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班決め

僕の通う学校には遠足なるものがある。



これは各学年全て1年に1回ある。



内容は小学生の頃行ったようなあの遠足とほとんど同じと言ってもいい。




一応、毎年行き先を変えたりしているらしいが、誰も彼もそんなに期待していない。


まあ、授業が潰れるという意味では良いことでもある。











そして、本日はその班決めなのである。



担任の宇野は3人から5人組の班を作るように言った。




「永井~、組もうぜ!!」



「しかし、俺らって本当に友達少ないな。あと2人集まるのか?」




そう言って高野は笑っているが、僕としてはどうでも良かった。



この2人さえ居れば何とか楽しめるだろうという考えを持っていたからである。




他のクラスの面子を見てみると、皆まとまっている。



僕らと他の地味な生徒のみが余っておろおろしている。





しかし、僕らはその中でも余り慌てている素振りは見せていない。



「さあ、早く余った奴ら来い!!」


北川は自虐的にそう叫んでいる。




クラスの皆も既にこの男のこういう態度には慣れているので無視している。



全くもってどうしてこんな風に育ってしまったんだろう・・・・・・。




「ねえ、なっがいくーん」



「ん?どうしたの、真田さん」



真田さんは妙にニコニコしながら僕に話しかけてきた。




まさか、余り者の僕を笑いに来たのだろうか?


と、一瞬そんな考えが浮かんだが、真田さんはそんな人じゃない。




僕の観察眼が正しければ。



「実はさ、そっちの仲間に入れてくれないかな?」



「え?真田さん、他の女子と一緒に行くんじゃなかったの?」




ちなみに他のクラスはどうか知らないけど、僕のクラスは班は綺麗に男女の区別がされていた。



その為、真田さんがそんなことを言い出すとは驚きだった。





こう見えて真田さんは友達は多いので、てっきり既に班は出来ているものだと思っていた。



真田さんはため息をつき、残念そうに返答する。




「それがさー、私の仲良い友達はこのクラスに3人ほどいるんだけど・・・・・・。

どうやら女子内で2人余りが出来ちゃったんだって。

その2人は私たちの班に入りたいって言ってきたんだよ。

それで私までその班に入ったら計6人じゃん?班は3人から5人組じゃないと駄目じゃん?

だから私は抜けてきたって訳でーす」



「・・・・・・ちょっと待って、自分から抜けてきたの?」




「うん。そうすれば5人で班が出来て私以外の5人は幸せハッピーだし」



「真田さんは幸せじゃなくて良かったの?」



聞き終わってからこの質問は失敗だったと僕は後悔した。



わざわざ真田さんを責める必要は無いじゃないか。




だが、真田さんはけろっとした顔をしている。



「ううん。永井くんたちの班に入れてもらえば私もハッピーだよ」



「良いけど、僕の班は皆男だしまだ1人足らないよ?」




「大丈夫だよ、それくらい。余裕のよっちゃんだよ」




別に余裕では無いと思うが・・・・・・。



「まあ、北川と高野に聞いてみるよ」




僕は一度、真田さんの元を離れ、北川と高野の所へと向かった。



「2人ともちょっと良い?」




「ん?何だよ、今良いところなんだよ」



北川は漫画本を読みながら面倒くさそうに僕に返答した。




彼が漫画本を読んでいる時は大抵拗ねている時だ。



多分、そこに散らばっているトランプを見る限りまた高野に負けたんだろう。



てか、この短時間で負けるって凄いな。




「真田さんも僕らの班にも入れてもいい?」



「ん?真田って真田唯のことか?」




北川は興味を持ったのか漫画本から顔を上げた。



高野も僕に目を向けてくる。



「そうだけど。駄目かな?」




高野は真剣に考えているが、北川は即答した。



「別に良いんじゃね?俺らの間にも新しい風を吹かせようじゃないか」



「そう?なら良かったよ。じゃあ、早速真田さんに」



「いや、待った」



高野は僕の腕を掴んで、僕の動きを止めた。




高野はそのまま言葉を続ける。



「突然、俺らに近づいてくるなんておかしいとは思わないか?」


「いや、僕は入学当初から真田さんと仲良いけど」



「そこだよ。そもそも何故お前に話しかけた?」



「いや、消しゴムを貸してあげ」



「その消しゴムを忘れてきたと言ったことすら彼女の計算だったとしたら?

そして、このイベントを利用した何か大きな、そう殺人事件を起こそうとしてるんじゃないか!?

そこには時刻表を利用したアリバイ確保や巧妙な死体入れ替えトリックや密室殺人等の数々の罠が仕掛けられているんじゃないか!?」




何だ、こいつ・・・・・・。



いつもの高野とはまるで別人だ。


何か変な事言い出すし、一体何なんだ?




すると、北川が僕にそっと耳打ちした。



「あいつ、シャイなんだよ。まだ一度もクラスの女と話したこと無いらしい。

というより話せないんだと」



「え!?高1でそんな奴いるの!?」



僕はわざと大声でそう言った。



高野が北川を睨みつける。




「おい、北川・・・・・・永井に何吹き込んだ?」


「え?いや、そのだね・・・・・・。うん、まあ落ち着こうよ」




どうやらまた北川と高野で一悶着ありそうだ。



ならば、今のうちに。




「真田さん、OKだってさ」


「あ、そう?ありがとねー」




あの2人が暴れている間に班員の欄に真田さんの名前を書き込み、もう1人適当に僕が誰か連れて来よう。




最近、あの2人の扱いが少しずつだが分かってきた。



高野は切れやすいから慣れると簡単に扱えて楽だ。





問題はもう1人だな。



さて、どうしよう。




「あ、小西ー」



小西は隅の席で1人読書をしていた。



こんなことには興味無いと言う顔をしていた。




しかし、小西は呼びかけたのに聞こえていないのか無反応だ。



仕方ないので小西の肩を軽く叩く。



小西はようやく振り向いた。




「何?」



「君はもう班決まった?」



「・・・・・・まだ」



「なら僕らのところに来なよ。1人足りないんだよ、班員が」



「でも・・・・・・迷惑に、ならない、か?」



「なるわけないよ。

僕以外にも変な奴ばっかだけど、まあ仲良くしような」



「うん」




これで5人。



さて、後はあいつらが気付く前にこれを宇野先生に出そう。




「先生、班員決まりました」


「はい、分かりました。・・・・・・随分と個性的なメンバーですね」



そんなこと口に出しちゃいけないんじゃないのか、教師が。



「素直に地味って言っていいですよ」



「いや、地味なのは君くらいのものよ」




それは口に出してほしくなかった。

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