異形の来訪Ⅱ
家へ連れて行くために、とりあえず逢魔に召喚してもらった鷂に乗せようと、秋は少女を慎重に引き寄せた。
体力を失い弛緩していたはずの少女の体は、しかし抱え上げると強張った。そして、意識も朦朧としてるはずなのに、身を捩り、懸命に秋の腕から逃れようと、抵抗にならない抵抗をした。
「っくうぅっ」
秋にとっては微々たる抵抗だが、暴れると傷に障るため、傷に障らないように気を付けながら、昔に火華達にしたように、頭を撫でた。
すると、疲れたからか、敵ではないと分かったからか。頑なに強張らせ続けていた体は次第に弛緩していき、少女は意識を失った。
「秋兄ぃ!おかえ・・・どうしたの?!だれ?!その子!!??」
「悪い火華、コウとスウ呼んできて、今すぐにっ」
家に着く頃には、少女の顔色は最悪の状態だった。
急を要する緊急事態だとすぐに察した火華は、何も訊かずに踵を返して家の中へ飛んで行った。
「コオオオオオオオオオウ!!!スウウウウウウウウウウ!!!今すぐにきてええええええ!!!コウは水もおおお!!!!」
年の割に大人びて賢い彼女は、何をするのか、そしてこれから何が必要なのか心得ていた。
逢魔の応急手当ての手伝いに奔走させられながらも、秋は火華の声に少し微笑んだ。