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外伝:湯煙の幸福と不幸2

トウヤが作った大浴場は仲間内からどんどん広がり、いつの間にか事業にまで発展していた。


元々、長風呂の風習が無かった魔法世界で、これだけお風呂に時間をかけるようになったのは、

温泉というものをよく調べ、良いものを自分なりに取り入れた結果なのだろう。


そして魔導士の大半は女性。


戦いに明け暮れても、やはり美意識は捨てきれないのが現実。


そこに日々の疲れの解消と美肌効果という美意識を同時に得られる温泉は、とても好評だった。


管理、維持が大変だったが、地元の人間に手伝ってもらうことで運営面も軌道に乗っている。


「にゅっふっふっふっ」


「目が金になってるぞ」


「にゃんにょことかにゃ?」


「真面目なトーンで言っても説得力ねぇよ」


この温泉スパをリンシェンと共に設計し、軌道にのるまでこぎつけた。


「おみゃあに商売にょ才能(さいにょ~)があったとわにゃ」


「いや、この結果は俺も驚いている」


個人の趣味が万人に求められ、それがこれだけ大事になるとは、世の中何があるかわからない。


「よぉぉし、もっと手広く利益を広げるにゃ」


「何でそんなに利益を求めるんだ?」


「研究にゃ金がかかるにゃ!」


「ああ、そういう目的ね」


リンシェンより金に執着していないのでトウヤには手広くという考えはない。


「ならここの権利とか全部リンシェンにやろうか?」


「ホントかにゃ!?」


「あ、ああ」


食いつきようが異常だ。


「ああ、ただ、俺が楽しむための施設なんだから、自由に出入りするくらいは許してくれ」


「おっけぇにゃ。おみゃあは使いたい放題にゃ」


この時、トウヤがリンシェンに利益を全部渡したことが運の分かれ道になる事をまだ誰も知らない。


○○○●●●○○○●●●○○○●●●○○○●●●


予想以上の賑わいに驚きつつ奥へ行くと、見知った顔があった。


「お、お二人さんも来てたんだね。一緒に入ろうよ」


マリアがブンブンと手を振り合図を送る。


内心「げっ」と思ったが、これは個人の話。


「ああ、みんなも来てたんだね」


ミナが合図に応えるようにその中に加わったので仕方なく加わった。


「お貴族様も銭湯にはご興味おありで?」


「やめなさい。貴族と言っても私達は下級貴族、そこまで大きな差は無いよ」


「そんな事言ったらあたしはほぼ平民よ」


ルーの皮肉に、あっ、と気づきこの話題は終わった。


「でもこんな贅沢がまた楽しめるなんて思わなかったな」


「マリアは銭湯に行ったことあるんですか?」


ミズキが意外そうに聞く。


「ええ、王宮にいた頃は清潔にするために毎日入れって五月蠅かったなぁ。

抜け出した後は水浴びしか出来なかったし、お湯を作るのも大変だったもん」


「そうなんですねぇ。私は毎日入るんが当たり前の環境やったんですけど、

こんな大勢と入るんは久々ですねぇ」


「そうか、ミズキはトウヤと同じ国出身だもんな。これは見慣れた光景なのか」


「はい、旅館とかのこぢんまりしたものや、こうゆう大浴場もよう行ってましたね」


「へぇ、トウヤにとって当たり前だから思いついたのかもな」


「裏ではリンシェンがガッポリ儲けてるけどね」


仲が良いのは良い事だが、すぐよからぬ方向に進むのと一緒なのはどうなのだろうか?


「そ・れ・よ・り・も」


マリアが何か思いついたようだ。


「女子同士の裸の付き合いと言えば……」


嫌な予感しかない顔をしていた。


「恋バナでしょ!」


嫌な予感が的中した。


「恋バナって、普段男の人が身近におらんのに……」


ミズキからすると普段関りのある男はトウヤとファイゼンのみである。


兄であるトウヤを除くと、ファイゼンしか選べないので恋バナのネタにもなっていない。


「いやいや、ミズキには将来お義姉ちゃんになるかもしれない人がいるんだよ?

この人がトウヤとくっついたらいいなとか無いの?」


その表現に全員の時が一瞬止まった。


お義姉ちゃん、つまりそれほどの想い人。


……居るの?


ルー、ミナ、そしてずっと黙って聞いていたリリスにも緊張が走る。


だがミズキは事の重大さが解かっていなかった。


「え~せやったらマリアがええなぁ。一緒にいてめっちゃ楽しいし」


「おっと、そうきましたか。でも残念。私にはもう居るから他の人にしてね」


上手く躱し、再びミズキの答えに緊張が走る。


「そんなんゆうたら私の答えなんて無いようなものやん」


「そ・こ・を、なんとか!」


「え~……せやったらポーラかなぁ?めっちゃシゴデキお姉さんって感じでカッコええもん」


マリアは求めてた答えがなかなか遠いことにやや悶え始めた。


「う、う~ん、ポーラはもうファイゼンの物でしょ」


「幼馴染ゆうてましたし、やっぱりそうなるんですねぇ」


「それを除いて、トウヤがこの人いいなとか言ってなかった?」


「ないですね。意外と仕事人間で、そういったこと考えてないみたいですよ?」


「ないのかよ!」


マリアは顔を両手で隠し泣き真似をした。


「そうじゃない!そうじゃないんだよ」


「諦めろ。あの兄に対してこの妹ありだ」


ミナはマリアを慰めた。


「えっと……なんか気まずいことゆいましたか?」


「ううん、君のせいじゃない。この人の中身が下世話なオジサンなだけだ」


ミナが丸く収めようとした。


だがマリアはしつこかった。


「せめて、リリスみたいなバインバインがいいのか、

ルーちゃんみたいな慎ましいのがいいのか知りたかったな」


「慎ましいって丁寧な言葉で言ったけど、バカにしてるよね?」


ルーは拳を見せつけマリアを睨みつけた。


「してないしてない」


ケラケラと笑いながらマリアはルーを宥めた。


「で、も、集めたメンバーが物語ってるよね」


マリアに言われルーは確認した。


バイン!バイン!!バイン!!!


「くっ!年下のくせに!!」


ルーは精神的に敗北を認めてしまった。


「邪魔んなるだけやで」


「持ってる人の贅沢な悩みよね!」


「病まない病まない需要はあるさ」


「あんたが言い始めたんでしょ!!」


ルーとマリアのじゃれ合いのような騒がしさに仲の良さを感じる。


「うるさい……お風呂くらい静かには入れないの?」


その声に目をやると最近仲間になった彼女がいた。


「あれ?イブがここに居るなんて珍しいね?」


「別にお風呂自体は嫌いじゃない。騒がしいのが好きじゃないだけ」


そう言う彼女は防水加工した本を読んでいる。


「あんた、ここでくらいは読むの止めたら?」


「知識は情報、情報は戦場で命に等しい」


「だからって……」


ルーはイブの行動に呆れてしまった。


「イブも控えめねぇ」


おじさんみたいな発言のマリアがイブの肩を掴んだ。


「そんなもの動きの邪魔になる」


「でも見た目も重要よ」


「見た目なんて……」


瞬時にスタイルの良い姿へと変わった。


「これで十分」


イブの魔法、“変形(トランス)”は見た目だけなら簡単に変えられる。


「こんなの卑怯よ!!」


ルーの叫びが響き渡った。


結局、無いことが悩みになる。


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