殺人アリと遭遇
両親は私の存在に意味を
友達は私との交友に意味を
先生は私の成績に意味を見出してくれた。
なら私は私の何に意味を見出せばいいのだろうか。
僕が人の顔をアリと認識して、また人間として見れなくなってしまった原因は3年前のあの事件のせいだ。
「キャーーーーー!!!」
ショッピングモールの一階、入口付近で大きな悲鳴が聞こえた。そこのショッピングモールはかなりオープンな設計になっていて、下の階をドームの観客席のように見物することができた。
鼓膜が破けそうになるほどの高い悲鳴の先には女性(悲鳴を上げたと思われる)が腰を抜かした状態で漏らしていて、歯がガタガタ言っているのが三階にいた僕にも聞こえた。目には涙を浮かべているようだった。その目線の先には、飛散した誰とも分からない内臓が飛び散り、血が辺り一面に浸食していく。
その楕円状に広がる血の中心部には、高さが少なくとも3メートルはあると思われる人のように立った”アリ?”が血の滴り落ちる男の上半身を左の二本脚で持ちあげている。胴を切った為か、血の付いた薙刀を反対側の手で掲げていた。本当に大きなアリ、という印象だった。
その現実を理解するのに脳の大部分を使っていた寸刻の間、アリの近くにいたさっきの女性の首が血の付いた薙刀で吹き飛ばされるのを目の当たりにした。飛んできた生首は三階で見ていた僕の足元に落ち、瞬時に血の色で、着ていた青のジーパンの色が赤紫に変わるのが分かる。ジーパンが湿って足に濡れた感覚がこびりつく。
「ん?、、、おぉ~い、かおる~!、、何してん、、、、だ、、、、、?」
その声は同級生の”山崎 ゆうや”のものだった。ゆうやは目を点にして立っている。どうやら何が起こっているのか理解できていないらしい。
直後、下から悲鳴が聞こえる。アリはまた人を殺したらしい。




