表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この電脳都市に錆びついたキスを  作者: 愛上おかき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/24

Ch.1-3-7 アリーヴェデルチ(1/2)

  ◇2327年9月19日(土)12:07:12


「走れ! 止まるな!」

 怒鳴った瞬間、タナカの足元のコンクリが弾けた。

 奴もさすがに悟ったらしい。悲鳴を上げながら、それでも百メートル先の目的地へ全力で駆け出す。


 建設中のオフィスビル。その地上から三階までを迷路のように入り組んだ鉄骨と、半透明の養生シートが視界を遮る。それは今の俺にも敵にも好都合だ。


 ここには俺の目になるようなものがない。

 予測線も、死線も、出ない。

 俺の目だけがレーダーだ。できるだけ遮蔽物の陰を縫って進まないと——。


 二階から降りてきた白スーツのマシンガン ”ブラック・マンバ”が、後方から養生シートを突き破って、剥き出しの鉄骨に甲高い金属音を響かせた。

 スマートレンズ上に俺の銃の射線を投影し、白スーツの頭を撃ち抜く。くそ、まだ上から来やがる。

   

「上からも来る! 何かを背にとにかく進め!」

 前だ、前に進まなきゃいけない! 後ろは無視!

 右側からも弾雨が降り注ぐ。俺は足場の板を一枚引っ剥がし、盾にしながらタナカと並走した。


  ◇2327年9月19日(土)12:08:31


 残り五十メートル。

 下品なクレイジードッグズの罵声と、当たったらタダでは済まない破裂音が断続的に響き渡る。

 手持ちの銃弾は残り十六発。資材置き場に隠れながら、前方からの集中砲火をやり過ごす。

 跳弾のせいであちこちにかすり傷ができてる。タナカもだ。だが、その目は恐怖に染まりながらも、興奮の色がにじみ出てる。


「モトクロスを思い出すよ。アドレナリンドバドバで最高にハイってやつだ!」

 出会って以来、最高の笑顔を浮かべるタナカ。とうとうネジが外れたか。いい傾向だ。つられて俺も笑った。

 そうだ、泣いても笑っても残り一分。なら楽しまなきゃ損ってもんだろ?


 笑い合いながらルートを探す。

 前、不可。今も止まない銃弾にミンチにされる。

 後ろ、バカか。なんで目的地から遠ざかる。

 右、なし。ビルからでると遮るものがなくて、ただの的。

 左、あった。二階へと続く階段。


 俺は左腕で資材の一部を掴むと、ビルの外へ放り投げた。瞬間、弾丸が投げられた資材を追い、狙いが俺達から外れる。

 

「階段で二階!」

 俺はタナカの背中を蹴り飛ばし、左の階段に向かわせる。ちょうど半透明の養生シートがテントのように張られており、俺達の姿をほんの少し隠してくれた。あてずっぽうで威嚇射撃を何発か弾き、階段にたどり着く。


 途中でタナカを抜き、二階をクリアリング。三人。手にはサブマシンガン。まだこっちを捉えてない。

 三連射。一発外し、相手の左肩をぶっ飛ばしただけ。

 撃たれた男は崩れ落ちながらも右手のマシンガンは離してない。まずい。

 タナカを庇う位置に体を滑らす。同時に俺の右肩を銃弾が抉った。


「ジーク!!」

 タナカの頭を押さえてしゃがませる。その上を数発の銃弾が通り、今日何度聞いたかわからない、鋭い金属音が鼓膜を叩いた。悪あがきかまして同じところを抉りやがってクソが!


「大丈夫か!?」

「大丈夫じゃないが大丈夫だ。まともに当たってたら右腕は動かない」

 俺をなんとも言えない表情で見るタナカだが、あいにく愛の告白を受けている時間はない。リロードを完了させ、言った。

「行くぞ」


  ◇2327年9月19日(土)12:09:11


『無許可での立ち入りは禁止されています』

「損害賠償はコストラーデ宛に頼む!」

 頓珍漢なことをいってくる建設ロボを盾に、前に進む。残り二十メートル。

 角度的に車がいるかどうかはまだ見えない。

 HUDの右上の時刻がカウントダウンをはじめた。


 右肩がずきずきと痛む。亢進状態でアドレナリンが出ていても、それを上回る苦痛。銃の名に冠された蛇の毒が回ってくるよう。

 今はそれを気にしている場合じゃない。戯言を繰り返すロボを人質のごとく歩かせ、前に進んだ。

 

 正面の通路、木材の影からゴロツキと白スーツの男が飛び出してくる。ガキンとロボが火花を散らした。後ろから躊躇なく連続で引き金を引く。赤のペンキがぶち撒かれた。

 ポケットからバラの銃弾を取り出しマガジンに装填する。残弾五で打ち止めだ。


『あ痛。暴力はロボット労働管理法第九条で禁止されています』

「お前、結構丈夫じゃねえか。使えるぞ」

 その時少し先を行ったタナカが叫んだ。


「見えた! ジーク! バンが走ってきてる! あれだ、ロゴがHelix系列!」

 HUDの右上の時刻を見る。12:09:45。あと十メートル。二階から降りなきゃいけない。

 目的地の道路までの道を塞ぐように、敵がバリケードを築いてる。強行突破は無理。どうする!?

 俺の思考を邪魔するように階下から何か―—グレネードが投げられた——お前らはいつも俺に良いアイディアをくれる。


 グレネードを掴むため無理やり腕を上げると、右肩の傷がさらに裂けた。

 ぬるい血が袖を満たす。痛みで視界が白む。それでも投げた。ビルの外へ。

 直後爆風と爆音が轟き、俺以外の視線が全員そっちを向く。


「タナカ、ロボを抱け!」

「趣味じゃ⋯⋯ってうわっ!? ま、まさか」

『私は自走式です。降ろしてください』

 騒ぐ二人を担ぐ。タナカと金属ボディの重みが、肉体強化手術をそこまでしていない俺の体にのしかかる。骨が軋みを上げた。

 歯を食いしばる。くそったれ。なんで俺がこんな目にあってるんだ。

 脳裏に焼き付くあの紅。ぷつんと頭が鳴った。


「どれもこれも全部お前のせいだぁああ!!」

「僕のことかぁああ!?」


 気合一閃。助走して二階から落ちるギリギリのところで窓から投擲。

 粉塵を切り裂いて一人と一体が翔んだ。


 眼下で飛翔物を見上げるアホ面が多数目に入った。

 何人かは慌てて銃を乱射しているが、全部建築ロボが弾いてる。まあ何発かはタナカに当たるかもしれないが、当たらないことを祈ろう。


 着地、というよりかは落下。ただタナカも最低限の身のこなしはできることはもう知っている。

 無様だが何とか着地したタナカは、ちょうど滑り込んできたバンに拉致されるように乗車した。そのまま中間層の中心部へ走り出していく。


「ふざけやがって、死ね!」

「やめろバカ、ロゴが見えないのか! もう手出しはできん!」

 眼下で悔しそうに白スーツがゴロツキを抑えているのが見えた。ざまあみろ。


 ミッションコンプリート。デリバリーの評価も星五つだろう。

 あとはお家に帰るだけ。

 振り返ると、怒りの形相を浮かべている男たちが俺の目の前にいた。

 さあ、どうやって帰ろうか。

【読んでいただいた方にお願い】

・ちょっと気になる

・続きを読んでやってもいい

・なかなかやるじゃん

と、少しでも思っていただけたら、是非ブックマーク登録をお願いします。


また、以下に☆がありますのでこれをタップ、クリックしていただけると評価ポイントが入ります。


評価していただけることはモチベーションに繋がるので、応援していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ