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はじめてのパチンコ

この物語はフィクションです。

ただ2025年の環境に合わせて執筆してます。

「仕送りだけじゃ厳しいんで何か良いバイトないっすかねぇ?」


 この春、大学へと入学し、一人暮らしを始めた僕は自分で衣食住の金勘定をするようになって、厳しいと感じていた。

 先に都会へ出てきている2こ上の高校の先輩、勘出先輩に授業に差し支えないバイトがないか聞いてみる。


「講義の合間なんかにちょろっとできたり、夕方から入れたり、土日はかっつり1日入れて、短時間でも万単位で稼げなくもないのならあるぞ」

「え、なんすか、それ」

「やる気があるなら連れてってやるよ」

「や、闇バイトとかじゃないっすか!?」

「違法な事は何も無い、警察に捕まることはねぇよ」


 そう言われながら連れて行かれたのはパチンコ店だった。


「いや、ギャンブルはちょっと」

「パチンコは、ギャンブルじゃねえよ。遊戯、ゲームの一種、勝てばご褒美が貰えるってだけだ」


 勝てば金が貰えるって、それがギャンブルじゃないのか?


「細けぇ事はいいんだよ。騙されたと思って打ってみろって」


 勘出先輩に引きずられるようにして店内へ。思っていたよりは清潔なイメージ。ヤニ臭くもないようだ。


「店内は禁煙で、喫煙スペースに分離されるようになったからな。店によっちゃぁ電子タバコはOKってトコもある。俺はあの臭いも苦手なんで完全禁煙の店だな」

「はぁ」


 店員のいるカウンターを素通りして、パチンコ台が並ぶエリアへと入っていく。人1人が座れる間隔で台が並び、その前には椅子も並んでいる。満員という感じではなく、ポツポツと空いた席があった。


「初心者向けはもっと奥だな。あまって言われる当たりやすい台がいいだろ」


 当たりやすい代わりに、当たっても貰える量が少ないらしい。


「入門といったらやっぱ海だな。今なら3R3何かがポピュラーで分かりやすい」


 盤面に液晶画面の付いた台へと座らされる。よく見るパチンコ台という感じ。液晶画面にはサメとかカメとかカニがいて数字が書いてある。


「同じ種類の生き物が並んで、数字が揃ったら当たりだ。まずはこの辺を狙って打ってれば、液晶が動き出す。後は数字を揃えればハッピーって訳だ」


 そう言いながら先輩は台のガラス面、左上辺りを指さす。


「台の左側の細い機械、ここに金を入れる。すると台のここに残高が表示されて、貸玉ボタンを押すと500円分出てくる」

「はい」


 ここまで来て止めときますとも言えず、財布を取り出して千円をつまみ上げる。しかし先輩にダメ出しされた。


「千円なんて入れてたら足元を見られるぞ。入金するなら万札オンリーだ」

「は、はぁ……」


 有無を言わせぬ様子に、僕は仕方なく万札を取り出して、左の機械にあるスリットへと投入。台に100の数字が表示された。

 先輩の指に示された貸玉ボタンを押すと、数字が95に減り、ジャラジャラと玉が吐き出されてくる。


「ハンドルを右回りに回転。海は右からも狙えるが、まずは左から打って大丈夫だ」


 ハンドルを回すと思ったよりも回らず、行き止まりまで回してしまった。打ち出された玉は盤面の右の方まで飛んでいく。

 その勢いを見ながら左側へ落ちる程度にハンドルを戻した。


 そうやって勢いを調整する間に、液晶画面が動き出し、色々な生き物が画面を右から左へと動いていく。

 一定時間が経過すると動きが遅くなり、各生き物が止まる。揃った場所は無いようだ。するとまた画面を生き物が動いていく。


「魚が止まる時に演出が発生したらチャンスだ。じゃあ頑張って当てろよ」


 そう言い置いて先輩は去って行った。



 玉が出なくなったら貸玉を押し、玉が出なくなったら貸玉を押し。液晶画面ではたまに動きが止まる。上下の2ラインで同じ数字が止まり、リーチの声がする。何か女の子が出てきたりして、残念と言って去っていく。

 気づくと台にある数字が50になっていた。

 え、五千円がなくなったの?

 10分くらいしか経ってなくない?

 え、今週の食費どうすんの?


 思わず思考が飛びそうになった時、液晶画面が再び止まり、リーチの声。トゲトゲの魚、これはハリセンボンだろうか。ムーア監督じゃねぇよとか脳裏で叫ぶ声が聞こえる。

 何か小さい魚の群れが画面を横切って行った。

 背景が暗い感じになって、ハリセンボンが必死な雰囲気で泳いでる。そこに真ん中の列にもハリセンボンが走ってきて、ゆっくりになって……止まった。何かびっくりしたように大きくなる。


「早く玉出して」

「え?」

「貸玉ボタン押して」

「はい」


 隣から声がして、慌てて貸玉ボタンを押す。ジャラジャラと玉が出てくる。


「はい、打ち出して」

「は、はい」

「この下の所が開いてるでしょ、そこに玉が入るといっぱい出るから」

「はい」


 液晶画面の下の方に細長く開閉するフタがあった。そこに玉が入っていくと、閉じる。しばらくするとまた開いて、玉が入っていくと閉じる。それを繰り返すうちにフタは開かなくなった。


「はい、1回打つの止めて」

「は、はい」

「下皿の玉抜いて」

「え、下皿?」

「台の下にあるでしょ。玉が溜まってるから、それを抜くの」

「え、ええっと」

「皿の前に、スライドできる場所があるでしょ?」

「あ、これかな」


 レバーの様な箇所を左にスライドさせると、下皿に溜まっていた玉が更に下へと落ちて黒い機械に飲まれていく。


「初心者ほったらかしてどこいってるのよ……」


 ぼそりと呟く声の主を見る。30手前くらいの女性だと思われる。野球帽を被り、黒髪を無造作に後ろへ流している。あまり櫛を通していないのかつや消しの黒で、ピンピンと毛が飛び出ているがストレートの髪だ。

 Gジャンを羽織ってロングスカート。お世辞にもおしゃれとは言えない感じの女だ。多分ノーメイクで黒縁のメガネに白いマスクをしている。


「これから時短だから、その間に当たるのを祈りなさい」

「は、はぁ……」


 妙に艶のある爪で盤面の左側を指す。


「ここにパチンコ玉が通ると、ヘソの脇の電チューが動くから、さっきより良く回る様になるわ」

「へ、ヘソ?」

「まさかそれも知らずに打ってたの!?」


 信じられないという声を出す女性。


「いい。パチンコで抽選を受けるには、ここに玉が入らないと駄目なの」


 液晶画面の下にある玉が入りそうな箇所を指さしながら教えてくれる。


「ここに玉が入ると、液晶の下に並んでる赤く光るランプが点いていくわ。それが保留中の印」

「保留……」

「液晶画面で魚が動いている間は、次の抽選は行わずに演出を待ってる状態なわけ。その間にヘソに入ったら抽選待ちの状態、保留状態になるのよ。まあ、打ってみて」


 言われるままに打ち始める。ヘソを見ているがそこには入らず、その脇が開いてそこへ玉が入ると画面が動き始める。


「ヘソの脇に開いた所が、海の電チュー。電動チューリップ。開いた所がチューリップに似てるからね」

「なるほど」

「で、電チューに玉が入ったら、保留ランプが点いてってるでしょ?」

「た、確かに」

「ランプが4つ点いてたら、今の抽選が終わった後も4回抽選が行われるって事よ」

「な、なるほど」

「で、この台は8個保留だから最大8つまで保留が貯まるわ」

「でも4つしか光らないですけど?」

「電チューで貯まるのは最大4つ。後はヘソに入ったら光るわ」

「あ、5つ目が光りました」

「海は時短中もヘソにどれだけ入れれるかが大事なの」

「え、えっと?」

「ヘソの方が賞球が多いってのもあるけど、電チューが開いて無駄玉が減ってる間に、保留を幾つ貯めておけるかで、時短を抜けた後の引き戻しが……終わったわね」


 液晶画面の生き物の後ろが黄緑色から青色に戻っていた。

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