異形達の日常
年長組がスウの話していた頃。
「いよっし!!」
秋から指示をもらい、野菜を濯ぐために台所に来たスウは、まず大瓶に入っている水を、手で掬った。
「とぅ!!」
そしてその水を宙に放った。
いささか気の抜けた声とは裏腹に、手つきは心成し丁寧に。
すると驚いたことに、落ちるはずの水が、その場に留まった。さらに何度か水を宙に放つと、さらに驚くべきことに、スウの手の動きにあわせて遊ぶように水が宙を泳ぎ、野菜の元へ向かって行った。
それらは、各野菜に分散し、纏わり付いて表面をなぞり、野菜の汚れを吸収し、開いていた窓から飛び出して行った。
「よしっ!」
スウには生まれつき水を感覚で操る能力がある。誰に教わるでもなく様々な方法でいろんなことができる。例えば、空中の水分を集めたり、水の粘度を増加し、その粘着力で汚れを取ったりなど。
「ひとつ、ふたつ、」
シュンッシュンッ
「みっつ、よっつ・・・」
シュンッシュン・・・
その応用で今度は、残った水を圧縮した鋭い刃で、野菜をそれぞれ器用に切っている。
この刃は、鉄すらも貫通するほど切れ味が鋭い。年長組が話をしていたのは、この能力のことだ。
ここは特殊な子供達の家だ。
そのため、家事の仕方も特殊なのだ。
「このくらい?!」
「うーん・・・もう少し弱く・・・」
一方、囲炉裏では、火を起こそうと、火華とコウが張り切っていた。
「じゃあこのくらい??!!」
「・・・もっと弱く」
「ええ?!?!もっと??!!じゃあこのくらいっ???!!!」
「うん」
火華には火を操る能力がある。ただ、能力が強すぎるため、様々なことを見透かす「眼」を持つコウが火華の体内の力の“タメ”を視てそこからどれくらいの火が出るか検討をつけ、細かい力調節を手伝っているのだ。
「じゃあつけるよおっ!!!!」
「まって」
「?!?!」
「また強くなった。下げて」
「えええええええええええ!!!?」
逞しく支えあって生きている5人に、今日も夜の帳が舞い降りる。