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調査力

互いの調査結果を報告するため、通話を開始した。


「こっちは苦労しそうよ。かなり大きな円が作られてたし、姿を見ることも出来なかったわ」


リヤナは何も得られなかったようだ。


「円?」


声からしてマリアだろう?そういえば応用の話はあまりしてなかった気がする。


「魔法操作の一つで周囲の接触を感知する方法だよ。封絶とリリスの魔法を合わせ、

感知する部分だけに制限したものといえば、わかりやすいかな?」


リリスの魔法のように術者を中心とした円状の範囲に反応すること、

範囲は術者によるが、形は変化しないことから円と呼ばれているらしい。


「大きいってどれくらい?」


「約400mくらいよ」


「よ!?……直径だよな?」


「残念、半径よ」


トウヤは頭を抱えた。


いや、400mという距離は魔導士にとって大した距離ではない。


だが感知の役割を持つ円で400mは厄介だ。


円にはもう一つの役割がある。


反応速度の強化だ。


警戒範囲内に入った異物に対して素早く対応することで身を守る、これが円の目的である。


トウヤのイメージでは居合に近いイメージを持っている。


刀身が届く範囲に入ったら素早く刀を抜き切り裂く、これも一種の円の使い方だ。


この二つの役割且つ長時間維持しなければならないことから、魔導士でも数mが一般的だ。


それを400mとなると、近づく間に何回も攻撃されることが容易に想像出来る。


「リヤナは問題無いとしても、他はどうなるかわからないな」


「そんな迂闊な事言わないの。相手の魔力だって全然わからないんだから」


「うっ……ごめん」


これはトウヤの失言だ。


リヤナの異能は確かに強力だ。だが力負けする場面が多いのも事実。


異能に過信しない。リヤナは気をつけていたのにトウヤは過信していた。


これは反省すべきである。


「とりあえず二人について得られた情報をまとめよう。イブの方なんだが、

理由はまだ解らないが、報告にあった場所とは別の場所に拠点を移したようだ」


「へぇ、よく見つけたわね」


「偶然だよ。それと自身の魔法で姿を変えられるようで、見た目で判断できないよ。

それと性格面だが、アダムは殺しを楽しむ節があるようだ、だから接触は本当に気をつけてくれ」


「わかったわ、特にミズキとマリアは対処も難しいから要注意ね」


「頼む。対してイブはまだ大人しいらしい。と言っても相手を瞬殺する程度ね。

この話、警戒されているようで、俺が得られたのはこれだけだが、リリスはどう?」


同じく探っていたリリスに尋ねる。


「年齢は19、寡黙であまり話す方ではないが、年相応の女の子らしく甘味が好き。

特に赤豆を糖煮にしたものが好きなようで、それを使った甘味を食べているところを

見かける人が多かった。あと読書家のようで本をよく読んで――」


「ちょ、ちょっと!?そんなに何処から手に入れたの?」


「……ちょっとコツがある」


「どんなコツ!?」


「あはっ、トウヤより優秀じゃん」


「笑ってるけどそっちも収穫無いんだよ?」


「うっ……」


リリスが居なかったらほぼ収穫無し。


ホント、リリスが居て良かったよとトウヤは思った。


「で、なぜ一人で離れた場所に居るかは調べられた?」


「どうやら王の命令に従わなくなったらしい。王の近衛兵達が抹殺に向かったけど、

相手はこの国の最高戦力、敵うはずもないけど、今も執拗に狙われているらしいよ」


「なるほど、近衛兵の追ってから逃げるために複数の拠点を転々としているのか」


「じゃあ戦闘は避けられないわね。向こうはこっちのこと近衛兵だと思われるだろうし」


「……」


「?……トウヤ?」


「あ、ああ、すまない。ちょっと考え事してた」


「なに?考え事って」


「……彼女、殺人兵器って言われるほどなら、なぜ王を殺さないんだろうって」


「そりゃあ、王の方が強いんじゃないかな?」


「なら殺人兵器なんて必要ないだろ?ここは他に国が無く、王の独裁状態だ。

権力で従え、無理矢理でも処刑することが出来るんじゃないか?」


「……確かに」


「なら王は弱いが兵器を作る力はあり、イブとアダムを作り出し不要な連中を抹殺。

王位に就いたが兵器がいつ自分に牙を向けるかわからないから何かで制御したはず。

王を不審に思ったイブはその影響で王を殺せず逃げるしか出来ていないのだろう」


「確かにあり得そうな筋書きだけど、私が王なら逃亡を阻止する制御を入れるし、

逃げたなら弟を向かわせるわ。そうすれば瀕死でも連れて帰ることが出来るでしょ?

それをやらないということは、それをやることが出来なかったということよ」


「まあ……その通りなんだけど」


「逃げていると言いつつも確証が無い。もしかしたら逃げてるようにみせて、

誰かを抹殺しようとしているのかもしれないわ」


「それこそ誰だよ。そうまでして殺さなきゃいけない人間っているの?」


「う……うん、そうよね。そんな人間ここには居なさそうだし……」


互いに考えられる可能性を出すが、それを否定するだけの理由がある。


そのため、イブが逃げている理由は解らないままだった。


「ねぇトウヤ、今度は私が王城付近で探れないかな?」


「え!?……大丈夫か?」


リリスからの提案に驚いたが、内容に不安を覚えた。


「確かにさっきのリリスの情報収集は見事だったわね」


「だが王城に近いということは、それだけ危険になるという事だよ」


王城近くでイブとアダムの事を調べるということは、不審者と思われかねない。


そして密告され捕虜になる可能性も高くなる。


「大丈夫、いざという時は石にするから」


「いや……大丈夫なのか?」


「いいんじゃない?解除出来るんだし、被害を出さなければ問題無いでしょ」


リヤナの大丈夫は貴族の方の大丈夫な気がする。


と言うものの、アダムの情報が無いのはかなり辛い。


ここは情報収集が上手かったリリスを頼る方が良い気がする。


「わかった、俺とリンシェンは監視を中心にイブを探ってみるよ。

リリスはリヤナと一緒にアダムの調査。さっきも言ったように権力者の近くは、

何処にどんな目があるかわからない。

密告され最悪アダムが現れる可能性もある。くれぐれも慎重に調査してくれ」


「うん、気をつける」


そうリリスが言うとマリアの転移が発動、一瞬でリヤナの元に移った。




リンシェンと合流し一緒にイブを監視している。


現地時間は深夜、日付が変わって少し経つが、イブは早く寝るようで明かりが消えている。


「このまま朝まで動くことは無いだろうな……ふああ~」


「そういえば地球とここは時間感覚が近かったにゃ、お前もお眠にゃ?」


「そうだね。でもいつ起きるかわからないから監視は続けないとダメでしょ?

暗闇に紛れて抜け出すなんて、このタイミングなら都合がいいし」


「ああ、そうにゃ。でも朝方、ねむねむにゃタイミングも都合がいいにゃ」


「まあ、そうだな」


確かに明け方の眠気がマックスなタイミングは注意散漫になりやすい。


「お前は寝とけ。おいらは朝方にくると思うから、そこに備えるにゃ」


「ああ、そうだな。そうさせてもらうよ」


そう言うとトウヤは簡単に寝る準備をした。


魔導士にはこういう長丁場に備えて、簡易的なカプセルベッドが存在する。


ぐっすり眠るわけにはいかないので座位型だが、雨風そして寒暑から守られるので、

魔導士は個々でお気に入りのカプセルベッドを用意している。


かく言うトウヤもその一人だが、このような長丁場の場合、

拠点を作ることが多いので、これにお世話になる頻度は少ない方である。


「じゃあリンシェン、悪いけど休ませてもらうよ」


「んにゃ、任せるにゃ」


ガッツポーズを見ながらカプセルに入り座ると、思ったよりも早く眠ってしまった。


疲れか気苦労か、何かと気が張ってたからか、それともカプセルベッドの

寝心地が良かったのか、そう考えるのも面倒になる程、心地よく眠りについた。


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