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この電脳都市に錆びついたキスを  作者: 愛上おかき


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23/27

Ch.1-3-9 総合して三点(2/2)

「奴の音楽センスは壊滅的に悪い。ゼロ点。総合して三点です」


 シュウの真剣な怒りに、ケンとヒロコは顔を見合わせ、腹を抱えて笑い出した。極道の幹部たちが幼子のように笑う異様な光景。

 笑い声が収まったあと、再び能面のように戻ったシュウが二人が一番重要なことを伝えた。


「あと、奴がコストラーデのヴィトに左腕を撃たれた際、不思議な事が起こりました」

「なんや?」

 シュウの歯切れが悪くなり、ヒロコが不審がる。


「なぜかその部分から録画ができなかったのですが、奴とヴィトがケーブルのようなもので繋がったのです、一瞬だけ。それから青いスパークが走り、周囲十メートルにいた人が全てあいつを除いて倒れていました」

 ケンとヒロコの目が見開かれる。露わになる琥珀色の爬虫類の眼。


「CSFが来る前に倒れた連中を確認したのですが、外傷はなく⋯⋯。ただ身につけていたデバイスが全てショートしているようでした」

 シュウも初めてみた現象。それもひっくるめてジークの最終評価を伝える。


「現状は三点ですが、使い潰すには少々惜しい。首輪をつけて調教すれば、あるいは」

 しばし訪れる静寂。時代錯誤のマッチで再び煙管に火をつけ、一口煙を喫んだケンが言った。


「あい、分かった。ほいじゃあ、次うつろか。ほれ、頼んでた例のブツや」

 シュウがさらに表情を固くして懐から厳重に梱包されたパッケージを取り出した。両手で恭しくケンに渡す。企業の機密情報か、あるいは敵対組織のリストか。部屋の空気が再び張り詰める。ヒロコが見守る中、ケンがおもむろに開封したのは――。


 極彩色のホログラムが踊る、アイドルユニット”GALACTIKA”の限定版メディアディスクとシリアルナンバー付きフィギュア。


「あんた、やったね!? うち抽選外れたもん、諦めとったに!」


 ヒロコが色めき立つ。スラムの支配者である彼らのもう一つの顔。それは、トップアイドル”GALACTIKA”の熱狂的なフリークだ。


「今回の新曲”ムーン・ショット”はの——」


 ケンとヒロコが外聞も気にせず、早口で会話。ジークとの面会前に、人一人消せと容易く指示したその指は、今はフィギュアを撫で回している。

 シュウは深くため息をつき、マスクの具合を確かめた。


「⋯⋯俺は戻ります。始末すべき男がいますので」

 気も抜けた返事を受け、シュウが立ち上がり、部屋の襖に手をかける。


「おう、シュウや」

 呼び止める声。振り返った先に見えるのは捕食者の顔。


「あのボン、よく見とけ」

 深く頭を下げ、部屋を出る。直後、襖越しに響き渡るギャラクティカの甘ったるい歌声を背に、シュウは闇に溶けた。

 

 最後に言われた指令がシュウの脳内メモリに追記される。

 ジーク。命を顧みない、音楽センス壊滅野郎。そしてアイドルにうつつを抜かしながら、指先一つで人を消す自分の飼い主。


 世の中狂ってる。いや、ここはザ・シティ。狂気こそが正常なのだ。

 シュウはそれ以上考えるのをやめた。


  ◇2327年9月20日(日)12:54


 ご祝儀を頂いたからには、使わなければならない。使わない金は死んでるも当然だ。

 俺は満腹になった腹を撫で回して帰路についた。

 初めて食べた本物のハンバーガー。オーガニック栽培の小麦を使ったバンズに、本物のビーフ百パーセントのパティ。トマトとレタスも生臭くなく、大満足だ。


 雨が降り始めた。灰色の酸性雨が昼も輝くネオンライトを滲ませ、スラム全体を巨大な水槽のように沈めていく。いい気分が少しブルー。俺は少し歩みを早めた。


 デイヴィスの店にたどり着く。いや、俺の店でもある。少しずつ強くなる雨を避けて、店の古いドアを押す時、いつもと違う何かを感じた。


「ただいま」

 すっかり口馴染んだ言葉。代わりに鼻に飛び込むフレッシュなタバコの匂い。


「よう、生きてたかクソ犬」

 デイヴィスが定位置に座っていた。足はデスクの上、その脇にロックグラスと山盛りの灰皿。見慣れた光景。


「ああ、元気ピンピンだ。寄り道してたんだよ。ほら、ミヤケから報酬増やしてもらったんだ。これで左腕新しいのにしようと」


 言葉の途中で違和感を覚えた。目の前の男の存在感がいつもと違う。薄い。それにタバコの匂いの中に——血だ。


 俺は部屋を横切りデスク横まで行くと、デイヴィスを見下した。

 変わらぬ隻眼に仏頂面。タバコとグラスを持つ右手——足だ。左の太ももあたり。薄暗くてよく見えないが、スラックスの一部が不自然に膨らんでる。


「足、やられたのか」

 俺の言葉に嫌そうな顔を浮かべたデイヴィスが、顔を背けて言った。


「かすり傷だ。まさかお前とおそろになるとはな」

 このクソ親父が。思わず吹き出し、珍しくデイヴィスも声を出して一緒に笑った。

 ひとしきり笑ったあと、デイヴィスがいつにもまして真面目な顔をした。


「ジーク」

 名前を呼ばれたのはいつぶりだろうか。思わず背筋が延びた。

 グラスに注がれた酒を一口煽り、隻眼が俺を射抜く。


「お前に話がある。お前の力——そして”Project Helix”についてだ」

 雨が本降りになってきた。

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