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初部活

本日は日曜日、快晴なり。



だが、中学時代のゆるい美術部とは違い、陸上部は日曜日だろうと何だろうと部活はあるのである。


ちなみに、この前部活を決めたのが金曜日で翌日の土曜日は部活は休みだった。




そして、僕は今グラウンドの隅の辺りに立っている。





目の前にはアップがてら走っている生徒達がちらほらといる。




僕は部活初日から遅刻してしまった。





「これは気まずいな・・・・・・」



流石に初日から遅刻とは僕もついてない。



生意気だ、とか言われて苛められたりしないよな?






・・・・・・まあ、初日をサボるよりはマシだろう。



とりあえず、グラウンドの中心へと僕は歩いていく。




途中、グラウンドを走っている同じ陸上部(おそらく先輩だと思われる)から露骨に怪訝な視線を受け、少し気が滅入った。




僕が話しかける前にグラウンドの中心にいた顧問らしき男性教師が話しかけてきた。



「君が最後の1人か?」



やはり僕以外の1年生は皆既に来ていたようだ。


当たり前だが。



しかし、この男性教師は随分と珍妙な格好をしている。



白衣に身を包み、黒縁の眼鏡を掛けており、陸上部より科学部の顧問のような感じだ。




陸上部の顧問と言うのでてっきり熱血の体育会系を想像していたが、この男は随分と面倒くさそうにこちらを見やっている。



「はい、遅れてすいません。永井涼です」



「うん。僕は顧問の今田いまだ達也たつや。よろしく」




今田はそう言ってその場に座り込んだ。



僕も座るべきかと考えている内にタイミングを逃してしまい、結局立ったまま話を聞くことにした。




「何から話せば良いんだったかな・・・・・・。とりあえず、部長呼ぶか。

おい、高峰たかみねー」



この人本当に大丈夫なのだろうか。


何というか責任感を感じてなさそうだ。




高峰と呼ばれたユニフォーム姿で走っていた男はすぐに今田の元へと走ってきた。



やっぱり陸上部は足早いな、と当たり前のことを考えてしまった。




「どうしました!?あ、彼が最後の1人ですか!!」



高峰部長は大声で今田に尋ねる。




顧問とは対照的に部長は熱血体育会系だな。



「そうそう。で、何話せばいい?」



「分かりました!!彼には自分が説明しておきます!!」


「はい、よろしくー」




今田は高峰に責任の全てを押し付け、自分はグラウンドに寝転がった。



白衣、汚れても良いのだろうか?





「やあ、君が永井君だね!!」



部長のフレンドリーな雰囲気は良いのだが、如何せん声が大きい。



耳元で騒ぐな!!




って一瞬叫びたくなった。



「はい、今日は遅刻してしまってすいません」



「そうだな、確かに遅刻は悪いがちゃんと部活に来たことは評価しよう!」



「むしろちゃんと来ない奴もいるんですか?」



「まあな!君と同じ1年生に1人いるな!」



「でも、部活って今日からじゃないんですか?」



「いや、そいつは走るのが早いから勝手に自分が拉致して部活に無理やり入れさせたから反発するのも当然と言えば当然だがな!!はははは!!」




僕の質問に答えてないぞ、おい。




「で、部活は今日からですよね?そいつはその前から部活してたんですか?」



「そうそう!君はランニングウェアみたいなの持ってる?自分は大会が近いから士気を上げる為にこのユニフォームで走ってるんだが、普通はこういうのは無しだから気をつけろ!!

あと部員は君も含めて1年生は男女合わせて5人、2年生は4人、3年生は2人だ!」



「はい、じゃあ用意しておきます。で、そいつはいつから部活をしてたんですか?」



「そうだな。この部活は基本毎日あるからランニングウェアは2,3着買った方がいいぞ!!」



「あ、分かりました。ありがとうございます。で、そいつはもしかして経験者なんですか?」



「じゃあ、最初だし他の1年生と同じように外周行ってみようか!!今日1日で15周してもらうよ!

あ、ただし5周ごとに10分の休憩入れていいから!!」



「分かりました。頑張ります。ところで先輩の好きな食べ物は?」


「プリンアラモードが大好きだ!!」



何でそれは素直に答えんだよ!!



てか、かわいらしいな。



まあ、このまま聞いてても多分きちんとした答えは返ってこないだろうしとりあえず先輩の言うとおり走りに行くとしよう。




それにしても部長の一人称“自分”か・・・・・・。



珍しいな。
























「つ・・・・・・疲れた」



何とか15周走り終えた。



流石に元・美術部がいきなり走るというのはきつかったか。



時計を見ればもう12時前だ。




今日の部活は午前中のみなので、これで多分今日のメニューは終わりだろう。





僕の場合は遅刻してきたので周りに追いつくために必死になって走ったので他より倍は疲れた。



「やあ!!お疲れ様!!」




そう言って僕の肩に手を置いて耳元で大声を出す輩は今日知った限り、1人しかいない。




「部長も、お疲れ様です・・・・・・」



「疲れてるな!!まあ、当然か!!

我が高校では『人殺し』と呼ばれる外周を耐えきったのだからな!!

根性あるな、君!!」



人殺しってもうそんな名前付く程ならその練習禁止させましょうよ。



「実際、このメニューを1年生でクリアしたのは君だけだからな!!驚きだ!!」



え?僕だけ・・・・・・?




他の奴が先に終わったってわけじゃなかったのか。



てか、自分だけと分かると嬉しくなってくるな。




思わずニヤけてしまう。




「ん?」



ふと僕の視界に見知った顔が映った。



確か僕と同じクラスの小西こにしとか言ったか。




陸上部の部室から小西は出てきた、ということはあいつも陸上部だったのか。




その日、僕は彼のことを同じ部活なら仲良く出来そうだな程度にしか思っていなかった。









この小西こそがそれから何か月か後に起こる出来事の重要な鍵を握る人物だったとは僕には未だに信じられない。

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