イブ3
合図と同時にトウヤとイブは距離を詰め互いの刃をぶつける。
同時にイブは足元のコンクリートを操作。
槍状の物がトウヤを襲う。
地上だと分が悪いと判断したトウヤは“駆”で飛び上がる。
するとイブは後を追うように翼を作り出し飛び上がる。
そして両手を大きな刃に変え振り回す。
イブの倍の大きさだが振り回すことが出来る、つまり見た目だけで重くない。
そう判断したトウヤは自分のデバイスでイブの刃を受け止める。
だがイブは受け止めた瞬間、本来の重さに戻した。
(そんな芸当が!?いや、違う!)
トウヤの見切りの眼が答えを示した。
イブは細い糸のようなものを何本も地面と繋げていた。
つまり、振り回すときは自身の腕とそう変わらない重さ。
最初に思った通り見た目だけという状態。
そして受けた瞬間、その糸を通して地面、つまり操作出来る岩を自身の刃に同化させ、
見た目相応、またはそれ以上の重さに変換してトウヤを襲っているのだ。
(ならば正面から受けてはダメだ!)
トウヤは受けた瞬間に軌道をずらし、受け流した。
確実に当たった攻撃が上手く流されたことにイブは驚いた。
こんなことが出来るのは自分以上の力を持つアダムだけ……
いや、アダムでも受けるつもりだった攻撃を受けた瞬間、流すなんて芸当は難しいかもしれない。
そんな相手だと思った瞬間、嬉しくなった。
(ならば手数ではどう?)
大刀を解くと今度は無数の糸状の刃に切り替えた。
そしてそれを振り回すと土埃が舞う。
いや、刃がアスファルトを土埃になる程切り裂いたのだ。
そして刃に触れた土埃はイブの支配下になり無数の棘を伸ばす。
(なるほど、恐ろしい能力だ!)
イブの刃に触れた土埃にはある一つの命令が下されている。
“前に伸びろ!”
そして伸びた土埃が別の土埃に触れ、さらにイブの支配下になり命令に従う。
それが繰り返されることで土埃の舞う空間に相手を襲う小さな槍が無数に生まれる。
触れた瞬間は一瞬でも、数が増えれば無数に変わる。
(これは避けられない)
トウヤにはこの選択肢しか無かった。
「“断”!!」
空間を断絶することで侵入を完全に防ぐ。
「ついでに“裏六座・返”!」
断に重ねるように空間を反転させる“返”を放った。
これで自身を守ると同時に攻撃を跳ね返した。
跳ね返った攻撃は、イブを襲う。
だがイブは驚きこそはしたが、冷静に自分の攻撃を解除した。
“返”は反転こそすれど、特段変化があるわけではない。
今回のイブのように即座に反応出来た場合、簡単に対処されてしまう。
やはりある程度の速さでなければいけない。
または上手く不意を突くことだ。
自分が最も早く放てる攻撃。
イブと同じことをやることになるが、近接戦闘が一番速く不意を突きやすい。
近接戦闘は攻撃を当てやすい反面、攻撃を避けにくい。
互いに同じ条件になるが、トウヤには見切りの眼がある。
イブよりも避けやすい。
さらに自分の魔法で反応速度を極限まで上げることが出来る。
自分だけの優位性だ。
トウヤは戦い方を接近戦に切り替え、即座に見切りの眼、“知覚超過の毒”を使った。
切り替えと同時にデバイスを取り出し一気に距離を詰めると、イブも両手を刃に変えて応戦した。
これで攻撃を当てやすくなると思ったがすぐに後悔した。
攻撃の軌道を見て理解した。
(イブの成長速度が半端ない!)
攻撃は見えている。
なんとなくその先を予測して見切ることが出来ている。
だがその後が良くない。
見切ってから避けるまで、つまりイブの攻撃が予測した場所まで届く時間がどんどん短くなっている。
より鋭く、より避けづらく。
見切ることが出来ても避けることが難しくなってきている。
(考えて避けるんじゃない。反射的に避けるんだ)
少しでも速く避けれるように、反応速度を極限まで上げ、最小限の動きで躱す。
それでもイブの攻撃を躱すのはギリギリだった。
魔法の知識も乏しい環境で、己の感覚と経験から、最も最善の手で攻める。
暗殺用生体兵器として、常に戦場で死と隣り合わせで育った結果だ。
これがイブの力。
そしてここに魔法としての知識と経験が加われば、今よりもっと強くなる。
(これは負けてられないな)
トウヤは次の手を打って出た。
攻撃が見切れる、つまり攻撃の軌道が見えると言うことでもある。
その攻撃の軌道に合わせ、タイミング良く軌道を動かすとどうなる?
トウヤは剣のデバイス、要でイブの刃を押し出した。
いわゆる受け流しという動きだが、トウヤは目のお陰で普通とは違う。
動きの支点を動かすことで極最小限の力と動きで攻撃を回避していた。
これにはイブも驚いた。
攻撃を力一杯トウヤに向けているのに、全く近づけることが出来ない。
むしろ無理矢理でも当てにいこうとすると体が壊れそうな気がした。
(この動きは、何?)
見慣れない動き、見慣れない戦い方。
力強さでもなく、圧倒される何かが無い。
だが確実にイブの攻撃を躱すための力が働いている。
(トウヤは強い)
そう確信すると嬉しくなってしまった。
あの苦しみ続けた力があっても受け入れてくれた。
あの抑えられない力を一緒に抑えてくれる。
それが例え全力であっても。
そして誓おう。
この力は君のために、仲間を傷つけないように使うよ。
不意に弟の顔が浮かんだ。
満足気に笑っている。
知っていたのね。
誰かのために力を使う事。
殺したいんじゃない。
守りたいんだ。
そのために使うなら怖くない。
いつの間にか忘れていたよ。
いつの間にか怖くなって抑えていた。
いつの間にか信じられなくなっていた。
うん、ここから始めるよ。
だから、全力で、後悔しないように!
そう弟に誓うと、イブの体に変化が現れた。




