村人オリル、シスター?を拾う
魔王が倒された、という話は王都から離れたこの小さな村にも拡がっていた。
王都は勇者様の凱旋でお祭り騒ぎらしい。
まぁ、こんな小さな田舎の村には影響なんてないし、魔物が田畑を荒らす被害が減るぐらいなもんだ。
子供の頃はそういう勇者譚に憧れてはいた。
でも成長すれば現実が嫌というほどわかってしまう。
そりゃあ街に出稼ぎに行く、という選択肢もあった。
だけど、稼ぎ頭だった父親が倒れてしまい嫌でも実家の畑を守らなければならなくなりこの村に居残る事になった。
年々村人達は減っていき今では僕を含めて両手で数えるぐらいしかいない。
両親も1年前に亡くなり天涯孤独になった。
「おーい、オリル。 悪いけど焚き木を拾いに行ってくれないか」
「わかった、準備をしたらすぐ行くよ」
僕は籠を背負い近くの森へと入って行った。
地面に落ちている大小の枝を拾っていく。
こういう力仕事は若者の仕事だ、ただでさえ少ない村人なので助け合いは大切だ。
籠いっぱいの枝を拾い集め村に帰ろうとした時、ガサッという音が聞こえた。
もしかして魔物か?と思い身を護る為の小さな剣を構えながら物音がした所に恐る恐る近づいた。
「え……、なんでこんな所に女の子が?」
そこにいたのは修道服を来た女の子だった。
服は薄汚れていてボロボロになっていた。
「ちょっ…!? だ、大丈夫っ!?」
「う、う〜ん……」
声をかけると返事はあった、意識はあるみたいだ。
「ここは……」
「デール王国のレンス地方ですよ」
「あぁ……、漸く戻ってこれた……」
そう言って女の子は涙を流した。
「あの、とりあえず僕の家に来ませんか?」
「よろしいんですか?」
「はい、流石に放置する訳にはいかないんで」
僕は籠を手に持って女の子を背中に背負いながら村へと戻った。