外伝:イブの部屋
イブから助けてほしいと言われ、部屋に向かった。
「イブ?入れてくれ」
「ん、どうぞ」
そう促され、部屋に入ると思わぬ光景が現れた。
「え!?なにこれ!?」
人一人が通れるくらいの通路。
その他は紙、紙、紙。
「これは……本か?」
主に漫画や小説と言った物が所狭しと置かれていた。
「まるで本屋……うう……通れへん……」
「ええ!?俺が通れ……ああ、そういう引っかかりか」
トウヤとミズキ達では前後の幅が違う。
特にリリスとミズキは体格の割にはかなり大きいので引っかかってしまうようだ。
「俺一人で話を聞く。みんなは外で待っててくれ」
「いい。ここでも話せる」
イブが引き止め、要件を話した。
「助けての原因はこれら。置き場所が無くて困ってるの」
「置き場所って、本屋かよ、ここは」
見た限り3m近い天井に届くくらいの高さまで積まれている。
「ってか私は初めてイブの部屋に来たから、奥に何があるか知らないんだけど」
マリアの言い分は尤もだ。と言うか全員知らない。
「奥にはベッドと机があるだけだよ」
「……」
「……え!?狭くない!?」
ほぼワンルームだ。
「え……必要な部分があれば十分じゃない?」
こうなった原因が解かった気がした。
イブ自身は元々必要なものだけあればいいという、かなり無欲な性格なのだろう。
そこに強い興味を持つ物が出来た。
本、正確には漫画や小説という物語をもつ書物だ。
どっぷりハマっていたことに加え、イブの能力も関係してくる。
イブはかなり特異な人間で、本を三冊同時に読むことが出来る。
もちろん、内容もしっかり理解して読んでいる。
さらに超が付くほどの速読で読むことが出来る。
初めて知った時は驚いたが、納得もした。
戦闘時の複数の刃を自在に操るのだから、根本的な頭の作りが違うのだ。
そして髪を“変形”で腕のように変化させ本を持ち、ページをめくる。
超速読、三冊同時、そしてこれを数日続ければ……
この量も納得だ。
ただ……
「ってか凄まじい量だな。よく買えたな」
「地球だとたくさん買える」
「……そうだったな」
イブは高ランククエストも簡単に熟せるので、加入して間もないがかなりの報酬を貰っている。
この部屋もワンルームなのでさほど高価な買い物ではない。
生活費を除いても十分過ぎる貯金が出来る。
そこに地球と言う魔法世界で需要の無い国のお金に変換すると……
本屋自体が簡単に買えそうな金額である。
「普通は本棚とかに入れるんとちゃうか?」
そう言えば本棚が見えない。
「本棚?あれって手に入るの?」
「いやいや、家具屋に行けば普通にあるでしょ」
「そう……なんだ。本当にあるとは思わなかったよ」
現実と創作の世界を混同しないのは良い事だが……
「あともっと大きな部屋にしよう。それこそ思い切って本屋みたいな部屋にしてもいい」
「うん、わかった。試してみる」
これで解決のようだ。
「あと……奥の部屋なんだけど……」
イブが急にモジモジとした態度に変わった。
「ど、どうしたの?」
「こ、これも何とかならないかな?」
奥の部屋を確認した。
「う……」
思わず言葉を失った。
「き、きた――」
「言わないで!」
イブも変わった環境で育ったが普通の女子だ。
これを恥ずかしいと感じたから、この態度に変わったんだろう。
「と、とりあえず、入り口の本は一度別の場所に移動。他の人が入れるようになったら、
ここの片づけと、収納だな。目的に合わせて使いやすいように配置だ」
ベットと簡単な机のみの部屋だが、こんな惨状に出来るのはある意味すごい。
「あと、地球にお掃除ロボなんて物もあるらしい。そう言うのを配置していこう」
「は、はい……」
マリアだけを空間転移で呼び、部屋の悲惨な現状を確認。
イブと協力して見せられないものだけは大急ぎで転移。
そして本も一時的に転移させ、全員中に入れるようにした。
もちろん、人手が必要なのでポーラ達にも声をかけた。
その後部屋の拡張を行い、家具も購入。
すごく綺麗な部屋に生まれ変わった。
「寝室は変えなかったのね」
「広すぎると落ち着かない」
「ま、落ち着ける空間であることが大事だから構わないわ」
「しかしイブが片付けられないタイプだったのは意外だったね」
「む、むこうでは片付けはやってくれたから……」
「誰が?」
「……アダム……」
思わぬ人物に顔が引きつる。
えっと……
アダムが姉に対して過保護だったのって、生活力が無いから?
だから姉が心配で心配でたまらなかったのか?
「ち、ちなみに、料理とか出来たりする?」
「……切り刻むのは得意よ」
「何の!?何を切り刻むつもりなの!?」
「……ふふっ」
「食べれるもの!食材にして!!」
ただ、読書量は半端ない。
つまり
「料理本通りに作ればいいんでしょ?出来ると思うけどなぁ」
あ、これ出来ないやつですね。
映像化すると自主規制が必要になるタイプ。
「この短期間でずいぶんと仲良くなったようね。紹介した甲斐があったわ」
そう言うとポーラはゆっくりと離れていった。
あいつ、逃げやがった。
「ねぇ」
「はい!?」
肩に手を置かれると、ゾワゾワと何かが背中を襲った。
「今回のお礼も兼ねて作ってあげようか?男って好きらしいね、女の手料理」
笑ってるけど怖い。
翻訳
汚部屋のこと誰かに話したら、手料理を食べてもらうよ。
「いいえ、結構です!」
トウヤも大急ぎでイブから離れた。




