新しい王たち3
「は……はあ!?何寝ぼけた事言ってんだ!そんなの許されるわけ――」
フィリの言葉を手で遮りバリエガータが前に出る。
「それは、彼があなたの身内であると認める行為ですよ?」
あくまでも中立の立場を貫くうえでこの問いかけ。
なんだか導かれているようだ。
「はい、現に彼は父親と同じ異能が使えるようになっています」
「「!?」」「ほう」
バリエガータはリヤナから聞いているがフィリは聞いていない。
ここは親子間に壁があるようだ。
「おい、桃姫の。それを信じるだけの根拠はあるのか?」
ドミニクは年長者らしく冷静だ。
「もちろんございます」
スプニールにとって予想していた問いだ。そして……
「う、嘘だ!根拠があるってんなら出してみろ!」
目の異能に対して根拠を出せ。
とんだ無理強いだということは冷静であればすぐに理解出来るんだが、
フィリは冷静さを失っているようだ。
まあ、これも予想通り。
と言ってもこれはバリエガータの予想だが。
「こちらがその根拠になります」
スプニールは先日手に入れた映像を公開した。
映像にはトウヤとイブが戦っている。
「これは先日行われた魔導士同士の訓練です」
「なんだこの映像?どうやって撮影された?」
映像はまるで自分の目で見ているような映像だ。
「彼の本来の能力は創る力。その能力を使い、視覚を映像と繋げる魔法を創っています」
「おいおい、なんだよそのふざけた能力は」
ヒパコは大きく溜息を吐きながら映像を見ていた。
「ほお、女の方はスピードは十分、だが攻撃がイマイチだな」
ニゲルが即座に力量を見極めた。
こういったことは彼が一番長けている。
「彼女は先日、彼の仲間に加わったA4出身の子です。真面な魔法教育を
受けていませんが、天賦の才だけでこれほどの力を見せてくれました」
「Aランク出身の魔導士は異質な能力を持ちやすいと聞くが、本当なようだ。
この女なら低級のやつらも勝てないかもしれないな」
この中で最も戦闘に長けているニゲルが良い評価をもった。
元々、地位で判断せず、自分で見た実力で相手を見極めるニゲルは、
相手が誰であろうと平等に見る傾向が強い。
それはスプニールにとってありがたかった。
「おい!これの何処が証拠になるんだ?ザコ同士じゃれ合ってるだけだろ!」
フィリは冷静に見ることが出来ないようだ。
ここまで予想通りになるなんて、単純と言うか何というか……
「わかりませんか?フィリ」
バリエガータが淡々と言う。
「これがなんだってんだ!父上まで変な――」
「呆れたのう……」
フィリの言葉を遮るようにドミニクが呟いた。
「お前さんとこの愚息は感情的になりやすいようじゃな。
同じ親として苦労していると見受けられる」
フィリは鋭く睨みつけるが黙ったままだ。
「相手の攻撃に対する動きを見ていれば一目瞭然じゃ」
「おそらく、感覚的に相手の動きを察知できるのでしょう」
「確かにこれじゃあ俺様に傷を負わせられないわけだな」
ドミニク、バリエガータ、ニゲルと立て続けに解説された。
そう、冷静に見極めれば大したことない。
だがそれができないから愚息と呼ばれバリエガータの悩みになっていると理解した。
「くっ……!」
フィリは黙ることしか出来なかった。
「ふん、最低限じゃな。他の奴らよりも働いてもらわねば割に合わんな」
参加は認めるが、馬車馬のように働けということか。
「その点は問題無いでしょう。……リヤナ」
「はい、ここに」
いつの間にかリヤナがバリエガータの後ろで跪いていた。
「彼の仕事ぶりについて、教えてもらえるかな?」
バリエガータに促され、リヤナはトウヤについて話す。
「仕事ぶりは至って真面目、常識を知らない分、考えるより早く動く事が多いように見えます。
目上に対してはしっかりとした態度で話すことから、下人の割には礼節を重んじるように見えます」
礼節を……ね。
スプニールは最近のトウヤの行動を思い出し不安になった。
「ずいぶんと良い評価出すじゃん。おまえ、何かあるのか?」
ピクリとリヤナは反応したがすぐに平静を保った。
「下世話な……底が知れるな」
ニゲルがポツリと呟いた。
「何だと!?王に対して――!?」
声を荒げるフィリをバリエガータが力づくで机に叩き伏せた。
「愚息が申し訳ない。間違った教育を今でも信じていて、恥ずかしい限りです」
「申し訳ないが、俺様はもう一言だけ言いたいのだが、よろしいですか?」
「……どうぞ」
「お前には王の器が無いようだな」
「!?この野郎!!」
フィリは藻掻くが、頭を力づくで抑えられているので動けなかった。
「ご尤もな指摘で、恥ずかしい限りです」
そう言うとバリエガータはフィリを離した。
するとフィリはニゲルに襲い掛かろうとした。
その瞬間、体が一気に震え上がり硬直した。
ヘレボルス、ジギタリス、アセビの前任者達がフィリを威圧する。
特に正面、ヘレボルスの両名からは命の危機を想像させるほどだ。
「力でねじ伏せたいのなら相手になろう。だがそうすると、王としての信頼は失うぞ?」
「我が姉君は俺様より強い。お前は相手になるのか?」
オーレア、ニゲルの二人を同時に相手にするとなるとフィリも勝ち目がない。
さらにドミニクもバリエガータも参加しそうな勢いだ。
「ちっ!勝手にしろ!」
座っていた椅子を蹴り飛ばしたフィリは部屋を出ていった。
「ひゃっひゃっひゃっ、お前さんの愚息は型破りじゃの。あれじゃあ悩むのも仕方ない」
「弁明の余地もございません」
「お前さんが養子を取るのも頷けるし、わしも最近その気持ちを知ることが出来た。
お前さんの心中を察するぞ、白酔馬の……おお、そう言えば何と呼べばいいんじゃ?」
突拍子の無いドミニクの問いに静まり返った。
確かに白酔馬の名前は息子に受け継がれた。
ならば何と呼べばいいのか。
「紫鈴狐の君はご存じでしょうが、昔の白酔木とお呼びください」
「おお、若い頃のか。そうさせてもらうとしよう」
「となると俺は紫附子と名乗ればいいのかな?」
「……そうなるのう」
ついでにヒパコの呼び名も決まった。
「では今回はキョウ・ネリウムに対して各王から適任者を派遣、局と共に、
迅速に解決させること。そしてそれまで七剣徒の空席は保留で」
「異論は無いのう、リコリスよ」
「は、はい。異論はありません」
「私も異論はありません」
「俺様も同じく」
「代理だが同じく」
「ではこれにて、閉幕とさせていただきます」
一人、途中退室したが無事に麗王達の話し合いは終わった。




