パチンコって何をするの?
「時短終了……残保でも当たらなかったわね」
「え、えーっと?」
「大当たりして下のアタッカーが閉じて、その後のチャンス時間も終了したって事」
「え、それで勝ったんですか?」
「全然よ。今出た玉が400玉くらいね」
パチンコ台の左にある機械の液晶に412玉という表示があった。
「まあ上皿にもあるから500玉ちょっとはあるわね。で、500円で125玉借りれる。さて、今いくら使ってるかしら?」
「えっと、45だから5500円使ってて……1325玉?」
「暗算早いのかしら。まあ、800玉ほど負けてるわね」
「え、じゃあ、どうやって勝つんですか?」
「勝つ方法よりも、まずパチンコがどういうものかも分かってないでしょ。そこから説明しないとね」
などと言って彼女は説明を始めた。
パチンコとは店から玉を借りて、パチンコ台で増やして景品と交換するという遊びらしい。その景品の中に、近くの店で買い取ってくれる貴重品があり、それを貰って売ることで現金が戻ってくる仕組みらしい。
「パチンコにも色々種類があるけど、今の主流は液晶画面のついた奴ね」
液晶画面の下にある穴に玉を入れて、抽選を受けて大当たりを引く形の台らしい。他だと実際に動いている邪魔をかいくぐりながら特定の穴に入れば当たりといった台もあるらしい。ただ打つのが難しく、初心者向きではないそうな。
「で、アンタが今打ってた海は、確変ループと呼ばれるタイプ。ヘソに入った抽選で当たるんだけど、その際に確率変動か通常かに振り分けられる」
確率変動とはヘソで行われる抽選の確率が、通常時よりも当たりやすくなるという事らしい。1%で当たるところが、確変中は6%になるとか。
「ただ確変中の確率なんてあまり意味はなくて、次に当たった時にまた確変を引けるか、通常に戻るかが大事なの。確変を引き続けければ、次の当たりが決まるから」
確変ループとは、確変を引く間同じ事を繰り返す、ループするという事らしい。よく分からん。
「確変という状態は次の当たりまで続くの。その間は電チューが開くから、ほとんど玉が減らない……こともないんだけど、細かいのは今はいいわね」
とりあえず確変中は、玉が減りにくくなってて、次に当たるまで追加で玉を借りるような事にはならないと言うことらしい。
「で、通常を引くと、確率は普通のままで、電チューのアシストが一定時間受けられる。3R3の場合は40回転までね」
「それがさっきの大当たり……」
「そ。だから単発で終わっちゃった訳。大当たり1回で500玉出るから、確変を2回引いて次通常だったら1500玉、使ったより多くなって勝ちになるのよ」
確変を取り続ければ、500玉ずつ上乗せされていくから、どんどん勝っていけると。500円で125玉だから、大当たり1回で2000円増えていく!?
「大当たり10回で5000玉、2万円……」
「上手く続けばね。でもそんなに甘くはないわよ」
台には継続率というのが設定されているらしい。今打った海の場合だと、確変が51%で通常の40回転でもう一度当たる確率が35%ほどらしい。つまり、通常を引いたら65%は終わってしまうと。
「継続率でいくと65%ほど、3連すれば平均ってところね」
「じゃあ次で確変取れたらチャラになる……?」
「残念ながらならないわね」
「え?」
「だって次に当てるためには、また玉を使わないといけないでしょ」
「え、あ、そうか……また1325玉使って1500玉取れても125玉しか増えない、500円か」
「まあ、次当たるまでに1325玉もいらない可能性もあるけどね。逆にもっとかかるかもしれない。3連で終わらずもっと続くかもしれないし、また単発で終わるかもしれない。つまり、パチンコで勝つというのは、使った玉より多くの玉を手に入れるという事ね」
「……そんなの勝てるんですか?」
「勝てるか、勝てないかで言ったら勝てるわ」
「ど、どうやって?」
「少ない玉で当てていくのよ」
「でも次の当たりをいつ引くかとか、わからないですよね」
「そうね。そこで出てくるのかボーダーって話なんだけど。初日に教える事じゃないわね。まずはパチンコをどう打つかをしっかり考えるところからよ」
ハンドルをひねったら玉が出るんじゃ?
「パチンコ玉が通るルートを調整するのが、パチンコという遊びなの」
「通るルート?」
「ヘソに玉が入ったら、抽選が受けられる訳だけど、そのヘソに向かうルートをハンドルの強弱で調整するのが大事なのよ」
「る、ルートっていってもまっすぐ飛ばないし、釘に当たってバラバラに動くし……」
「一見、バラバラに飛んでる様に見えるけど、玉がよく通る道は限られてて、最終的にヘソへ集まるルートを選ばないと上手く回らない、抽選を受けられないわ」
左上を狙った玉は、液晶画面の左を通って、左下で右下に流れてヘソに入る。
「ポイントになるのはまず風車ね」
盤面の左下にある回転するパーツを指差す。ここに玉が当たると、左右に振り分けられるらしい。
「この風車に当たって右に流れる玉が増える様に強さを調節しないといけない」
「な、なるほど」
「で、ヘソに流れる強さも見ないといけない。弱すぎて手前で落ちたり、逆に飛び越えたり。毎回同じ動きじゃないけど、ハンドルの強さによってずっと手前で落ち続けたり、飛び越え続けたりって場合がある」
なので手前に落ちたり、飛び越えたりが半々になるような感じで飛ぶ位置を探すという事らしい。
「ただ、ヘソを見ながらハンドルを調整しても途中の釘での跳ね方もあってわかりにくい。なので左上のどの部分に落ちるかを目安にするわけね」
「プラスチックの部品のどこに当たるかって事?」
「まあ、大体だけどね。それでヘソに寄り易い位置を決めて、後はヘソを見てちょうど良さそうな場所を探していく。それがパチンコという遊びよ」
彼女は台の上を示す。
「あそこに表示されている一番大きい数字が抽選回数。今は時短抜けだから44回ってなってる」
「ありますね」
「台の上にあるのはデータランプと言われるもので、大当たり回数や何回転で当たったかの数字が出てるの」
「僕がさっき当たったのが何回目の抽選だったかが分かるんだ」
「ここの数字ね、51回転目。この台は1%で当たるから半分で引き当てた感じね」
「え、それって凄いんじゃ」
「1%を51回で引き当てる確率は……40%ほどね」
彼女はスマホを取り出して何やら計算してみせた。
「51回転なら51%じゃないんですか?」
「ちなみに1/99を99回転で当たる確率は63%ほどよ」
「え、思ったより当たらない?」
「50回で当たる確率が4割だけど、100回で当たる確率は6割と回転は倍になっても確率は1.5倍。この辺が確率の妙ね」
「確率・統計って苦手だったんですけど……」
「ま、この辺は知ってたらなんで当たらないのかが納得できるだけで、勝敗には関係ないから気にしなくてもいいわ」
「アナタは5000円で51回転させて当たりを引いたけど、この台で勝つには90回転は欲しいわね」
「なんでそんな事が分かるんですか?」
「それがボーダー理論の考え方だからよ。詳しく説明すると……」




