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スタンド・バイ・ミー

「うぇんざないと!はずかむ!」


大声で下手くそな洋楽を歌っているのはこのキャンプの発案者、北川真吾。


ラジカセから流れてくる原曲は彼の歌声で完全に消し去られていた。


こんにちは、第2の北川こと北川凛です。



本日はお日柄もよく、絶好のキャンプ日和ですね。


あたしの真上で太陽はさんさんと輝き、私の右で北川くんはしゃんしゃんとベルを鳴らしています。



「なあ、北川よ」


「どったの、高野?」


「その鈴はどうしたんだ?」


「あ、これ?

友だちの家にあったから120円で買い取った」



ベルを買い取るという神経が良く分からない。

そもそもその友達も何故こんな物を持っていたのかも良く分からない。


永井くんが震えながら口を開いた。



「北川・・・・・・君、僕たち以外にも友だちいたんだ!」



「え!?

ちょっとそれは失礼じゃね!?」


確かに失礼だけど北川くんの友達とやらはどう考えてもあたしには妄想にしか思えない。


と、言うより彼が永井くん達以外の場所で受け入れられるような場所の想像がつかない。

どれだけ永井くん達が特殊な事か。



「凛ちゃーん、ガールズトークしようよ!」


唯があたしの体に抱き着き、そう言う。


「ええい、鬱陶しいから離れい」


「嫌でござんす、お殿様!!」



あ、あたし達も十分特殊だった。


人の事言えないわこりゃ。



面倒くさくなったので唯を抱き着かせたままあたしはさりげなく北川くんに話しかけてみる。


「ね、ねえ北川くん」


「そうだーりんだーりん!すてーんど!」



いつまで歌ってるんだ。


「ねえ北川くん!」


「おおーうすてーん・・・・・・ん?今度はどうした?」


「あのさ、あとどれくらいで着くの?」



あたし達がキャンプに行くという話を前にしたのを覚えているだろうか?


あたしは当然ながらキャンプ場のある山には電車で行くものだと思っていた。

しかし、北川くんの出した案は徒歩で行くというものだった。

何でも少し前に4人の少年が死体を探しに行くといった内容の映画を観たらしい。


今、彼が歌っているのがその映画の主題歌という事も含めて余程の影響を受けたのだろう。



これまた当然ながらあたし達は彼の案に反対した。


このくそ暑い中を誰が好き好んで歩きたがるだろうか?


しかし、鍋を持っている北川くんに主導権を握らされ、結局は徒歩の案に妥協するしかなかったのだ。

独裁者って怖い。



そして、現在およそ10kmもの道程を歩き切ったのだが、一向にゴールが見えてこない。


と、言うよりあたしが思っていた場所とは全く別方向に進んでいるのだが果たして大丈夫なのだろうか?



「あと・・・・・・1時間くらいで着くな」


あー、あと1時間かー。



「・・・・・・1時間?」


「そう、1時間」



一瞬にしてあたし達の口数が減った。


あたしはあと15分もすれば着くだろうと高を括っていた。

この反応を見る限り、他の皆もそうだったのだろう。


しかし、北川くんの出した答えはあたし達の予想の4倍だった。




アブラゼミの鳴き声はまるであたし達を嘲笑っているようだった。


結局、あたし達はセミに馬鹿にされながらも歩みを止めなかった。














1時間の間に様々な事があった。



例えば永井くんが暑さの余り北川くんと一緒に例の歌を歌いだしたり。

唯のお茶がなくなり、あたしの分のお茶に手を伸ばし、それを取りあった末に零したり。

小西くんが服を脱ぎだしたり。

永井くんも服を脱ぎだしたり。

唯も服を脱ぎだしたり。


何故、あたしの周りには露出狂ばかりがいるのかを真剣に考えたり。



「まあ、何だかんだ言っても辿り着いたし良しとしましょー!」


「でもまだ結構時間余っちゃったね」



あたしと唯はほぼ同時に時計を見る。


時刻は午前11時25分。


昼ごはんは既に済ませたので良しとするけど、あとはどうするつもりなんだろうか。



「そりゃ勿論・・・・・・」


北川くんが指を鳴らし、言葉を続ける。



「虫取りに決まってんだろ!!」


「・・・・・・え?」



北川くんが背負っていた大きなリュックを下ろし、人数分の虫籠と虫網を出す。


そんな物を入れてたのか。

大荷物だと思ってたら。



「ルールは簡単!

一番レアな虫を捕まえてきた奴が優勝!

審査は公平に行う為、闇夜を切り裂く暴走自転車こと小西くんに行ってもらいますよ!」


何だその二つ名。



「ち・・・・・・ちりん、ちりん」


そんなに顔赤くさせてちりんちりん言わなくても良いと思う。


「そもそも小西くんが審判で大丈夫なの?」



あたしは誰に尋ねるわけでもなく、呟いた。


あたし以外の全員が一度、顔を見合わせ、そして北川くんが小西くんに何事かをこっそり告げた。



「まあ、聞いてみ」


「へ?」



「まずはこの季節に見られる主な生物の話をする。

虫で言うなれば子供たちから大人気のカブトムシ、同じくクワガタムシ、カナブンと言った甲虫。

この中でも特にカブトムシ、カナブンは良く見られると思う。

そして、クワガタムシについてだけどこれはピンキリ。

コクワガタやノコギリクワガタは比較的良く見られるが、ミヤマクワガタやヒラタクワガタ等と言ったものはこんな山奥でしか見られない。

オオクワガタなんかはこんな山奥ですら中々見つからない。

ちなみにクワガタのハサミは何なのかという質問が良くあるが、あれはアゴにあたるものであり」



そこで北川くんが小西くんの口を塞いだ。


「・・・・・・あと30分は続くけど、聞くか?」


「・・・・・・いいえ」



小西くんがこんなに喋っているのは初めて見た。


どうやら彼は得意分野の話になると口数が極端に増えるみたい。



あたし達が荷物を置き、いざ虫捕りへ。



「そもそも虫というのは生物の中でもかなり特殊なものである。

彼らの体の中は必要な臓器以外はほとんど空洞であり、純粋な欲の下でしか動かない。

アリなどが人から逃げるのを見た事がある人もいるだろうけど、あれは虫の意識ではなく、走性という外部刺激に対しての」


まだ話し続けてるよ、この子。

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