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ボーダーって何?

「パチンコ台を検索すると出てくるのがボーダーラインという言葉ね。これはそのまま境界線を示しているわ」

「境界線?」

「勝ちと負けの境界線を見える化するのがボーダーラインなの。1000円辺り何回転すれば勝てるか、それを数字で表してくれてる訳」


 女は簡単に説明してくれる。

 抽選で大当たりした時に得られる出玉を平均して大当たり1回辺り何玉得られるかを算出し、大当たりまでに何玉まで使えるかを計算。

 その玉で確率分母、当たりまでの平均回転数を回すためには1000円辺り何回転させられたら良いかを数値化したもの……という事らしい。


「ボーダーを越えて回すことができれば勝つ確率を上げることができる。逆に下回るのに打ち続けたら負ける確率が高くなる。それがボーダー理論よ」

「なるほど……平均で獲得できる出玉って?」

「さっきも言った様に大当たりで確変を引くか、通常かで継続率が変わる。平均の連チャン数、大当たりが何回続くかも平均で出せるわ」


 確変の平均連チャン数は、継続率から導き出せるらしい。継続率80%なら、100-80=20%で連チャンが終わるということなので、1/0.2で5連が平均となる。

 大当たりの振り分けが10ラウンド10%や5ラウンド90%となっていたら、1000×0.1+500×0.9=550でこれを5連と掛けて2750玉といった感じで導き出す。


「気をつけなくてはいけないのが、大当たりの時に開く入賞口、アタッカーから10玉払い出される場合、実際に増えるのは9玉という事ね」

「というと?」

「アタッカーに1玉入って10玉出てくるから、増えたのは差の9玉と言う事。だから500玉出るとしても、増えたのは450玉だったりするわ」

「何か損した気分だな」

「ま、それらも含めて計算して出してくれてるのが、攻略サイトに書かれているボーダーってこと」

「普通に打つならそれだけ見てたら良いってこと?」

「そうね。でも、注意しておく点はあるの」


 ボーダーというのは、打ち方によってもばらつきが出るらしい。例えば、アタッカーに10玉入って1ラウンドとなるところを、11玉以上入ったりする事もあるし、途中でアウトと書かれた場所に玉が逃げたりする事もある。


「アナタの打ってた海だけど、実はこのボーダーが動きやすい台なのよね」


 今の台は右打ち中、あまり玉を失う事はないのだが、海はそのまま左打ちで大当たりをこなす。そのため、失う玉が多いそうだ。そして、アタッカーへのルートも多いため、時間差をつける事でより多くアタッカーへ入れられて、10玉を越える入賞を狙えて貰える玉が増える。ボーナス中もヘソに入れる事で玉が増える面もある。

 確変、時短中も電チューへ入らなかった玉は失うし、電チューに入ると賞球もあったりと、打ちてによって玉の増減に大きな幅が出る台らしい。


「それは得する人がいるって話ですか?」

「どちらかというと上手く打つ人に合わせて調整されていると、まだ上手く回せない人には難しい台になってる可能性があるのよ」


 パチンコ店は客への玉貸し料金で経営がされている。なので平均的に、客は負けるようになっていた。

 ただ全く客が勝てないとなると、打とうという人がいなくなるので、店の中で回る台、回りにくい台を用意する事で、勝てる人を作る方法をとっている。


「パチンコで勝つには、店の中にあるよく回る台を見つけ出して、少しでも多く回すようにする。それが大事なのよ」

「そんな事はねぇぞ」


 彼女の言葉に被せるように男の声が割り込んできた。


「パチンコってのはいくら回そうが、当たらない台を打ってたら勝てねぇよ。履歴を見て、台が出そうとしているかを読み取るのが肝要なんだよ。ボーダー好きのよくいう確率の収束、そのポイントを見極めれば効率良く勝てるんだよ」

「確率の収束というのはそんなものじゃないわ」


 彼女はため息をつきつつも、先輩を説得する気はないようだ。


「とりあえず、今日の取り分。二万な」

「え?」

「俺に付き合ってくれた礼だよ」

「付き合ったって、別々の場所で打ってたし、僕は勝ってないし……」

「パチンコは全員が勝てる様にはできてないからな。友達と行けば勝つ奴、負ける奴がいる。勝った奴は負けた奴をフォローする、そうすれば自分が負けた時に、他の誰かが助けてくれるもんさ」

「は、はぁ……」

「お前が負けてくれたから、俺が勝てたって事だよ」

「それは何か……納得できないような……」

「情は人のためならず、自分の徳を高めたら勝ちやすくなるんだよ」

「情は人を駄目ならす」


 女性がボソリと呟くのも聞こえる。


「じゃ、飯でも行って変えるべ。パチンコの勝ち方を教えてやるよ」

「は、はぁ……」


 勘出先輩に連れられて、その日は家路につくのだった。




「株価と一緒でよ、パチンコ台も大きく凹んだら、少し反発して玉を出すんだよ。そこを狙っていく必要がある」

「はぁ」

「ただV字に回復する場合だけじゃない。ちょっと下でくすぶってから跳ね上がる台もある。その辺の見極めは慣れだな」

「はぁ」


 夕食を食べながら先輩から波理論について講義を受けていた。あの女性の言うボーダー理論に比べると、あやふやな部分が多いが、確かに先輩は勝っている。

 今日も5万のプラスだったらしい。


「単発と小連で右肩下がりの奴は危険だ。いつか爆発すると見せて、先におお下がりするんだよ、回転が確率分母の3倍とか凹んでようやく跳ねる。こういう台は打っちゃ駄目だ」

「はぁ」

「前日、大凹みで終わった台。これも怪しい、次の日は跳ねると思っても、日付が変わった事でリセットされて、もう一日凹む。狙うなら2日連続で凹んだ後だ」

「はぁ」

「まあ、この辺は経験を重ねないと実感が得られないからな。今度、俺が勧める台を打ってみろ」

「はぁ」


 たくさん打ってきたんだろうなと思わせる自信が先輩にはあった。それで安定して稼げるんなら、問題はないか。

 ボーダー理論も概念は分かったけど、結局の所、細かい所が攻略サイト頼みとかだと、嘘の可能性もあるもんな。


 いや、そもそもバイト探さないとと思ってたのに、パチンコなんて打ってて良いのか?

 でも、財布には二万円が入っている。これがなくなるまでは先輩に付き合うのもアリかも知れない。

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