先遣隊
スプニールに呼び出され向かった部屋に入った途端、状況のヤバさを理解した。
そしてトウヤはドアを閉めようとした。
「入ってきなさい!」
珍しくスプニールが大声で言ってきたので、渋々部屋に入った。
「この子が例の子、トウヤです。以後お見知りおきを」
スプニールが簡単にトウヤを紹介した。
見知った顔、見知らぬ顔が入り混じる。
「まずは俺様だ」
筋骨隆々の大男がトウヤの前に立った。
ってかデカい!
2mほどはありそうな身長と鍛え抜かれた大きな筋肉に圧倒された。
「南天狼、ニゲル・ヘレボルスだ。俺様のことはキングと呼べ、畏怖と畏敬を込めてな」
へ?となったがそういうものだと受け入れた。
「お初にお目にかかります、キング。ホシノトウヤと申します、どうぞよろしくお願いします」
一瞬、驚いたような顔をされたので間違ったのかと思った。
「はっは!ああ、よろしく頼む」
ニゲルはそう言うと手をさし出した。握手だろう。
トウヤはそれに合わせて握手をした。
って痛い!
素の力が強すぎて加減が出来ていないようだ。
「初対面の印象は悪くない。むしろ俺様をキングと呼ぶやつだ、今後を楽しみにしよう」
トウヤの受け答えは当たりだったようだ。
「続いて……君影の君と鈴狐の君は知ってるわね?」
「あ、ああ」
「こんにちわ」
「……よろしく……お願いします……」
リヤナは他人行儀に笑顔で手を振りながら挨拶をした。
親しい仲というのを表に出さないようにする為だろう。
トウヤもその意図を汲み、合わせた挨拶をする。
そして、少し気まずそうなのはアコニスだ。
二回会ったことあるが、そのどちらも喧嘩っぽい事をしている。
トウヤ自身もその気まずさは理解したので、やや素っ気なくも丁寧に挨拶をした。
「そして最後に、覇王樹の君よ」
「……どもっす」
こちらは素っ気ないと言うよりとても気だるそうにしている。
反応に困ったが丁寧な挨拶を心掛けた。
「以上、この五人がキョウ・ネリウム討伐の先遣隊となるわ」
「は!?えっ!?ちょっと待ってスプ――」
鋭く睨まれた。
「ちょっと待ってください、桃姫の君。俺がここに加わっていいんですか?」
「ええ、各麗王から一人ずつ七剣徒以上の眷属を出すことになったの」
「ちょ!?俺そんなに偉くない!」
「仕方ないわ。うちに眷属はいないもの」
ネリウムは他の一族と比べて女性比率が高い。
貴族社会は基本的に嫁ぐ形になるため女性ばかりでは減る一方だった。
さらに久々の男児だったキョウは犯罪者に、その姉オリエンも婚約に積極的でなかったため、
親戚とも呼べる近親の眷属は今現在はいない状態だ。
「だから叔父様の子供であるあなたを呼ぶしかないのよ」
「い、いいの?俺、犯罪者の息子で汚点になるだろ?」
「それを上回る名声があれば問題無いわ」
「ま、それをいつまでも言ってくるやるが、俺様はそれで認めてやろう」
「わたしもそのつもりよ」
「……お前、昔は下人を毛嫌いしてなかったか?」
「うっ……それは……浅はかだった時の話です」
ニゲルとリヤナの仲も悪くないようだ。
「こいつの意識を変えたのもお前だろ?」
「いや、そんな大層なことはしてませんよ」
どこで知ったのかトウヤとリヤナの関係も知っているようだ。
「そして、後ろのは問題無いとして……」
ニゲルの後ろ、部屋の端っこで横になっている男の事だろう。
気怠そうに、無気力な感じだ。
「お前さんはどうなんだ?その意識が邪魔をして足手まといになられては困る」
「……」
目も合わせようとせず、というより不安で心ここに有らずという感じだ。
「アコニス、しっかり話を聞きなさい」
気配も無くいきなり居ないはずの声がした。
その声に驚き振り向くと、白とも銀とも言えない煌めく髪に端正な顔立ちをした美少年がいた。
トウヤとリヤナは素早く跪いた。
「ああ、楽にしていいよ。僕は麗王になれなかった、何物でもないからね」
「ご冗談を」
「お前さんならあの親父も傀儡も即座にぶっ飛ばせそうだがな」
スプニールとニゲルはもう立場が上回ったので跪かないのだろう。
だが不敬とも言われかねない突然の登場も特に気にしていないようだ。
「お、お兄様……」
アコニスは泣きそうな顔で駆け寄った。
エクシア・ジギタリス、アコニスの兄で現在、最強の麗王候補と言われる……
いや言われていた人だ。
「みんなもすまないね。僕がもっと父上を止めることが出来たらよかったんだけど……」
筆頭候補と言われていたが、先代で父のドミニクに独断でリコリスに取られた。
これはエクシアも予想外の強行だったようだ。
「提案自体は新しい白酔馬の君の物だ。お前さんが気に病むことじゃない」
「でもそれに賛同してこんな企みを推し進めた。父も同罪だ」
「企み?これに何かあるの?」
あの場を知らないトウヤには何があったかさっぱりわからない。
「お義父様の愚息がこれを発案したのを紫鈴狐の君が同意して推し進めたのよ」
「狙いは十中八九、邪魔者の排除だろうな。もっとも、俺様は個人的な楽しみだがな」
「邪魔者?……え?リヤ――!?」
スプニールがどついてきた。
痛みを堪えながら、話を続ける。
「君影の君が嫌われてるって、どういうことですか?」
「……私は強力な異能のお陰で七剣徒になれたんだけど、それが嫌みたいなのよ。
自分の立場を脅かす存在とか敏感に感じて嫌う人だから、私みたいなのは特にね」
「な、なるほど」
「そう謙遜するな。俺様も苦労しそうな異能だと思っている。誇りに思っていいぞ」
「腕を上げたようだからね、僕も苦戦しそうだ」
「い、いえ……ありがとうございます」
思わず褒められ、リヤナは照れてしまったようだ。
「そして父上はアコニスが犠牲になってもいいと考えているんだ」
「!?……なんで!?自分の娘じゃないんですか?」
「父上は娘と認めていない。そのあたりの事情と、アコニスについて教えておく必要がある」
「お、お兄様……」
「すまない、アコニス。君の恥を教えることになるが、それを隠すことは現状、悪い事になる。
僕は父上の思い通りにはさせたくない。無力な僕を許してくれ……」
アコニスは不服ながらも頷き、話すことに同意した。




