私(僕)が愛香君(アリス)を好きになった日の話
半分以上はアリス視点!
どんどん心の壁が剥がれていくアリス、最後は……
私は愛香君が大好き。なぜ好きになったのか、それは高校一年生の文化祭に起こったこと……
「……一人で大丈夫だし…一人で回れるし」
文化祭当日、私は一人で回っていた。賑やかな声が聞こえ、活気に溢れた日だった。屋台も多く、体育館ではミスコン、学校内では喫茶やお化け屋敷が。
私に友達は一人もいなかった。声をかけてくる男子もいたけと、どうせ顔と体目的だから突き返した。
全部自分を守るためだから……誰もいなくていい……
そんな時、名前も知らない人が目の前に立っていた。
「ごめ〜ん。こと人知らない?」
唐突な質問だった。スマホの画面に出された人物はこの学校のトップレベルの美人を彼女にしている人の顔だった。知らないわけがない。どう頑張っても噂が流れてくるから。
このとき、私は「誰ですか、知りません。関わらないでくだい」と言おうとした。どうせこの人も他と同じだろうと。でも……
「あ、えっと……」
「? 大丈夫? 顔赤いよ?」
「――そ、そそそんなわけない!」
顔が赤かったらしい。茹でダコみたいになり、呂律が回らない。こんなこと、人生で初めてだった。私が男の人の前で緊張するなんて。私は顔を下に向けて話していた。
「本当に大丈夫? 熱?」
「ひゃっ!」
前髪をかきあげられ、私のおでことこの人のおでこが重ねられた。突然のことに変な声が出てしまう。近い……直接この人の温かさが伝わってくる。
あったかい……落ち着く……!?
「……ち、近……」
「? 近い? どこが――」
「近いったら近い!」
「わぁぁっ!! ご、ごめん!」
私の大声で離れた。そしてまだ熱をもったおでこがある。なんで……こんなことしてるの。普通に考えたらこんなことしなくない!?
改めて顔を上げ、目の前にいる人の顔を見る。
「えっ――」
そんな声が出てしまう。男だと思った人は、女性のような顔・体をしていたから。わからない……男? 女? いやにしても可愛すぎ……
「? どうしたの?」
いや待って待って。男だよね? 明らかに男子の制服……いや男装が趣味? 落ち着くのよアリス・ノヴァ。これは……夢だ。うん、夢……じゃない。
考えを深めている間に、この人は私に上目遣いをしてきた。この……可愛すぎなのよ!
「あの……よかったら一緒に回りません?」
「……は?」
「だから……一緒に回らないか聞いてるんだけど……」
「――い、嫌に決まってるじゃない! なんであなたなんかと回らないといけないのよ!」
「まぁまぁ細かいことは気にしない。行こっ! 友達探すついでにさ!」
手首を掴まれ、連れていかれる。不思議と嫌悪感はない。この人といるといいことが起こる、そんな予感がした。
突然止まり、この人は私に話しかける。
「あ、名前聞いてなかったね……僕は白水愛香。こう見えても男だよ。巷でいう男の娘ってやつ?」
「やっぱり男なのね……てか、なんでそんな見た目なの。髪切りなさいよ」
「いや〜この髪愛着湧いちゃってさ。ポニーテールにしてるけどほどいたら腰くらいまでになる」
「……そう。私はアリス・ノヴァ」
「――君がアリス!? だからこんなに可愛いのか……噂より全然いいじゃん」
「……ありがと」
髪をくるくるしながら照れる。あれ? 私照れたことないんだけど……あれ?
愛香という少年?は「可愛い」ということに抵抗がないらしく、一切動じなかった。こっちは心臓バクバクなのに……!
「あ! あそこに焼きそばある! あっちにはたこ焼き!」
「ちょ、ちょっと待っ――」
「ほらほら置いてくよ! 早く〜!」
「だから待ちなさいよ!」
愛香に連れられて焼きそばの屋台についた。いい匂いがする。
そのとき――
ぐぅ〜
「〜〜〜〜っ!!!!」
「あはは、お腹空いてた?」
「そ、そんなこと……ある……」
「じゃあ食べよっか。焼きそば二つで」
「はいよ! 二つね!」
手際よく入れ物に焼きそばが詰められていく。気前がいいらしくパンパンになっていた。渡された瞬間ドサッと重みが伝わってくる。
「はいよ! 少しサービスしといたから!」
「あ、ありがとうございます……」
「こんなにいいの? 結構重いよ?」
「いいのいいの! なんか男の勘ってやつ? いいこと起こる気がしてな!」
「そういうことなら……」
「なに、友達?」
「「いや? はじめまして」」
「仲良すぎない!?」
愛香と屋台の男のやり取りに思わず声が出てしまう。初めてだよね? なにこの旧友感。これが男? 変なの
「ささっ、そこのベンチで食べない?」
「……そうね……」
ベンチに腰掛け、焼きそばを食べ始める。
「ん、美味しい」
「ほんとだ! 味付けもいい……このちょっと濃い感じがいいんだよね〜」
「あなたもなの? 同士がいるなんて」
「アリスも!? 気が合うじゃん!」
愛香は私の肩をポンポンと叩く。恥じらいがないの? 普通こんなことしなくない? 「可愛い」もそうだけど本当に鈍い。乙女心をなんにもわかってない。
「……あなた、鈍感って言われたことないの?」
「鈍感……あ〜感覚が鈍いってこと? それならよく――」
「違うわよ! あなた天然も混じってるの!?」
「天然……僕はロボットじゃないし、ちゃんと人から生まれたから……天然だね☆」
「だからそういう意味じゃないって!」
もうだめだ……愛香って人は恐ろしいほどわけがわからない。鈍感……確かに感覚が鈍いってことになるけど……文的に違う! 天然も、確かに人から生まれたから天然だけど! なんかこう……違うじゃん!?
「はぁ……もう食べ終わったし」
「早すぎません!?」
「普通」
「違いますけど!?」
「そっちもでしょうが!」
「生姜?」
「だから……!」
やばい、完全にペースが乱れてしまう。これが無意識というのだからとんでもない。
そのきょとんとした顔やめて! 死んじゃう!
「まぁいいや。じゃあ校内行かない? 友達いるかもだし」
「ちょ、ちょっと――」
「ほら早く!」
「そうやって手を引くなぁぁぁ!!!」
また愛香に手首を掴まれ、また連れていかれる。もう当たり前かのように。私は恥ずかしいくて真っ赤なのに!! この男はぁぁ!!
そのまま廊下に到着し、色々な教室を見る。その中で一際目立つのは……お化け屋敷。
「お! これ行かない? 面白そう!」
「い、いや……別に行かなくても……」
「あれぇ? もしかして怖い?」
「そ、そんなわけないでしょ!? 怖くなんかない!」
「へぇ……じゃあ入ろっか〜」
「ま、待ちなさいよ!!」
愛香は聞こえていないのか背を向けたままお化け屋敷に入る。遅れてはならないと私も入るが、正直怖い。お化け屋敷なんて子供の時行ったくらい。あのときは大絶叫で泣きまくったらしい。
この教室……なんか広くない? 普通教室って狭いよね? こんなに広く感じさせることできる?
「うわぁ……雰囲気ある〜」
「怖……」
今すぐ出ないとイタズラしちゃうぞぉぉ!
「ひゃぁぁぁっ!!!!」
「うわなに――」
「でたぁぁぁ!!! 助けてぇぇぇ!!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて――」
「無理無理無理!!!」
「はいはいわかったから」
私は愛香にひょいっと抱き上げられ出口まで行った。お姫様抱っこってやつ? おばけが怖すぎてそんなこと気にしていなかった。
「うぅぅ……こ、怖かったぁ……」
「怖くないんじゃなかったの?」
「あ、あれは……違うから……ただ見栄を張ってただけだから……」
「そうなんだね〜てか離してくれない?」
「……え?」
お姫様抱っこされていることはわかっていた。いやそれでも問題だけど……問題だけど……
「〜〜〜〜〜っ!!!!!」
気づいてしまった。私は愛香の首に腕を絡ませて自分から抱きついていたことに。しかも自分の顔の目の前には首があったことに。
きっと私は沸騰しそうなほど顔が赤かっただろう。何回目だろう、この人の前で赤くなるのは。数えられないほど、集中できていなかった。この私が……?
「あ……」
「だ、大丈夫? 降りれる?」
「お、降り……お」
言葉が続かない。頭は真っ白で、何を言おうかわからない。そんな時、濃い匂いが漂ってくる。
……何この匂い、桜? にしても安心する……
「な、なに? そんな匂いが気になる?」
「い、いや……なんでこんな匂いなの…? 香水?」
「? 体臭だけど……」
「体臭……? これが?」
「うん……? それより早く……」
「あ、はい……」
言葉の意味を察して、降りる。顔は真っ赤のまま、目の前に降りた。
「ま、まぁ怖かったなら仕方ないよね……あ、もうこんな時間……」
「そ、そうね……ここにお友達はいなさそうだし……」
「……出よっか……」
無言のまま、外に向かう。気まずさで話そうとしても言葉が出てこない。
夕焼けが空全体に広がり、時刻は午後六時になっていた。
生徒の多くはグラウンドに集まっていた。なぜ? フィナーレのダンスがあるから。まぁ私には関係ないけどね。
「……ねぇ、あれ……踊る?」
「あれってなに。ちゃんと言って」
「だから……フィナーレのダンス」
「……嫌だ」
きっぱり断った。いや普通に考えて出会って数時間の人と踊るわけなくない? しかもペアで踊るやつ。
「へぇ……踊れないの? じゃあ仕方ないか〜」
「……は?」
ムカつく……踊れるけど踊りたくないのよ! 誰があなたなんかと……!
「――誰が踊れないって? 幼少期からダンスは叩き込まれてるの。舐めないで」
「そうなんだ。じゃあ受けてくれるよね? 高嶺の花様」
「……上等!」
あれぇ……なんか受けてる……現実の行動と心の声が一致しないんだけど……でも受けちゃったもんは仕方ない。やる
そこから数分はダンスの時間が続いた。愛香はダンス未経験とは思えないほど上手で、やりやすかった。たまに感じる視線が気にならないほど熱中していた。
そして……
「はぁはぁ……どう?」
「……認めたくないけど、上手」
「それはどうも〜」
「もう終わったし、帰る」
「ちょっと待ってよ〜」
「――なに」
「屋上行かない? 特別に解放されてるらし――」
「行く」
「はや!」
屋上は行きたい。いつもは閉まってるから行ったことなかったから。どうなってるのか、普通に気になる。
私は一目散に歩き、屋上に向かった。愛香も続いて後ろについてくる。
扉を開くと、見たことない景色が広がっていた。空は幻想的で、たくさんの星が一つ一つ輝いていた。
「うわぁ……きれい……」
「そうね……夜の屋上ってここまできれいなのね」
私は床に座り、空を。愛香は柵から学校全体を眺めていた。
数分静かに空を眺めていたが、不意に愛香が視界に入る。
「――っ……」
なにその顔……キラキラした目…透き通るような肌…風に当たってなびく白髪…不意な笑顔……きゃわぁぁぁっ!!尊い! 美しい! 反則すぎて病院送りになる!
「そ、そろそろ帰ろうか……」
「……そうね」
私たちは階段で降り、校門前まで来た。
「私はここで。道反対でしょ?」
「そうだね……うん、じゃあね……」
「じゃあ」
振り返ることなく自分の家に帰る。
家の中に入り、部屋で一息ついたあとに風呂に入った。
「……一目惚れしちゃった……愛香君に……あの顔は反則でしょ……もう可愛すぎなのよ!」
今日の出来事を思い出して顔が赤くなる。全ては現実で起こったこと。それが嬉しかった。
「……はぁ……もう愛香君一筋……絶対惚れさせるんだから!」
私、アリス・ノヴァは……たった一日で愛香君を好きになってしまいました。
◇
「気のせいじゃないよね……あれ」
僕は風呂でそんなことを考えていた。アリスから聞こえたあれ。僕のことを褒めちぎって、「反則」や「可愛すぎ」などと言っていた声。
「あぁもう声に出してよ〜!!」
はい、この僕。白水愛香は、アリスに一目惚れしました。
「僕はアリス一筋なんだから……」
僕はそう、心に決めた。
「「絶対、愛香君と幸せになるんだから!!」」
僕(私)は、この瞬間……同じことを思っていたなんて、両思いだったなんて、気づかなかった。
その後どうなったかは……わかるよね?
最後どうなったかは
アプローチしまくる高嶺の花「アリスちゃん」をチェック!!




