一話・日常
「・・・今日も、か。」
ベッドの上で天井を見つめながらいつもの言葉を呟いた。
憂鬱な一日が今日も始まる。
そんな考えが私の心に重く圧し掛かる。
はあ、溜息を一つ、むくりと起きてしばらくボケーっとなる。
髪を整え、制服のスカーフを結ぶ。
私の学校の制服はセーラー服で結構可愛い・・・らしい。
私も顔は悪くないほうだけど、お洒落とかそういうのにはとんと興味が湧かない。
どちらかと言えばお洒落より本だ。
眼鏡も着用しているからよく真面目ちゃんと呼ばれたり。
これでおさげだったら完璧だね、とか言われるけど残念ながら下ろしている。
鏡を見てまた一つ溜息。
ぼうっとしていると、一回から、何をしているの、と母の声。
その声に一瞬嫌悪感を覚える。
だけどすぐに自分を叱咤する。嫌悪感を覚えてはいけない、と。
私は階段を降りる。
足がとても重い。いつもの事だが。
なぜか、答えは単純。
母が大っ嫌いだからだ。母だけじゃない、父も、上っ面だけの友人も。
好きと言えば父方のお祖父ちゃん、お祖母ちゃんくらい。
それでも一階に降りて料理中の母と新聞を読んでいる父に挨拶をする。
もちろん、これまでに培ってきた作り笑いで。
良い娘を演じている、ということだ。
そんな自分にも嫌悪感を抱いて。
私ってしょうもないな、とか思ったりして。
落ち込んで、それでも笑って、美味しいって取り立てて旨くも不味くもない朝食を食べて、
学校は楽しい?って訊かれれば笑顔でうんと頷いて。
すぐにこの場から逃げ出したくて、もう学校行くねと家を出る。
だけどその学校も行きたくないけど、
無断欠席なんてもちろん駄目で、重い足取りで通学路を行く。
永遠に歩いていられればいいなって思うけど、
無情にも学校の門が見える。
それはまるで怪物の口のようで、私は今から怪物の井の中に入っていくんだ。
胃液で溶かされるんだって馬鹿なことを考える。
そんな日々に辟易していた。