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プロローグ

人魚を見たあの夜の翌朝、レオンは自分の部屋で目を覚ました。レオンは眠い目をこすって時計を見ると、針はすでに8時を指していた。


「うわ、待ち合わせ間に合うかな。」


急いでベッドから出て着替えをして、朝食を食べにリビングへ行くと、テーブルにはパンとミルクが置いてあった。レオンの14歳の妹のユンが用意したものだ。レオンの家は貧乏なので、ユンだけが学校へ通い、レオンが費用を稼いでいるのだ。レオンは16歳でジャンク集めなどの仕事をして生計を立てている。ユンはこの時間はもう学校へ向かっているので、自分も早くショップへ行くために朝食を食べた。今回ショップへ行く理由は、ショップのオーナーに呼ばれたからだ。オーナーはレオンに頼みたいことがあるらしい。時計を見ると、もう8時30分であったので、レオンは急いで支度をし、家を出て行った。



網目状に入り組んだ道を迷うことなく進み、レオンは15分ほどでショップへ到着した。少し古びた外観のショップは開店前だったが、レオンは正面の入り口から入っていった。カウンターに中年の男であるオーナーが座っていたのですぐに挨拶して要件を聞きに行った。


「おはようオーナー」


「おお、来たか。思ったより早かったな。」


「で、要件ってなに?」


「まぁコーヒーでも飲んでけ、ほら。」


「いただくよ。」


レオンはオーナーが出したコーヒーを受け取った。コーヒーからは湯気が立ち、おいしそうな香りも漂わせていた。オーナーもコーヒーを飲みながら、レオンへの頼みごとを話した。


「実はな、お前に東の坑道から水石すいせきを取ってきてほしいんだ。まぁ簡単な仕事だろ?」


「たしかにそれだけなら簡単だね。でもあそこ、猛獣とかいるんだよなぁ。」


「まぁそうだな・・・。そうだ、これやるよ。」


そう言ってオーナーがカウンターの奥の倉庫から取り出したのは、スチールでできた剣だった。


「ガラクタをあさってたら出てきたんだ、これだでもあれば安心だろ?」


「ありがと、オーナー。それじゃさっそく行ってくるよ。」


「待てレオン、サービスだ。」


オーナーはレオンを呼び止めて、カウンターにクッキーを出して、レオンに渡した。オーナーはいつもながら気が利く男だ、とレオンは思った。


「ありがとう。じゃあ今度こそ行ってくるよ!」


「行ってらっしゃい。」


レオンは元気よくショップを出て、ショップのすぐ横の中央階段を駆け下りてボートのある港までかけていった。



レオンは北下層の港へと到着して、まずは自分のボートを探した。東下層エリアへの移動はボートで海を渡っていくのが唯一の通行手段だ。レオンのボートは一番奥の、2人ほどしか乗れないような赤くて小さな船だ。


「あったあった。よし行くか!」


レオンが船に乗ろうとすると、後ろから誰かに呼び止められた。レオンの友人のジュンだ。


「レオン、今日はどこへ行くんだい?」


「ジュン!東の坑道にちょっとな。っていうか、おまえは学校大丈夫なのか?」


「学校は休んできたよ。これから病院へ行くんだ。」


ジュンは生まれつき体が弱く、体育の授業はいつも休んでいるらしい。今も寝間着のような服を着ている。そのような境遇のためか、ジュンは活発なレオンを尊敬している。


「そうなのか。身体、よくなるといいな。」


「うん、一日でもはやく良くなるようにがんばるよ。レオンもがんばってね。」


「ああ!ユンのためにも、たくさん稼がないとな!」


そう言ってレオンは船に乗り込んで、船のオールをこいで出発させた。後ろからは、ジュンが手を振ってレオンを送った。


「ジュンも身体を元気にするために頑張ってるんだ、僕もユンの生活を安定させるために頑張るぞ!」


レオンはジュンを見て、自分もいっそう気合を入れた。そんなレオンに海風が吹き、レオンの髪をなびかせた。



レオンが港を出発して30分ほどで、東下層の船着き場へ着いた。船着き場はところどころ古くなっていて、ほとんど人の手が付けられていないようであった。レオンはボートを止めて、東下層へと足を踏み入れた。ここは至る所にゴミの山ができており、人の出入りもほとんどいない場所なのだ。坑道はこのゴミ山の地帯を抜けた先にある。


「水石とってさっさと帰るか。」


レオンはゴミ山地帯を駆け足で進んでいった。途中、使えそうな鉄のカケラなどを拾っていきながら坑道へと進んでいく。駆け足で行ったので、坑道へは3分ほどで到着した。レオンはバッグの中からランタンを取り出して火をつけて左手に持ち、背負っていたツルハシを右手に持って坑道の中へと入っていった。坑道中は薄暗く、ランタンの火が無いとほとんど中が見えないのだ。レオンは一本道の洞窟の中を、行き止まりまで進んでいった。行き止まりは落盤によって道が塞がっているようで、行き止まりの先にはまだ洞窟が続いているのだという。しかしその先に何があるのかは、今は知ることができない。


「ここらへんだな。」


レオンが壁の中で青白く光る場所を見つけると、そこに狙いを定めて壁をピッケルで3回ほど削った。すると、青く透き通った石が3つと、紫色に光る石が出てきた。青く透き通った石が水石だ。


「よし、3つも出てきたぞ!もう一つは、いかずちのマナか?」


レオンが水石を拾ってから、紫色に光る石を拾った。この光る石は「マナ」という自然の力の結晶が宿っているのだ。マナとは主に自然物に宿り、人々はそのマナの力を使い生活を豊かにしていった。クオーリアは主に水のマナの産地で、そのマナを陸の国に輸出して財政を立てている。雷のマナは主に陸の国で採れるものなので、クオーリアで雷のマナが出てくるのは珍しいことなのだ。


「この雷のマナは僕がもらっていこう。」


マナは人に宿すこともできる。人に宿すことでその人はマナの力を使えるようになるのだ。時折、マナを宿した状態で生まれてくる人間もいるらしい。レオンは雷のマナを自分の中に宿した。するとさっきまで雷のマナが宿っていた石の光が消えて、ただの石になった。


「よし、もうここには用もないから、早く帰ろう。」


相違ってレオンは、行動の出口へと戻っていった。



レオンが坑道を出ると、入り口で待ち構えていたかに様に2頭の猛犬が現れた。どうやらレオンの荷物が狙いのようだ。この東下層エリアは海の船着き場以外の通路は完全にほかのエリアから遮断されているため、捨てられた動物が野生化して住み着いているのだ。


「慌てないあわてない!こういうときは一体づつ確実にやっつけるんだ。」


レオンは野生動物の退治になれている。レオンはスチールソードを構えて、一体の猛犬に斬りかかった。スチールソードは切れ味が悪いので、攻撃は斬るというよりも叩くに近いものになっている。攻撃を受けた猛犬は悲痛な声を上げ退散していった。


「へへっ、楽勝!さ、お前もかかってこい!」


レオンに挑発されて、もう一体の猛犬がレオンに向かって飛び込んで攻撃を仕掛けようとした。これをレオンはなれた手つきで攻撃をガードし、猛犬がひるんだ隙をついてソードで攻撃した。この猛犬はある程度粘ったが、レオンが3,4回攻撃を与えると、慌てて退散していった。


「へへっ、こんなもんだね!」


レオンは得意げにスチールソードをしまうと、一気にボートまで走っていき、船着き場のボートまで到着した。


「よし、ここまでくれば安心だ。」


レオンは忘れ物がないかを確認をしてからボートに乗り込み、ボートを出発させて東下層を後にした。



レオンが北下層の港に帰ってきたときには、もう夕方になろうとしていたころであった。ボートを元あったところに泊めて、オーナーの所へ水石を届けようと、ショップへ向かっていった。ショップは港の中央階段を上がってすぐの場所にある。階段を駆け上がってすぐにショップへ入ると、いつものようにオーナーがカウンターでコーヒーを飲んでいた。


「レオン、思ったより早かったな!」


「もう東下層は慣れたからね。水石取ってきたよ、3つあるけどどうするの?」


「3つも取れたのか!ワシは1つでいいよ。残りはお前がもっていけ。」


「わかった。ああ、あとさ、水石を掘ってるとき、一緒に雷のマナも取れたんだ!もう自分に宿しちゃったけどね。」


「ほう!雷のマナか!そりゃ珍しいな!ワシが高く買ってやってもよかったんだぞ?」


「いや、これは見つけた時から僕のものって決めてたからね!」


「はは、そうかい。今日はありがとな!おっと、忘れるところだった。今回の報酬だ。」


オーナーが報酬と言ってレオンに出したものは、この世界の通貨であるセルカを5000と、オレンジウォーターだった。オレンジウォーターはレオンの好物だ。レオンは、やっぱりオーナーは気が利く人だと改めて思った。そんなとき、一人の14歳ほどの女の子がショップに入ってきた。


「こんにちはー。」


「おや、ユンちゃんいらっしゃい。」


それはレオンの妹のユンだった。ユンはオーナーに挨拶をすると、レオンに話しかけた。


「おかえりお兄ちゃん、今日は水霊祭すいれいさいの日だよ。忘れてないよね?」


「いっけね!忘れてたよ。ユン、ありがとな!」


「もう、お兄ちゃんったらこういうところ抜けてるんだから。」


「悪い悪い。もう大丈夫だよ。」


「うん、じゃあちゃんと時間になったらカムラおじさんの所まで来てね。」


ユンはレオンに用事を伝えると、足早にショップを出ていった。おそらくこれから勉強するのだろう。レオンは時間まで買い物をするためオーナーに話しかけた。


「へへっ、妹さんはお前と違ってしっかりしてるなぁ!っとぉ、買い物か?」


「僕だって一応、しっかりしてるさ。オレンジウォーター2つとグリーンティー3つ買うよ。あとオレンジクッキーも3つ。」


「まいどあり!」


レオンはショップで買い物を済ませ、次は鍛冶屋へと向かった。鍛冶屋はショップと中央階段をはさんですぐ隣にある。看板娘のお姉さんが店番をしていて、奥には鍛冶職人がいるようだが滅多に姿を見せないのだ。


「こんにちは!」


「あら、レオン君こんにちは!」


鍛冶屋では武器の製作、強化を行っている。客が素材を持ってきてそれを使って職人が武器を作るのだ。他にも鉄を使った日用品なども販売しているようだ。レオンが鍛冶屋に入ると、お姉さんが元気にあいさつしてきた。


「今日はどんな御用時かしら?」


「このスチールソードを強化してほしいんだ。水石2つと鉄のカケラが3つある」


「はい!それならマリシャスサーベルが作れるわ。それでいい?」


「うん!お願いするよ。」


「では素材と1200セルカをいただくわね!」


「うん。よろしくね!」


レオンはお姉さんにスチールソードと東下層の坑道で採れた水石と鉄のカケラ、そして1200セルカを渡して武器強化を依頼した。武器の完成には少し時間がかかるので、その間に鍛冶屋を後にしてマナを売っている店によることにした。マナの店は鍛冶屋のすぐ後ろにある。マナの店に入ると、怪しげなお姉さんが出迎えてくれた。


「こんにちは!」


「あら、いらっしゃい・・・・・。」


マナは、自然物に宿っているものを水の入った小瓶に移し替えて人に売られることもある。それだけマナは人の生活で身近な存在なのだ。レオンは怪しいお姉さんに話しかけてマナを買うことにした。


「いらっしゃい。良質なマナがそろっているわ・・・・・。」


「やっぱりマナは高いなぁ、この火のマナだけ買っていくよ。」


「2000セルカのお買い上げよ・・・・・。」


レオンが言うように、店で売られているマナは高価だ。しかも上質なマナほど高値で取引される。レオンの買ったようなマナでも通常の質のものなのだ。クオーリアでは、水のマナ以外のマナは陸の国から輸入しているため高価になってしまうのだ。レオンにはマナを買う余裕がそれほどないので、火のマナだけを買って店を出た。


買い物も終わったので、レオンは自宅に帰ることにした。レオンが自宅へ到着すると、リビングから玄関にまで肉の焼ける音と、おいしそうな匂いがした。ユンがキッチンで夕飯を作っているのだ。今日は久しぶりの兄妹そろっての夕食だ。妹と一緒に夕食を食べることは、レオンの一番の楽しみなのである。


「ただいま!」


「おかえり、お兄ちゃん!今日のごはんはハンバーグだよ。」


「おお!久しぶりに一緒にごはん食べれるときがハンバーグなんて、さすが僕の妹!わかってるなぁ。」


「ふふっ、実は私も一緒に食べれるのがうれしくて、ハンバーグ以外考えてなかったの!」


「へへ!ユンもおちゃめだな!」


「もう、お兄ちゃんったら!ほら、お兄ちゃんの大・好・物のハンバーグできたわよ!」


「おう!じゃあ手洗ってくるよ!」


レオンが洗面台で手を洗って、バッグからオレンジウォーターを2本持ってすぐにリビングへ戻ってくると、ユンがテーブルにハンバーグの乗った皿とコップを並べていたところだった。


「まみか手伝おうか?」


「ううん。これだけだから大丈夫!あ、オレンジウォーター私も貰っていい?」


「うん!一本2人で飲もう。」


レオンは手に持っていたオレンジウォーターを1本開けて2つのコップに注いだ。残りの一本は冷蔵庫に片づけてから、レオンとユンは椅子に座った。


「いただきます!」


2人は一緒に目の前で手を合わせてから食事を始めた。レオンがハンバーグを夢中で食べているとき、ユンがレオンに話しかけてきた。


「ねぇお兄ちゃん、ちょっといいかな?」


「ん?なんだ?」


「お兄ちゃんは、水霊様のこと信じてる?」


レオンは少し考えたが、しっかりとユンの顔を見ながら答えた。


「うーん、そうだな、僕は信じてもいいかなって思ってる。」


「じゃあ、信じてるってことでいいんだよね?」


「ああ、そうだよ。でもなんでこんなこと聞いたんだよ。」


レオンが聞き返すと、ユンは少し困ったような表情で答えた。


「学校の子にね?私が水霊祭に参加するって言ったら、そんなお化けみたいなのいるわけないって行ってきたのよ!失礼しちゃうよね?」


「言わせとけばいいのさ。信じるも信じないも人次第だろ?」


「まぁ、そうなんだけどさ。」


「大事なのは、自分がどう思うかってことさ!元気出せよな!」


レオンに励まされて、嬉しく思ったユンはくすくすと笑ってから話を続けた。


「お兄ちゃんありがとう。・・・なんか、不思議だなぁ。」


「何が?」


「なんだかね?お兄ちゃんと話をしてると、自然と元気が出るの。普段は忘れっぽくてバカなのに、そういうところ尊敬しちゃな。」


「おいおい、忘れっぽいのは認めるけどバカはないだろー?」


「ふふ、ごめんね?」


そんな会話をしながら、兄弟は笑いの絶えない穏やかなひと時を過ごしていった。夕食を済ませ、二人で片づけも終わらせた頃には、ちょうど水霊祭の集合時間になっていた。


「もうこんな時間だ!私先に行くね!お兄ちゃんもあとから来てね?」


ユンは急いで家を出ていった。ユンは水霊祭での作法を確認するために少し早めに会場へと向かうのだ。会場といってもただの神社なのだが。場所は中央階段を一番上まで上ったところの右側に鳥居がある。そこを通った先の神社が会場だ。その神社の主が、水霊祭を仕切るカムラだ。カムラは温厚な老人で、水霊祭を代々仕切る一族の5代目なのだとか。


「そろそろいかなくちゃ。」


レオンも自分の持ち物を整理して、水霊際へ向かうべく家を出た。外は真っ暗な空を月が照らしていた。水霊祭へ向かう前に、鍛冶屋で依頼していた武器を引き取るために鍛冶屋へ向かった。鍛冶屋に着くと看板娘のお姉さんがちょうど店を閉めようとしているところだった。


「ちょっと待って!」


「あら、レオンくん?お店閉める前でよかった!ちょっとまっててね。・・・・・はい!立派なマリシャスサーベルになったわよ!」


鍛冶屋のお姉さんから受け取ったマリシャスサーベルは、刀身が全体的に青みがかかった、きれいな海を彷彿とさせるようなデザインの剣であった。それ以外は、しなやかな曲線の刀身と、持ち手はスチールソードのものに簡単な装飾を施した程度で、普通のサーベルと言った感じのものであった。


「ありがとう!」


「サービスで鞘もつけといたからね!またなにかあったら遠慮しないでたのんでね~♪」


お姉さんから受け取ったマリシャスサーベルを腰に差し、今度こそ水霊祭へと向かっていった。会場である神社の鳥居をくぐって、神社の前まで行くと、そこにはユンとカムラがいた。本来水霊祭は10人ほどの女子が参加するものなのだが、近ごろは神話や伝統を重んじる人がほとんどいなくなって今では年に一人参加すればいいくらいになってしまっている。今年の参加者はユンだけだ。


「ユン、じいちゃん、おまたせ!」


「おお、きてくれたかね。今年も伝統の祭典をできてワシはうれしいよ。」


「ふふ、カムラさんったら。それじゃあ、さっそくはじめましょう?」


そうしてレオンたちは神社の中へ入っていった。神社の中は六畳くらいのスペースに、ご神体として水のマナが宿った要石が祀ってある。水霊祭とは、クオーリアの安全を祈る行事なのだが、ここで水霊様という精霊の加護を授かるのだという。ユンが神社の中の中央にご神体のある方を向いて座り、カムラはユンの目の前にご神体の方を向いて座った。レオンも後ろの入り口のほうで座って、水霊祭がはじまる。まずカムラが、小さな石が入っているペンダントを手に持ち、ご神体に祈りをささげる。


「大いなる水のマナをつかさどる水霊様よ、この麗しき乙女に水霊の加護を与えたまえ。」


そうカムラが念じると、ご神体に宿るマナが輝きを放ち、ペンダントの中の石にマナをわずかに放って分け与えた。その後カムラがユンの方を向き、ユンにペンダントを渡した。


「さぁ、次は君の番だよ。」


カムラがそう言うと、ユンがカムラと場所を交換して、ユンもご神体に祈りをささげた。


「大いなる水のマナをつかさどる水霊様、私はあなた様の加護をしかとこの手に受けました。私はその慈愛の心に感謝します。」


レオンは後ろで祈りの行事を見ていて、まるで別の世界にいるような不思議な感覚がした。この空間を水のマナの光だけが照らして、幻想的な世界を生み出していた。


「人魚が住んでる世界も、こんな風に綺麗なのかな?」


レオンは水のマナの輝きを見つめながらそう思った。水霊祭が終わり、部屋の明かりが付く。レオンたちは神社の外に出てお礼をすることにした。


「カムラさん、こんな素晴らしい行事に参加させてくれてありがとうございます。」


「いやいや、お礼を言うのはこちらの方じゃよ。君のおかげで今年も水霊祭を行うことができたのじゃからの。」


神らに一礼するユンの隣で、レオンはあの場所で味わった感動をカムラに伝えた。


「僕、水霊祭はじめてみたけど、なんかすごかったよ!キラキラしててさ!」


「そうじゃろう?じゃがこの伝統も今年が見納めかもしれんのう・・・。」


カムラが寂しそうな表情を見せると、ユンも少しさびしそうな顔をした。


「なんかそれって、さびしいですね・・・。」


「僕もなんとかしてやりたいけどさ、どうすりゃいいんだろうな?」


「ありがとう。気持ちだけでうれしいよ。それじゃあもう夜も遅いし、ここで解散とするかね。」


そうしてレオンとユンは自分の家に帰っていった。家に帰るころには二人とも眠くなってきていたのでそのまま寝る子にした。


「それじゃあおやすみ、お兄ちゃん。」


「ああ、おやすみ。明日も学校頑張ってね。」


レオンは自室のベッドに転がり込んで、水霊祭のことを思い出していた。そしてあのような光景を見れて良かったと改めて感じた。しかしレオンの目には、あの夜に見た人魚の姿が今でも目に焼きついていた。あのときの衝撃は今も忘れていなし、今後も忘れることはないだろう。


「人魚、また見れるかな・・・・・。」


そんなことを考えながら、レオンは静かに眠りについた。

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