
将棋中の七葉が駒を打つ手を止めて聞いて来た。
「ごめん、ちょっと驚いて」
そっか、と言って七葉は再び対局に集中した。
すみませんが、しばらくお休みします。