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遠足前夜

「酒だ酒、酒持ってこい!!」



北川が悪乗りしてそんな事を言っているが無視だ。


そもそも未成年の飲酒は禁止だろう。



何故こんな事になってしまったのだろうか。





















「ついに明日だな、遠足」



目を輝かせながら北川はそう言う。



「テンション上がりすぎだろ、馬鹿が」




呆れた表情で高野は返す。



「と、言いつつニヤニヤしながら一心不乱に遠足のしおり見てたのは誰だっけ?」


「ちょっ!!

永井お前、見てたのか!?」




「そりゃ2人とも席は僕よりも教卓に近いからね。君らの授業中の行動はすぐに分かるよ」



まあ、こんな冷静な態度の僕も内心楽しみなのだが。



そんな事は口に出さない。





今日の授業も終わり、今は放課後。


僕らは学校が終わっても教室に残ってダラダラしている。




流石に遠足前日は陸上部も休みだったので、久しぶりにここでゆっくりしている。



勿論、剣道部も今日ばかりは休みだ。




北川と高野はと言うと、いつも遅れてノコノコ部活に行くらしいのでいつもの事だが僕にとってはこの時間は久しぶりだ。




本人たち曰く

「剣道より大切な時間。それがここにある」



らしい。






「そう言えば永井、お前どこに住んでんの?」



「唐突な質問だね」




北川はたまにこんな風に脈絡の無い事を言う。


流石キチガイ。




僕はこの高校から4駅先で降り、そこから徒歩5分で自宅に着く。



その旨を伝えた瞬間、北川の目が輝いた。




ああ、絶対何か変な事考えてるな。




「で、そう言う北川は何処に?」



「ああ、俺は5駅行ったところで乗換してそこからまた2駅行ったところで降りる。あとは自転車で7分ちょい行ったところ」



「ちなみに俺は5駅行ったところまでは北川と一緒だけど、そこで降りて徒歩2分の位置に」


「お前は聞いてないからどうでもいいや」



高野は目に見えて落ち込んでいる。




思いもよらぬ北川の反撃に驚いてもいるようにも見えた。




そして、北川は一度手を叩くと大声で宣言した。




「よっしゃ、今日は永井の家に泊まるぞ!!」



「え?」



何言ってんだ、こいつ。




「高野、準備する為一回帰るぞ」



北川は狼狽している高野を引っ張って、素早く教室から出て行ってしまった。




「ちょ、ちょっと待てよ!!」



僕も急いで教室から出て北川を追う。



足の速さならあいつらに負けない。




しかし、廊下には猫の子一匹いなかった。



「あいつら、こういう時は逃げ足早いな・・・・・・」




実際は逃げたと見せかけて隣の教室に潜んでいたのが真相だったと後で聞かされた。




こうして僕の家に泊まる準備を持ってきた北川達を無下に帰す訳にも行かず、彼らを泊める事にしたのだ。




今日は父親が居なくて本当に良かった。




母親は比較的、こういうことには融通が利くのだが、父親は違う。




中2の時に我が家で9時まで遊んでいた友人に鉄拳制裁を加えたのには驚いた。




その日以来、我が家に来る友人たちは6時には帰って行った。























風呂からも上がり、夕飯も食べ、そして現在に至る。




「なあ酒まだー?」



「酒なんて出せないよ!!」



僕が一喝しても北川はヘラヘラしてる。




「そういえば、高野はどこに?」


「そこで読書してるが?」




僕が部屋の隅を見てみると、高野は北川の言う通り読書をしていた。




本の背表紙だけで推測してみると、若者に今流行の小説らしい。


帯には出版から半年で早くも文庫化!!


等と銘打っているが、流石に半年は早すぎないか?




「高野にしてはおとなしい趣味だね」



「だろ?俺も思ったぜ」




北川はそう言ってビールの缶を開け、口を付けた。



・・・・・・ビール?



「え、それどこから!?」



「俺の鞄から。やっぱ温いなー不味い」




僕は北川からビールを取り上げ、2階から放り捨てた。



「ああ!!俺のビール!!」


「これで一安心かな」



「へ、残念だったな俺の鞄にはまだまだビールが沢山あるのさ!!」



北川はそう言って鞄の中の大量のビール缶を見せた。



僕はその鞄を北川と取り合う。




高野はその争いに参加せず一人読書を続ける。





こうして僕らの遠足前夜はゆっくりと過ぎ去って行った。





ちなみに床に就いたのは2時過ぎだった。






寝不足確定です。

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