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[三章]騒動

レオンたちは、アリサの住んでいる村からククルの町へと向かっていた。その道のりはさほど遠くはなかったが、それでも楽しく会話を交わす時間は十分にあった。そんなときルナは、ふと手に持っているミーナのバッグを見て、ミーナに話しかけた。


「なぁ?ミーナ。」


「ん?なぁに?」


「こんなにお菓子詰め込むんならほかになにか入れるもんなかったのか?」


「うーんとね、みんなでお菓子たべれたら楽しいかなーっておもったの。」


そんなミーナの返答にまたも呆れながらルナが話した。


「おいおい、遠足じゃないんだぞ?」


「えへへ~。」


上機嫌なミーナはルナの言葉を気にせずそのまま歩いて行った。またしばらく歩いていると、今度はアリサがレオンに話しかけてきた。


「レオンさん、聞きたいことがあるのですが・・・。」


「ん、なに?」


「レオンさんのお父さんやお母さんはどんな人なのですか?」


この質問に対し、レオンは少し困ったような顔で答えた。


「ああ、母さんは僕が物心ついたときには病気で死んじゃって、父さんも船の事故で・・・・・。」


レオンの返答を聞いて、アリサは肩を落としてレオンに謝った。


「あ、ごめんなさい。」


「大丈夫さ、僕にはユンがいたから今まで頑張れたんだ!」


「でも、今その妹さんは・・・・・。」


「ああ、僕がいなくてもしっかりやってるかな?心配だな。」


そう言って笑いながらも眉を下げるレオンをアリサが励ました。


「きっと大丈夫ですよ!だって、レオンさんの妹さんなんですもの!」


「アリサ・・・・・、ありがとな!」


アリサに励まされ、レオンが元気を取り戻す。そんな話をしているうちに、レオンたちはククルの町の前まで到着したので、アリサがレオンに町を紹介した。


「レオンさん、ここがククルの町です!」


「へぇ、なんだか賑やかなところだな!」


するとミーナが駆け足で町の入り口に入ってレオンたちに向かって言った。


「あたしが一番乗りなのー!」


ミーナのその行動につられてか、レオンとアリサは同時に笑った。ルナも、やれやれといいつつも笑っていた。こうしてレオンたちはククルの町へと入っていった。



ククルの町へ入ると、まず目の前には様々な物が売られている市場があった。新鮮な果物や海産物、日用品なども売られていて、市場の中はとてもにぎわっていた。その光景にレオンは興奮していた。


「すごいな!ここには海の世界のいろんなものが売られているのか!」


「はい!私もここによく買い物にいくんです!」


そんなレオンとアリサを見て、ルナがアリサに聞いた。


「じゃあ、学者さんを探す前にこの市場を見ていくかい?」


「いいえ、今は学者さんを探すほうが先ですから。」


「そうだな、僕もみんなと一緒に行くよ。」


レオンは自分のはやる気持ちを抑え、一同の目的を優先させることを選んだ。一同は市場を抜けたところにある石橋の先の広場に向かった。市場の中を抜けていくとき、レオンたちは市場の商品が本当に多種多様であることに感心した。特にミーナは、あちこちに行ってしまうので、たびたびはぐれそうになってしまっていた。そして石橋を渡って広場に着くと、そこは広く穏やかな場所であった。市場へ向かう人や、広場の奥にある学校から帰る人たちが行き交っていた。その穏やかな光景を見て、レオンが言った。


「海の中に、こんな平和なところがあったんだな。」


その言葉に、アリサがにっこりと笑顔で答えた。


「私たちの知らない世界は、まだまだたくさんあるんですよ。」


レオンが上を見上げると、遺跡のときに見たものと同じように海の水が天井を作っていた。この上にはレオンと同じ「人間」が住んでいる。そしてレオンは今、すべてが未知数の異世界、海の世界にいる。そう思うと、レオンはこれから旅をする世界に対して、とてもわくわくした。


「僕はここで、どんな体験をしていくんだろう?これからのことに、不安も少しあるけど、それ以上に、本当にワクワクしてるんだ!!」


レオンが心の中で自分の気持ちを言ったそのとき、広場の右の方で、ドンッ!となにかがぶつかる音がした。レオンたちがその音のした方を見ると、そこにはしりもちをついている丸眼鏡の白衣の女性、辺りにばらばらに散らばった書類のような紙、そして奇抜な服装と髪型の男が3人立っていた。


「どうしたのでしょうか?」


「なんだかいやな感じがするねぇ・・・・・。」


レオンたちは、白衣の女性が3人の男の先頭にいる大柄な男にぶつかったのだろう、ということは分かったが、その中でルナだけは、その光景の不穏な気配を感じ取っていた。女性は男たちに対して詫びるように頭を下げた後、落ちてしまった書類をかき集めた。すると、大柄な男が女性の長髪をつかんで頭を持ち上げたのだ。これにはレオンたちも驚いた。


「い、いたたたた!なにをするんですかぁ!?」


女性がたまらず声を上げる。すると大柄な男が女性に向かって言い放つ。


「おい!俺たちにぶつかっといてごめんなさいで済むわけないだろ!」


それに続いて取り巻きと思われるほかの2人の男が言う。


「そうだぜ!アニキにぶつかった罪は重いんだぜ!」


「でもアニキもそこまで鬼じゃないから有り金全部出せば許してやるよ!」


女性は男たちの脅迫にすっかりおびえてしまっていた。レオンたちは、もちろん女性を助けようとした。そこで真っ先に行動したのがルナであった。


「待ちな!!」


ルナが男たちに向かって呼びかけると、男たちはルナの方を向いた。


「なんだ?俺たちにはむかうのか?言っとくが俺たちはここいらで有名な・・・・・。」


大柄な男がそこまで言いかかったところで、ルナがその言葉を遮るように言い放った。


「あんたらのことなんざアタシはどうでもいいんだよ。まずはその女のひとから手を離せ。」


「な、なんだとぉ!?調子に乗るんじゃねぇぜ!!」


大柄な男は、ルナの言葉に怒り襲いかかってきた。大柄な男はルナめがけて殴りかかったが、ルナはその攻撃を華麗にかわした。


「なにぃ?!」


「そんなウスノロ当たんないよ!パンチはこうやるんだ!」


そう言ってルナが大柄な男の腹に強烈な一撃を当てた。そして大柄な男はそのまま後ろに倒れてしまった。


「ぐふぉ・・・・・!!」


「あ、アニキ!!」


「てめぇ、おぼえてやがれぇ!」


2人の取り巻きの男は捨て台詞を吐くと、大柄な男の肩をかついで逃げて行った。レオンとアリサは、男たちにからまれていた女性のもとへかけつけて怪我はないか確認した。


「大丈夫ですか?お怪我は?」


「い、いえ・・・・・。ありがとうございます。」


「よかった。しかしなんだったんだあいつら?」


一方ミーナはルナのもとへ寄ってさっきのルナの華麗な攻撃を見てはしゃいでいた。


「ルナおねえちゃんあんな大きな男の人倒しちゃうなんてすごいの!」


「へへ、あんなのたいしたことないって!」


ルナがミーナの頭をがしがしと撫でながら言った。ミーナの髪の毛がややぼさついたが、ミーナはまったく気にしていないようだ。レオンとアリサが女性を連れてルナとミーナのもとに集まった。女性はレオンたちに深く頭を下げてお礼をした。


「あの、助けてもらってありがとうございます!」


「いえ!あなたが無事でよかったです!」


一通り状況が落ち着いたところで、レオンが女性に学者のことについて聞くことにした。


「そうだ、僕たちこの町で海の世界について研究してる学者さんを探してるんだけど、なにか知ってることとかある?」


「へ?あぁ、セナさんのことですか?それなら私その人の助手をしているんです。今も書類を渡しに行くところで・・・・・。もしよかったら私が研究所まで案内します。」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


なんとその女性はその博士の助手であった。レオンたちは当然、女性に研究所への案内を頼んだ。一同は女性に学校の左側の隣の小さな家に案内された。助手とともにその家に入ると、中は2つの大きな本棚があり、その本棚に入りきらなかったたくさんの本が床に散乱してた。そのため足場が限られてしまっており、それなりに広いはずの空間なのだがなぜか窮屈に感じてしまう。助手は先に左側の本棚の裏に入り、誰かと話し始めた。レオンたちはその話し声を聞きながら待つことにした。


「博士、頼まれていた書類を持ってきました。」


「おお、おつかれさん。」


「それと、博士にお客様です。」


「ん?わしにか?通していいぞ。」


「はい。」


どうやら本棚の裏にその博士がいるようである。助手が本棚の裏からレオンたちのそばに来て、本棚の裏に案内した。するとそこには、見た目が15歳くらいの白衣を着て、眼鏡をかけた金髪で長髪の女の子が小さな椅子に座っていた。助手はすぐに、この女の子がセナ博士であると説明した。セナは陽気な顔でレオンたちに挨拶をした。


「やぁやぁ、よく来たね。わしこそ海の世界の研究者、セナというものだ。こう見えてもわしは長くこの研究をしているからな。何でも聞いてくれ。」


セナこ言葉を聞いた後に、ルナがまだ驚いたような様子で話しかけた。


「しかし驚いた!博士なんていうもんだからおじいちゃんかとおもったよ!」


「うん、あたしもー!」


ミーナも続けて言うと、それを聞いたセナが笑いながら答えた。


「まぁそりゃそうだろうな。ココだけの話、わしはこの見た目で軽く50年は生きておる。」


セナの話を聞いてレオンたちは再び驚いた。そして、セナとの話に区切りがついたところで、アリサがセナに祭壇のことについて聞くことにした。


「あの、私たちは神殿の祭壇が暴走したと聞いて、その暴走を鎮めに行きたいのです。博士は神殿についてなにか御存じありませんでしょうか?」


セナがその質問を受けると、少し考えてからアリサに言った。


「ふむ・・・それについてはここよりも、学校の資料室で説明した方がわかりやすいだろう。わしはこいつと先に学校に行って資料を探しておくから、おまえたちは少し市場でも見に行ってるといい。あそこはいいぞ?なんたってなんでもそろってるからな!では準備ができたらこいつを学校の前で待たせるから夕方前にはくるんだぞ?」


そう言って、セナと助手の2人は家を出ていった。



レオンたちも一旦外に出て、市場に向かうことにした。市場は、昼過ぎでも相変わらずにぎわっており、見ているだけでわくわくしてくる。


「それじゃ、ここで別行動にしよう。僕も気になってたものがあるんだ!」


「賛成です!」


「アタシもそれでいいよ!」


「それじゃあたしはルナおねえちゃんと一緒に行くね!」


レオンたちはそれぞれ別行動をとることにした。ルナとミーナは一緒になって行動することになり、レオン、アリサ、ルナとミーナはそれぞれ行動を始めた。レオンはまず、目についた果物のようなものが売られている露店に行くことにした。レオンはまずその露店で売られているものを見て驚いた。


「これ、クオーリアでやる市場でも見たことあるぞ!?」


レオンはこの海の世界の独特なものが売られていると思っていたのだが、そこには地上でも見られるような新鮮なリンゴやバナナなどが売られていたのだ。レオンが果物を見ていると、若い店主が話しかけてきた。


「やぁ!ひょっとして地上からのお客さんかい?」


「え?そうだけど、どうしてわかったんだ?」


「そんなに意外そうに果物たちを見ているんだ。それに服装だってここらじゃ見ないからな。どうだいこの果物たちは?俺のじいちゃんの世代から育ててきたんだ。買ってくか?」


店主に勧められて、レオンはリンゴ、バナナ、ブドウを2つずつ買った。買い物を終えたレオンは、アリサやルナとミーナの様子を見に行くことにした。まずはるルナとミーナのもとへ行くと、2人はマナが売られている露店の前にいた。ルナがそばに来たレオンに話しかけた。


「レオン、ここは本当になんでもあって面白いな!マナまで売ってるなんて驚いたよ!」


「ああ!全然飽きてこないよ!」


「ねぇねぇ、こっちも見に行こうよ!」


「はいはい、それじゃレオン、またね!」


ルナとレオンが話していると、ミーナがなにか見つけたらしく、ルナの手を引っ張る。ルナはひとまずレオンと別れると、レオンも今度はアリサの様子を見に行くことにした。アリサは石橋近くの魚介類売り場にいた。アリサがレオンを見つけると、楽しそうにレオンに話しかけた。


「レオンさん、ここはとても素敵なところです!レオンさんもそうおもいませんか?」


「ああ!僕も楽しいよ!アリサはなにか買ったの?」


「私は果物を少々。レオンさんは?」


「僕も果物を買ったんだ。アリサと一緒だな!」


「ふふ♪そうですね!」


レオンとアリサが楽しくはなしているところに、ルナとミーナが合流した。そしてルナが2人に、そろそろ夕方になろうとしていることを伝えた。


「レオン、アリサ。そろそろ夕方だから、学校に行ってみようか?」


「そうですね。レオンさん、行きましょう?」


「ああ!それじゃ行くか!」


「わーい!あたし学校初めて見るから楽しみ!」


ミーナが相変わらずの元気ではしゃぎながら石橋を渡ると、レオンたちも石橋を渡って学校に向かうことにした。



石橋を通って広場に入ると、学校の玄関にセナの助手が立っていた。レオンたちを見つけた助手は、レオンたちに手を振って位置を教えてくれた。それを見てレオンたちは助手のそばに寄った。


「おまたせしました。」


「いえいえ、こちらもちょうど資料がそろったところなので!」


アリサがまず挨拶をすると、セナの助手が資料室まで案内してくれた。学校を入って右のつきあたりにある部屋が資料室だ。そこに入ると、壁全体が本棚になっており、その部屋のいくつかの長テーブルのうちの一番手前にセナが座っていた。


「おお、待っていたぞ。ほれ、皆ここに座れ。」


そう言ってセナは自分が座っているテーブルの反対側を指差した。レオンたちとセナの助手がそこに座ると、セナが地図を取り出した。それは海の世界の一部を記した地図だった。するとセナが、その地図にペンで5か所に丸のしるしをつけた。アリサがこのしるしについてセナに聞いた。


「セナさん、このしるしは?」


「おまえさんたちが向かおうとしている神殿の場所さ。道中は様々な危険に見舞われるだろう。凶暴なモンスター、旅人を狙った盗賊どもがわんさかいる。それに、神殿には祭壇を守る守護獣しゅごじゅうがおるという。」


守護獣という聞きなれないものについて、ルナが聞いた。


「守護獣?」


「読んで字のごとく、祭壇を守護するけものだ。もしかしたら祭壇の暴走により守護獣も暴れるやもしれん。と、このようにどこで命を落としてもおかしくないような旅になるだろう。それでも行くのか?」


セナがレオンたちに覚悟を問うと、まず先にアリサが答えた。


「はい!私は姉さんに託されたんです。ですから、すべての祭壇を鎮めて海の世界を守るために、私は行きます。」


そのアリサの言葉に、ルナがアリサに突っ込むように言った。


「おいおい、「私たち」の間違いだろ?」


それに続いてミーナとレオンもアリサに突っ込む。


「そうなの!アリサおねえちゃんだけじゃなくて、みんなで一緒に旅するんだよ!」


「そうだぜ!僕たちが一緒だ!」


その言葉を受けて、アリサはうれしさで少し涙ぐみながらその3人に感謝した。


「みなさん・・・!ありがとうございます!」


その光景をセナとセナの助手が少し笑いながら見ていた。


「決心は固いみたいだな。」


「はい、そのようですね、博士!」


ふとセナが窓を見ると、外はもう暗くなり始めた頃だった。


「おや、もうこんなに暗くなってるのか。お前さんたち宿はとったのか?」


「いえ、これからです。」


「そうか、まぁひとまず学校の外に出ようか。もう戸締りの時間だしな。」


セナの提案にレオンたちもに賛成し、全員で学校の外に出ることにした。



レオンたちが学校を出ると、そこにはあの時セナの助手に絡んできた3人の男がボスと思われる筋肉質な男を連れて待ち構えていた。それを見て、ルナがレオンたちの前に出て男たちに向かって話す。


「アンタらアタシらになにか用か?」


ボスの子分の大柄な男がいかにも怒ったような様子で答える。


「当然だぜ!やられっぱなしで追われるわけがねぇぜ!」


それに続いて2人の取り巻きが言い放つ。


「俺たちがあのまま引き下がると思ったら大間違いだぜ!」


「そうだぜ!ボス、やっちまいましょう!」


取り巻きの言葉の答えるように、ボスが唸り声をあげて身構える。そんな様子を見て、セナがレオンたちに言った。


「ふーむ、こやつら暴走したマナに当てられて気性が荒くなってるようだな。」


初めて聞く現象に、アリサがセナに聞く。


「どういうことなのですか?」


「これも祭壇の暴走の弊害だろう。とりあえずこやつらを殴って黙らせるのだ!」


「は、はい・・・・・!」


セナのどこか適当さを感じる対応に、アリサはガクっとしながらもレオンたちとともに武器を構えた。一同が戦闘態勢に入ったところで、ルナがレオンたちに掛け声を送った。


「行くよ!!」


ボスと3人の手下との戦闘が始まった。初めにルナが先陣を切ってボスに突っ込んでいき、そのあとをレオンがついていくように前進した。


「ついてきな、レオン!」


「わかった!」


ミーナはやや離れた位置で攻撃魔法を唱え始め、アリサは周囲の様子を見ながら部下の一人に攻撃を仕掛けていった。


「水の呪文を唱えるよ!」


「お願いね、ミーナちゃん!」


まずルナがボスに強烈な走り込みパンチを飛ばすように放った。ボスはすかさずこれをガードするが、パンチの衝撃で大きく後ろに仰け反り大きな隙ができた。


「ぐおぉ!?」


「ほら、どんどん行くよ!!」


それを見逃さずルナは水のマナの力を利用して空中を蹴ってボスに飛び蹴りを放った。ボスはこれをまともに喰らい、そのまま吹き飛ばされていった。


「うぐおぁ!!」


「へっ、どんなもんだい。」


ルナが着地したところに、ボスの部下の大柄な男が持っているナイフでルナに後ろから襲いかかってきた。


「よくもボスに!喰らいやがれ」


「不意打ちなんてさせないぞ!」


レオンはすかさず剣で部下のナイフを払い、素早く2連撃を放った。

部下は強烈な攻撃を受けてその場に倒れ込んだ。


「ナイス、レオン!」


「下っ端は僕に任せてルナはボスをよろしく!」


「オッケー!!」


ルナはボスの方へ、レオンはアリサとミーナの元へ散開した。一方アリサとミーナは、2人の部下と同時に戦っている最中であった。


「どうしました?2人いるんですからもっと来てもいいんですよ!」


「このガキなめやがって~!」


「こうなったら同時に行こうぜ!!」


2人の部下が同時にアリサにナイフで攻撃してきたが、アリサは2人の部下の真上に飛びあがり回避し、そのまま後ろに回り込んで部下の一人の腰に強烈なキックを当てた。これを喰らった部下はそのばに倒れたが、すかさず起き上がりアリサに攻撃しようとした。


「いてーな!もうゆるさねぇぜ!」


「アリサおねえちゃんしゃがんでっ!アクアランス!!」


「うんっ!」


アリサがミーナの言葉に気付いてしゃがむと、ミーナの攻撃魔法「アクアランス」がアリサの頭上を通りその部下の顔面に命中した。そしてその部下はあまりの衝撃に卒倒した。


「ぐへぇ!!」


「あっ!あのガキンチョがぁ!!」


最後の部下が、ついにミーナに攻撃を仕掛けようとミーナに突っ込んでいった。そこへ、ちょうどアリサと合流すべく走ってきたレオンが、その部下に飛び込んで強烈なみね打ちを叩き込んだ。


「やらせるかっ!」


「ギャァァ!!」


部下は思い切り打たれた方向へ吹き飛んでいった。アリサ、ミーナと合流したレオンは、3人でハイタッチをした後、ルナとボスのいる方向を向いた。ルナとボスとの勝負は、すでに決しようとしているところだった。


「もう終わりかい?」


「ウグググ、オマエ、ツブス!!!」


ルナはボスと対峙して挑発した。ボスはその挑発に乗ったようで、大声を上げながらルナに突っ込んでいった。ボスはルナに向かって大振りで強力なパンチを連続で繰り出していったが、ルナはそれをすべて華麗にかわし続けた。


「そんなノロマなパンチ当たらないよ。」


「グウウウウ、チョコマカスルナ!!」


そして、ボスが大振りの拳を放つ時の隙を見せたとき、ルナがそれを見逃さずボスに強力なパンチをボスの顔面に叩き込んだ。強烈な一撃を受け、ふらふらとしているボスにとどめを刺すべく、ルナは右の拳に思い切り力をこめた。


「ルナおねえちゃん、いっちゃえ!」


「おう!!」


ミーナの掛け声に応え、ルナはボスの腹に全力のパンチをたたきこんだ。ボスは大きな唸り声を上げながら吹き飛んで、そのまま川に落ちていった。この戦いはルナたちの大勝利で幕を閉じた。



「ち、ちくしょうー!覚えてやがれー!!」


ボスの部下たちは負けを認め、住宅地の中へ走って逃げていった。ボスも川から這い上がると、先に逃げた部下を追いかけるように逃げていった。レオンたちがルナの元へ駆け寄ると、ルナはレオンたちとみんなでハイタッチを交わした。そこに、セナとセナの助手が拍手しながら近づいて話しかけた。


「大したもんだ。あのゴロツキどもを追い払うとは。」


その言葉に対し、ミーナが上機嫌に答える。


「だってルナおねえちゃん強いもん!」


ミーナに自慢されて、ルナが照れ笑いをして頭をかいた。次に、アリサが思い出したようにセナに聞いた。


「あの、さっきのゴロツキたちが凶暴になったのも、マナの暴走が絡んでいるのでしょうか?」


セナが少し考えて答えた。


「ふむ、可能性はあるな。もしかしたら一刻を争う事態になるかもしれん。」


それを聞いたレオンが一同に言った。


「なら明日はすぐに出発しないとな!」


レオンの言葉に皆が首を縦に振って賛成した。その時、夫婦と思われる男女がアリサの元に駆け寄ってきた。


「アリサ!!」


「その声はお母さん?お父さんもいるの!?」


「ああ、私もいるよ。広場でアリサがゴロツキと戦っていた時いて飛んできたんだ。」


その人物はアリサの両親であった。広場で戦ったアリサを心配してきたのだ。アリサの母はまずルナとミーナとレオンにお礼を言った。


「アリサと一緒に戦ってくれたのね。あろがとう、ルナちゃん、ミーナちゃん。あと、貴方も。」


「僕はレオン。僕もアリサの仲間なんだ。」


「まぁ、頼もしいわ!本当にありがとうね!」


アリサの母がレオンにお礼をすると、アリサの父が関心しながら言った。


「しかしあのゴロツキらを追い払うとは、さすがは元戦士団員の私の娘だ!」


「もうあなたったら。アリサの力だけじゃないのよ?」


「うん、この勝利もみなさんのおかげで、私は大したことはしてないもの。」


父親に対して謙遜するアリサを、すかさずミーナとレオンが褒めた。


「そんなことないさ!アリサだってあのゴロツキの部下2人相手にすごく活躍したじゃないか!」


「そうなの!あの大ジャンプすごかったんだよー!!」


「お!そうなのかい?アタシも見たかったねぇ!」


「フフッ、みなさんありがとうございますね!」


レオンとミーナに、ルナも加わり3人でアリサを褒めちぎる姿を見て、アリサは思わず笑いがこぼれてしまった。そんな4人をアリサの両親はほほえましく見ていた。


「ふふ、本当に仲がいいわよね。」


「ほっほっ、そうだな、あの子たちならアリサを任せても大丈夫だろう。」


そうしているとアリサの父が思い出したようにアリサを呼び寄せ話しかけた。


「アリサ、ミレイはどうした?一緒に来ていないのか?」


「お父さん、それが・・・・・。」


アリサは父にミレイのことを聞かれ、ミレイが海賊たちに誘拐されたことや、レオンと出会ったきっかけなどの、水の遺跡で起きた出来事を話した。その話を聞いてアリサの両親はとても心配そうな顔をした。


「そんな、ミレイが・・・・・。」


「・・・・・それで、私たちは姉さんを探しながら祭壇を鎮めるたびに出ることになったの!」


「そうだったのか・・・・・。アリサ、本当に大丈夫なのか?」


アリサの話を聞いて父が心配になって聞くが、アリサの覚悟は本物だった。


「大丈夫!レオンさんやルナさん、ミーナちゃんもいるんだもの!」


「そうか。いい仲間に出会えたな、アリサ!」


「うん!」


アリサやレオンたちを見て安心した父は、もう一つ思い出したように


「そうだアリサ、この人たちは宿に泊まるとして、アリサは家に帰るのだろう?」


「ううん、今日はルナさんたちと一緒に宿に泊まろうと思うの、いろいろ相談したいこともあるし。」


「そうか、わかった。では今日の宿代は全員分私が出そう!」


「ほんとうに!?ありがとう!」


アリサの父の申し出にアリサは喜んだ。すぐにアリサはそれをレオンたちに伝えると、その知らせに大いに喜んだ。



そうしてレオンたちは町の宿に泊まることにし、セナと助手も自分たちの家へ帰って行った。その夜、レオンはアリサやルナとミーナの様子を見にそれぞれの部屋を見に行くことにした。まずはレオンの部屋と隣の部屋にいるルナとミーナの様子を見に行くことにした。レオンがドアをノックしてから部屋に入ると、ミーナはすでに眠っており、ルナは海の世界の地図を見ていた。レオンが地図を覗き込みながらルナに話しかけた。


「なにかわかった?」


「いやなんにも。あえて言うなら、海の世界ってこんなに広かったんだなって、それぐらいさ。」


「そうだね。クオーリアから見える海は、すごく広かったから、きっとクオーリアの周りの海の中全体に海の世界があるんだ。」


「へぇ、そりゃ楽しみだね。アタシたちもしらない場所がまだたくさんあるんだからさ。」


「ああ!それじゃ、おやすみ。」


「ああ、レオンも早く寝るんだよ?」


そうしてルナとミーナの部屋を出たレオンは、次にアリサの部屋へと向かった。アリサのいる部屋にドアをノックしてから入ると、アリサは宿に入る前にセナから借りた本を読んでいた。レオンは真剣な顔で本を読んでいるアリサに話しかけた。


「何の本?」


「あ、レオンさん。海の世界の起源にまつわる本です。とても面白いお話が書いてあるんですよ。」


「どんな話なの?」


レオンが本に書いてある話に興味を示すと、アリサが本に書いてある伝承について説明した。


「その昔、私たちの今生きている100年ほど前の話です。」


「そんなに昔なのか?」


「はい、とても歴史ある本ですね。」


伝承の歴史の深さに驚くレオンにアリサは微笑むと、物語を読み始めた。


「海のすぐそばに人々が平和に暮らす王国がありました。その国はとてものどかで、争いもめったに起こることのない静かな場所でした。しかし、あるとき、隣の大国が、その平和な王国の豊かな土地を手に入れるべく攻めて来たのです。王国には大国と対等に戦うための戦力などはなく、次々と兵は倒れていきました。この王国の危機に、とある王国の巫女は毎日祭壇に祈りを捧げました。するとある日、祈りをささげる巫女の前に天使が舞い降りたのです。そして天使は、とある魔法を巫女に教えました。そして、巫女は翌日王様に国民をすべて王城の庭に集めるよう頼み、王国のすべての民が王城に集められました。そして巫女が、天使から教えられた魔法を唱えると、なんと王国が、まるで神隠しにあったように、どこかへ消えてなくなってしまったのです。大国は、訳が分からないまま、王国の豊かな土地もなにも得られぬままとなりました。さて、消えてしまった王国はどこへいってしまったのでしょう?なんと王国は、海の中に現れたのです。そして、王国の巫女が更なる魔法で王国を海の水から守り、外界からは王国が見えないようにする結界を張りました。その結界を維持するために、巫女は王座の中央に水の柱を立て、そのなかに入り眠りについたのでした。それ以来、王国の民は巫女を水霊様と呼んで崇め、また平和に暮らし始めました。そして人が増え、さらに広い土地が必要になると、そのたびに民は水霊様にお祈りをして、その願いを聞き入れた巫女は眠りについたまま結界を広げていきました。そうして海の中に広大な世界が出来上がり、人々はいつまでも平和にくらしていきました。」


アリサが物語を話し終えると、レオンはとても驚いたようにアリサに話しかけた。


「この物語の通りなら、海の国はもともとは陸にあったってことだよな!?」


「そうですね!とってもすごいです!」


2人は面白い物語を読んで、お互いに笑顔を交わした。少し時間が過ぎた頃に、レオンは眠るためにアリサの部屋を出る。部屋を出る際、アリサはレオンを笑顔で送った。レオンは自室のベッドの中でアリサに聞いた伝承の世界を頭の中で思い浮かべていた。


「きっとこの世界は、僕が思っているよりもきれいで輝いてるんだ!」


そしてレオンはそんな海の世界での大きな出会いに期待しながら眠りについた。



そして朝を迎え、レオンは目を覚ました。外はまぶし晴れ模様で、旅をするのにとてもいい天気であった。レオンが身なりの準備をして外へ出ると、そこにはルナとミーナがすでに準備を整えて出ていた。


「ルナ、ミーナも。昨日は休めた?」


「ああ、アタシは大丈夫。ミーナも元気さ。」


「昨日ぐっすり寝たもん!」


3人で話していると、レオンはアリサがいないことに気付いた。


「アリサは?」


「セナ博士に借りた本を返しに行ってるところだよ。」


ルナにアリサの居場所を聞くと、自分たちもアリサのところへ行こうと言った。ルナとミーナもこれに賛成し、セナの家へと向かった。セナの家の中に入ると、アリサとセナが話をしていた。


「この本はお前さんがもっていくといい。」


「いいのですか?」


「ああ、わしは飽きるほど読んだ。だからもういらないんだよ。」


「ありがとうございます!」


アリサがセナに頭を下げて家を出ようとすると

、ドアの前にレオンたちがいたので、アリサは嬉しそうにレオンたちに話しかけた。


「この本、セナさんにもらったんです。私、この本を大切にしますね!」


そう言ってアリサが家を出ると、レオンたちもそれに続いて家を出た。広場に出たレオンたちは次の目的地をどこにするかを考えていた。地図を見ると、ククルの町から一番近い町は、隣に神殿もあるコラルの町だ。次の行先をコラルの町に決めると、レオンが一同に声をかけた。


「よし!じゃあコラルの町に出発だ!」


「おう!」


3人が掛け声をかけて、レオンたちがククルの町を出ようとすると、2人誰かが後ろから駆け寄ってきた。


「アリサ!」


「え?」


アリサがその声を聞いて振り向くと、そこにはアリサの両親がいた。2人は急いできたので息が上がっていたが、アリサを見て安心したような表情で話しかけた。


「いやぁ、間に合ってよかったよ。」


「お父さん、お母さんも、そんなに急いでどうしたの?」


「実はね、あなたに渡したいものがあって。はい、これ!」


そういってアリサの母がアリサに渡したものは、綺麗な白い貝殻のネックレスであった。


「お母さん、これは・・・・・?」


「白い貝殻は、安全と健康のお守りになるのよ。あなたの旅がどんなにつらいものでも、乗り越えられるようにって。私、お父さんと一緒にこの貝殻にお祈りしたの。」


「お母さん・・・・・。」


アリサは両親の優しさに涙をこぼした。そんなアリサにルナはやさしく声をかけた。


「アリサ。」


「・・・・・はい!」


ルナの呼びかけにアリサは涙を拭って振り向いた。アリサのうれしさがあふれる笑顔を見て、レオンたちも笑顔になった。


「ねぇねぇ!貝殻のネックレス、つけてみてよ!」


ミーナがアリサにせかすと、アリサは静かに貝殻のネックレスを首にかけた。レオンたちには、ネックレスをかけたアリサが貝殻とともに輝いているように見えた。


「アリサおねえちゃんきれい!」


「ああ、よく似合ってるよ!」


「僕もそう思うよ!」


「ありがとうございます!」


レオンとミーナとルナがネックレスを付けたアリサに感激した。アリサが3人に感謝すると、また両親の方へ振り向いて言った。


「お母さん、お父さん・・・・・。」


「アリサ・・・・・。」


「アリサ。」


両親が心配そうに自分の子の名を呼ぶ。アリサは目をつぶって一呼吸おくと、まっすぐな瞳で両親を見て言った。


「いってきます!」


「ええ・・・・・、いってらっしゃい!」


「気を付けるのだぞ!」


アリサの両親はそのまっすぐな目を見てアリサの覚悟を再確認すると、アリサと言葉を交わした。レオンたちも続いてアリサの両親に旅立ちの挨拶をした。


「アタシたちも、行ってきます!」


「いってきまーす!!」


「いってきます!」


「ええ、貴方たちも、気を付けてね!」


両親に見送られ、レオンたちの元に戻ったアリサに。レオンは手を差し伸べた。


「行こう、アリサ!」


「はい!!」


アリサがその手を握ると、レオンはそのままククルの町の外へ走り出した。手を引っ張られてアリサは少しよろけたが、そのまま走るレオンの勢いに乗ってアリサも走った。ルナとミーナも2人を追いかけて走っていった。アリサの両親に見送られながら、レオンたちは未知の冒険へと足を進めた。

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