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同じことを

時は少し遡る。


「は、速すぎる」


ポーラは思わず呟いてしまった。


だがこれは大部分の人間が思った事でもあった。


トウヤとイブの戦闘を見ている最中、観戦していた人からは動揺の声が溢れるばかりだ。


「魔法の能力は平均的でも速さ、反応速度は麗王(れいおう)クラスと言うことね」


スプニールは淡々と結果を分析する。


「リンシェン、見えた?」


「……いや、ギリギリにゃ……」


二人に近い環境で魔法の知見もしっかりあるリンシェンでこれだ。


他の連中はよほど魔法の操作が良くない限り何が起こったか解からないだろう。


「あなたはまだ見えないの?」


突然話をふられ、ミズキは驚いた。


「え!?あ……はい、何も……」


ミズキは魔導士になってからの日が浅い。


そこに加えて、まだ細かい操作が苦手で上手く扱えていない。


「この中で唯一、彼を支えられる存在なのだから。修行に励みなさい」


「ええ!?わたしが唯一なんですか?」


「そうよ。あなたは彼と同じ環境で育った存在。私達とは完全に別格よ」


「!?」


トウヤとミズキが育った地球は魔法世界よりも厳しい環境である。


つまりそこで適応出来るだけでも大きな差がある。


魔導士でも別格とされる麗王(れいおう)でも、適応するには魔法を必要とするが、

ミズキは魔法も無く適応することが出来る。


そしてその分の魔法を他に使うことが出来る。


今回、トウヤとイブでは環境による差は、あるとすれば戦いが生活の一部になっているか、

平和な世界で戦うことも無く平穏な生活をしていたかの違いだろう。


イブは前者、トウヤとミズキは後者になる。


その差をトウヤは魔法で埋めた。


もちろん血による才能の差もあっただろうが、その差を埋め上回ることが出来ている。


「才能があるかどうかはあなた次第、あっても咲かせなければ無いに同じよ」


スプニールは少し強めの目つきでミズキを見る。


その姿勢にミズキは少し縮こまっている。


「魔法世界に伝わる地球人の昔話は聞いたかしら?」


ミズキは首を横に振ってこたえる。


「この国は地球人によって一度滅びかけたことがあるのよ」


驚くミズキを他所にスプニールは淡々と話を進めた。


「横暴な地球人によって支配された国は破滅への一途を辿っていた。

もちろん、黙って見ているだけでなく戦いもしたけど地球人は強すぎた。

例えるなら大人と子供で力比べをしているようなものね」


リリスやマリアも知らなかったようでソワソワしているが、他は全く動じない。


魔法と共に暮らしている人にとっては有名な話だ。


「その強さの差は環境によるものが大きい、とのちに解されているわ。

筋力、呼吸、回復など体の特徴が全て勝っていたら勝って当然よね?

これらは魔法である程度補うことが出来るけど、産まれ持った差は覆せないわ」


「ち……ちなみにどれくらいの差があるんですか?」


「約2倍、一番近いリンシェンでも1.5倍とされてるわ。

ついでに言えばこれは老いの早さでもあるわね」


スプニールの代わりにポーラが答えた。


「に、2倍ならそこまで大きな差は――」


ポーラは首を大きく横に振り答えた。


「数字だけならそうでしょうね。なら逆に聞くけど、それだけの差があるのに、

どうしてミズキやトウヤは私達と同じ見た目をしているの?」


「え?それは同じ人間――!?」


ミズキにも想像できた。


同じ人間ならなぜ同じことが出来ないのか?


ミズキが考えていた通りなら、100kgの荷物を簡単に持てるから、誰でも持てるでしょ。


と言っているようなものだ。


そしてミズキでもこう答える。


元々持っている物が違うんだから無理だ。


ミズキとポーラ達にも同じことが言える。


それだけの力、この話では筋肉に限ったことで言う。


同じ見た目なら筋肉がつく量も大体同じだろう。


だが実際は同じ見た目なのに持てる重さが大きく変わる。


これはなぜか?


答えは簡単、見た目以上の筋肉がついているからだ。


同じ見た目、同じ大きさでも、中に入っている物が全く違う。


ポーラ達が魔法を使ってようやく出来る事も、ミズキは魔法も、苦労も無く出来るのだ。


「じゃ…‥じゃあ……」


ミズキの言いたいことを察したスプニールは大きく頷いた。


「あなたには、私達に出来ないことが出来る可能性が十分にある。どうするかはあなた次第よ」


この中で唯一、トウヤと同じ地球人。


いや、トウヤは混血だから、純血のミズキとはまた違う話になる。


だが唯一同じ環境で育ったことは他が絶対に真似出来ない素質だ。


「ど、どうしたらお兄ちゃんと同じようになれますか?」


ミズキの中で何かの決意が固まった。


「最低限、今使える魔法を繊細に扱えるようになることね」


ミズキはまだ大雑把な操作しか出来ない。


なので今の戦いも、基本である魔力操作の(ごう)が扱えれば十分見えただろうが、

ミズキはそれが不十分なため見切れていない。


なので話しはそこからだ。


(わたしも、一緒に……)


真剣な眼差しでトウヤを見つめるミズキを見て、スプニールは軽く笑みを浮かべた。




戦闘が終わりトウヤとイブが戻ってきた。


「あ、スプニール来てだ――!?」


ポーラが素早く引っ叩いた。


「……桃姫(ももひめ)の君、いらしてたんですね」


「ええ、あなたも、目の使い方に慣れてきたようね」


「まあ……不思議な感覚ですけどね」


トウヤは記録していた目の映像をみんなに見せた。


だが見た感じ、あまり変化が見づらい。


「目線が……何となく次の動きを見ている……ような?」


「こっちも感覚的な事しか言えないな」


過去にスプニールの目で見た映像の共有で疑似的に弱点看破の毒(バイタルサイト)を真似た。


なので今度はトウヤの目、知覚超過の毒(エクスパーセプション)も共有出来ないか試した。


七剣徒(セプトレア)第一位、歴代最強と言われた異能との共有だ。


これが出来ればかなり戦力の強化に繋がる。


だが現実はそう上手くいかない。


知覚超過の毒(エクスパーセプション)は目で見て感覚的に次の行動が見えるという感じだ。


なので共有しても相手に理解されづらい。


本当に個人専用と言った感じだった。


「こちらは引き続き解析が必要ね」


「それはこっちで、リンシェンがこういうの得意だから任せた方がいい」


「うにゃん、任せるにゃ~」


「そしてイブ、今のあなたにもう一度判別法を受けてもらうわ」


「え!?」


「あれってアダムの影響では?」


「きっかけはそうでしょうね。そしておそらく複数の属性が宿っているでしょう。

もっとも、本人が変化系なのでわかりづらいでしょうけどね」


「複数の属性って……ありえるの?」


「あり得るわ。かなり稀な事だけどね」


スプニールに言われるまま試してみると驚きの結果が出た。


闇・土・光属性という三種持ちだった。


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