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先遣隊2

「……奥様は……もう……」


そう聞いた途端、父は力無く膝をつき、そのまま座り項垂れたまま動かなかった。


「お姉様!お姉様!!いやああああ!」


叔母が激しく取り乱すのを見ると、不思議と落ち着いて見られた。


母は妹をお腹に宿した時に、病に伏せった。


母か子か、その二択を迫られ、母は子を選んだ。


父も権力に物を言わせ、必死に助ける方法を探したが、それは叶わなかった。


生前、母が言っていた。


「お兄ちゃんだから、最後まで妹の味方でいてあげてね」


そう母に託され、自分がしっかりしなくてはと思っていた。


権力と力に溺れている父が唯一それ以外に執着したのが母だった。


父とあまり離れていない親族で、魔法と知識に長けていた母は、

あの歴代最強に並ぶとも言われたが、世継ぎのためにと父が強引に娶った。


母も諦め、父の良き妻になろうと一生懸命だった。


なので何人も居る妾の中でも父は特に気に入っていたので、今の絶望感は計り知れないだろう。


大人が取り乱しているのを横目で見ながら、静かに母を送った。




月日が経ち、妹に父や僕と同じ異能が宿っていることを知った時の父は大喜びだった。


そして僕と同じように徹底的な英才教育を施し、僕と同じ地位にまで進めると信じてやまなかった。


叔母も非常に協力的で七剣徒(セプトレア)の上位三位を独占するのも夢ではないと言っていた。


しかしそう簡単に物事が都合良く進むわけがなかった。


妹は異能に振り回されてばかりで上達しないのだ。


これには父も叔母も呆れ、それは次第に怒りへと変わっていった。


「お前ごときのためにあいつは死んでいったのか!」


「お姉様は、こんなもののために命を捨てたというの?」


そう罵られながら妹は育っていった。


そしてそれは現在、認めないという形で切り捨てられている。




「これがアコニスが今置かれている状況だ。そして気をつけてもらいたいのはアコニスの異能だ」


「ああ、暴発に気をつけろってことだろ?俺様は問題無い」


「いや、少し違う」


「なに?」


エクシアはアコニスの頭を撫で一呼吸置いた。


そして……


「アコニスの魔力は僕の倍だ」


「!?」「は!?」


一瞬と気が止まったかのようになったが、トウヤが続けた。


「つまり……制御しきれないってことですか?」


「……そうだね」


「ああ、俺が知ってるのってすごく手加減してくれた状態だったのか」


トウヤ一人で納得していた。


「でも性質は変わらないんだから近づいた状態でバチッとやっちゃえば……」


「それは下級以下だから実現できる戦い方だ」


ニゲルがトウヤの提案を却下した。


「上級ともなれば常に魔法の膜で体を守るのは当たり前だ。

そしてそれは魔力に比例する。君影(きみかげ)の君が良い例だ」


リヤナの“不侵の毒(コルドン)”は絶対防御と言われるほど強力な異能だ。


しかしリヤナ自身の魔力が少なく、能力が強力でも力負けしてしまう事が欠点だ。


つまりトウヤの案で相手にダメージを与えることは難しい。


「ならそこから全力で放てばいいのでは?密着しているんだから制御する必要無いですし」


「外だけで解決するならそれで問題無い。でも実際はアコニス自身も怪我をするんだ」


「う……自分にも返ってくるんですか?」


「“雷霆の毒(フォルミナ)”を放つ瞬間は同時に自分自身を守らなくてはいけない。

アコニスはその制御する力が弱くて苦労している。解りやすいように説明すると、

自分の体の何倍の大きさの武器を振り回そうとしているようなものと言えば理解出来るかな?」


詳しい性能は本人にしかわからない。


だがトウヤには一つわからない点があった。


「導電体は作ってないんですか?」


「どう……でん?」


一瞬、間が空きハッと気がついた。


「す、すみません!同じ雷魔法の感覚で話してしまいました!」


トウヤは慌てて深々と頭を下げた。


「いや、それよりもどういうことか説明してくれるかな?」


「は、はい。えーっと、俺も雷魔法をよく使うんですけど、その時、電気を流す導線を作ってるんです。

電気は基本的に流れやすい方に流れていくから、空気や動物の体にはなかなか流れません。

なのでその状態で放電すると自分に返る、つまり生体の水分に引き寄せられる可能性が高まります。

ですが魔力でその電気の通り道を作ると、自分に跳ね返ることなく電気を放つことが出来るんです」


また沈黙の間が出来たので、トウヤはまた焦り始めた。


「あ、でもこれは弱い電気の話で、“雷霆の毒(フォルミナ)”のような強力な電気で実現出来るかは……」


「いや、そう言われて気付いた事がある。僕も同じ“雷霆の毒(フォルミナ)”を持ってるんだけど、

無意識で遠くへの操作は魔力で導くように使っている気がするんだ。

だからアコニス、もしかすると“雷霆の毒(フォルミナ)”を制御出来るかもしれないぞ」


「ほ、本当に……?」


「ああ、僕と一緒に訓練してみよう」


「うん!」


「と言うわけで、部外者の僕が言うのも何だけど、挨拶代わりに訓練をしないかい?

特にトウヤ君、君の力はまだ未知数だ。二人以外にも見せておく必要があると思うよ」


「ふっ、ならば俺様がその相手を買って出よう」


いつの間にかトウヤとニゲルが訓練、つまり実践演習を行う流れになっている。


「え!?いや!怪我させてしまうと大変なので……」


「ほう、俺様に怪我させることが出来ると思っているのか」


断るつもりが失言だったようだ。


「い、いえ、そんなことは……」


「大丈夫だよ、トウヤ君。彼は接近戦のエキスパートだ。半端な攻撃じゃ傷すら負わないよ」


「ははは、楽しみだ!俺様に傷を負わせたら七剣徒(セプトレア)に推薦してやるよ」


「やめてください、うちの人間なんですから」


スプニールも止めないとか、完全に断れる気がしなかった。


「そいつに訓練させるなら、ギルドのお仲間も呼んだ方が良いんじゃないんですか?

そいつは一人じゃなくて数人で動いているようですし」


全く喋らなかった人が急に喋り始めた。


しかも嫌な提案だ。


「確かにそうだな。トウヤ、全員連れてきな。俺様が歓迎するぜ」


「いやいやいやいや、中には貧民街出身もいます。粗相をする可能性が高いので……」


「ならば一時的に無礼講としてあげませんか?」


「「え!?」」


エクシアの提案にトウヤとアコニスの声が被った。


意外だったが否定者が多いことに超したことは無い。


だが


「アコニス、一般人の多少の粗相も笑顔で受け流せる方が素敵だと思うよ?」


兄の一言に呆気なく返り討ち。


「カクタスもいいよな?」


「ご自由に。提案者ですし」


君影(きみかげ)の君も?」


「ええ、問題ありません」


満場一致?で呼ぶことが決まった。


「ふふ、諦めなさい」


スプニールがなぜか嬉しそうだ。


「ああ……もう、怒られるぅぅ!」


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