壊すことしか頭にないの
「だってすぐに壊れちゃうものを頑張ってつくってもしょうがないでしょう?それこそただのおままごとだわ。私はそんなものじゃもう騙されないの。それよりいまあるものを芸術的に壊すことがよっぽど前向きだと思わない?ほら、貴方も私が綺麗に壊してあげる。」そういって彼女は美しく笑いながら私をーーー。
息を乱しながら私はベッドから跳ね起きた。
起きたばかりで混乱する頭と鼓動を落ち着かせながらも頭の中を整理していく。
つい先程まで視ていただろう悪夢は起きると同時にあっという間に薄れてしまい、何を視たのかは朧気にしか覚えていないがそれがここ1週間程続いているのは把握している。
何がきっかけかは解らないがどうやら夢の中の彼女に無意識の私はいたくご執心のようで私としては勘弁してほしいものだなとため息をついた。
時計をみるともう夜中で、なんだか眠る気になれなかった私は少し外に出ることにした。パジャマの上にカーディガンを羽織って庭に出てみると満天の星空が浮かんでいて、三日月が離れたところに鎮座していた。飽きることなく夜空を眺めていると端の方が白んできているのに気づいた。どうやら夜明けまでずっと外にいたらしく、身体も冷えきっているようだった。今さらのように身震いするとそろそろ家に戻ろうと歩き始める。すると後ろから声をかけられた。
「時間切れね」
慌てて後ろを向くとさっきまでいなかった少女の姿があった。
「貴方はヒントに気づかなかった。つまりそれだけの価値しかないということ。だから約束通り壊してあげるわ。」
その言葉と共に視界が歪む。
「壊される貴方には興味ないわ。さようなら。」