外伝:不穏な組織
「うん、順調なようだね」
良い結果に少し子供っぽい返事だなと感じてしまった。
「特にソリタリーは完全上位、これならば麗王を相手に出来るかと」
「まだだよ、俺と同等になってもらわないと」
「恐れながら、あなた様と同等など世界でも稀かと」
「……俺の息子は不意打ちとはいえ、俺に怪我を負わせた。稀なんて言ってられないんだよ」
「……承知しました。更なる改善を試みてみます」
「頼むよ」
男は頭を下げたまま部屋を出た。
「少し過敏になり過ぎではないでしょうか?」
出過ぎた真似だと思ったが、言ってみた。
「そうかな?少しキツく当たりすぎたかな?」
「この短期間でこれだけの成果は十分だと思います」
そう告げると、大きく息を吸い、吐き出してくれた。
「すまない、少し憂鬱になってたのかもな」
いつもの感じに戻った気がした。
「博士に謝ってこないと」
「いえ、博士は気にしていない様子でしたので、後で私から――」
「そういうのは俺がやらないと!俺が原因なんだから」
こういう性格だよなと思いつつも止めた。
「では、先にこちらからお願いします」
「ん?ああ、みんなの成果か」
「はい、あれから内容を一新して順調に力をつけています。特に博士を含む非魔導士部隊、
機械兵器の扱いも順調に慣れ、S-の魔導士に後れを取りません」
「さっきの怒ってる?」
「いえ、偶然報告の内容が重なっただけです」
「そうか」
「さらに博士のデバイスの指示も順調に進んでいます」
「やっぱり怒ってるよね!?」
「偶然です!」
主人と秘書のような関係だが、気の合う友人のようなやり取りが続いた。
いくつかの報告を受けると考え事を始めた。
「あいつ関連で幾つか目ぼしい魔導士が出始めたな。危険分子として見ておくように」
「承知しました。あとその危険分子の中に、先日蘇生させた者が経験があると報告が……」
「ほう?」
「殺されたらしいのですが、もう一度戦わせろと言ってきています」
「殺されたのにもう一度か。今度やったら負けないとか雑魚のセリフだな」
「ですが片方は――」
耳打ちで報告するために声量を落した。
そしてその報告を受けるとニヤリと笑った。
「確かに、あいつは見どころがあったな。一度戦ったことで手の内が知れている。
なるほど、それを見込んでの再戦なら許可しよう」
「ですがそれを許してしまうと……」
「ああ、わかっている。現段階で局と戦いたいと言う連中を集めろ」
「現段階、ですがそうすると――!?」
理由を理解した。
「そういう事だ」
なんと合理的で無慈悲な人だ。
心が洗われるような清々しさに襲われた気分になった。
「では、さっそく博士と手配を」
「ああ、頼むよ」
早速、博士の元に向かった。
「くっくっくっ、はっはっはっはっ!私の苦労も理解し一気に片付けてくれる案。
さすがはあのお方、我々とは次元が違い過ぎて感服しっぱなしですよ」
「私は選定に入ります。博士もこの作戦を有意義に使うつもりでしょう?」
「もちろんです!」
「では、いつも通りに」
スッと報告に来た女は消えた。
「さあ、少しだけ気合を入れますよ!」
あの女の選定はすでに目星が付いている。
最近悩まされてばかりのあいつらを選ぶのだろう。
それに合わせた兵器、実証データが欲しい物、さらに……
「あの連中なら、あの兵器を持たせますか」
意思のある人間での実験はまだ無かった兵器をぜひ使いたい。
これが成功したらソリタリーはさらに兵器として強化される。
ソリタリーだけじゃない。
この兵器は未熟な兵器をも強化する。
特にダンブラットに使える。
「くっくっくっ、楽しみですねぇ」
不敵な笑いが部屋に響いていた。
「やあ、不穏な同志たちよ。この度、君たちの願いを聞き入れ、戦いの場を用意した。
もちろん、敵は管理局の魔導士やその上、王達の配下が相手となる。
最高の環境で最高の相手を打ち倒す、その希望がある奴は今、前に出ろ」
男の声に数十人が前に出た。
思ったより多い。
だが問題無い数だ。
「直近で戦った事があると言うやつは?」
「俺と、こいつだ」
ある二人の男が名乗り出た。
(ほう、こっちは条件が揃えば七剣徒の下位の相手も出来そうだ)
大きい方の男を見てそう思えた。
「最低限、こいつに傷を負わせられたら合格だ」
その話に動揺が走る。
「全員戦えるんじゃないのか?」
「ああ、これは生存率の判定だ。最低限、それが出来なきゃ返り討ち、無駄死にだ」
つまりやるだけ無駄と言うことだ。
「ってことは勝てなきゃ参加すら……」
不安を感じたやつは、既に戦意喪失状態だ。
当然だ。この男の正体は全員知っているほどの有名人。
強さも知れ渡っている。
「博士」
「はい、こちらに」
博士は何やらデバイスを大量に持っている。
「不合格者はこれを使ってもらう」
「これは?」
「簡単に言ってしまえば戦闘シミュレーション制御装置ですよ。
膨大なデータから個人の戦闘スタイルに合わせて的確に助言する装置。
そう言えば皆さんにも理解出来るでしょうか」
がやがやと動揺が走る。
「どんなに優秀な能力を持っていても、使い方を間違えれば十分な効果が発揮できない。
これはそれを解消するための補助装置だ。これを使えば個人で考えられなかった差別化や、
最適な動きの予測、修正が出来る代物だ。これを使ってもらい、再戦に備えてほしい。
もちろん、強制はしないよ」
確かに様々な使い方を知れば、今まで出来なかったことも出来るようになるかもしれない。
それが嫌なら参加は認めないのだろう。
そう思うと全員そのデバイスを受け取った。
「うん、みんなありがとう。それでは君達のために最高の舞台を用意しよう。
決戦は二週間後、近くなったらまた連絡しよう。それまで存分に準備をしてくれ」
能力は無いが戦いたい。また戦えば勝てる。
そう思っているやつほど、この戦いに真っ先に駆け付けた。
これがどういう意味かも知らずに。




