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キチガイvs変態妖精

自称妖精は軽やかなステップでその辺りを飛び回っている。



いや、中年のそれは軽やかとは言えない。


僕らは声も出せずに彼のステップを黙って見ていた。




「あのさ・・・・・・」


真田さんが口を開く。



「・・・・・・ん?」



「あの人って確か、校長だったと思うんだけど」


「はあ!?」



僕は真田さんの顔を見る。


彼女は狼狽した顔で僕を見返してきた。





確かに僕の頭の中に校長のビジョンは無い。


なのであそこの変態兼妖精が校長だという確証もない。



しかし、真田さんが言うのだから恐らくそうなのだろう。


だが、僕の中の校長は頭が禿げていて眼鏡を掛けていて無口でそれでいてシャツの上から女物の下着が透けているというイメージだ。



ここにいる校長はと言うと・・・・・・。




案外当てはまるな。




「で、どうすんだよこれから?」


高野が呆れた調子で言う。




「捕まえてやるぜ、うおらああああ!!」



北川はそう言うと校長の方に走り寄って行った。


しかし、校長もそれを黙って見ていた訳ではない。



北川のキレのあるタックルを右腕で後ろへと受け流した。



「うおおおおっ!?」


北川はそのままの勢いで前へ倒れこんだ。



倒れこんだ背中に校長は拳を振るった。


北川は短い悲鳴を上げるとそれっきり動かなくなった。




「・・・・・・え?」


北川は動かない。




「いや・・・・・・いやいやいやいや・・・・・・。何この展開」



高野が苦笑しながらそう呟くがやはり北川は動かない。







「さっきまで人が死ぬようなノリじゃなかっただろ!?

え!?

マジで!?」


高野が声を荒げるがやはり北川は動かない。




困惑している僕らを見下すかの如く颯爽と校長はどこかに走り去っていった。



「ちょ、これどうすんの?」



「えーと・・・・・・とりあえず永井、お前あいつ追いかけろ!

てか、足早いなおい!!」



校長は既に僕らの遥か先を走っている。



だが、僕だって陸上部で日々鍛えられたのだ。



奇声を上げながら僕は校長を追いかける。




山道といえどそれは向こうも同じこと。


僕も時折切り株に躓きそうになったりしたが、校長も同じように苦戦しているようだ。




校長の表情に焦りの色が見えるのに比例して僕との距離も詰められる。



ふと脇を見ると、小西も僕とほぼ同じスピードで僕の隣を走っていた。




「小西!?着いてきたのか」



「心配・・・・・・だった」



「そうか。

君も陸上部だったしね。よし、2人で校長を捕まえるぞ!」



「お・・・・・・おーっ」




校長と僕らとの距離はついに10mを切った。



もう少しで手が届く。


そう思い、安堵した時だった。



校長は何の前触れもなく足を止めた。



僕らは既に全速力で走っている。



急に標的が止まった事で僕らは慌て、足を滑らせてしまった。



「まずい!」


そう口に出した時には僕は小西と一緒に仲良く地面を滑っていた。



落ち葉が口の中に入ったのでそれを吐きだし、校長の方を見上げる。




校長は既に右手を後ろに引いて僕を殴る準備が出来ていた。




僕は校長を見上げたままそこから動けなかった。





校長の右拳が僕の腹に入る直前だった。



「このくそハゲがあああ!!」




北川の綺麗な面が校長の後頭部に入った。



北川が持っているのは竹刀ではなくその辺に落ちていたのであろう太めの木の棒だった。


だが、道具は違っていても北川の面の切れ味には影響はほとんど無かった。




校長はゆっくりとこちらに倒れこんできた。


僕は横に転がって校長の体をかわす。




校長の体が落ち葉の地面に埋まって行った。



それを尻目に小西が北川に尋ねる。




「死んだ・・・・・・んじゃ・・・・・・なかったの・・・・・・か?」



「馬鹿野郎!

無敵の北川様があんなので死ぬか!

まあ、気絶はさせられたけどな。

真田と高野が起こしてくれたんだ」



まあ、良く考えれば殺すわけないしね。



少し遅れて高野と真田さんも僕らに追いついてきた。




彼らはどこから拾ってきたのか太い頑丈な縄を持っていた。



それで校長を木に縛りつける。




縛り終えたタイミングで校長は目を覚ました。



「む・・・・・・ここは?」



「あ、校長先生。大丈夫ですか?」



僕は優しい声色で校長を気遣う。



しかし、返ってきた言葉は予想に反したものだった。




「校長?誰の事だ?私は山の妖精ヒノッキーだ」


「いや、もう良いですから校長先生」



「だからヒノッキーだ」


「良いから飲み物何か教えてくださいよ校長先生」


「ヒノッキーだ」



「・・・・・・」



面倒なのでそういう事にしておいた。




そして、校長もといヒノッキーに持っていたペットボトルの中身を教えてもらった。



校長はペットボトルホルダーからペットボトルを出して僕らに見せてきた。




「何だ、普通のコ〇コーラじゃねえか」


北川がつまらなそうに言い放つ。





校長が不敵に笑いながらペットボトルのラベルを剥がす。



そこには黒っぽい液体が!!




「ペ〇シだ」



「どっちでもいいわ!!」



高野が校長の禿げ頭を叩く。



彼のツッコミに上下関係というものはない。








僕らは得点表にポイント1の答えとそれを手に入れた時間を記入する。


そのついでに校長からも話を聞いた。



話によるとこの遠足は生徒だけではなく教師陣もかなりはっちゃけるらしく、彼以外にもこういう事をしてくる輩がいるらしい。



校長権限でそれをやめさせろと頼んだが、生徒を気絶させる様な人間がそれを聞き入れるはずもなかった。



それどころかここで起きた不祥事は全て校長が揉み消すというのだから本当にこの学校は色々とおかしい。



ちなみにここの問題をクリアしたのは僕らのチームが1番らしい。



他のチームがこれをクリア出来るとはどうしても思えない。





去り際に校長は僕らを呼び止めた。



「一ついいかね」


「何ですかヒノッキー」



この呼び方は嫌だったが、この呼称じゃないと話をしてくれないのだ。




「君達、もう少し落ち着いた方が良いよ。

少なくとも教師の頭叩いて昏倒させるのだけはやめた方が良い」




お前が言うなよ。





と、思ったが確かに少し反省しなければ本当に死人が出る勢いだ。

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