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まともに虫捕りは出来そうにないです

「思ったより暇だなー」


そう言って北川は椅子に座って呆けている。



こんにちは、小西です。


もう冬ですよ、冬。

クリスマスですよ。

いつまで夏の話してるんですか、本当に。



「審判やると言ったものの暇だろ、これ。

皆はいつになったら戻ってくるんだよー」


「まだ・・・・・・始まって・・・・・・5分」


会話になるとどうしても上手く出来ない俺です。


「ちょっと先に準備して待ってるとしようぜ」


北川からの提案。


鍋のことだろうか。



「良い・・・・・・よ」


「そんならまずは火をつけーの、次に水を汲みーの。

小西には水汲みをお願いします」


「了・・・・・・解」



僕は北川から渡されたバケツを手に川を探しに行った。



地図によればこの辺りには比較的大きな川が流れており、ここからそう遠くはないはずだ。



草木を掻き分けて川を探して歩き回る。

途中でそこそこ珍しい虫を見つけてはその度に立ち止り、少し観察した。


ここは案外穴場かもしれない。


今度、私的に来るのも良いかな。



「・・・・・・これかな」


流水、綺麗な色だ。


水の色って何色なんだろう。

透明、というには濁っているけど何か色をつけるのも妙な感じだ。


でも、綺麗な水と汚い水の違いは分かる。



そして、それを判断するのは視覚。

変な話だ。



そんなことを考えながら僕は鍋一杯になるであろう量の水を汲んだ。



さて、そろそろ戻るかな。


「・・・・・・ん?」


今、何かそこの茂みで何か動いたような気が。


しかもかなり大きい生き物だろう。



「みんな・・・・・・大丈夫・・・・・・かな」





















やあやあ、永井です。


相も変わらず僕は1人で虫捕りです。



他の皆はどうしてるんだろうな。

僕も皆と一緒に捕りに行けば良かったかなー。



お、またさっきの大きめのクワガタだ。


これで5匹目だけどまあいっか。




「おーい、永井くーん」


頭上から聞き覚えのある女の子の声が。


「ああ、真田さん。と、凛さんか」



女の子2人で虫捕りか。

楽しそうだな、畜生。



「は、早く逃げてー!」


凛さんが叫んでいる。


えー、何故?




「な・・・・・・何じゃありゃ」


土煙を上げながら走ってくるのは大量の鹿。


見回す限り鹿、鹿、鹿、鹿。


ディア。



僕は既に走り出していた。



「これはどういうことですかねー!?」


少し後ろを走る真田さんに尋ねる。

真田さんが耳を傾ける。

聞こえなかったようだ。

もう一度大きな声で尋ねる。



「知らないよー!

何か知らないけど追いかけられてんのー!」


「一体、何だってんだよー!」



僕は走りながら叫ぶ。


しかし、鹿は動きを止めようとはしない。

走ること、走ること。



こっちのスタミナは尽きかけですよ。





前を走り続けていると誰かが立ち尽くしているのが見えた。


若い男、少年と言っても過言ではない。



と、言うよりあれは高野じゃないか?


「高野、何ぼーっとしてんだよ!!」



呼びかけるも反応はない。

と、言うよりそもそも声すら聞こえていないようだった。




僕は高野を強引に掴んで連れて行く。


流石に1人一緒に連れて走るとスピードはどうしてもかなり遅くなる。



これで真田さんと凛さんと並ぶくらいのスピードになってしまった。



それ即ち鹿との距離が詰められたということだ。


近い近い。



真田さんたちこの距離でよく悲鳴1つ上げないでいられたな。



でも、このままのスピードでいれば益々距離を詰められることは必然だ。


「・・・・・・おい、小僧、下ろせ」



・・・・・・何だ、今の野太い声。

高野の方から聞こえたけど気のせいだよな。



「下ろせと言っているであろう、小僧」


「・・・・・・高野?」


「我はこの山の王であるぞ。

頭が高いぞ、小僧。我は自分で立って歩ける」



な、な、な、な、何だこいつ!?


一体この短時間で高野に何があったんだ!?




「あ、高野くん起きた?」


真田さんが呑気な声で聞く。



「起きたことは起きたよ・・・・・・けど」



「ほう、小娘。

貴様で良い。

この男から我を引きずり落とせ」


「こんな感じになっちゃってる」



凛さんと真田さんは「あちゃー」と呟き、手を顔に当てる。

何やら心当たりがあるようだ。



担いだ高野に目をやる。


息を大きく吸ってる。

あ、これは叫ぶな。



「聞け!!

野鹿共!!止まれ!!」


鹿たちがピタリと動きを止めた。


「え?」



何が起きた?


「我は起きたばかりで機嫌が悪い!!

この人間どもの味方をするわけではない!!

だが、我の寝起きが悪いことを知っているのならばこのようなことを貴様らはしまい?」



鹿たちはその場に座り込み、まるで土下座をするかのような姿勢で高野の話を聞いている。

時折、頷くような動作を見せる鹿もいる。



「分かればよろしい。

退け、今夜は宴にしよう」



鹿たちはぞろぞろとその場を去って行った。


全ての鹿が消えたのを見届けると同時に高野の首がかくんと落ちる。



高野の顔を覗き込むと彼は寝ているようだ。


一体、彼は何なんだ。





それから30分程して高野は目を覚ました。

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