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[八章]風の神殿とガロス帝国の脅威

風の神殿へと入っていったレオン達、中は水の神殿同様、少し薄暗く狭い迷路のようにになっていた。そして神殿の中では、常にどこからか風の吹く音が聞こえてきた。しばらく進むと、大きな扉と、その扉の前に大きな風車が置いてあった。


「大きな風車だ。」


「これはどういう意味があるのでしょうか?」


「扉はアタシが叩いても開きそうにないね。」


「うーん、ここもなにか仕掛けがあるんだよ!さがしてみよ?」


ミーナの言う通り、レオンたちはほかになにか仕掛けがないか探し始めた。すると、先ほどとよりも少し小さい風車が小さな通路の曲がり角にあった。その風車は大きな風車の方へと向いていた。レオンたちがさらに進むと、また曲がり角に風車があった。今度は次に進む方を向いて、その風車は風を受けてくるくると回っていた。レオンたちが風車の向いている方へ行くと、そこは突き当たりで、なにやら高いところにある小さな穴からひゅうひゅうと風が吹き込んでいた。


「もしかしたら、これがあの扉を開く仕掛けかもしれません。」


「でも何をどうするんだ?」


「あっ!僕わかったぞ!」


レオンが突然ひらめいて、風があたって回転している風車の方へと向かった。そしてレオンは、風車の足元にバルブのようなものがあることに気が付いた。レオンがそれを回して風車の向きを、最初の突き当たりにあった風車に向けた。すると、風を受けた風車が最初の突き当たりの風車に風を送り、さらにその風車が回転し、大きな風車へと風を送った。レオンたちが大きな風車の元へ戻ると、その巧妙な仕掛けに驚いた。


「すごいですレオンさん!よくわかりましたね!」


「昔かざぐるまを見たことがあって、思いついたんだ。」


アリサはレオンの知恵に感謝した。大きな風車に風が当てられるが、大きな風車はまだ回ることはなかった。ルナが疑問に思ってつぶやいた。


「この風車、回ってないな。どうするんだ?」


するとミーナがレオンたちに言った。


「きっと風がたりないんだよ。もっと風を集めたらこの大きな風車も回ると思うよ!」


「そうだな。よし、もっとさがしてみよう!」


レオンたちはまたもミーナの助言をもとに別の道を行くことにした。するとまたも同じように2つの曲がり角に風車が置いてあり、突き当りには風の吹き込む穴があった。


「さっきと同じだな。さっさと仕掛けを解こう!」


レオンが先ほどと同じように風車の向きを合わせて、大きな風車に風を送った。大きな風車の元に戻ってみると、大きな風車は2つの風を受けて回っていた。すると、大きな風車の前の扉が少しづつ開いてきているのが見えた。


「見て!扉があいてるよ!」


「よし!これで進めるな!」


レオンたちは勢いよく、扉の中へ入っていった。



扉の中に入ると、水の神殿の祭壇があった場所と同じ、とても広い空間に出た。


「ここは、水の神殿で祭壇があった場所と同じですね。」


「じゃ、ここにも祭壇があるんだな!」


レオンが祭壇へ向かおうとすると、突然レオンたちの前で風が集まり、その風が4体の鳥のような姿になった。これが風の神殿に住まう風の魔物である。レオンたちはすかさず武器を構え戦闘態勢に入った。


「こいつらがここの魔物かい!?」


「そのようですね。気を付けていきましょう!」


始めにレオンが風の魔物の一体に飛び込み切りを放った。魔物はダメージを受けながらもレオンに素早い鳥の足でひっかき攻撃した。レオンはその攻撃をなんとかかわし、さらに攻撃を当てていく。すると風の魔物は風に戻って消えて行った。


「みんな!こいつら動きは素早いけど、耐久は少ないみたいだ!」


「わかりました!」


「次はアタシが行くよ!」


アリサとルナも風の魔物に向かっていった。ミーナはレオンに回復魔法をかけて、次の攻撃魔法を唱え始めた。2体目の風の魔物に向かったアリサは短剣で魔物を斬りつけた。すぐさま魔物に反撃されるも、その攻撃を華麗にかわし、アリサはさらに魔物に追撃を当てた。すると魔物はあっという間に消滅した。そしてルナは3体目の魔物に一気に接近し、強烈なアッパーを放った。魔物はそれを受けて一撃で消滅していった。


「すごいですルナさん!」


「アタシにかかりゃこんなもんさ!」


残るは一体のみ、レオンが一気に接近して勝負をつけようとした。魔物も助走をつけた飛び込みひっかきで対抗しようとするも、ミーナが放ったアクアランスの直撃を受け地面に落ちた。そこにレオンが袈裟切りを放ち、最後の風の魔物も消滅していった。


「ふう、これで全部だな?」


「そうだね!みんなお疲れ様!」


「ありがとミーナ、アタシも少し疲れちゃったね。」


「祭壇へ向かう前に少し休みましょう。」


戦いを終えたレオンたちは、守護獣との戦いに備えて少し休憩をとることにした。皆疲れた表情をしていたが、それでも前向きな姿勢を崩すことはなかった。


「みなさん、先ほどの魔物、水の神殿の時よりも強敵でしたね。」


「ああ、素早く連携されてたらアタシらでもかなわなかったね。」


「でもでも、魔物ってあんまり頭はよくないのかなぁ?」


「それでも、これからももっと厳しい戦いになると思います。みなさん、気を引き締めていきましょう!」


アリサの言葉に、レオンたちは気持ちを入れなおし、戦いの準備を整えて皆で祭壇に近づいた。すると祭壇は水の神殿に時と同じように、今度は小さな竜巻に包まれ、広い空間の中央に風が集まり始めた。そして集まった風は竜巻のようになり、大きな鷲の姿になってレオンたちの前に現れた。これが風の守護獣である。


「出た!水の神殿のときと同じだ!」


「レオンさん、この守護獣から今までとは桁違いの魔力を感じます!気を付けましょう!」


風の守護獣は羽で羽ばたきながら飛んでおり、攻撃を当てにくい状態であった。


「空を飛んでたら走雷剣は当たらない。それなら!」


レオンはルナとともに風の守護獣の懐に一気にもぐりこみ、守護獣の足元を3回斬り、終わりに降雷剣を放った。


「降雷剣!!」


「レオン!アタシも続くよ!」


それに続いてルナも、守護獣に飛び込みパンチを放った。しかしこれらの攻撃を受けながらも全くひるむことなく、風を纏った足蹴りでレオンとルナを吹き飛ばした。


「うわっ!こいつは骨が折れそうな相手だね!」


「僕たちの攻撃が効いてないのか?」


飛ばされたレオンとルナはあまりの衝撃に受け身を取ることもできずに地面に叩き付けられてしまった。


「レオンさん、ルナさん!大丈夫ですか?」


「みんな!もうすぐライトニングの詠唱が終わるよ!」


その時である。風の守護獣が大きな羽を思い切り羽ばたかせ、大量のかまいたちを放ってきたのだ。かまいたちはレオンたち全員に襲いかかり、瞬く間に大ダメージを受けてしまった。あまりの威力に、ミーナの集中が切れてライトニングの詠唱が切れて不発に終わった。


「うわぁぁ!!な、なんだこの攻撃は!?」


「ううー、痛いよー!しかもライトニングの詠唱が~!」


「大ピンチだよ!どうしたらいいのさ・・・・・!」


「・・・・・!あの魔法なら!」


一気に追い詰められたレオンたちに、風の守護獣がゆっくりと近づいてとどめを刺そうとそてきた。その時、アリサが魔法を唱え始めた。風の守護獣がそれに気づき、攻撃対象をアリサに向ける。


「アリサ?まさかあの魔法か!ルナッ!」


「わかってるよレオン!コンビネーションアタックで足止めだよ!」


レオンとルナが傷だらけの体に鞭を打つ気持ちで、再び風の守護獣の懐に入り攻撃を仕掛けた。初めにルナが炸裂拳をアッパーで放ち、それに合わせるようにレオンがルナの拳に向かって降雷剣を放った。するとルナの拳と雷が当たって強い衝撃が放たれ、風の守護獣に大打撃を与えた。


「「剛雷剣ごうらいけん!!」」


風の守護獣はそれを受けて、空中で大きくよろけ、大きな隙が生まれた。その隙にアリサは魔法の詠唱を終えその魔法を放った。


「キュアウィンド!!」


アリサが魔法を唱えると、レオンたちに桜色の暖かい風が吹き、瞬く間にレオンたちの傷が癒えていった。


「アリサ!これは・・・・・?」


「あの男の人がくれた魔法です。さぁ、一気に勝負をつけましょう!」


「わーい!アリサおねえちゃんすごいのー!」


「アタシも力が戻ったみたいだよ!アリサ、ありがとね!」


すぐさまミーナが魔法を唱え始め、レオンとルナもさらに風の守護獣に追撃を仕掛けて行った。アリサもレオンとルナとともに前線に参加していった。


「時間をかければ追い詰められる、3人で一気に仕留めるぞ!」


「わかりました!」


「アタシもいくよ!おらおらぁ!」


レオン、アリサ、ルナの3人の攻撃を受けて、風の守護獣は羽で突風を当て、3人の足を止めつつ後ろに下がり、再びかまいたち攻撃を仕掛けようとした。


「いまだ!ロックブラスト!」


そこに突然、風の守護獣の足元から石の柱が飛び出して風の守護獣に直撃した。先ほどミーナが唱えていた魔法「ロックブラスト」が炸裂したのだ。風の守護獣はその体を崩壊させながら地面に落ちた。


「ミーナ、ナイス!」


「ルナおねえちゃん、ありがと!」


身体が崩壊しながらも、なお立ち上がろうとする風の守護獣。それにとどめを刺すべくレオンが横に一回転して勢いをつけた強力な横切りを放った。


満月斬まんげつざん!!」


その一撃を喉に受けた風の守護獣は完全に体が崩壊し、風に戻って消滅した。風の守護獣との激しい戦いが終わり、レオンたちは仲間の健闘をたたえ合った。


「やったな、みんな!」


「さすがのアタシも今回の相手はどうなるかと思ったよ。」


「ですが倒すことができてよかったです!これもみなさんのおかげですね!」


「ううん!これはアリサおねえちゃんのおかげで勝てたんだよ!」


「そうだな!僕もアリサに助けられたよ。ありがとな!」


「はい!皆さんのお役に立てて嬉しいです!」


レオンたちは強敵との戦いに打ち勝った喜びを分かち合った。そして、ついに2つ目の祭壇を鎮めるときが来た。


「さぁアリサ。」


「はい、レオンさん。」


アリサは祭壇に近づいた。すると今まで祭壇を包んでいた竜巻が消えていった。そして、アリサは祭壇に祈りをささげた。


「水霊の守り神よ、その震える魂を鎮めたまえ・・・・・。」


すると、水の神殿と同じく、乱れていたマナが穏やかになった。アリサがレオンたちの元に戻り祭壇の鎮静化に成功したことを話した。


「みなさん、ここの祭壇も無事正常になりました。」


「やったなアリサ、それじゃさっさとここを出ようか。」


ルナがそう言って神殿から出るべく来た道を戻っていった。ほかの3人も後に続くように神殿を後にした。



レオンたちが神殿を出ると、祈祷台の前で国王が迎えてくれた。


「おお、旅の者たちや、よくぞやってくれた!これでフーラも安泰じゃ。」


「はい、これでこの地にも穏やかな風が戻りましたね。」


「しかし疲れちまったよ。アタシは休憩所に行くけど、みんなはどうする?」


「私は国王様にお聞きしたいことがありますので、ルナさんたちは先に休憩所で休んでいてください。」


「おう、わかったよ。行こうか、レオン、ミーナ。」


レオンとルナとミーナは、3人で休憩所へ向かっていき、アリサは国王とともに、国王の住む小屋へ向かった。小屋に着いたアリサと国王は暖炉のそばで向い合せに座り、話を始めた。


「さて旅の者よ、わしにお聞きしたいことはなんじゃ?」


「ここへ向かう道中に、突然眠りについたまま目を覚まさないという男性を見ました。この奇病について、なにかご存知ありませんか?」


「ふむ、わしも聞いたことはあるのぉ。かなり昔の話じゃが、伝承として永遠に眠り続ける呪いが記されている。」


「その伝承とは?」


「とある王国を支配していた暴君が国の秘密を知った者にこの呪いをかけて永遠に眠らせたという話じゃ。もしかしたらなにか関係があるかもしれん。」


「なるほど、お話いただきありがとうございました。」


「これでおぬしらの旅の役に立てるのなら本望じゃよ。さ、お仲間のところへお行きなさいな。」


「はい、では失礼しました。」


アリサは国王に一礼をして小屋を出た。そして休憩所へ向かうと、一番奥の席でレオン達3人が談笑していた。アリサはその中に入り、話に加わった。


「アリサ、おかえり!」


「はい!ただいまです!」


「アリサ、国王さんとなに話してきたんだい?」


「はい、牧場で眠っていた男性の症状は、とある伝承の呪いと関係があるかもしれないそうなんです。」


「呪いか・・・・・。僕でもわかるけど、ずいぶん手の込んだことするんだな。」


「ええ、この呪いについても、いずれわかるかもしれません。」


レオンとアリサで話し合っていると、ルナが立ち上がって言った。


「そこらへんもさ、先に進んでいけばわかるかもしれないね。」


「そうだな!よし、さっそく僕たちも先に進もう!」


レオンがルナに答えると、皆がうなずいて休憩所を出て行った。フーラ王国の出入り口まで来たところで、レオンがカインを見かけないことに気付いた。


「そういえば、カイン見かけないな。」


「きっと先にフーラを出たのでしょう。私たちも行きましょう。」


アリサがそう答えると、レオンたちはフーラを出て、山の向こうへと続く下りの道へと歩みを進めた。



レオンたちが山の向こう側へ向かうべく山を下っていく。やはり上りの道よりも楽であるためか、一行の顔は穏やかであった。山をそこそこ下ったところでルナがレオンたちに話しかける。


「やっぱ下りの道は楽でいいね~。」


「そうですね!今までが上りだったので余計にそう感じます。」


「ねぇねぇ、この道をゴロゴローって転がったらもっと早く下れるよね?」


「危ないからやめときな。」


「はーい。」


ミーナの子供らしい発想をルナが止める。いつものにぎやかな会話を交わしながら山を下っていくと、反対方向から、男の子2人と女の子1人の、3人の子供が上ってくるのが見えた。その子供たちはとてもあわてた様子でとても不自然だった。そして、子供たちはレオンたちを見ると、レオンたちの前に来て助けを求めてきた。


「あ、あんたたちフーラから来た人だよな!?助けてくれよ!」


「何があったんだ!?」


レオンが子供の目線まで腰を下ろすと、子供たちは話を続けた。


「俺たちの村がガロスに占領されちまったんだ!みんな奴隷みたいに働かされてる。」


「なんだって!?」


ルナが驚いていると、女の子が話を続けた。


「あたちたちはなんとか村を抜け出してきたの。今からフーラに助けをよぼうとしてたのよ!」


子供たちの話を聞き終えると、レオンたちは顔を見合わせうなずいた。そしてレオンが子供たちに言った。


「わかった。君たちはこのアリサっていう人と一緒にフーラへ向かうんだ。」


「うん、わかったよ。でもあとのにいちゃんたちはどうするの?」


男の子の一人が不安そうに聞くと、レオンは下りの道の先を見て勢いよく答えた。


「君たちの村を取り返してくる!」


レオンの言葉に続くようにルナとミーナも答えた。


「ま、アタシらに任せな!」


「あたしもがんばっちゃうから!」


子供たちはとても驚いたような顔をした後、その3人の頼もしい姿からか明るい顔になってアリサの元へ集まった。そしてアリサは3人の子供たちに優しく声をかけた。


「君たちの村は3人に任せて、私と一緒に助けを呼びにいきましょう?」


「うん!」


「村は山を下りてすぐのところだよ!おにいちゃんたち、たのんだぜ!」


「ああ!わかった!」


レオンはアリサと子供たちを送ると、ルナとミーナとともに村へと走り出した。



レオンとルナ、ミーナがしばらく坂を駆け下りていくと、山のふもとに小さな村が見えた。3人はこっそり民家の裏に隠れながら村の中をのぞいた。村の中には、鎧をまとったガロスの騎士が、村の中を占拠してキャンプを行っていた。フーラ侵攻のための砦にするためであろう。


「レオンおにいちゃん、ここだよ。」


「ああ、10人、門番も含めると12人もいるぞ・・・・・。」


「アタシらだけで12人は無理だよ。助けを待つかい?」


「いや、いつ子供たちが逃げ出したことがばれるかわからない。隙を見て一気に仕掛けよう。」


レオンが作戦を提案すると、ルナとミーナはうなずき、引き続き村の様子を見ることにした。しばらく見ていると、奥の小屋の中から重そうな木箱を持った、この村の住人と思われる2人の男が出てきた。そして男たちは、村の中央でたき火をしているガロスの騎士の元に木箱を置いた。男たちはすぐに靄に戻ろうとしたが、男の一人が戻る途中で倒れてしまった。もう一人の男が倒れた男の肩を担いで小屋へと戻ろうとしたところに、ガロスの騎士の一人が冷たく言い放った。


「おい、そいつをゴミだめにでも捨てておけよ。小屋の中に置いておいても邪魔になるだけだからな。」


そういわれた男は何も言わずに小屋へと戻っていった。先ほどのガロスの騎士の言葉を聞いたレオンたちは静かに怒った。まるで人を人とも思わぬ言動に、レオンルナとミーナの目にも怒りがこもる。


「なんてひどいことを・・・・・。」


レオンの怒りのこもった言葉にミーナも賛同する。


「うん、あたしも許せないよ!」


「そうだな、でもなかなかうまくいきそうなタイミングが来ないな。」


「なら、あたしがチャンスを作るよ!」


レオンが困っているところに、ミーナが2人に提案した。チャンスを作る方法をルナが聞いた。


「ミーナ、どうするんだい?」


「あたしがライトニングを撃ったら、レオンにいちゃんとルナおねえちゃんが一気にやつらをたおしちゃえ!」


「なるほど!よし、僕はそれで行こうと思う。ルナは?」


「アタシも賛成だよ。さっさとやっつけちまおう?」


そう言って3人は武器を構えた。ミーナがライトニングを詠唱を始めると、突如村が騒がしくなった。


「おい!閉じ込めておいたガキがいなくなった!」


「なんだと!?すぐに探し出せ!」


ガロスの騎士たちが3人の子供たちが逃げたことに気が付いてしまったのだ。ガロスの騎士が3人ほど集まり子供たちを探し出す準備を始めた。慌てたレオンがミーナに声をかける。


「ミーナ!」


「いつでも行けるよ!」


「よし、やってくれ!」


「ライトニング!!」


レオンの指示でミーナは中央に集まった騎士たちにライトニングを放った。それを喰らった3人の騎士たちは雷に吹き飛ばされて気を失った。突然の攻撃に村の中にいた騎士たちはパニックになった。


「なに!?何が起きたのだ!」


「フーラの襲撃か!?」


「よし、行くぞルナ!」


「おう!」


すかさずレオンとルナは村の中央に飛び出してガロスの騎士たちに攻め入った。


「この村を開放してもらうぞ!」


「アタシにブッ飛ばされたくなきゃさっさと出て行くんだね!!」


「貴様らはフーラへの侵攻を邪魔したやつか!ここで雪辱を晴らしてくれるわ!」


ガロスの騎士たちは見張りも含めて残りの9人全員でレオンとルナを取り囲んだ。逃げ場を失った2人はどこからでも攻撃をかわせるように注意して身構えた。その時、村の入り口からレオンとルナを呼ぶ声が聞こえた。


「レオンさん!ルナさん!」


「アリサ!」


そこにはフーラの兵士を引き連れたアリサの姿があった。村の異変を知らせ、複数の兵士とともにレオンを助けに戻ってきたのだ。


「新手がきたか!さては逃げ出したガキが知らせたな!?袋叩きにしてくれる!」


ガロスの騎士たちは5人がかりでアリサ達を取り囲み、レオンとルナの相手は4人に減った。そして先ほどまで隠れていたミーナも飛び出してきて、レオンたちを援護する体勢に入った。


「貴様らなど4人で十分だ。取り押さえて処刑してくれる!!」


「そう簡単にやられてないぞ!」


ガロスの騎士がレオンに槍を向けるが、レオンも恐れることなく剣を構えた。その間にルナはすかさずミーナの元に向かい、ミーナの援護に回った。ガロスの騎士はそれぞれ2手に分かれてレオンたちに攻撃を仕掛けようとしていた。


「覚悟してもらうぞ!小僧!」


レオンに向かい2人の騎士が同時に攻撃を仕掛けた。レオンはすばやく片方の騎士の懐に潜り込み、雷の二連切りを騎士に叩き込んだ。


「槍は懐が弱点だ!!」


「しまった!ぐおっっ!!」


騎士が大きく後ろに仰け反ったところをさらに追い打ちで蹴り倒した。もう片方の騎士がレオンを槍で貫こうとしてきたが、レオンはそれも難なくかわし走雷剣で牽制した。


「隙だらけだ!走雷剣!!」


「なに!?ぐあっ!!」


「まだまだ!降雷剣!!」


「ぬあぁぁ!!」


走雷剣を喰らいひるむ騎士にさらに接近して降雷剣を放った。騎士は強力なマナの攻撃を喰らいその場に倒れた。最初に倒した騎士が立ち上がろうとしているのを横目に、レオンがルナとミーナの様子を見ると、すでにルナが騎士の片方を倒したところだった。


「なんだい!そんな程度じゃアタシに傷をつけることもできないよ?」


「くっ!ガロスの洗練された騎士がこんな若造に後れを取るはずがない!!」


もう片方の騎士がルナに槍の一撃を放った。ルナはそれを騎士の懐に潜りながらかわし、騎士に強烈な火のマナを使った一撃を放った。


「燃え尽きな!!剛爆拳ごうばくけん!!!」


「火のマナだとぉ!!?ぐわぁぁぁ!!!」


剛爆拳を喰らった騎士は遠くに吹き飛ばされ、そのまま気絶した。2人の騎士を軽々と倒したルナはレオンに手を振った。レオンも手を振り返してお互い無事なことを知らせた。その時、立ち上がった騎士がレオンに攻撃を仕掛けてきた。


「お、おのれぇぇ!!」


「レオンおにいちゃん大丈夫!「アクアランス!!」」


しかしそこにミーナが先ほど詠唱しておいたアクアランスを騎士に向かって放ち、それが騎士に見事に突き刺さった。強力な魔法を喰らった騎士は倒れ込み、気絶してしまった。


「ミーナ、ナイス!」


「あたしも活躍しなきゃね!」


レオンがミーナにも手を振って答えた。そして、レオンたちに倒されたガロスの騎士たちは村から逃げ出した。アリサとフーラの戦士に襲いかかっていたガロスの騎士も、劣勢を感じ村から退いていった。村からガロスの騎士がいなくなり、レオン、ルナ、ミーナとアリサは合流した。


「やったな、アリサ!」


「はい!これでこの村も安泰ですね。」


「それじゃあさ、とっとと小屋に閉じ込められてる人たちを助けようよ?」


ルナが小屋に向かおうとすると、小屋の中からガロスの騎士が女性の首をつかんで出てきた。


「貴様ら!よくもやってくれたな!」


「こいつ!まだいたのか!」


「待ってください!女の人が人質にとられています!」


「なに!?」


「この女がどうなってもいいのか?助けを呼んだのがあのガキどもなら、こいつを見捨てるのはあんまりだよなぁ?」


「どういうことだ!」


レオンがガロスの騎士に女性のことを聞こうとすると、門の方から3人の子供たちが現れた。そしてその一人の男の子が女性に向かって叫んだ。


「お母さん!!」


「なんだって!?」


レオンたちは驚愕した。なんと人質にとらわれていたのは男の子の一人の母親だったのだ。レオンたちは迂闊にに手を出せなくなってしまった。


「アンタ、根性まで腐りやがって!」


「なんとでも言え!この女の命が惜しかったら貴様らが村から出るんだ。」


「くっ、どうすればいいんだ!」


レオンは、村を退くことをするわけにもいかず、かといって子供の母親を見殺しにすることもできずに動けなくなってしまっていた。その時だった。


「・・・・・!!」


レオンやアリサ、ルナ、ミーナ、その場にいたガロスの騎士を除く一同が驚いたような表情をした。


「ん?貴様らどうし、うぐぅぅ!!?」


突如背後から、何者かがガロスの騎士の心臓を、強固な鎧ごと銀の剣で貫いた。そして背後から来た人物は、ガロスの騎士の手から解放された子供の母親を庇った。そう、レオンたちはその背後の人物に驚愕していた。


「危ないところだったな、レオン。」


「カイン!!」


その人物はカインだった。レオンたちはカインの元に集まる。


「カイン!助かったよ。でもどうしてここに?」


「騒ぎを聞きつけて来たんだ。村の危機を救えてよかったよ。」


「カインさん、ありがとうございます!」


「いいんだよ。これも助け合いさ。さぁ、まだ小屋にはたくさんの人がいるはずだ。助けてあげなきゃ!」


そう言ってカインは小屋の中に入っていった。レオンたちも後に続いて小屋の中に入り、とらわれていた村の人々を救出した。村に平和が戻り、村人たちは各々の治療に専念した。そしてレオンたちとカインは、村をフーラの人たちに任せて、村を出ようとすると、村の村長と思われる男の人がレオンたちに声をかけてきた。


「旅の一行様、村をお救いいただきありがとうございました。」


「僕たちは当然のことをしたまでですよ。」


「そうですよ。村の人たちも早く良くなるといいですね!」


「はい、御一行様もどうかお元気で。」


村長に迎えられ、レオン、アリサ、ミーナ、ルナ、そして一時的に合流したカインは、村を後にした。

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