甘? ライトミドル?
「パチンコを打つ上で気になるのは確率分母ね。甘とかライトミドル、ミドル、MAX機とか分かれているわ」
「さっき甘って言ってましたね」
「確率分母は、抽選が当たる確率を分母とした分数で表される事が多いから確率分母。1/99.9とかね」
「ああ、台の方にも書かれてますね」
「確率分母を回すのに必要な資金を5000円ごとに区切って、5000円が甘、1万円がライトミドル、1万500円がミドル、それ以上がMAX機という感じね……最近はちょっと違うけど」
確率分母でいうと
1/99.9までが甘
1/199.9までがライトミドル
1/319.9までがミドル
それ以上がMAX機と、一般的には掛かる資金よりも確率分母で言う場合が多いらしい。
「最近はボーダーが下がってる分、確率分母以上に資金が必要になってるわね」
「そうなんですか」
「少し前は20くらいだったのが、17に下がってるの。これは大当たりごとの出玉が多くなってるから、同じだけ回るなら勝ちやすくなっているって事なんだけど」
「客に優しくなってるんですね」
「実はそうでもないわ。ボーダーに合わせてどれくらい回るかで調整されるから、資金に対して回らなくなってるのが現状ね」
99.9回転させるのに1000円辺り20回転なら、5000円だけど、17回転だと6000円掛かる事になる。
「ボーダーがそこって事は、大抵の台はそれ以上に回らない。もっと資金が必要になるわ」
「な、なるほど……」
「前にも言ったけど、パチンコって回る台を探す所から始まるの。釘を見るとか打たなくても分かればいいんだけど、そこまであからさまに回る、回らないを判断できる事はほとんどない。実際に打たないとね、だから資金はもっと掛かる事になる」
「ですか……」
「その試し打ち中に当たる事もあるし、無駄ではないわ」
資金が必要って事で苦い顔になった僕に対して、彼女は少しフォローを入れた。
「それと確率分母が小さくても出玉が増えやすいかは別よ」
「えっと……?」
「当たりやすくても、確変に入りにくかったらなかなか出玉に繋がらないの」
1/99の甘でも確変の振分けが35%だったりすると、1/199でも100%で確変に入る台より出玉が取れる率が下がる……という事らしい。
「長いスパンで見れば、ボーダーに収束していくけど
、現金を長く使う方が損をしやすい」
それは前に言ってた換金する時に損をする理論に繋がる。
「確率分母を確変、ラッシュ突入率で割ると、大体いくらくらい掛かるかが決まってくる」
1/99で確変が50%なら200回転くらいで出玉に繋がる。1/199で100%確変なら同じく200回転くらいになる。
それをボーダーで割ると、いくら掛かるかの目安が出せるらしい。ボーダー17なら12000円って所になる。
「最近はデカスタとか、ボーダーが高い台も出始めてるから、投資額がいくらくらい必要かはちゃんと把握しておいた方がいいわ」
デカスタ系、へその部分が大きめに作られていて、入りやすい分、出玉が少なめでボーダーが30前後の台が出てきているらしい。
そうなると、1/319のミドルっぽい確率分母でも10000円で確率分母が回せるので、ライトミドルと同じくらいの投資額で済む……という事らしい。
ちょっとややこしくなってきた。
「ひとまず現金投資をしないように出玉を持ちたいなら、甘でラッシュ突入率が高い台を狙うのが良いと思うわ」
「例えば……?」
「1/99で突入率が65%っていう破格のスペックであるPひぐらしのなく頃に 輪廻転生 99ver.なんかはおすすめね」
「ひぐらしってアニメの?」
「元はゲームらしいけど、版権はアニメの台ね。この台が打ちやすい理由は、遊タイムがついてる点ね」
「遊タイム?」
「スロットで言う所の天井、一定の回数に到達すると極端に当たりやすい状態に突入するのよ」
ひぐらしの場合、199回転で電チューが使用できる状態となり、当たるまでほとんど玉が減らない状態になるらしい。
「その分、継続率は73%と低めで出玉も一気に増える感じじゃないけど、それでも期待出玉は1500玉以上、振分けの偏り次第では3000玉以上になることも多いわ」
「なるほど」
「ただひぐらしは転落抽選だから、遊タイム狙いをするなら気をつけないと駄目だけどね」
「遊タイム狙い?」
「200回転でほぼ当たりになるって事は、100回転から打ち始めたらあと100回転でほぼ当たり、オトクな状態って事なのよ」
「そんな状態で置いとかれるものなの?」
「回りが悪くてとても遊タイムまで打ってられないと判断されたり、遊タイムの存在をしらなかったりで中途半端な状態になるケースはあるわ」
最近は情報が多いから遊タイムを知らないって事はないだろうし、この台は画面の左上にカウンターがついているからわかりやすくなっているらしい。
「転落抽選って言うのは、電チュー抽選中に一ハズレを引いたらラッシュが終わるタイプなの。だから200回転で置かれている台でも、転落直後で遊タイムまでのカウンターがほとんど進んでない事もありうる。その辺はカウンターを見たら分かるから打つ前にチェックすれば問題ないわ」
「……何か複雑そうですね」
「色々とルールが複雑になって、どうなったら勝ちやすいとかがわかりにくくなってるのは確かね。そのためにボーダーが出されてて、それ以上回せたら勝ちやすいよという目安になってるの」
「とりあえずボーダー以上を回せるようにすればいいと?」
「最初にして最後までそれがルールね」
突き詰めれば勝ち負けはボーダーをどれだけ上回っているかで決まるので、画面の演出なんかは関係ないという。
「パチンコに勝ちたいなら、いかに多く回せるか、いかに無駄を減らせるかに掛かってくるわ」
「な、なるほど」
それが彼女の信念なのだろう、強い調子で言われた。
昨日、勘出先輩に聞いた波理論とはまるで攻略の角度が違うと思う。
「勝ち負けにこだわる方法は色々と提唱されているし、自分が納得できるものを信じるしかないわね。私はボーダー理論をベースに打ってるけど、それが正解だとは言えないから」
「は、はぁ……」
「まずは気楽に当たった! 増えた! で良いと思うわ」
色々言われて混乱したけど、ひとまず台に向き合って見ることにした。
まずは当たりやすい甘と呼ばれる台が良いのだろう。オススメされたひぐらしに座ってみる。
当たりの確率は1/99.9、確変の突入率は5%と記されていた。
「え、これって全然勝てないんじゃ……?」
「ヘソから確変はほとんどないけど、大当り後に100回の時短、右打ちで減りにくい状態で打てるのよ」
「1/99.9で100回だったら必ず当たるんじゃ?」
「箱に入ったくじを引いていくならそうなんだけど、パチンコの場合は引いたくじは戻してから、引き直さないといけないから必ずにはならない」
詳しい計算は省かれたが、99.9の確率分母、100回転で当たる確率は63%ほどなんだそうだ。
「そうやって時短中にもう1回当てられたら100%確変に突入するって台ね」
「なるほど」
「まずは通常、左打ちで当たりを目指せばいいわ」
ヘソと呼ばれるスタートチャッカーを狙って打ち始める。




