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私を止めて

「じゃあ、いくよ!」


トウヤの合図と共に戦いが始まった。


殺そうとしてくるイブを無力化する。


それが出来なければ互いに安心出来ない。


手抜きは許されない、本気でやらないといけない戦いだ。


まずトウヤが先行した。


刃の無いデバイスを使いイブを襲うが、イブお得意の髪を刃に変えて受けられた。


変形(トランス)”は体の一部を変化させる魔法、髪が有効と言う事は……


攻撃を受けたイブは髪を大量の刃に変えてトウヤを襲う。


髪の毛の数だけ刃に変えられる、つまりそれだけ手数が多い。


だが操作する側は限界がある。


(20、これがイブの限界か)


大量に変化させても使えなければ意味が無い。


それを使える量まで纏めるのは自然な事。


内5本がトウヤに向かってきた。


そのうちの1本をデバイスで弾く。


キンッ!


堅い金属がぶつかる音がした。


(硬度まで変えられる、当然か)


変形(トランス)”として想定される魔法の効果は、今のところ想定内だ。


残りの4本も素早く躱し、懐へ入る。


そこへタイミング良くミイナの砲撃がイブを襲う。


使い方の予想として変化した部分を切り離すことは出来ないと予想していた。


つまり砲撃を始め、遠距離での攻撃は守ることしか出来ないはず。


また遠距離に伸ばそうとしてもそれなりの時間が必要になる。


その予想通りイブはミイナに対して防戦一方だった。


これでイブの中ではトウヤは接近して襲うタイプ、ミイナは遠距離で襲うタイプと判断されただろう。


それを裏付けるようにイブは狙いをミイナに変えた。


つまりミイナの戦い方を嫌い、優先的に潰そうと判断したのだろう。


だがそこにリヤナが立ち塞がる。


イブは素早くリヤナを排除しようと刃の攻撃をするが、全てリヤナに当たることは無かった。


いや、正確には何かに阻まれリヤナ自身に当たることは無かった。


驚いたイブは即座に狙いを切り替えリヤナを襲う。


今度は細い糸状の刃でリヤナを叩きつけた。


一つ一つの殺傷力は低いが広範囲に攻撃が出来るだろう。


要所要所で纏めて網のように使えば操作も容易い。


その網のような攻撃でもリヤナに傷をつける事は出来なかった。


そしてリヤナに苦戦している隙にトウヤは背後に近づき、

魔法で手をスタンガンのように使いイブを襲う。


だがイブはしっかり背後を警戒していたようで、上手く躱されてしまった。


そしてイブはそのまま距離をとった。


「魔法と言うのは色々あるのね」


「ああ、たくさんの人が使える魔法があれば、その人個人しか使えない魔法も存在する。

今君が見た魔法はそのごく一部でしかないよ」


「……フヒッ!」


怪しい声で笑ったイブは即座に口元を隠し、何かを堪えるように下を向いた。


「ご、ごめんなさい」


「……相手にするのが楽しそうって思ったんだね」


「……ええ」


人の数だけ魔法が存在する。それを使う人と戦える。


イブが抑えようとしている殺しを楽しむ感情が表に出てしまったのだろう。


「ありのままでいい。それを受け止め、殺しを止めるのが俺の役目だ!」


そう言うとトウヤは大量の魔力を放った。


そしてそれに呼応するようにリヤナとミイナも魔力を放った。


「……ああ……ああ!」


それを見たイブは目を大きく開け輝かせた。


驚き、焦る、それらの感情を飛び越え、全力で戦える喜びが勝っていく。


そして何よりも強い、そんな相手を殺せる喜びに全身が小躍りしそうなほど震え上がった。


我慢の限界を迎えたイブは喜びながら戦闘を再開する。


(速い!)


さっきよりも素早い動き、そして糸状の刃を広げ駆け抜けていく。


狙いはやはり遠距離型のミイナ。


触れれば簡単に切られそうな動きにトウヤは近づけない。


これを防げるのは刃の切断を防げる強化系魔導士と……


「遠距離が苦手とか、解りやすくて好きよ!」


不侵の毒(コルドン)”で侵入を防げるリヤナが立ち塞がり両腕を掴み動きを止める。


だがイブは腕を布切れのように変化させると同時に体を大きく膨らませた。


「うそ!?」


あまりの変化ぶりに驚くことしか出来ない。


不侵の毒(コルドン)”の性質上リヤナに害が及ぶことは無いが、視界は奪われた。


少し離れた位置に居たトウヤはイブの動きを見れたことで、この変化の理由を理解した。


(リヤナに止められてもミイナの元へ行こうとしているのか)


そうまでしても遠距離型を先に仕留める。


その姿勢に攻略のカギはミイナであると確信すると同時にこれはチャンスに思えた。


大きな体はそれだけ的が大きい。


トウヤは膨れ上がったイブの体をめがけてデバイスを振り抜いた。


だがイブには当たらない。


イブは即座に体を元の大きさに戻した。


(変化のスピードが速い!)


リヤナが掴んだ腕も一気に細くして胴体の方に戻すことですり抜けたようだ。


トウヤとリヤナを抜いたイブは一気にミイナの元へ駆け抜け襲う。


キン!


両腕を刃に変え、首を切ろうとしたが、ミイナの腕に止められた。


「!?」


正確にはミイナの腕の錬成陣から剣の刃が生え、それがイブの刃を止めた。


そしてミイナは何食わぬ顔で蹴り上げた。


「ぐ!?」


その蹴りはイブの顎に命中し、突き上げられた。


「そ~れ!」


掛け声に合わせてミイナはイブの顔面に拳を突き落とした。


イブは地面に叩きつけられると、跳ね上がるように体を動かし、ミイナから距離をとった。


「へぇ~強いですね~」


イブは殴られた顔を抑えながら何が起こったかと驚いている。


かく言うトウヤもリヤナも驚いている。


遠距離型と思っていたミイナが接近戦、しかも強い。


「私は人形、人造人間(ホムンクルス)works317通称ミイナ。worksは独自のネットワークで

情報を共有しています。私の戦闘データは遠距離が得意なナナのを使ってますが、

接近戦が得意なworksのに変えれば、熟せなくはないんですよ?」


トウヤだけは理解出来た。


worksは基本的に相互互換があるように作られているのだろう。


だから中身だけを変えれば、何にでも変えられる。


ミイナの身体で、クラリスの側近のあいつになることだって可能と言う事だ。


なんともクラリスらしい発想だが、今回はこれが良かったと言えるだろう。


(まさか初めの一発をミイナに取られるとは……)


思いもよらない一手に頼もしさを感じた。


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