初めまして黒猫
猫かわいいです。
本当に猫がかわいいです。ペットショップに行くと強くそう思います。
黒とのそもそもの出会いは、中学一年生の4月にさかのぼる。
当時、私は魔王(他作品参照)と仲良くなり始めていた。その日も一緒に帰ろうとした時、何だかさらりと奴は合流していたのだ。
当時は思った。何だコイツ。こっち見んな。こっち来るな。半径一メートル以上離れて歩け。
今となってはこっちからずいずい近寄っているのに、わけのわからない話である。
初日はほとんど話さなかったような気がする。コミュ障人見知り男嫌いが、ほぼ話したこともない男子と会話できるわけがなかった。
いつから打ち解けたのかはもう覚えがない。私の勝手な予想では、二日三日したら多少は話すようになったのではないか。それでも二学期ぐらいまでは警戒していたのだと思う。
話はがらりと変わるが、昨日、妹とホームセンターのペットショップをのぞいた。何を買うわけでもなく、ただの見学だ。
すぐに猫のケージの前に張り付く。
「妹よ、天使だ。地上に降りた天使がおる」
「何言ってんのお姉ちゃん」
そこにいたのは、ふてぶてしく寝そべった少し長毛の雄猫だった。最初はガラスに額をべったりとくっつける不審者にビビっていたようだが、30分ほどそうしていると見慣れたのか、こちら側の窓に近づいてきてもたれてきた。私の興奮っぷりは言わずともわかるだろう。
「ふぉぉぉぉぉー!? かわ、かわわっ、かぁわいいー!」
騒ぐ私の目の前に、小さな肉球が見えた。ぺたっ、ぺたっとこっちをたどたどしく叩いてくる。
「妹ぉぉぉ! 猫ちゃんが懐いてくれたぁぁぁ!」
妹は冷静に一言言った。「それ、猫パンチ。お姉ちゃんは獲物のドブネズミってことだね」
がっくり肩を落としてペットコーナーを離れた時、似たような感覚を思い出した。黒の言動に一喜一憂するあの感じだ。
本当にこんな感覚だ。一目見て、喜んで話しかけ、反応にぬか喜びし、あとで凹む。それも毎回毎回。
「マジもんの猫だな」
何言ってんの、お姉ちゃんは猫しか見てなかったじゃん。猫に決まってるじゃん。妹は不思議そうに言う。
ああ、本当にそれだ。猫しか見てない。最初はこっちから距離を取っていたくせに、今は猫しか見えないんだ。
遠ざかるケージをもう一度振り返る。さっきの長毛くんは背中を向け、昼寝の最中だった。
「あっち向いて黒猫、ね」口の中で作品のタイトルを呟いた。
学童育ちのおかげで、オシャレでキラキラ系(自分とは正反対)の人達と仲良くなる機会が多かった私には、黒は珍しいタイプの友人だった。初めて会う人種といってもいいだろう。でも、その黒猫を私はけっこう気に入ってしまった。
ああいう気まぐれなのに取り入るとあとで痛い目見るぞ、と片方の自分が言う。
何度引っかかれたって構わないさ、ともう片方が返す。
いいんだ、一方的にだけど会えて嬉しい。初めまして黒猫。
また次話もよろしくお願いします!