[九章]繋がり
村から立って数時間が過ぎ、日も落ちてきたが、レオンたちはまだ道を進んでいるところだった。
「まいったな、そろそろ夜になるぞ?」
「アタシは野宿でも構わないけどさ、みんなはどうだい?」
「あたしはやだー!」
「どこか宿のようなところでもあればいいのですが・・・・・。」
レオンたちが困り果てているところの、カインが口を開く。
「ここをもう少し進めば牧場があるんだ。旅の人たちが利用する宿も兼ねているから、そこで休めるよ。」
「本当か!?よし、日が落ちる前に行こう!」
「あ!待ってください!私たちも行きますから!」
カインから話を聞いたレオンは、駆け足で道を進んでいった。アリサ達も駆け足でレオンについていく。そして、ちょうど日が落ちた頃、レオンたちはその牧場にたどり着いた。牧場の宿屋に入ると、若い女性の管理人が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ!旅のお方が5名様ですね?今部屋に案内いたします。」
「本当に牧場があってよかったですね!」
「ああ、カインが教えてくれなきゃ夜までに着けなかったよ。ありがとうな、カイン!」
「いいんだ。早く宿に着きたかったのはお互い様だからね。」
そんな話をしているうちに、アリサ、ルナ、ミーナの3人と、レオン、カインの2人に分かれ、それぞれの部屋に案内された。2人きりになったレオンとカインは、今までの旅の話をすることにした。
「へぇ、レオンたちは神殿の祭壇を鎮めるために旅をしてたのか。」
「ああ、もう3つの祭壇が鎮められたんだ。」
「ということは、もう半分なのか。すごいなぁ。」
「カインだってすごいよ。ずっと一人で旅をしてたんだろ?」
「そうだよ・・・・・。いや、最初は2人だったんだ。」
「え?じゃあ、もう一人はどこに?」
「生き別れになったんだ。」
「そうだったのか・・・・・。」
カインは少し間を置くと、暗い表情で話を続けた。
「俺の妹なんだ。」
「妹?」
「ああ。実は、俺の生まれ故郷の村もガロス帝国の襲撃にあったんだ。」
「なんだって!?」
「もう一年も前の話だけど、その時俺は妹と一緒にガロスの騎士に捕まって、地下で奴隷のように働かせられたんだ。」
「大変だったんだな・・・・・。」
「ああ。そして、耐えられなくなった俺と妹は、監視の隙をついて外へ逃げることに成功したんだ。でも、そのあと川の氾濫で起きた濁流で離れ離れになって、かならず再会しようって約束して、それぞれ別々の道を行くことにしたんだ。」
「そうなんだ・・・・・。なんか、カインは僕が想像してたよりもずっと強いんだな!」
「そうかな?」
「そうだよ。あのときだって、あのガロスの騎士の鎧を貫くなんて、僕じゃできないことだよ。」
「ありがとう。ところで、レオンが旅をしてる理由って、祭壇を鎮めることだけ?」
「いや、そもそもこの旅をしてるのも、なりゆきなんだ。」
「なりゆき?」
そこまで話すと、レオンはカインとは違い明るい表情で話を続けた。
「僕にも妹がいるんだけど、荒海の中で妹を助けたときに、渦潮に飲み込まれて、気付いたらこの海の世界にいたんだ。そこでアリサと出会って、ルナとミーナとも出会って、それで、4人で旅をしようってことになったんだ。」
「へぇ、そうだったんだ。なんだか俺と似てるな。」
「はは、かもしれないな。そういうわけで、僕の旅の理由は、祭壇を鎮めるのと、地上の世界に変える手段を探すこと、かな?」
「なるほどな。いつか、地上に帰れるといいな。」
「ああ!」
話に夢中になっていると、夜も更けてきたことに気づき、2人は眠りにつくことにした。ベッドで横になったレオンは、妹のユンのことを考えながらその眼を閉じた。
「ユンは、元気にやってるかな・・・・・。」
クオーリアでは、真夜中の穏やかな海から一隻の貿易船が西下層の大船着場に着いた。その船の中から物資とともに出てきたのは、緑色の牧師のローブのようなものを来た金髪の男だった。その男を、グランとギーレが出迎えた。
「5帝のトップであるお前が自ら来るとはな。セロ!」
「ヒヒヒ、セロ殿が来たということは、もうクオーリアの伝承について調べがついたということですかな?」
その男の名前はセロ。5帝の一人にして頂点に立ち、ほかの5帝を取り仕切っているのだ。セロはグランとギーレに答えた。
「ああ、ある程度は調べられたが、これ以上は現地での調査が必須と判断した。」
「へっ!そうかよ。ところで、お前はクオーリアの伝承を解き明かしてどうするつもりなんだ?」
「グラン、お前が知る必要はない。これは伝承を調べろとの王の命令でもあるのだ。」
「ヒヒヒ、グランよ、そういうことだ。」
「そうかよ。じゃあ俺は寝てくるぜ。」
「ではワシも研究の続きを・・・・・。」
「ああ。私も明日の準備をする。」
それだけ会話を交わして、3人は別れた。それぞれが不穏な空気を漂わせながら、夜は過ぎていく。
朝になり、ユンとリルカは朝食を済ませた後に、2人で南下層のビーチへと遊びに来た。今日はショップも学校も休みの日。海に来てからリルカはとてもうれしそうにしていた。
「リルカちゃん、そんなに海がうれしいの?」
「はい!私の故郷も海と関係が深いところだったんです。」
「そうだったんだ、じゃあ、今日はたくさん遊ぼうね。」
「はい!」
アリサとリルカは海で泳いだり、砂浜で砂遊びをしたりして、半日を過ごした。そして2人は、ビーチに設置されてるパラソルの下で休んでから帰ろうと思い休んでいた。ふと、リルカはユンに話しかけた。
「ユンさんには、お兄さんがいたんですよね。」
「うん。」
「私にも、兄さんがいたんです。」
「そうなの?」
「はい、兄さんは優しくて強いひとでした。怖いところから逃げてきたときも私を助けてくれたんです。」
「そうなんだ、そのお兄さんは今はどうしてるの?」
「わかりません・・・・・。道がくずれて離れ離れになってしまって。」
話をしているリルカの表情は暗かったが、ユンの表情は、どこかやわらかかった。
「そうだったんだ。・・・・・なんだか、私のお兄ちゃんに似てるね。」
「そう、ですか?」
「うん、私のお兄ちゃんはね、私を命がけで助けてくれたの。」
「そうだったんですか。」
「私はお兄ちゃんが渦潮にのまれていくのを見たわ。でも、お兄ちゃんは生きているような気がするの。」
「え?どうしてですか?」
「わからない。でも、なんとなくそう思うの。」
「そう、なんですか。」
ユンが自分のつらい思い出を話しているのに、不思議とやわらかい表情をしていることに、リルカは少し驚いた。まるで自分の兄が生きていることを確信しているかのようであった。
「なんか、ヘンな話だよね。ごめんね?」
「い、いえ!大丈夫です。私も、兄さんはどこかで生きてるって信じてますから。」
「ありがと。それじゃあ、もう帰ろうか。」
「は、はい!」
ユンとリルカは立ち上がり、更衣室でいつもの服に着替えると、ビーチを後にした。
一方その頃、南上層地区では、貴族専用のレストランでグランとギーレが豪華な昼食を食べていた。グランがギーレに話を聞くために誘ったのだ。グランが聞きたいのは、セロがなぜクオーリアの伝承について調べているのか。そして、クオーリアにはどんな秘密があるのかということだ。
「さっそく聞くが、セロはなんでこんな小さな島国のことなんか調べてんだ?」
「それは、この国にはとてつもない力があるからだよ。」
「あぁん?その力ってなんだよ。」
「それを我らで調べとるんだよ。」
「そうかよ。じゃあセロはその力がほしいってわけか?」
「そうじゃろうな。しかしそんな力をセロ殿が何のために使おうというのか、それは我らにはわからない。」
「ああ、そうだな。」
一度話を切り、グランは厚切りのステーキをナイフとフォークで切って口に入れた。ギーレはスプーンでスープをすくって飲むと、グランに話しかけた。
「グランよ、その力とやら、もしかしたら世界をも揺るがす力かもしれんぞ?」
「何を馬鹿な。しかし伝承が本当なら、海の中に世界を生み出し、隠すほどの術と魔力があれば・・・・・。」
「ヒヒヒ、夢が膨らむなぁ?」
「ふん。」
そこまで話すと、お互い黙り込んで食事に集中した。
所変わって、西上層地区のクオーリア王女の屋敷。自室にいた王女は、セロがクオーリアに訪れたという報告を受けて、不安を感じていた。セロの目的は分かっていたからだ。
「セロはおそらくクオーリアに隠された秘密の力が狙いのはず。しかし本当に伝承のようにそんな力があるのかしら?」
王女が考えを巡らせていた時、ドアをたたく音が聞こえた。王女はあのちょび髭の側近、ガリアを呼び寄せたのだ。王女の自室を見ることは許されないため、ガリアはドア越しに王女に要件を聞いた。
「王女様、いかがな御用で?」
「ええ、実は、最近私を監視するものがいるようなのです。それが誰なのか調べてもらいたくて・・・・・。」
「かしこまりました。このガリア、身命を持って不信者を探し出しましょうぞ。」
「ええ、頼みましたよ。」
そういうと、ガリアの足音がドアから離れていった。ガリアは屋敷の外に出ると、屋敷の門の前で立っている人物の元まで近づいた。門の前でで立っていたのは、セロだった。セロの命令で王女を監視していたのは、ガリアであったのだ。
「王女の様子はどうだったか?」
「はい、依然と変わりないようです。しかし、監視の目に気付いていました。」
「不覚だったな、ガリア。」
「しかし私がその監視者であることには気付いておりません。ご安心を。」
「よろしい。明日は王女との面会だ。明日も良い報告を待っているぞ?」
「はい。セロ様の仰せのままに・・・・・。」
そう言ってセロとガリアは別れた。セロの大きな野望は静かにスタートを切ろうとしていた。
夕方になり、真っ赤な夕焼けがクオーリアを染め上げたころ、病院ではいつものようにジュンとギーレがリハビリをしていた。しかし、今日はジュンの様子がおかしかった。
「ヒヒヒ、もうすっかり良くなったな。これだけよくなればしばらく走り回ってても大丈夫じゃろう。」
「はい!ありがとうございます。でも俺、なんだかおかしいんです。」
「ん?どうかしたかの?」
「なんだか、無性に興奮するんです。それで、いてもたってもいられなくて・・・・・。」
ジュンは一見普通の状態に見えたが、心の中では異常な精神の乱れをおこしていた。ギーレは一見は心配そうに振る舞いながら、心の中ではこの変化をどこか楽しんでいた。
「ふむ、念のため精神安定剤を飲んでおこう。それで今日はもう休むといい。」
「は、はい。ありがとうございます。」
ジュンが病院の中に戻っていくところを見送ると、ギーレは不敵な笑みを浮かべた。
「ヒヒヒ、これからがたのしみだ・・・・・!」
一方海の世界のレオンたちは、朝起きて牧場の入り口で出発の準備をしているところであった。カインを除く全員が集まり、出発の時刻となった。時間になってもカインの姿が見えないので、レオンは皆にカインを見ていないか聞いた。
「なぁみんな、カインを見なかったか?」
「アタシは見てないよ?」
「あたしもー。」
「きっと先に行ったのでしょう。私たちも行きましょう?」
「そうだな。よし!行こう!」
レオンはアリサに言われ、牧場を出発することにした。
「次の目的地はアゼルの町です。もうじき運び屋の方が来るはずなのですが・・・・・。」
アリサが心配そうに言うと、牧場の方から馬車を牽き連れた男が現れた。この男がアリサが言っていた運び屋だ。
「お待たせしました。それでは行きましょう。」
「はい!お願いしますね。」
「あぁそれと、目的地のアゼルへの道なのですが、道中のほら穴の近くを通るのですが、そこで盗賊が潜んでまして。人を乗せていると襲われてしまいますので、ほら穴の手前まで乗せていくことになります。」
「そうなのですか・・・・・。」
盗賊の話を聞いて、ルナが腕を鳴らしながら馬車に乗った。
「物騒だねぇ。アタシらで退治しちまおうか?」
「さんせい!」
「2人の方が物騒だよ。」
レオンが苦笑いで2人にツッコミをいれた。そして、全員が馬車に乗ると、レオンが運び屋にほら穴の手前まで運んでもらうよう頼んだ。
「それじゃあ、そのほら穴の前まで頼むよ。」
「かしこまりました。」
こうして馬車ほら穴の手前までは進み始めた。馬車の中で、レオンたちはにぎやかな会話をしていた。レオンは、海の世界にも馬がいたことに驚いたことを話した。
「しかし驚いたなぁ。海の世界にも馬がいるなんて!」
「これもこの世界が陸の上にあった名残なのかもしれませんね。」
「そうだねぇ。レオンのいた陸でも、馬がそんなに珍しいもんじゃないだろ?」
「そうだよ。むしろ、珍しいところに珍しくないものがいたから、驚いたんだ。」
「うん!そういうことあるよね!」
レオンは、海の世界と地上には不思議なつながりが今も続いているんだと思った。ふとレオンは、次の目的地であるアゼルの町のことが気になったので、アリサに聞いてみた。
「アリサ、アゼルの町ってどんなところなんだ?」
「アゼルの町は工業が盛んな町なんです。農具や武器、防具などを作ってほかの国に売っているんですよ。」
「へぇ。僕の住んでたクオーリアにも鍛冶屋があるんだ。この剣もその鍛冶屋で作ってもらったんだ。」
レオンは腰にさしていたマリシャスサーベルを取り出して皆に見せた。サーベルは、多くの戦いに使われながらも、青白い輝きを放っていた。その剣を見てルナは感心した。
「へぇ!良い剣だねぇ!」
「だろ?この剣、もっと使っていきたいな。」
「そうですね。その方が、剣も喜ぶと思います!」
アリサがレオンの剣を剣に感心していると、ルナが腕を組んで何かを思うようなそぶりで言った。
「でもアタシは、アゼルに着いたらいろんな武器を見てみたいね!」
「あたしも!魔法杖はあるかな?」
「きっとあると思うわ。ミーナちゃんも楽しみ?」
「うん!楽しみ!」
レオンたちが武器の話題で盛り上がっていたところで、運び屋が馬車を止めてレオンたちに声をかけた。
「ここがほら穴の手前です。」
「はい!ありがとうございます!」
アリサがお礼をして、レオンたちは馬車を下りた。降りた所は、一本の道の左右に雑木林が広がっている場所だった。そして運び屋は、もう一度レオン達に注意をした。
「盗賊が現れるのはここらへんです。少し進んだ先のほら穴がアジトになっていますので、近づかないようにしてくださいね。
「はい、気を付けますね。」
アリサが答えると、運び屋は牧場へと戻っていった。レオンたちも、アゼルの町へ向けて進むことにした。雑木林をしばらく進んでいくと、草の生い茂る林の中からガサガサと音を鳴らしながら、何かがレオンたちの後をつけきた。レオンたちはその音から人の気配も感じていたので、一層警戒しながら進んでいった。そして、さらに進んでいくと、前の林の中から2人の女海賊が飛び出してきたのだ。
「おっとお前たち!その荷物を全部ウチらによこしな!」
「あっ!お前たちは!」
レオンたちはその女海賊の見覚えのある顔に気が付いた。出てきたのは、アリサの住んでいた村のすぐ近くの遺跡にあった最初の祭壇で、ミレイをさらった2人組の海賊の下っ端だったのだ。レオンたちの顔を見て、海賊たちも思い出したようである。レオンが海賊たちに向けて声を上げる。
「お前たち!ミレイさんを返せ!」
「ん!?お前らは遺跡にいたやつらだな?心配しなくてもあの女は無事さ。まさかあいつ自体は普通の人間で、人魚の足はマナで形成していたとはね!」
「だったらミレイさんにはもう用はないだろう!さっさと放すんだ!」
ルナが怒った表情で海賊たちにミレイを開放するよう言うが、海賊たちも簡単には引き下がらない。
「あの女にはもう少しだけ用があるんだよ!返してほしけりゃ力ずくできな!」
「上等!!」
海賊たちに挑発されて、ルナはやる気全開で戦闘に臨む意思を見せた。レオンとミーナも武器を構え、海賊たちに応戦する体制に入った。一方アリサは、後ろを向いて、雑木林の中に向かって声をかけた。
「そこに隠れている海賊さんも、出てきてください。もうそこにいるのはわかっていますから。」
アリサに言われて、先ほどから雑木林の中からレオンたちを追跡していた女海賊も出てきた。手にはサーベルを持っていて、レオンたちの不意を突くチャンスを待っていたところであった。
「やっぱりばれていたか・・・・・。しかしこれでお前らは袋の鼠だ。覚悟してもらうぞ!」
この海賊が現れたことにより、レオンたちは一本道の両側をふさがれてしまった。3人の海賊がサーベルを構えると、レオンたちも武器をしっかりと構えて、戦闘態勢を整えた。
レオン、ルナ、アリサはそれぞれ一番近い海賊に向かっていき一対一の状態を作り、ミーナはその場で3人を援護するべく攻撃魔法を唱え始めた。海賊たちはサーベルを構え、独特な剣術でレオンたちを翻弄しようとしてきた。始めにレオンと対峙した海賊がレオンをうねるような剣の動きで惑わす。
「アンタらに海賊流の剣技が見切れるかな?」
「これは、こんな動き初めて見るぞ!?」
海賊は隙をついてレオンに縦切りを当てる動きを見せた。それに反応したレオンはとっさにその剣を防ごうとしたが、海賊はレオンを切らずにそのまま剣を引き、すかさず横切りをレオンの腹に放った。最初の縦切りの動きはフェイントだったのだ。
「はぁぁ!!」
「なに!フェイントか!?」
レオンはかろうじて身を引き、海賊のサーベルが腹をかすめた。レオンは海賊に対して予想以上の手ごわさを感じていた。
「ほらほら!次は腹を切り裂いてやるよ!」
「くそっ!そう簡単にやられてたまるか!」
一方二人目の海賊と対峙しているルナも、海賊の剣技に苦戦を強いられていた。うかつにパンチを放てば、たちまち腕を切られてしまうことを自然と感じ取っていた。
「まったく面倒なやつだ!アタシのパンチを見切られちまうとは!」
「海賊をなめてるからさ!そら、細切れにしてやるよ!」
「だったらこれはどうだい!走炎拳!」
ルナが走炎拳を放つと、海賊は軽々とかわしたが、かわした拍子に足元がぐらついた。するとルナがそのわずかな隙を見逃さず一気に海賊に突っ込みパンチを放った。海賊が防御態勢をとるよりも先にルナの強烈な一撃がヒットし、海賊はふき飛ばされ、木に叩きつけられた。
「どうだい!これは効いただろ?」
「チッ!まだまだぁ!」
海賊がなおも攻撃を仕掛けようとすると、そこにミーナのアクアランスが放たれ海賊に直撃した。
「ルナおねえちゃん!アクアランス!!」
「魔法!?うわぁぁ!!」
海賊はその場に倒れ気絶した。ルナはミーナに手を振ってお礼をした。
「ミーナ!ナイスアシスト!」
「うん!この調子で全部やっつけちゃお!」
ミーナもルナに手を振り答えた。そしてルナはレオンの元へ向かい、ミーナはアリサのほうを向いてそれぞれ助けに入った。ミーナがアリサを見ると、アリサも海賊の攻撃に苦戦していた。すでにいくつか斬られた傷が見られ、息も上がっていた。
「はぁ、はぁ・・・・・。これが海賊の戦いなのですね!」
「さっさと物を出しときゃ怪我しないで済んだのにねぇ?」
「ここは譲れません!」
アリサに様子を見て、ミーナがすかさずアリサに回復魔法を当て、治療した。
「アリサおねえちゃん!」
「ミーナちゃん、ありがとう!」
「チッ!回復したって何度でも切り刻んでやるさ!」
海賊が再びアリサに切りかかってきた。アリサは集中して敵の剣の動きを見ながら、少しずつ距離を取り、攻撃の機会をうかがっていた。アリサはすでに敵の攻撃を見切っており、確実に攻撃をかわしていった。
「こいつ!アタイの攻撃をもう見切ったのかい!?」
「見えた!そこですっ!!」
「しまった!うぐあぁ!!?」
攻撃をしながらも動揺を隠せない海賊の一瞬の隙を突いてアリサは短剣で海賊に接近し、左肩を深く斬りつけた。海賊はサーベルを捨てて斬られた左肩を庇いながらアリサに離れていった。
「くそぉ!次はただじゃおかないよ・・・・・!!」
深手を負った海賊はそのまま雑木林の中に逃げ込み姿を消した。おそらくほら穴の中のアジトへ避難したのだろう。アリサがミーナの元に歩み寄り、お互いの無事を確認した。
「やったね!アリサおねえちゃん!」
「ミーナちゃんが回復してくれたおかげよ。ありがとう。」
「うん!これであと一人・・・・・だけど、大丈夫だよね?」
「うん。レオンさんとルナさんなら。」
2人がレオンとルナの方を見ると、ちょうど勝負がついたところであった。
「「剛雷剣!!!」」
「ぎゃぁぁぁ!!!」
レオンとルナの剛雷剣が二人と対峙していた海賊に放たれ、そのまま一撃で海賊を倒していった。そしてさっきまで気絶していた海賊が目を覚ましその場を見回すと、どうやら状況を理解できたようで、そのまま一目散に逃げだした。満身創痍の海賊も後を追うように逃げていき、ようやく戦いが終わった。レオンたちは集まってお互いの無事を確認した。
「みなさん、大丈夫ですか?」
「ああ、僕は大丈夫。」
「しかし今回はアタシでも苦労したね。あの剣の動き、思い出しただけで目が回ってくるよ。」
「うんうん、なんか、グニャグニャしてたよね!あたしにもわかった!」
皆が海賊の戦い方に驚いていると、レオンが海賊について補足した。
「それに加えて、バランスの取りにくい船の上でも自在に戦い、宝物を奪っていく。あれが海賊の戦い方なんだ。船の上であいつらにかなうやつはいないよ。」
「海賊ってすごいんですね。」
アリサが海賊の戦い方の関心していると、ルナが話を切り替えてきた。
「それよりさ、海賊はこの先のほら穴を根城にしてんだろ?放っておいたらまた旅人が狙われるわけだからさ、アタシらで懲らしめてやろうよ?」
「そうだな、あいつらからアリサのお姉さんの居場所がわかるかもしれない。」
「それならやりましょう!私も姉さんが心配で・・・・・。」
ルナの提案に対し、アリサが声の調子を上げて言ったので、レオンたちは海賊のほら穴に乗り込むことにした。ミーナが先ほどの戦闘での皆の傷を治療し、それぞれが装備の確認を行った。
「みんな、準備はできたか?」
「アタシはバッチリだよ!」
「私も大丈夫です!」
「よーし!それじゃあ出発だね!」
「ああ!みんな、行くぞ!!」
すべての準備が終わり、レオンたちは海賊のほら穴へと向かい歩みを進めた。