[十一章]火の町アゼル
白い煙に包まれたアゼルの町の門を抜けたレオンたち。その場から町を眺めると、いたる所から煙が立ちこめ、家はすべてレンガ造り。そして鉄を打つ音や人の話し声であふれかえり、とてもにぎやかな街であった。そして何より驚かされたのは・・・・・。
「暑いっ!!」
ルナが思わず言い放った。そう、アゼルの町は工業の町というだけあって、とても暑いのだ。ルナもアリサも、ミーナもミレイも、町に入った途端に汗が出ていた。
「ええ、工業の町だけあってとても熱気があふれていますね・・・・・。」
「ううー、汗がとまらないねー・・・・・。」
そんな中、レオンただ一人だけが汗一つかかず平然としていた。
「みんなそんなに汗かいて、そんなに熱いか?」
そのレオンの発言に皆驚いた。海の世界の人間にとって、この熱気の中平然としていられるなど、とても信じられないことである。
「え、えぇー!!?レオンおにいちゃん暑くないの?」
「ああ、まぁ、今までがちょっと肌寒かったから、たしかに少し暑く感じるかな?」
「レオンさん、すごいですね!」
「そうかな?クオーリアも南に行けば日差しが凄いからね。暑さには強いつもりだよ。」
「ふふ、レオンさんはとても頼りになりますね。では、そろそろ休めるところへ行きましょう?」
ミレイに言われ、一同は休憩できるところを探すことにした。町の人に聞いたところ、どうやら町の中央広場にバーがあるということなので、そこへ向かうことにした。レオンたちは様々な店が並ぶ通りを抜けて、広場まで出てきた。すぐ右を向くと、人が集まる大きなバーが見えたので、皆でそこに入っていった。バーの中は人で賑わっており、どうやら席は空いてなさそうであった。
「わー!すごいね!」
「ああ!こんなに人が集まるところがあるなんてねぇ。」
「でも困りましたね。これでは座れそうにありませんし。」
アリサが困って辺りを見回していると、それを見た4人組の屈強な男たちが立ち上がって席を譲ってきた。
「よぉ、お嬢さんがた。俺たちの後で良ければここに座っていきな。」
「いいのですか?ありがとうございます!」
「ああ、俺たちはこれから魔獣の討伐に行ってくるんだ。そいつらが採掘場を占拠してるっていうんでな。」
「魔獣が、ですか?」
「ああそうだ。それじゃ行ってくら。お前さんたちはここでゆっくりしてるんだな。」
男たちはそれだけ言ってバーを立ち去った。レオンたちは譲ってもらった席に椅子を一つ持ってきて座った。そして今後の動きについて話し合った。
「それじゃ、この後はこの町の近くにあるはずの神殿のことについて聞き込みをするんでいいんだな?」
「はい、さきほどの男の人たちが魔獣を討伐すると言っていたので、この近辺に神殿が存在することは間違いないでしょう。」
「その前に、アタシはこの町を見て回っていきたいね。」
「あたしも!これからのためにいろいろ準備した方がいいと思うな?」
「そうだな、それじゃ聞き込みしながら町の探索なんてどうだ?」
「賛成!!それじゃさっそく行ってくるね!」
ミーナは皆の意見が固まると、足早にバーを出て行った。ルナもミーナに続くようにその場を立ち去った。レオンとアリサも町を見て回ろうと席を立ち、ミレイと一緒に広場へ出た。
「そうだ、ミレイさんはどうするんだ?」
「私は、宿をとってから町を回るつもりです。レオンさんとアリサは先に町を見て回っていていいですよ。」
「わかったわ、姉さん。それじゃあまたあとで。」
「それじゃ僕も!」
ここでレオンとアリサとミレイは別れ、それぞれ思い思いの場所へと向かっていった。
一番早く外へ出たミーナは、町の人の話を聞いて魔法道具店へと足を運んだ。そこには瓶詰にされたマナや、魔法の杖、しっかりと封がされた魔導書などが並べられていた。生まれつき魔法の才能のあったミーナには、なんとなくだがその品ぞろえの豪勢さがわかった。
「すごい・・・・・、ほんとにたくさんある。」
ミーナが商品を夢中で見回していると、店の奥からこの店のオーナであろう女性が現れた。
「あら、かわいい魔導師さん、お目当てのものはあったかしら?」
「あ、こんにちは!あの、どれもすごくてびっくりしました!」
「ふふ、ありがとうね。あら、あなた汗で水のマナが乾いているわ。」
「あ、わかりましたか?この町すごく暑いから、水のマナで体を冷やしてたんです・・・・・。」
「ええ、わかるわ。ちょっと待っててね?」
オーナーがそう言うと、店の奥から水の入ったボトルを出してきた。それがなんなのかは、ミーナはすぐに分かった。
「リキッドボトル!それも高いやつ!」
「ふふ、ご名答よ。」
「くれるの?」
「これ一本200セルカでどうかしら?」
「買います!」
リキッドボトルとは、ミネラルウォーターのようなもので、高級なリキッドボトルは一本500セルカはするのだが、この店のオーナーはそれを半額以下でミーナに提供してくれた。ミーナはリキッドボトルをバッグにしまい、再び魔導書を眺め始めた。豊富な品ぞろえについつい目移りしてなかなか決められない様子のミーナを見て、オーナーが商品の中の一つの杖を持ってきた。その杖は全体的に白色で、黄色い持ち手や装飾品が目立つ一品だった。
「かわいい魔導師さん、これなんかどうかしら?」
「あ、それあたしも気になってたんです。」
「フフ、あなたには魔法の才能があるから、今の杖よりもこっちの方がいいはずよ。」
「そうかなぁ?」
「これなら、もっと強い威力の魔法が打てるはずよ。持ってみればわかるわ。」
そう言われ、ミーナはその杖を持ち、マナを杖に集中させると、普段と違いよりマナを杖に溜めることができた。この変化に、ミーナはとても驚いた。
「すごい・・・・・!杖が違うだけでこんなに違うんだ!」
「マナは魔法力の源、魔法の威力は蓄えられたマナの量によって変わるの。そして蓄えられるマナの量は杖によって違う。今あなたが持っている杖は、自分で作ったのかしら?」
「はい、そうです。」
「フフ、よくできた杖だったから少し驚いたわ。でも、職人が作った杖はやっぱり違うでしょう?」
オーナーに言われるまでもなく、ミーナはたしかに杖の違いを実感していた。そして、この杖を買おうというミーナの決心がついた。
「は、はい!あの、これ買います!!」
「フフ、普通なら8000セルカはする品物なのだけれど、才能あるあなたの更なる発展に期待して、特別に2000セルカで取引しましょう?」
「そ、そんなに高いものを、いいんですか!?」
「ええ、これは私からあなたへの応援の意味も込めての値段よ。でも、他の人たちには、内緒よ?」
「ありがとうございます!!」
ミーナはオーナーの気前の良さに驚かされたが、そのオーナの期待に応えるべくその杖を買った。そして、大満足の様子で店を出る際に、ミーナはオーナーに大きく手を振りお礼をした。
「ありがとう!おねえさーん!!」
「フフ、頑張ってね。かわいい魔導師さん。」
オーナーも小さく手を振ってミーナを送った。ミーナはオーナーに神殿のことについて聞くのも忘れて、駆け足で広場へと向かっていった。
一方ルナは、防具製作所でオーダーメイドの防具を作ってくれるという話を聞きつけて、早速ガントレットを作ってもらうことにした。今はそこで手のサイズを測り、自分に最も合うガントレットを作ってもらっているところだ。すぐできると聞いて、ルナは待合室で待っていると、一人の若い男が入り口から入ってきた。男は丁寧にルナに挨拶をしてきた。
「こんにちは、旅のお方ですね?」
「あぁ、こんにちは、そうだよ。よくわかったね?」
「ええ、服装や装備がなんとなくそんな感じだったので。」
そう言って男はルナの座っているテーブルに目をやると、そこに置かれたルナのボロボロのガントレットが目についた。男は不思議に思い、ルナに聞いた。
「失礼ですが、そのガントレットは貴女のですよね?かなり使い込まれているようですが。」
「ああ、そうだよ。アタシはこれを付けて素手で戦ってたんだ。」
「闘士の方でしたか!どうりでいかにも頼りがいのありそうなお方だなぁと!」
「へへ、照れるねぇ?」
ルナは恥ずかしそうに頭を軽くかくと、男は続けて言った。
「実は私は、ハンターをしていまして、今回は頼んでおいたすね当てを取りに来たのです。」
「へぇ、アンタもけっこうがんばるんだね。」
「まぁ、他の人たちに比べたら私はまだまだですけどね。」
男は照れ臭そうに笑うと、さらに話を続けた。
「私は、防具ってすごく大事なものだと思っているんです。」
「どうして?」
「これは当たり前のことですけど、防具つて、自分を守ってくれるものですよね。」
「ああ。」
「ハンターをしていると、時々そこに迷い込んだ無力な人が出てきたり、凶暴な生物に襲われていたりするところに出くわす時もあるんですよ。その時は、自分がその人を体を張ってでも助けてあげなきゃいけないんですよ。ここで、無力な人を守るのは自分ですけど、その自分を守ってくれるのが、防具なんですよ。」
「まぁ、そうだね。」
「だから、自分に合った防具をそろえて、どんな状況でも、自分も、ほかの誰かも守れるようにしないといけないと、私は思っています。貴女も、誰かを身を挺して守ったこと、あるでしょうか?」
ルナは男に問われ、今までの戦闘を振り返った。思えば、ミーナを守り、アリサやレオンのことも、自分が前に出て守ったこともあった。そのたびに、けがをしては皆を心配させていたな、とルナは思った。そう考えると、自分ももう少し装備を整えていいだろうと思えたのだ。少し間をおいて、ルナは男に答えた。
「・・・・・うん。たくさんあるよ。大切な人をたくさん守ってきた。」
「そうですか!それは素晴らしい限りです!ですが、貴女が仲間を大切に思うように、自分のことも大切に思ってくださいね?」
「もちろんだよ。」
ルナが男に笑いかけると、作業場から職人のオヤジがガントレットを持って出てきた。ルナが頼んでいた品物が完成したようだ。
「よお、お嬢さん。アンタにぴったりの一品ができたぜ!」
「お!ありがとさん!」
ルナは銀色に輝く新品のガントレットをさっそく手にはめてみた。ガントレットは予想以上に手に馴染み、新品とは思えない付け心地であった。
「すごくいいね、オヤジさん!ありがと!」
「おう!俺にかかりゃなんでもござれだぜ!おっと、そっちのハンターさんはすね当てだな?ちょっとまってな・・・・・。」
オヤジは収納タンスからすね当てを出してハンターの男に渡した。それを見たルナはオヤジに話しかけた。
「オヤジさん!ここらへんにすね当て売ってる店あるかな?」
「ああ、もちろんあるぞ?アゼルの町は何でもそろう町だからな。俺が案内してやるよ。」
「ありがと!」
ルナはオヤジに案内してもらい、すね当ての売られている店へ向かっていった。その場にいたハンターの男が、それを見送った。
「頑張ってくださいね。闘士のお嬢さん。」
レオンとアリサは、一緒にナイフや日用品などの軽道具を売っている露店に立ち寄った。様々なものが並べられたテーブルの商品を見ていると、アリサは一つの片手で扱えるほどの小型のボウガンを手に取った。アリサはボウガンがどんなものなのかわからなかったので、これがなんなのかを店主に聞いてみた。
「すみません、これはなんですか?」
「それはボウガンというもんだよ。矢をセットして、引き金を引いて撃つんだ。弓よりも便利な武器だよ!それに、矢が無くても銃身にマナを込めて打ち出すこともできるんだ!」
「まぁ!それは心強い武器ですね!私、これいいと思います!レオンさんはどう思いますか?」
「うん、僕もいいと思う。」
「じゃあ、これ買います!」
「それなら3500セルカ頂戴するよ!」
ボウガンを買うことにしたアリサだが、意外と値段が高かったため、少し迷ってしまった。しかし、結局買うという意志は変わらなかったので、アリサは店主に3500セルカを渡し、ボウガンを買った。
「はい、まいどあり!矢はおまけで持っていきな!」
「ありがとうございます!」
アリサはボウガンを手に持って嬉しそうに微笑んだ。その様子を見ていたレオンも、アリサに笑いかけた。
「よかったな、アリサ!」
「はい!レオンさんはなにかいいものはありましたか?」
「いや、僕はこの剣があれば大丈夫さ。」
レオンがそういってアリサと店を後にすると、なにやら町の人が興味深い話をしているのを聞いた。
「なぁ、中央広場で面白いことやってる子供がいるらしいぜ!」
「ほんとか!?ちょっと見に行こうぜ!」
それを聞いたレオンとアリサは、その面白いことをやっている子供に心当たりがあるようだった。
「レオンさん、その子・・・・・。」
「ああ、間違いないね!」
2人はお互いに顔を見合わせて微笑み、急いで中央広場に向かうことにした。
レオンとアリサが中央広場へ向かうと、なにやら人だかりができているのが見えた。その中からにぎやかな歓声が聞こえてきて、楽しいことをしている雰囲気が伝わってきた。レオンとアリサはその人だかりをかき分けてその中にいる人物を確認すると、やはりというべきか、そこには水のマジックショーをしているミーナの姿があった。ミーナは新しく買った杖を使い、派手な水のマジックで観衆を楽しませていた。
「さぁみんな!最後は光る水のシャワーだよ!それーっ!!」
ミーナが杖の頭に出した水の球を思い切り真上に飛ばすと、空中で水の球が破裂して、光を纏った雨となって周囲に降り注いだ。その美しい光景を見た観衆が歓声と拍手をミーナに送った。それを人ごみの中から見ていたレオンとアリサも、ミーナに拍手を送った。
「はい、おしまい!ありがとうございました!」
観衆がセルカ硬貨をミーナの足元に投げると、観衆は満足した様子で解散していった。レオンとアリサは皆の元に駆け寄って話しかけた。
「ミーナ!さっきのすごかったな!」
「レオンおにいちゃん!アリサおねえちゃんも!」
「ミーナちゃん、さっきのすごく綺麗だったよ!」
「ありがとね!そうだ、みんなでお金拾わなきゃ!」
ミーナがそう言ったので、レオンとアリサとミーナの3人で硬貨を拾い集めた。全て拾い終えた時、アリサはミーナの杖が変わったのに気が付き、ミーナにその杖のことを聞いた。ミーナは、とてもうれしそうに答えた。
「ミーナちゃん、その杖は?」
「これね、魔法道具のお店で買ったんだよ!マナをたくさん溜められてすごいんだよ!」
「そうなんだ!これでミーナちゃんの魔法ももっと強くなったのね!」
「うん!アリサおねえちゃんはなにかいいものあった?」
「うん。ボウガンっていう武器なんだって。」
「わぁ!かっこいい!!」
アリサがボウガンをミーナに見せると、ミーナはそのデザインを気に入ったらしく、ボウガンを目を輝かせて見つめていた。そこに、レオンとアリサと同じく話を聞きつけルナが現れた。ルナは新しいガントレットとレッグアーマーを付けて、さらにたくましくなったようにも見えた。
「やぁ。ショーはもうおしまいかい?」
「あ!ルナおねえちゃん!この杖でいろいろやってたんだよ!」
「へぇ、すごくいい新品じゃないか!でもアタシのガントレットとレッグアーマーもいいだろ?」
「ああ!なんだかいつもよりかっこよくなったな!」
「へへ、そうかい?ありがとうね!」
レオンたちが新しい武器の話で盛り上がっていると、宿屋から出てきたミレイがレオンたちにと通って話に加わった。
「あら、皆さん素敵な武器を手に入れたのね。」
「姉さん!私はボウガンを、ミーナは新しい杖、ルナさんはガントレットとレッグアーマーを手に入れたの!」
「ふふ、とても頼もしいわね。レオンさんはなにか新しいものは?」
「僕は今のこの剣があればいいかな。」
「そうですか。それもいいでしょう。」
ミレイがレオンたちの嬉しそうな顔を見て微笑むと、思い出したようにレオンたちに聞いた。
「ところで、神殿についてなにか情報はありましたか?」
ミレイに聞かれて、レオンたちは神殿のことについて聞き込みをすることをずっと忘れていたことに気付いた。
「あっ!わすれてた~・・・・・。」
「僕も武器を見るのに夢中で忘れてたよ。」
「す、すみません、私も・・・・・。」
「ははは、まぁしょうがない、よね?これから聞き込みすればいいんだしさ。」
皆が苦笑いをしていると、商店街の方から一人の女性がやってきた。それはミーナが杖を買った魔法道具屋のオーナーの女性であった。オーナーの女性はレオンたちの元に来て話しかけた。
「広場で面白いことをしているって話を聞いて来てみたのだけれど、もうお開きみたいね。」
「あ!魔法屋のおねえさん!」
「ふふ、その人たちはあなたの知り合い?」
「うん!レオンおにいちゃんに、アリサおねえちゃん。そして、ルナおねえちゃん、ミレイおねえちゃんだよ!」
「みんな個性的でいい仲間ね。ところで、何の話をしていたのかしら?少し気になったの。」
オーナーの女性がレオンたちの話に興味を持ったということで、レオンは3つ目の祭壇を鎮めるために、このアゼルの町で神殿の情報について聞き込みをしようとしているということを話した。すると、オーナーの女性から驚きの返答が帰ってきた。
「それで、僕たちはこの近くにあると言われている神殿を探してるんだ。」
「なるほどね。それなら、私が知ってるわよ。」
「え!?本当ですか?」
アリサが驚いたように聞き返すと、オーナの女性は続けて答えた。
「ええ、すごく昔の話だけれど、私のおばあさまが神殿の巫女だったの。子供のころにお母さまから聞かされた話を今でも覚えてるわ。」
「どんな話だったのですか?」
「そうね、半年に一度、祭壇に祈りをささげていたの。平和と繁栄を願ってね。今でもその行事は続けられているわ。」
「そうなんですね。それで、その神殿の入り口はどこに?」
「元採掘場の中を少し行ったところにあるの。でも、そこは今魔獣が道をふさいでいるの。」
「だったら、アタシたちで魔獣を倒せばいいんだ!さっそく行こう!!」
ルナがやる気満々で皆に魔獣退治をすることを提案した。新しい装備を買って勢いづいているようであった。レオンたちはそれに賛同して、魔獣退治に乗り出すことにした。
「よし!僕たちも魔獣を倒しに行こう!」
「はい!頑張りましょうね!」
「うん!あたしの魔法でやっつけるよ!ミレイおねえちゃんは、どうするの?」
「私は宿で待っていますね。みなさんお気をつけて。」
「わかった!じゃあいってきます!」
「ふふ、にぎやかでいいわね。それじゃあ、案内するわ。ついてきて頂戴。」
ミレイは宿でレオンたちを待つことにして、レオンたちはオーナーの女性に案内されて、元採掘場へと向かった。しばらく町の中を進み続け、町の裏にある大きな山のふもとに着いた。そこには大きな横穴ができており、そこが神殿への入り口であることが一目でわかった。
「ここが神殿の入り口ですか?」
「ええ、そうよ。ここから行けば、すぐに祭壇へたどり着けるの。」
オーナーの女性が答えると、ルナが前に出て横穴を見ながら聞いた。
「そして、ここを魔獣が陣取ってて入れないようにしてんだよな?」
「そうね。」
「よし!じゃあアタシたちでさっさと片付けちまおう!」
そう言ってルナが横穴に入ろうとすると、横穴のすぐそばでキャンプをしていた男たちが話しかけてきた。その男たちとは、バーでレオンたちに席を譲って魔獣退治に出かけた4人の男たちであった。男たちは、激しい戦いの後だろうか、皆怪我をしていた。
「よお、お前たち!」
「あなたたちは、バーで席を譲ってくれた・・・・・。怪我をしているようですね。私が魔法をかけてあげますね?」
「あたしも回復してあげる!」
「おお、すまねえな。俺たちとしたことが手こずってな・・・・・。」
「いったいどうしたんだ?」
ルナが男にけがの理由を聞くと、男の一人が回復してもらって楽になったのか、一息ついてから答えた。
「あいつら、倒しても倒しても、いくらでも出てくるんだ。」
「なに?そんなやつらなのかい?」
「ああ、いくら倒してもキリがねぇってんで一度撤退したんだ。どうやら魔獣は横穴の外へは出てこないみたいだからな。」
「へぇ、ならアタシがまとめてブッ飛ばしてくるからアンタらはここで待ってな!!」
「へぇ、頼もしいねぇ。でもよ、危ないと思ったらすぐに穴から出てくるんだ。いいな?」
「わかってるよ。それじゃ行ってくるから!」
ルナは男の助言を聞いていくと、意気揚々と横穴の前まで進んでいった。アリサとミーナも、男たちの回復を終えて、ミーナの元へ向かった。
「それじゃあ、僕も行ってくるよ。」
「ええ、私はここで待っているわ。気を付けてね。」
レオンも、オーナーの女性に一旦の別れを告げてルナたちの元へ向かった。そして4人がそろって、横穴の前に立った。そしてレオンが声をあげて3人に気合を入れた。
「よし、みんな!行くぞ!!」
「はい!」
「おうさ!!」
「いっくぞー!!」
そして、レオンたちは気合を入れて横穴の中へと走っていった。